【完結】匂いフェチの変態公爵様に執着されていると思っていたら、どうやら私フェチだったようです。

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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1.シャルロッテSide※

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 どうしてこんな事になっているのだろうか――――

 国王陛下の生誕祭に来ていたはずなのに



 兄の親友とこんな事になるなんて、想像もしていなかった。
 

 室内には互いの肌と肌がぶつかり合う音、甘い嬌声、淫らな水音が響き渡る。


 大きなガラス窓には自分の蕩けきった顔が映し出され、口からはだらしなく涎を垂れ流し、彼から与えられる快楽に溺れ切っている自分がいた。


 甘い吐息と彼の囁きで脳内はすでに思考を停止してしまっている。


 そんな私に対しておかまいなしに彼からの底なしの愛が刻まれていく。


 
 「もう、私から離れるなんて、言わない?」

 「は、あ、あうっ……いわな、い……あっあっ」

 「絶対だよ……離れるなんて、許さないっ」


 彼に腰を摑まれながら激しく打ち付けられ、責め立てられて、もはや懇願するしかなかった。
 

 「あ、あ、ああっフレド、さまぁ……なんか、キちゃうっ…………おかしく、なる、からっ……もう、ゆるして、あああっ!」

 「シャーリー……シャーリー…………私の可愛い人、愛してるっ…………全部受け止めて…………~~~っ」



 その後まもなく意識を手放した私は、深い眠りに落ちていったのだった。



 ~・~・~・~・~・~



 国王陛下の生誕祭より1か月前



 ――――オーランドルフ城内・修練場――――



 「いいぞ、シャルロッテ!そのまま斬り込んでこい!」


 「やーっ!!」


 ――――ガギィィンッ――――


 修練場に剣と剣のぶつかり合う音が響き渡る。

 オレンジブラウンの美しい髪を高く結い上げたスラリと背の高い女性と、同じくオレンジブラウンの短い髪で相手の女性よりもう一回り背が高く胸板が厚い、見るからに強靭な肉体を持った男性が手合わせしていた。

 
 そしてその周りをオーランドルフ騎士団の面々が、固唾を飲んで見守っている。


 この修練場ではよく見る日常ではあるが、二人の手合わせの剣圧や気迫は物凄いので、毎回騎士団の者達は二人の剣技に見惚れてしまいながらも圧倒されてしまうのだった。


 「今の斬撃はなかなかのスピードだったぞ……っ」

 「お兄様こそ……少し反応が鈍ったのではなくて?」


 剣と剣を合わせながら会話をしているが、凄まじい剣圧を放っているので周りの者達は修練場が壊れやしないかと緊張感を持って見守っていた。


 「はいはい、その辺で終わりにしてお茶にしよう」


 その緊張をいとも簡単に解いてしまうひと声を放ったのは、アイスブルーの瞳に同じ色のゆったりとした髪をなびかせた美しい男性だった。


 「アルフレッド……せっかくいいところなのに止めてくれるなよ」

 「そうですわ。お兄様との手合わせが私の楽しみでもありますのに、水を差さないでください」


 二人とも心底迷惑そうに声の主に答える。
 

 「カレフスキー公爵閣下、あのお2人を止めてくださってありがとうございます。我々では間に入る事など到底出来ずにただ見ているだけしか出来ませんので……」

 「レンドン副隊長も大変だね、あんな兄妹が部隊の隊長に君臨していたら誰も止められないだろうに」

 「察していただき、言葉もありません」

 「……という訳で2人とも、そろそろ終わりにして休憩にしようではないか」

 「「……………………」」


 レンドン副隊長の気持ちも分からないわけではないけど、せっかく今日はお兄様がお休みで朝から稽古をつけてくれると言ってくれたのに。

 そう思うと私はなかなか納得できずに剣を離す事が出来ずにいた。
 

 すると業を煮やした閣下が修練場に足早にやってきて、私の両脇を抱えてお兄様から引き離し、そのまま修練場の剣置き場へと連れて行かれるのだった。


 「な、何をするのです!一人で歩けますので下ろしてくださいっ」

 「目を離すとまた剣を握り始めるのだろう?さあ、剣を置いて……」


 そうしないと下ろさないと言わんばかりに両脇を抱えられているので「分かりました」と言うと、ようやく下ろしてもらえた。

 
 「お前も過保護だなぁ。いくら俺の妹だからってそこまでする必要はないんだぞ」

 「リヒャルト、シャルルは女性なのだから、もう少し丁寧に扱わないと……」

 「私にそのような気遣いは無用です。オーランドルフ騎士団の隊長たるもの、そのように扱われるのは――――っぐ」


 私が騎士たる者はと語り始めると、カレフスキー公爵閣下は私の頭の上に自身の顎を乗せ、思い切り体重をかけてくるので話が止まってしまう。

 これでは頭が下がってきて話せないわ。分かっていてやっているのね……


 「閣下…………重いのですがっ」

 「ふふっこの程度で重いと言っているようでは、まだまだだね」


 挑発とも取れる言葉をかけられ、思わず対抗意識を燃やしてしまった私は、閣下の重さにどこまで耐えられるかという実にくだらない勝負を受けてしまったのだった。


 「それにしても…………修練後のいい匂いがする……」


 頭上から気味の悪い言葉が聞こえてくるけど、これはいつもの事で、この公爵閣下は人の匂いが好きな匂いフェチなところがあるのだ。


 私が初めてカレフスキー公爵閣下と言葉を交わした時、成り行きで使っていたタオルを貸したところ、とてもいい匂いがすると感激していたのだった。

 それ以来私の匂いがとても好きだと言い出し、何かにつけて距離が近い。


 このお方はお兄様と同い年の親友であり、彼が23歳で閣下のお父上が亡くなって公爵位を継いでから、この辺境伯領の我が城によくやって来るようになった。

 若くして爵位を継いだので何かと大変な事も多いようで、色々とお父様やお兄様と仕事の話をしたり、我が家が相談に乗る事も多々あるようだ。


 時にはお兄様と手合わせをしている姿を見る事もあるのだけど、閣下の見た目だけは本当に美しいから流れる汗にまで城の侍女達がうっとりしているのを見た事がある。

 あんなに澄ました顔をしている人物が、実は匂いフェチな事を彼女達は知っているのかしら。


 彼を見る侍女達の表情が恍惚としていて、きっと知っても構わないくらいの勢いだなと呆れたのを覚えている。
 

 そんな中で本当に我が城に頻繁に来るものだから私とも自然と話すようになったのだ。

 かれこれ3年ほどの付き合いともなると距離が近くなるのは必然なのだけど、修練後にスキンシップをしながら私の匂いを堪能する姿はもはやペットや何かと勘違いされているような感じもするし、女性とは思われていないのだろうなと感じるほどに近くて…………


 さっきみたいに「シャルルは女性なのだから」なんて言われるとは思っていなかったな。


 予想外の言葉に少し顔に熱が集まってくる。


 あまり男性に免疫のない私にとっては、この距離の近さは慣れないし閣下が見た目だけはいいものだから、本当に止めてもらいたい。

 さっさといい匂いの妻でももらって落ち着けばいいものを――――


 閣下が見知らぬ女性と2人でいて、匂いを嗅いでいるところを想像する…………すると少し胸にモヤがかかったような気がした。

 きっとお兄様との手合わせを止められて、閣下の好きにやられているからイライラしているだけだろう。


 いつまでも頭に顔が乗って匂いを嗅がれている状態に私の方が耐えられなくなって、彼の顎をグイッと押しのける。

 なんと言っても閣下はお兄様よりも背が高いので、私など彼から見たら子供のように見えるのだろう。


 「いつまで乗せているのですか。そして嗅がないでください。こういう事は婚約者でも作って、その方にするべきです。閣下は距離が近すぎます」

 「うーん、そろそろ閣下じゃなくてアルフレッドと呼んでほしいのだけど」


 その発言にドキリとしてしまい、閣下の目を何故か見られない。

 幼い頃からお父様やお兄様に憧れて騎士になる事を夢見て生きてきた私にとって、男性との交流には全く興味がなく、名前を呼び合う仲の男友達すらいなかった。

 騎士団の中にそれなりに仲のいい男性もいるけど、身分の違いから遠巻きにされて友達のような関係になる事はなかったし、私が女性としては大きい事もあって女性扱いされた記憶もない。


 それなのにこのカレフスキー公爵閣下は、そんな私との距離をいとも簡単に詰めてくるのがちょっとどころではなく苦手だった。

 この人の前ではいつもペースが乱される…………そしてそんな私にお兄様が衝撃の言葉を発する。
 

 「ははっ確かにアルフレッドは他人と距離感が近いかもしれない。誤解する人間もいるから止めておけよ」


 …………距離が近いとは思っていたけど、薄々そういう人なのかなと思ってはいたけど、やっぱりそうなの?


 3年ほどの付き合いがあるから、こんな事をしている女性は私だけかと思い込んでいた…………私の勘違いだったとは。

 もともと軽い雰囲気がある人だから女性経験が豊富なんだろうなと思ってはいたけど、お兄様の言葉を聞いて妙に衝撃を受けている自分がいる。


 は、恥ずかしい…………自分が特別だと思い込んでいたなんて。


 他の女性にもそういう感じの閣下を想像すると、何とも言えないモヤが心にかかって2人の話に入っていく事が出来ない。


 「ふむ、そうだな。その辺は考える必要があるかもしれない。そうだ、リヒャルト、君のお父上にも相談があるのだけど……」

 「分かった、父上は執務室にいるから来てくれ」

 「ありがとう。邪魔したねシャルル、また来るよ」


 そう言って私の頭にポンッと手を置いて、颯爽と去って行ってしまう――――やっぱり子供枠よね。


 あんなに美しい人だもの、女性が放っておくはずがない。

 このくらいのスキンシップは彼の中では当然なんだ。


 私は自分が自意識過剰だった事がとても恥ずかしくて堪らなくなり、閣下の後ろ姿から目を逸らして急いで自室へと戻っていったのだった。

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