転生先はアクションゲームの悪女先生でした~うっかり誘惑しちゃった堅物王太子殿下と溺愛ルートに入ったようです~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

文字の大きさ
上 下
18 / 51
第二章

癒しのラクー

しおりを挟む

 あの後授業に戻ると生徒達が心配して駆け寄ってくれて「もう大丈夫よ」と伝えるとまた風魔法の練習を始めた。

 マデリンは少しバツが悪そうに私から顔をプイッと背けて、実習が終わるまで窓際で大人しくしていたのだった。

 今日はさすがに疲れたので裏の庭園には行かずに、直ぐに馬車に乗って公爵邸に帰る事にした。何と言っても邸には先日一緒に帰ったラクーが待っていてくれる。

 邸の中も慣れてきたのか、元気に飛び回りながらお腹が空くと調理場で食べ物をもらったりと、ちゃっかりしているところもあって可愛すぎる。

 少しだけ成長したような気もするけど、まだ小さくて飛び方に力強さはなく、ゆらゆら飛んでいる姿がまた可愛い。

 とにかく癒されるのよね。

 邸の皆もラクーが大好きで、すっかり公爵家の一員になっていた。

 帰ったらいつもラクーがどこからともなくゆらゆらと飛んでくるのだけど、今日は飛んでくる気配はない。いつもはすぐに飛んでくるのに……おかしいな。


 「ラクーはどこにいるか知ってる?」

 「さきほど厨房に入っているのを見かけたので、何か食べているのかもしれません」


 セリーヌに聞いてみたところ、どうやら厨房でお食事中のようだったので、楽な服装に着替えてさっそく厨房に向かった。


 「ラクー、このスクランブルエッグの残りを食べるかい?こっちのパンも食べていいんだよ」


 料理長のゼノは今日もラクーに余っている食べ物を与えている。

 ラクーも嬉しそうね……高い鳴き声を響き渡らせながら全身で喜びを表していた。


 「2人で楽しそうね~~私も交ぜてちょうだい」

 「お、お嬢様!おかえりなさいませっ」


 私がヒョコっと顔を出すと、ゼノは驚いて恐縮してしまい、慌てて立ち上がる。セリーヌはかなり慣れてきたみたいだけど、まだ邸の人達は私の態度が変わった事に慣れていない様子だった。

 ゼノも声をかける度に恐縮するから、むしろ私の方が恐縮してしまったりして、申し訳ないと思う時もあるのよね。

 そんな私の元へラクーが嬉しそうな鳴き声をしながら飛んできたのだった。


 「クゥゥーー」


 あんまり嬉しそうに鳴くものだから、手の平に収めて頬ずりしてしまう……毛もふわふわしているし、可愛すぎるわ。


 「ラクー、ただいま。元気にしてたのね、いっぱい食べた?ゼノにお礼を言ってね」


 頬ずりしながら私がそう言うと、ラクーは元気よく「ク―!クー!」と鳴き出す。その姿がビシッと敬礼しているような気がして、私の言葉が分かるのかしら……とちょっぴり驚いてしまう。

 そんなところも可愛すぎるわね。


 「ゼノ、ラクーにご飯をあげてくれてありがとう。良ければ小さなお皿に残りを乗せてくれる?ラクーの分を私の部屋に持っていくから」

 「あ、はい!承知しましたっ」


 ゼノは相変わらず恐縮しきった態度だったけど、私がお礼を述べたのですっかり気分を良くして、せっせとラクー用の食事を用意してくれたのだった。


 「良かったわね、ラクー。じゃあ私の部屋へ戻りましょう」

 「クゥゥー!」


 ゼノに挨拶をして厨房を後にする。戻っている道すがら、今日の出来事を思い出していた。

 マデリンはバツが悪そうにしていたから、きっと反省してくれると思いたいわね。今度彼女とじっくり話をしてみようかしら。

 それに理事長――――いつもクラウディア先生に接している態度とは比べ物にならないくらい優しかったな。

 あの出来事のおかげで、また理事長との距離が近づいた気がする。

 私がそう思いたいだけ?

 ゲームでの理事長はクラウディア先生に対して彼女に負けず劣らず高慢な態度で、幼馴染でありながら二人の仲は最悪の状態だった。

 仲良くしたいという私の気持ちが伝わったんだろうか……そうだと嬉しいなぁ。

 自室に戻ると、窓の外はもうすっかり暗くなっていて、大きな月が昇っていた。

 ベランダに出てラクーと一緒に月を眺めていると、ラクーが小さな翼をパタパタさせて、私の周りを飛び始めたのだ。


 「ふふっなぁに?何か嬉しい事でもあったの?」

 「クゥクゥ」


 ラクーの翼は孔雀のような色合いをしていて、月明りに照らされると七色に光り、とても神秘的な光景だった。

 一緒にベランダに出たのは今日が初めてなので、新たな発見だわ――――こんな美しい光景を見られて、それだけでも癒されるのに、ラクーが私の周りを飛んでいると本当に癒されてきたような気がするのよね。

 不思議だわ。もしかしてラクーにも何か魔力があるのかな?なんてそんな事をぼんやりと考える。


 まさか、ね…………この時の私にはまだラクーがどんな力を持っているのか全く気付いていなかったし、ラクーが聖なる気を発しているだなんて知る由もなかった。

 そして……私が何となく回復している気がしていたのは気のせいではなく、その理由は後日知るところとなる。

 数日後に学園の裏側にある庭園に行った時に起こった出来事により、私の身辺は一気に慌ただしくなっていくのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...