26 / 43
第二章
陛下への挨拶
しおりを挟むお二人が腕を組んで入場してくる姿を思わず見つめてしまう…………なんて美しいの……ステファニー様は全身がヒルド様の色でコーディネートされていて、とても似合っているし、お二人とも幸せそうだわ――
ステファニー様はマーメイド型のドレスラインで水色を基調としているので、まさに人魚姫といったイメージがぴったりだった。
腕の辺りからバタフライスリーブがマントのように後ろが長くなっていて、沢山のビジューと刺繍が施されているのがとてもゴージャスだわ…………
カシュクールの胸元にスカート部分はラッフルのデザインで、ひだが真ん中に向かって幾重にも重なり、下にいくにつれてボリューム感が出ている。
胸元にはジルコンの宝飾品が……ヒルド様が贈ったと言っていたジュエリーね。
全身からヒルド様の愛を感じる。
こんなゴージャスなドレスはステファニー様しか着こなす事は出来ないわ……ヒルド様が贈ったのかしら…………だとしたらステファニー様の素晴らしさを本当によく分かっている証ね。
女神そのものだわ――――
「ロザリア、テオドール。久しぶりね!」
「ステファニー様、ヒルド様……お久しぶりです!」
お二人でさっそく挨拶に来てくれて、ステファニー様が笑顔で声をかけてくれた。
「ロザリアもとても綺麗だよ。すっごくテオドールの色が出ているね」
「うるさい、お前に言われたくないぞ」
「………………ステファニー、綺麗でしょ?」
「…………そうだな」
テオ様は二人を眩しそうに見ていた。昔からのお付き合いの二人が幸せそうで、テオ様も嬉しいのね……
「ステファニー様、とってもお綺麗です。女神かと思いました……」
「……ふふつありがとう。ヒルドがドレスを贈らせてくれってきかないから」
「そこは譲れないよ」
「ふふっそうですわね、こんなにステファニー様に似合うドレスを用意されたなんて、ヒルド様凄いです!」
私は興奮気味にヒルド様に言うと、ヒルド様は得意になってステファニー様の素晴らしさを沢山挙げ始める。それがどんどん止まらなくなってしまって、ステファニー様に無理矢理止められてしまうという事態になった。
テオ様は呆れて笑っていて、私もお二人らしくて笑ってしまう――
「この舞踏会が終わったら婚約を発表する予定なんだ」
「……もう両家にも挨拶はしてあるの」
「わぁ…………素敵です……おめでとうございます!」
もう婚約のお話まで出ているのね!良かった…………テオ様も嬉しそう。私たちがそんな話をしていると、王族の方が二階席のところに現れた。国王陛下、王妃殿下、王太子殿下、王女殿下と次々と入ってきて、貴族たちは話すのを止めて、陛下の方を向いている。
そして爵位が上位の方々から王族の元へ向かい、挨拶をしていく…………私もテオ様と一緒に王族の方々に挨拶をする為に階段を上って行き、カテーシーをして挨拶をしていった。陛下は私をジッと見つめている。
「お初にお目にかかります、ロザリア・ベルンシュタットにございます。」
「うむ。元気にやっているそうだな。ベルンシュタットでの生活は快適かな?」
「はい、私にはもったいないくらい素晴らしい生活をさせていただいております。それも全て、陛下が旦那様との結婚を許可してくださったからです。陛下の寛大なお心遣いに感謝致します」
私は精一杯の笑顔で感謝の気持ちを伝えた。陛下は目を見開いた後、表情を和らげて微笑みながら「良き夫に巡り合えて良かった。今宵は楽しむが良い」とお言葉をかけてくださった。
「ロザリア、行こう……」
テオ様が手を差し出してくださって、私はその手を取り、階段を下りる。テオ様は終始穏やかな顔をされて、挨拶を終えた私を労ってくれた。
「緊張しただろう?頑張ったね」
「……はい。陛下にきちんと感謝の気持ちを伝える事が出来て、安心しました。今の私があるのもテオ様と、陛下の温情があったからこそですから……」
リンデンバーグに沢山の民を殺された恨みを持っている者も少なからずいると思う。陛下だってリンデンバーグの人間に良い気持ちは持っていないでしょうし……しかも私は王族。そんな人間を国に迎え入れるというのは、とても抵抗があったはずだわ。
それでも許可してくれたのは、テオ様を信頼してなのかどうなのかは分からないけど…………だから私はどうしてもお礼を言いたかった。
今日それが出来て、胸の痞えが少し取れた気がするわ――
「ロザリア……一人で抱え込まないでくれ。私たちは夫婦なのだから……君があの国の人間だったとしても、私はそれを一緒に背負っていく覚悟で君を妻にと望んだのだから。むしろ私にも背負わせてほしい」
「テオ様、あなたというお方は……私は甘やかされてばかりですね。そんなに甘やかしては我が儘になってしまいます」
「……もっと甘えてくれて構わないのだけどね」
そう言ってウィンクするテオ様を見て、私はつい声を出して笑ってしまった。そんな私たちのやり取りを見て、周りがザワザワしている事には全く気付いていなかった。
「あの冥王と呼ばれるお方が笑っている…………」「ウィンクされていたぞ……」「…………素敵……」
その日の舞踏会で、ベルンシュタット辺境伯が敵国から嫁いできた妻を溺愛している事が貴族中に知れ渡ったのだった。
3
お気に入りに追加
1,043
あなたにおすすめの小説
執着系皇子に捕まってる場合じゃないんです!聖女はシークレットベビーをこっそり子育て中
鶴れり
恋愛
◆シークレットベビーを守りたい聖女×絶対に逃さない執着強めな皇子◆
ビアト帝国の九人目の聖女クララは、虐げられながらも懸命に聖女として務めを果たしていた。
濡れ衣を着せられ、罪人にさせられたクララの前に現れたのは、初恋の第二皇子ライオネル殿下。
執拗に求めてくる殿下に、憧れと恋心を抱いていたクララは体を繋げてしまう。執着心むき出しの包囲網から何とか逃げることに成功したけれど、赤ちゃんを身ごもっていることに気づく。
しかし聖女と皇族が結ばれることはないため、極秘出産をすることに……。
六年後。五歳になった愛息子とクララは、隣国へ逃亡することを決意する。しかしライオネルが追ってきて逃げられなくて──?!
何故か異様に執着してくるライオネルに、子どもの存在を隠しながら必死に攻防戦を繰り広げる聖女クララの物語──。
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞に選んでいただきました。ありがとうございます!】
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる