幽霊鬼ごっこ

西羽咲 花月

文字の大きさ
上 下
9 / 12

信一の家

しおりを挟む
 そして安息日になりました。
 今日は冒険者服を買いに行く予定だけど、午前中はまたバーボルド伯爵領の教会の治療施設に向かう事になりました。
 今日は、イストワールさんだけでなくシャンティさんも慰問に同行する事になりました。
 みんなで馬車に乗って、教会に向かいます。

 パカパカパカ。

「今日も、沢山の人が街を歩いていますね。人だかりが凄いです!」
「それだけ、このバーボルド伯爵領が賑わっていてとても嬉しいですわ」
「市場も商店も本当に忙しそうにしていて、その分私達も頑張らないとっておもいますわよ」

 シロちゃんをイストワールさん、ユキちゃんをシャンティさんが抱っこしているけど、何だか久々に誰も僕のところにいなくて手持ち無沙汰になっちゃった。
 僕も馬車の窓から外を見るけど、安息日なのに本当に忙しく人が歩いていますね。
 という事で、無事に馬車は教会に到着しました。
 まずは挨拶をするので、教会の中に入ります。

「これはこれは皆さまお揃いで、ご足労をおかけいたします」
「こちらこそ、日々民のために色々と尽力頂き感謝申し上げます」

 おおー、イストワールさんがニコリとしながら威厳を持って話をしたよ。
 僕もシロちゃんもユキちゃんも、思わず拍手をしちゃった。
 この後は、予定通りに治療施設に移動します。

「わあ、もう多くの人が入院しているんてますね」
「風邪の流行は落ち着いてきたのですが、怪我人が多く出ています。どうも、先ほど街道で多くの魔物が出たそうですよ」

 シスターさんの言葉を聞いた瞬間、イストワールさんとシャンティさんはビックリした表情に変わりました。
 そして、直ぐに護衛の兵に何かを指示していました。

「レオ君、もしかしたら怪我人が増えるかもしれないわ」
「あの、僕が戦わなくて良いんですか?」
「バーボルド伯爵領の兵はとても強いから大丈夫よ。万が一の時は、レオ君に助けて貰うわ」

 ちょうどタイミング的に、さっき魔物が現れたのかもしれない。
 となると、今は目の前の怪我人を頑張って治療しないと駄目だね。
 よーし、頑張るぞ。
 さっそく僕たちは、それぞれ別れて治療を始めます。

 シュイン、ぴかー。

「これで、胸のつっかえは良くなったと思いますよ」
「あら、本当に良くなっているわ。流石は、黒髪の天使様ね」

 今日はユキちゃんが一頭で動けているので、僕とシロちゃんも付きっ切りじゃなくてすみます。
 なので、どんどんと入院患者の治療が進んでいきます。

「奥様、若奥様、黒髪の天使様は今日も物凄い勢いで治療していきますわ」
「まあ、レオ君ですから、このくらいはやりますわよ」
「そうですわね。今朝の訓練でも、気持ちよさそうに空を飛んでおりましたわ」
「はっ? 空を、飛んだ?」

 あっ、シャンティさんが今朝の訓練で飛行魔法を使ったと言ったら、付き添いの年配のシスターさんがポカーンとしちゃった。
 全員の治療が終わったら、飛行魔法を見せてあげないと。
 こうしてみんなで分担したので、あっという間に治療施設に入院している人の治療が終わりました。
 僕達は治療施設の前にある、ちょっとした芝生のあるスペースに移動します。
 ここで、僕とシロちゃんが使う飛行魔法を見せてあげる事にしました。

「クゥーン……」
「ユキちゃんも、頑張れば飛行魔法を覚えられるよ」
「キューン……」

 ユキちゃんはまだ魔法を覚えて直ぐなので、もっと頑張って訓練をしないと飛行魔法は使えないね。
 ちょっとしゅんとしちゃったけど、これから頑張ればきっと大丈夫です。
 という事で、さっそく飛行魔法を使います。

 シュイン、ふわっ。

「あ、あわわわわ。黒髪の天使様が宙に浮きましたわ」

 えっと、宙に浮いただけで、もうシスターさんが驚愕の表情に変わっちゃった。
 だ、大丈夫かな?
 僕とシロちゃんはそう思いながら、一分間だけ飛行魔法を使いました。

 ヒュン、ヒュン!

「す、凄い。本当に空を飛んでおりますわ。飛行魔法は、失われた魔法と聞いておりました……」

 そして、シスターさんは空を飛ぶ僕とシロちゃんを見て再びポカーンとしちゃいました。
 飛行魔法は難しいだけで、失われた魔法じゃないんだけどね。

「ふう、こんな感じです。今日は近くで戦いが起きているって聞いたので、魔力を残すためにこのくらいにしました」
「さ、流石は黒髪の天使様。何事もなかったの様にしておりますわ」

 あの、シスターさんが僕の方を向いて手を組んで祈り始めているのですが。
 僕だけでなくイストワールさんとシャンティさんも、そんなシスターさんの姿を見て思わず苦笑しちゃいました。
 すると、イストワールさんのところに兵がやってきました。

「報告します、魔物は全て撃退しました。倒したのは、オオカミの魔物となります。ただ、怪我人が複数出ております」
「そう、ありがとう。レオ君がいるから、怪我をした守備隊員を運んで頂戴」
「はっ」

 無事に魔物退治が終わったんだね。
 これから治療第二段を頑張らないと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友梨奈さまの言う通り

西羽咲 花月
児童書・童話
「友梨奈さまの言う通り」 この学校にはどんな病でも治してしまう神様のような生徒がいるらしい だけど力はそれだけじゃなかった その生徒は治した病気を再び本人に戻す力も持っていた……

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

人食い神社と新聞部

西羽咲 花月
児童書・童話
これは新聞部にいた女子生徒が残した記録をまとめたものである 我々はまだ彼女の行方を探している。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

【完結】だるま村へ

長透汐生
児童書・童話
月の光に命を与えられた小さなだるま。 目覚めたのは、町外れのゴミ袋の中だった。 だるまの村が西にあるらしいと知って、だるまは犬のマルタと一緒に村探しの旅に出る。旅が進むにつれ、だるま村の秘密が明らかになっていくが……。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

命令教室

西羽咲 花月
児童書・童話
強化合宿に参加したその施設では 入っていはいけない部屋 が存在していた 面白半分でそこに入ってしまった生徒たちに恐怖が降りかかる! ホワイトボードに書かれた命令を実行しなければ 待ち受けるのは死!? 密室、デスゲーム、開幕!

処理中です...