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 そんな2人の出会いから約3年経ち、シャルルが21歳になったある日、いつものようにオーランドルフ城に来ていた私は、シャルルとリヒャルトの手合わせを眺めながら、いつぐらいに彼女に結婚を申し込もうかと頭を悩ませていた。

 すっかり仲良くなっていたし、もう彼女も年ごろで、いつ縁談が来てもおかしくはない年齢だ。

 リヒャルトと同じく兄としてしか見られていないような気がして、突然他の男がやってきて横から掻っ攫われてしまうのは耐えられないし、自分の中で焦燥感が増していく。


 騎士団に所属する彼女は全く男性の影がなさそうで、恐らく初めてだろうから恋愛事にも疎い感じがして、あまり甘い雰囲気を出すと逃げられてしまいそうな感じがする――――

 変態と言われる事は何とも思わないけれど、逃げられるのは嫌だ。


 モヤモヤと色々と考えていたけれど、その間も二人の手合わせがなかなか終わらないので、私が止める事にしたのだった。


 「はいはい、その辺で終わりにしてお茶にしよう」

 
 二人とも手合わせを止められて不本意な顔でこちらを見つめてくる……シャルルはそんな顔すらも可愛くて困る。

 思わず触れたくなって、彼女の両脇を抱えてリヒャルトから引き離した。


 「な、何をするのです!一人で歩けますので下ろしてください」

 「目を離すとまた剣を握り始めるのだろう?さあ、剣を置いて……」


 ジタバタしている姿も可愛すぎるな……鍛錬後の汗が混じったいい匂いがして堪らない気持ちになってくるのを必死で堪える。

 彼女の匂いは私の雄の部分を刺激してくるので、あまり近づき過ぎるのは危険だった。


 今もシャルルから発してくるいい匂いに私の下半身が反応してしまいそうになっていた。

 彼女と出会ったあの夏の日にもらったタオル、あれの匂いを嗅ぐたびに何度自分を慰めたか分からない。


 洗うと匂いがなくなってしまうと思っていたけど、洗った後も彼女からもらったタオルというだけで興奮出来るのだから、もはや私はシャルルに反応してしまっているのだという事に気付いてしまう。


 女性と出来る限り関わらないようにしていた私が、こんなに一人の女性に欲情する日がくるなんて自分自身に驚きを隠せなかった。

 きっとシャルルは、私のそんな気持ちなど全く気付いていないのだろう。


 いつもは凛とした姿勢であまり表情が崩れない綺麗なこの顔を私のキスでぐちゃぐちゃに崩して、鍛えられた彼女の肉体を私の手でベッドに縫い付けて動けないようにしながら、快楽でグズグズにしたらどんなに――――――


 そこまで妄想して我に返る。

 そしてリヒャルトに「他人と距離感が近い」と指摘され、私の気持ちはだだ洩れしているのだなと感じ、もう自分の気持ちを隠しておく事は不可能だと考えた私は、その日のうちにリヒャルトとオーランドルフ辺境伯と夫人にシャルルとの婚約を直談判したのだった。


 どんな事をしても彼女を手に入れたい。

 まずは彼女の家族から根回しをして、ご両親の了承を得ているとなればシャルルも少しはほだされてくれるのでは……と考えた。

 
 私の熱意が伝わったのか、皆了承してくれたのでホッと胸をなでおろす。


 夫人はもう結婚できないのではと思っていたようで、涙ながらに喜んでくれた。


 しかしシャルルには私自身から申し込む事、彼女の了承を得る事が絶対条件であるとオーランドルフ辺境伯に釘をさされたのだった。
 
 それが一番の難関である事を私は知っていたので、雰囲気のある場所で彼女に申し込もうと色々と考えを巡らせてみるが――――シャルルはあまり女性が喜ぶような事に興味がないのではないか?



 ちょうど1か月後に国王陛下がお生まれになった誕生日にあたる日、王宮で祝賀パーティーが開かれるのを思い出した私は、彼女がそこに出席すると聞いていたので、その日に決行しようと心に決めたのだった。


 当日はとびきりオシャレをしてきてもらいたいと考え、内緒で彼女にドレスを贈る事を辺境伯夫人に相談をすると、またしても泣いて喜ばれてしまう。


 私の色を使ったドレスを着たシャルルに結婚を申し込む。その後は……考えただけで体中が熱くなり、下半身が疼いてきてしまうのを抑える事が出来ない。

 
 その日もシャルルの事を考えただけで元気になってしまった下半身を自分で慰め、当日まで逸る気持ちを必死でおさえながら毎日を乗り切ろうと考えていた――――



 この時の私は彼女に夢中過ぎて、とにかく婚約の話をまとめたい一心だったので、まさかシャルルが隣国への遠征を申請し、なおかつ祝賀パーティーではファーストダンスを他の男に取られるとは微塵も予想しいていなかったのだった。

 


 陛下の生誕祭に現れた私の女神は、想像の遥かに上をいく美しさで、ドレスを贈った事を酷く後悔した。

 貴族の令息たちがシャルルに釘付けではないか――――普段から夜会に全く顔を出さない彼女が注目される事は分かってはいたけど、実際に下心だらけの男どもに囲まれる彼女を目の当たりにするととても平常心ではいられない。


 それなのに私自身も久しぶりの夜会とあって、貴族女性たちに周りを取り囲まれてしまう。


 一刻も早くシャルルの元に向かってダンスを申し込みたいのに、全く身動きが取れない。

 香水の匂いが息苦しい……


 私が何とかこの状況を打破しようともがいていると、一瞬だけ遠くにいるシャルルと目が合った気がしたのに、スッと目を逸らされた……気がした。

 それだけで私は地面に溶けてしまったのではないかと思うくらい、全身の感覚が消え、そこから動けなくなってしまうのだった。


 まさか彼女にこの状況を誤解されたのではないか?
 
 一本気な彼女に遊び人と思われてはと、夜会にも参加せずに辺境伯領へせっせと通っていたのに……これはマズイ、何とかしてこの状況を打破して彼女のもとへ行かなければ。


 ようやく抜け出せたと思ったら、私の目に飛び込んできたのは他の男と楽しそうに踊っているシャルルの姿だった。


 普段から鍛錬を怠らない彼女は体の動きが綺麗で、流れるようなダンスを披露し、会場中の注目を集めてしまっていた。

 一瞬ポーッと見惚れてしまう私だったが、そんな事よりもファーストダンスを奪われた衝撃の方が大きくて、すぐさまリヒャルトのところに向かう。


 「リヒャルト、どういう事だ?なぜシャルルがファーストダンスをあの者と……」

 
 私の気持ちも知っているのにどうしてシャルルのファーストダンスを許可してしまったんだ、と言わんばかりに私が詰め寄ると、焦ったリヒャルトが弁解してくる。


 「いや、俺も無理はするなと言ったんだが…………周りの空気を読んでシャルルが一曲だけ踊ると決めたんだよ。そもそもお前が来るのが遅いから――――」
 
 
 そんな話をしている内に一曲目が終わりそうだったので、急いでシャルルの元へ向かうと、相手の男がまだ踊りたいと誘っているのが見えた。

 一曲だけでもたえられないのに2曲目まで私のシャルルと踊ろうと言うのか?


 イライラは頂点に達し、相手の男に思いきり圧をかけると、あっさりとダンスの相手を変わってもらう事に成功したのだった。


 地位というのはこういう時に有効に使わないとな……私の行動に若干呆れた顔をしているシャルルが目に入るが、彼女を奪い返す事が出来てホッとした私は喜び勇んで彼女とダンスを踊る事にした。
 
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