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第二章
サロンで楽しくお喋りするはずが…
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王族への挨拶が終わり、音楽が鳴り始めたのでダンスタイムが始まった。
テオ様は私をファーストダンスに誘ってくれて、私は右手を差し出した。私の左の背中辺りにテオ様の右手が添えられ、私は左手をテオ様の肩に乗せる……身長差があるので、乗せるのが大変だったけど、私もベルンシュタットに来て5cmほど伸びていたので何とか乗せる事ができた。
あとは先生とのレッスンを思い出して二人で踊り始める――――
上手く踊れているかは分からないけど、何となく形になっているような気はした。先生とのレッスンのおかげね!
「テオ様はとてもお上手ですね……」
「そうか?ロザリアだって練習の成果が出ているじゃないか」
「もう……テオ様が紹介してくださった先生の教えが、とても良かったおかげですわ」
「ダンスなんて気にしなくて良かったのに……でも頑張る君も可愛らしくて、たまに覗いていたよ」
「え?!」
それは初耳だわ…………まさか見られていたなんてっ…………その話が出た瞬間にターンをしたので、それについて話す事が出来なくなってしまった――テオ様は笑って誤魔化してしまうし、それ以上追及出来ないわ……
最初の2曲を一緒に踊って、私の体力が限界にきたので少し小休止する事にした。
私が息を切らしていたので「何か飲むものを取ってくるよ」と言ってテオ様は私が飲めそうな物を取りに行ってくれた。少し壁の花になっていたところにステファニー様が踊り終えて話に来てくださった。
「テオドールは飲み物を取りに行ったの?」
「はい、私が体力がなくて……喉が渇いてしまったので」
「ダンスは大変だから疲れても仕方ないわ。私も3曲で休憩させてもらったもの。ヒルドはお付き合いのある方たちのところで話しているみたいだけど、やっぱり殿方は体力あるのね……」
ステファニー様が呆れたように言ってらっしゃるけど、ヒルド様を見る目は優しさに溢れている。
「ステファニー様、ヒルド様との事……本当に良かったですね」
「…………ロザリア……あなた達にも迷惑をかけてしまって申し訳ない事をしたわ。でもあなたに相談したってヒルドが言っていて、その後からヒルドが今までの事とか自分の気持ちを伝えてくれたの」
「あの時、ヒルド様はステファニー様が自分への気持ちを諦めてしまった事に落ち込んでいて……今度はヒルド様が気持ちを伝える番だと、生意気にも言ってしまったのです…………」
「生意気だなんて!そのおかげで進展したのだから、感謝しかないわ。ねぇ、ゆっくり話したいし、隣のサロンに移ってお茶でも飲みながらおしゃべりしましょうよ」
「あ、でもテオ様が飲み物を…………」
「ヒルドに伝えておくわ。テオドールにロザリアを借りるって言っておいてって。先に行って待っていて、扉を出てすぐのサロンだから……」
私にそう伝えるとステファニー様はヒルド様のところに行ってしまった……ヒルド様とステファニー様がお話するところを見て大丈夫と思った私は、扉を出てサロンに移動した。入場の時は気付かなかったけど、扉を出てすぐのところにこんな休憩室があるなんて気付かなかったわ――
そこの扉を開くと、テーブルが幾つか用意されていて、室内も大きめだった。壁には豪華なソファも置いてあり、かなりの人数が寛げそうな部屋だわ。
でも今は私しかいないけど……舞踏会は始まったばかりだし、こんなにすぐに休憩する人なんていないわよね。自分で考えて笑ってしまう。
そこに給仕係の男性がやってきて、お茶を入れてくれると言われたのでお願いする。こんなに直ぐに給仕係が来て、もてなしてくれるなんてさすが王宮ね……ステファニー様はまだ来ないようだし喉が渇いていたので、給仕係の男性が入れてくれたお茶を先に飲んで待つ事にした。
凄くフルーティな香りと味わいで、とても美味しい……さすがに王宮で入れてくれるお茶は茶葉から違うのかもしれないと感動し、給仕係の男性に声をかけた。
「これは何ていう茶葉を使っているの?とても美味しくて香りも素晴らしいわ……」
「はい、こちらは”ルーピン”という茶葉で、香りが強く安眠作用をもたらしてくれるのです。」
「安眠……リラックス出来る効果があるのね。産地は?」
「はい、こちらの産地は、奥様の母国リンデンバーグになります」
「?!」
私は驚き、思わず立ち上がってしまった。私の母国の茶葉?この給仕係の男性は何を言って……リンデンバーグは敗戦国として、どこの国との取引も制限されているはず。私は王族としての扱いを受けてこなかったから、こんな茶葉があるだなんて知らなかったけど……王宮で使う物として仕入れるわけがない事くらい分かる。
安眠効果…………安眠………………
「まさか、このお茶に何を……………………」
「……それはあなた様が知る必要はないかと」
男性がそう言った瞬間、私の意識がグラッと回り椅子へと倒れ込む…………給仕は私をすぐに抱きかかえ「さぁ、母国へ帰りましょう。国王がお待ちです」と呟いた。
倒れた時の衝撃で、私の首に着けていた15歳の誕生日にテオ様から贈られた首飾りは、シャランと音を立てて床に落ちる――給仕はお構いなしに私を布でぐるぐる巻きにして隠し、その部屋から持ち出そうとしていた。
テオ様は私をファーストダンスに誘ってくれて、私は右手を差し出した。私の左の背中辺りにテオ様の右手が添えられ、私は左手をテオ様の肩に乗せる……身長差があるので、乗せるのが大変だったけど、私もベルンシュタットに来て5cmほど伸びていたので何とか乗せる事ができた。
あとは先生とのレッスンを思い出して二人で踊り始める――――
上手く踊れているかは分からないけど、何となく形になっているような気はした。先生とのレッスンのおかげね!
「テオ様はとてもお上手ですね……」
「そうか?ロザリアだって練習の成果が出ているじゃないか」
「もう……テオ様が紹介してくださった先生の教えが、とても良かったおかげですわ」
「ダンスなんて気にしなくて良かったのに……でも頑張る君も可愛らしくて、たまに覗いていたよ」
「え?!」
それは初耳だわ…………まさか見られていたなんてっ…………その話が出た瞬間にターンをしたので、それについて話す事が出来なくなってしまった――テオ様は笑って誤魔化してしまうし、それ以上追及出来ないわ……
最初の2曲を一緒に踊って、私の体力が限界にきたので少し小休止する事にした。
私が息を切らしていたので「何か飲むものを取ってくるよ」と言ってテオ様は私が飲めそうな物を取りに行ってくれた。少し壁の花になっていたところにステファニー様が踊り終えて話に来てくださった。
「テオドールは飲み物を取りに行ったの?」
「はい、私が体力がなくて……喉が渇いてしまったので」
「ダンスは大変だから疲れても仕方ないわ。私も3曲で休憩させてもらったもの。ヒルドはお付き合いのある方たちのところで話しているみたいだけど、やっぱり殿方は体力あるのね……」
ステファニー様が呆れたように言ってらっしゃるけど、ヒルド様を見る目は優しさに溢れている。
「ステファニー様、ヒルド様との事……本当に良かったですね」
「…………ロザリア……あなた達にも迷惑をかけてしまって申し訳ない事をしたわ。でもあなたに相談したってヒルドが言っていて、その後からヒルドが今までの事とか自分の気持ちを伝えてくれたの」
「あの時、ヒルド様はステファニー様が自分への気持ちを諦めてしまった事に落ち込んでいて……今度はヒルド様が気持ちを伝える番だと、生意気にも言ってしまったのです…………」
「生意気だなんて!そのおかげで進展したのだから、感謝しかないわ。ねぇ、ゆっくり話したいし、隣のサロンに移ってお茶でも飲みながらおしゃべりしましょうよ」
「あ、でもテオ様が飲み物を…………」
「ヒルドに伝えておくわ。テオドールにロザリアを借りるって言っておいてって。先に行って待っていて、扉を出てすぐのサロンだから……」
私にそう伝えるとステファニー様はヒルド様のところに行ってしまった……ヒルド様とステファニー様がお話するところを見て大丈夫と思った私は、扉を出てサロンに移動した。入場の時は気付かなかったけど、扉を出てすぐのところにこんな休憩室があるなんて気付かなかったわ――
そこの扉を開くと、テーブルが幾つか用意されていて、室内も大きめだった。壁には豪華なソファも置いてあり、かなりの人数が寛げそうな部屋だわ。
でも今は私しかいないけど……舞踏会は始まったばかりだし、こんなにすぐに休憩する人なんていないわよね。自分で考えて笑ってしまう。
そこに給仕係の男性がやってきて、お茶を入れてくれると言われたのでお願いする。こんなに直ぐに給仕係が来て、もてなしてくれるなんてさすが王宮ね……ステファニー様はまだ来ないようだし喉が渇いていたので、給仕係の男性が入れてくれたお茶を先に飲んで待つ事にした。
凄くフルーティな香りと味わいで、とても美味しい……さすがに王宮で入れてくれるお茶は茶葉から違うのかもしれないと感動し、給仕係の男性に声をかけた。
「これは何ていう茶葉を使っているの?とても美味しくて香りも素晴らしいわ……」
「はい、こちらは”ルーピン”という茶葉で、香りが強く安眠作用をもたらしてくれるのです。」
「安眠……リラックス出来る効果があるのね。産地は?」
「はい、こちらの産地は、奥様の母国リンデンバーグになります」
「?!」
私は驚き、思わず立ち上がってしまった。私の母国の茶葉?この給仕係の男性は何を言って……リンデンバーグは敗戦国として、どこの国との取引も制限されているはず。私は王族としての扱いを受けてこなかったから、こんな茶葉があるだなんて知らなかったけど……王宮で使う物として仕入れるわけがない事くらい分かる。
安眠効果…………安眠………………
「まさか、このお茶に何を……………………」
「……それはあなた様が知る必要はないかと」
男性がそう言った瞬間、私の意識がグラッと回り椅子へと倒れ込む…………給仕は私をすぐに抱きかかえ「さぁ、母国へ帰りましょう。国王がお待ちです」と呟いた。
倒れた時の衝撃で、私の首に着けていた15歳の誕生日にテオ様から贈られた首飾りは、シャランと音を立てて床に落ちる――給仕はお構いなしに私を布でぐるぐる巻きにして隠し、その部屋から持ち出そうとしていた。
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