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第二章
舞踏会への入念な準備
しおりを挟むテオ様と教会で生涯の愛を誓った後、二月後に王宮で王家主催の舞踏会が開かれる事を知った。テオ様はもうドレスを頼んでくださっているみたいで……私は嬉しさと皆にお披露目される緊張が混ざり合って、毎日緊張する日々を送っていた――
「舞踏会にはこの首飾りを着けて行く事が出来ますね!」
エリーナが嬉しそうに言ってくる。15歳の誕生日にテオ様が贈ってくださった首飾りは、大事にジュエリーケースに入れてずっと飾っている状態だったのだけど、ようやく日の目を見る時が来たと言いたいのね。
私としてもその為に使いたいと思っていたので、それについても楽しみで仕方ないわ。
テオ様がどんなドレスを頼んでくれているのかは分からないけど、きっとこの宝飾品たちに似合うデザインに違いないと思うと益々楽しみになっていった。
王家が主催という事で、侍女たちの私の準備に色めき立っていて、毎日お肌の手入れをされて、マッサージや爪の手入れ等…………頭のてっぺんから足先まで美しくなるように磨かれている感じがする――
こんな風に念入りに手入れされた事がなかったので、自分が自分でないような、違う自分に変身しているような感覚だった。
髪もツヤツヤね……爪の形まで美しいし、まだ舞踏会まで一月半もあるのに気合の入りようが凄いわ…………
「舞踏会では陛下や王族の方々への挨拶があるからね……皆気合を入れているのではないかな」
テオ様に皆の様子を話したら、まさかの返答だった。陛下へのご挨拶?………………私は頭が真っ白になってしまう。
「その時にロザリーの事も紹介しようと思っているんだ。陛下も君の事を気にかけてくれているから……元気な姿を見せてあげたくて」
「そうなのですか?」
「ああ…………陛下は元々温厚な方で、争いは好まないお方なんだ。我が国は資源が豊富だし、他国がよく攻撃を仕掛けてくるんだけど、本当は戦いなど望んでいない。私も出来れば平和な世であってほしいと思っているよ……だからリンデンバーグがなかなか引いてくれなくて、やむを得ず制圧するしかなかった」
「…………お父様が引く事はない、ですわね……プライドの塊のような方でしたし、王族として生まれたからには野望のようなモノも持っていたと思います」
今思えば、引き際は沢山与えられていたのだと思う。でもそれはお父様にとっては無理な話だったのよね……愚かな王に振り回されるのは民だと言うのに。
「そうだな。そういうのは一生捨てられないものだろうな……人は簡単には変われない。これからどうしていくのか、陛下も注視している。そのリンデンバーグから嫁いできた君が、我が国でどのように過ごしているのかを気にしておられるのだろう。私が妻に迎えたいと言ったのもあって、興味があるのかもしれないけどね」
私は思わず顔が赤くなってしまう……テオ様が私を妻にしたいと陛下に進言してくれた話は聞いていたけど、出会った時からの運命を感じて顔に熱が集まってくる。
「私は幸運だったのです。テオ様が私を見つけてくださったから……」
「ロザリー、それは私の言葉だよ。君に出会えた私が幸運だったんだ」
膝に乗せた私の肩を抱いて、額にキスをくれる――
「皆様に心配をかけていますし、陛下にもしっかり挨拶しますね」
「私もいるから大丈夫だ。当日はステファニーとヒルドも来るからね」
「ステファニー様とヒルド様は…………」
「ヒルドがステファニーをエスコートする事になっているよ。先日ヒルドに会ってその事を聞いたら、ヒルドがようやくステファニーに申し込んだらしい」
私は思わず顔が輝いてしまった。ついにヒルド様が勇気を出して、ステファニー様に申し込んだのね!
「ステファニー様も嬉しかったでしょうね……」
きっととびきり美しく女神のようなステファニー様が見られそうで、楽しみが増していくわ。
「ヒルドがステファニーの誕生日にジルコンの宝飾品を贈ったらしい。ステファニーの誕生石でもあるけど、ヒルドの色でもあるから、ステファニーも喜んだだろう……その時に申し込んだってヒルドが興奮して話していたよ」
その時のヒルド様の様子を思い出しているのか、テオ様は笑っている。私も想像して思わず笑ってしまった。
「舞踏会も楽しみですけど、お二人を見るのも楽しみです!」
「…………そうだな、でも私としては妻の美しい姿を見る方が断然楽しみだよ。侍女たちが張り切っていると聞いているし、私のドレスを来ているロザリーを見る事が楽しみで仕方ない」
「……もう……プレッシャーをかけないで下さい…………テオ様が15歳の誕生日に贈ってくださった首飾りも着けますので。ようやく着けられる日が来て嬉しくて……」
テオ様は私の片手を持ち上げ、手の甲にキスを落とす……そのまま自身の頬に持っていき、私を見つめてくる――
「舞踏会の為に着飾るのだけど、君を城に閉じ込めておきたい衝動に駆られるよ…………」
「……………………ふふっ私は折角ですから、舞踏会に行きたいです」
テオ様は盛大に溜息をついて「行かせたくないな…………他の者の目に触れさせるなど、気が重い……」
「私は大丈夫です。テオ様の妻として、皆に紹介してください。きっとお役目を果たしてみせます!」
そう言って笑顔を見せると、私を心配して益々盛大な溜息をつくテオ様だった――
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