転生先はアクションゲームの悪女先生でした~うっかり誘惑しちゃった堅物王太子殿下と溺愛ルートに入ったようです~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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第二章

シグムントSide 4

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 ゴミ捨てが終わった後、私は自室に戻る途中で色々な思考と闘っていた。

 どうしてあの場を離れがたかったのか、クラウディア先生の笑顔が他に向けている事が気に入らなかったり――――一緒にゴミを捨てに行っただけなのに、あのちょっとした時間で色々な感情がせめぎ合って、一気に疲れた気がする。

 普段は仕事中だろうと王宮でも感情が揺れ動く事など滅多にない。

 物事に一喜一憂して他者に感情を読み取られる事は弱点を晒す事だと教え込まれているので、王太子として自分の感情をコントロールする事を心掛けていた私は、いつも誰と話していても一定の表情を崩す事はなかった。

 ただ一人を除いて。クラウディア先生、彼女に関しては…………事件がある前からずっと振り回されている。

 私の感情を知らぬ間に動かすのはいつも彼女だ。

 前はそれでイライラしていたはずだったのに、今は心臓が痛いくらいに鼓動が激しくなる。

 原因不明の感情に振り回されるなど、王太子としてあるまじき事だ。何としても原因を突き止めなくては。

 理事長室に戻って一息入れながら、窓から見える学園の裏側にある庭園を眺めていた。

 この理事長室から庭園が一望出来るのが、この部屋のいいところだ。庭の手入れをしてくれる用務員のカールは働き者で、広い庭園をほぼ一人で綺麗に管理してくれていた。

 真面目な男なので私はかなり気に入っていたし、このままずっとここで勤めてほしいと思っている。

 そのカールがいつものように手入れをしていると、そこにゴミ捨てで別れたクラウディア先生がやってきたではないか。


 「…………なぜクラウディア先生が……それにカールと――――」


 誰がどう見ても二人は凄く仲が良く見える。いつの間に?

 カールの水魔法に感動しているクラウディア先生が目にはいる――――あのくらいの水魔法なら私だって出来る。

 私だけではなく、この学園にいる生徒達も皆魔力があれば魔法が使えるのだが、それぞれの適性属性というものがあり、一番相性の良い属性を磨いていくのだ。

 適性の低い魔法を使うとコントロール出来ずに魔力の暴走を引き起こしたりしかねないので、たいていは自分に合った属性以外は使わない。

 私は王太子としての教育の一貫で、全ての魔法を一通り試しながらある程度使えるようにしている。

 一番得意なのは火属性の魔法で、次いで光属性の魔法が得意だが、水属性の魔法だって使えない事はない。

 あんなに感動してもらえるなら私が――――いや、なぜ私がクラウディア先生を感動させなければならないのだ?

 またしても変な感情が生まれてきて混乱していると、カールとクラウディア先生の元に今度はダンテがやってきたのだった。


 「な、なぜあいつが…………こんなところにまでクラウディア先生を追いかけているのか?」


 そこまで呟いて自問自答する、だから何だ?と。ダンテがクラウディア先生を追いかけている事になぜこんなに動揺している?

 思えば事件より前もダンテが彼女に興味深々で、私は何故だかそれが気に入らなかった気がする。

 自分の思考と行動が一致せず、窓に張り付いてモヤモヤしていると、庭園にいる3人は水やりの後、皆で枝の剪定をし始めたのだった。

 ダンテなど普段から汚れ仕事は絶対に嫌がるのに――――クラウディア先生となら一緒にやるんだな。

 楽しそうに庭の手入れをする3人の姿を見守りながら、誰かを羨んだ事など全くない私にダンテやカールが無性に羨ましいという気持ちが生まれるのだった。
 

 ~・~・~・~・~・~


 その日はクラウディア先生が受け持つ風魔法のクラスで実習があるというので、私は理事長としてクラスの様子を見に行く事になっていた。

 彼女は魔力も高いし、先生としても優秀である事は認めているので、クラスでの授業も生徒達はいつも楽しそうに取り組んでいる。

 今回も教室には見事なシールドが張られ、自身の周りにも風魔法を吸収するストームシールドを作っていた。

 そして魔力の羽根を大量に作り出して対象を攻撃する”フェザークロスを生徒達がクラウディア先生に向けて発動させ、それをしっかりと吸収しながら次々と練習させていた。

 特に問題はなさそうだな…………生徒達もだがクラウディア先生も楽しそうに見える。

 その姿が微笑ましく思い、その場を去ろうとした時、伯爵令嬢であるマデリン・トンプソンの順番になると様子が一変したのだった。

 彼女はなぜかクラウディア先生を嫌っているのが私でも分かるくらいで、今回も自分の番になるとフェザースクロスが簡単過ぎると難癖をつけ始める。

 マデリン嬢はトンプソン伯爵の一人娘で、少々甘やかされて育てられた令嬢といった感じが見受けられ、王太子妃を狙っているのが一目で分かる態度を度々私にしてきた事があった。

 トンプソン伯爵は教会側の人間だ――――マデリン嬢は父親の思惑など何も知らないのか、それとも……伯爵は教皇に取り入りながら娘を王族に嫁がせて、内側からも権力を手に入れようと企んでいるのか?

 なんにしてもこの親子に近づき過ぎるのは良くないな。

 私が目を細めて考え事をしていると、私の姿に気付いたマデリン嬢がこちらにやってきて、腕をつかまれて授業に参加させようとしてきたのだった。


 「理事長先生も一緒に授業を受けましょうよ!次は私の番なんですけど、なかなか上手く出来なくて……理事長先生が手伝ってくれたら嬉しいなぁ」


 先ほど簡単過ぎると言っていたその口で、上手く出来ないなどと呆れるな。

 彼女の魔力量はとても高いし、出来ないはずはない。


 「いや、私は各クラスを回っていただけだから――」


 やんわりと断ろうとしたが、生徒達が次々と私を授業に参加させようとしてくるので仕方なくマデリンの横に立ち、彼女の魔法を見守る事にした。

 しかし私のその行動が失敗だった事をこの後すぐに身を以って体験する事になるのだった。
 
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