33 / 43
第三章
玉座の間
しおりを挟む険しいお話しが続いてすみません~~!<(_ _)>
このお話で一旦落ち着きますので!><
~・~・~・~
皆、勢揃いね…………両開きの扉が開いて私が入ると、王族たちは一斉にこちらを向く。
それと同時に王妃殿下や側妃達、兄弟姉妹は皆、一様に私に憎しみの目を向けていた。一体どうして?ボルアネアに厄介払いしたのは自分たちなのに――
私は兵に腕を引かれて、レッドカーペットの中央まで連れて行かれた。
「ようやく戻ったか……ロザリアよ。元気そうだな」
「お父様もお元気そうで…………」
「はっ!お元気そう、ですって?我らがどんな生活を強いられているかも知らずにぬけぬけと…………そなたは随分ボルアネアで優雅な生活をしているようではないか」
突然口を開いたのは王妃殿下だった。私があちらでどんな生活をしていようと、皆には関係ないわ。私を自分たちの保身の為にボルアネアに差し出したのは皆なのに…………
「……私は与えられた生活の中で、慎ましく生活をしているだけです。この結婚は両国で決めたものではないのですか?」
「リンデンバーグはボルアネアに敗れ、要求を飲まないわけにはいかなかったのだ。好きで差し出したのではない……」
「あちらから連れて来たボルアネアの王女の子供である私は、政治の道具として使い勝手が良いんですものね」
「無礼な…………口を慎め!」
王妃殿下は激昂し、私を怒鳴りつける。でももう幼い子供ではないから、萎縮したりはしないわ。私は私を大事に想ってくれる人達がいる、その事が何よりも私に勇気を与えてくれていた。
「……お母様は最後まで、ボルアネアに帰りたいと日記に書いていました。そうさせまいとしていたのは、お父様ではないですか……私が政治の道具として必要になったから、今度もまたボルアネアから連れて来たというわけですね?私を条件にまたボルアネアを脅す気ですか?政治の主導権をとりもどそうと……?」
「…………………………」
「そんな事で国が再建出来る状態ではない事が、お分かりになりませんか?」
また戦になったら、兵達も犠牲になってしまう。この城にいるのは国に忠誠を誓っているわけではない、ただの雇われ兵だろうから……この人達にとってはどうでもいい事でしょうけど。
「…………自身の欲望の為にお母様を攫ってずっと幽閉し、故郷に帰る事も叶わず朽ちていったお母様の無念を考えると……私がこの国を救おうだなんて思うわけがありません。ここにいる皆さま方で何とかするべきですわ……」
「随分な口をきくようになったわね、私たちの顔を見てはただ怯えていただけの小娘が」
側妃の一人が昔を思い出しながら口を出す。私を盾にお母様を傷つけた――――
「……お前の母親もバカな女よ。お前の事など考えなければ母国に帰る事が出来たというのに……ふふっ…………お前を母親から引き離すために連れていった時のあの女の顔は傑作だった」
王妃殿下の顔は愉悦に歪んでいた。私をお母様から引き離す為に?そんな事があったなんて日記には…………まさかあの破られた日記の跡は………………
「お前は覚えてはいまい。まだ2歳だったからな……生意気だったから調教してやろうとしただけなのに我らを悪者扱いしてくる。お前を抱きしめ、泣きながら懇願してきた……お前に手を出すなと――――そこまで言われれば仕方ない、私も鬼ではないからな。代わりに母親の方を調教してやったのよ……お前が関わるとロザリアは碌な事にならない、お前の存在がロザリアを不幸にしている、お前の娘で可哀想だと散々教えてやった。そのうちお前と関わらなくなっただろう?母親の深い愛だ、誇りに思うがよい。ふふっ」
「そのうち、お前も母親も我らの顔を見ても反応しなくなっていったから、全くつまらなくなったな……ふふふっ」
王妃殿下と側妃の話に皆がクスクス笑い、その声が玉座の間に響き渡る――――
「なんて下劣な…………」
お母様を笑わないで――――
「……その辺にしておけ。もういない者の話をしても意味はない」
お父様が皆を鎮めるように言葉をかけた。意味はない?お父様にとってはそれだけの存在だとしても私にとっては…………悔しさで握りしめていた手から血が滲んでいた。
「陛下!陛下は甘いですわ。ロザリアが役に立たないから我らはこんな目に遭っているというのに」
王妃の金切り声が玉座の間に響き渡る。そして第1王子が根も葉もない事実を突きつけてきた。
「衛兵!この女を地下牢にでも入れておけ。ボルアネアには通達しておいたから、じきに向こうから交渉の為の連絡が来るだろう。あちらにはお前が我が国に戻って来たいと言うから手を貸したと言ってある」
「な、にを…………」
私が自らここに来たと?
ううん、そんな事を誰も信じるわけないわ。それにレナルドがどこかに潜んでいるはずよ。きっと私の事をテオ様や陛下に知らせてくれているはず…………絶対に信じて待つのよ。
私はどうしてお母様が私の事を空気のように扱っていたのか、その理由が聞きたかったのだ。それも先ほど王妃殿下がご丁寧に教えてくれた……――――私がいるから生きられると書いていたお母様、いつも遠くを見ていたお母様。
私は悔しくて、悔しくて、お母様の魂と一緒にボルアネアに帰るまで、こんなところで朽ちるわけにはいかないと心に誓った。
かつての私は生きる事に全く執着していなかったのに……いつ死んでも良かった。でも今はこんなにも死にたくないと思っている。それもこれも全てテオ様やベルンシュタットの皆のおかげだわ。
絶対にあのお方に会わずに朽ちたくない。お母様、私に力を――
「さあ、行くぞ」
両手を拘束されたまま兵に腕を引っ張られる。玉座の間から出て、壁伝いに歩いて行くと、地下牢への入口が見えた。
古い片開きの扉を開けると、地下に行く階段が続いている……薄暗くて狭い階段には何人かの兵が配置されていて、地下に着くと、そのまま地下牢の一室に入れられてしまったのだった。
8
お気に入りに追加
1,045
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
執着系皇子に捕まってる場合じゃないんです!聖女はシークレットベビーをこっそり子育て中
鶴れり
恋愛
◆シークレットベビーを守りたい聖女×絶対に逃さない執着強めな皇子◆
ビアト帝国の九人目の聖女クララは、虐げられながらも懸命に聖女として務めを果たしていた。
濡れ衣を着せられ、罪人にさせられたクララの前に現れたのは、初恋の第二皇子ライオネル殿下。
執拗に求めてくる殿下に、憧れと恋心を抱いていたクララは体を繋げてしまう。執着心むき出しの包囲網から何とか逃げることに成功したけれど、赤ちゃんを身ごもっていることに気づく。
しかし聖女と皇族が結ばれることはないため、極秘出産をすることに……。
六年後。五歳になった愛息子とクララは、隣国へ逃亡することを決意する。しかしライオネルが追ってきて逃げられなくて──?!
何故か異様に執着してくるライオネルに、子どもの存在を隠しながら必死に攻防戦を繰り広げる聖女クララの物語──。
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞に選んでいただきました。ありがとうございます!】
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる