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日記
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ガチャッと音がして重たいカギが開く。
修が銀色のドアノブに手を伸ばして、それを勢いよく開いた。
奥に現れたのは前回みたのと同じ和室だった。
相変わらず中は埃っぽく、空気の流れと共に埃が外に舞出てくる。
修が自分の口に手を当てて何度か咳払いをした。
一歩部屋に足を踏み入れ、手探りで電気をつける。
天井のLEDライトがパッと周囲を照らし出す。
「和室か」
明るくなって初めて気がついたように修が呟く。
畳の色は古く、茶色くなっていてところどころが毛羽立っている。
その上には破れた御札が落ちていた。
初日に私達が破いてしまったものだ。
あのときは暗くて部屋の状態がよくわからなかったけれど、今ならしっかりと確認することができる。
部屋の奥、窓辺には机がひとつ置かれていて、入って右手には襖がある。
カーテンには他の部屋とは違う、分厚い遮光カーテンが下げられているのがわかった。
ここの部屋の窓は施設の裏側に位置しているから、それほど日光が入ってくるとも思えないけれど、どうしてだろう?
不思議に感じて近寄り、カーテンにふれる。
しっかりとした手触りのカーテンがふわりと揺れたとき、その奥になにかが見えた。
「なんだろう」
ひとり呟いてカーテンを開ける。
すると窓にはビッシリとお守りが貼り付けられいたのだ。
窓のすべてを覆い隠すように貼られた無数の御札に「キャア!」と悲鳴を上げて飛び退くと、そのまま尻もちをついてしまった。
「なんだよこれ」
修もその異様な光景に唖然としている。
「御札はドアだけじゃなかったんだ」
畳に落ちている破れた御札に視線を落として呟く。
こんなにも頑丈に出入り口を塞ぐように御札がはられているということは、なにか重大なことが起こったに違いない。
私はゴクリと唾を飲み込んでどうにか立ち上がる。
「これだけ頑丈に御札が貼られてるのに、ドアには一枚だけか……」
修が考え込むように手で顎を触れた。
そして和室の中を歩き回る。
なにかわかるのかもしれない。
緊張しながら修の答えを待っていると、修がドアに向き直って動きを止めた。
「もしかして」
そう呟いて部屋から出る。
「待って!」
私は慌ててその後を追いかけた。
この部屋にひとりでいるなんて絶対に嫌だった。
修と共に廊下へ出ると、修はしきりにドアを気にし始めた。
ドアを少しだけ開けて、腕を差し入れたりしている。
そして大きく息を吐き出した。
「なにかわかったの?」
聞くと修は大きく頷いて見せた。
「御札がドアの内側に貼られていたなら、部屋の中に人がいたんだと思ってた。でも、違うかもしれない」
「どういうこと?」
部屋の中に誰もいない状態で御札を貼ることができるとは思えなくて、首をかしげる。
「1枚のお札を貼るだけなら、腕を伸ばせば届くんだ」
そう言って修はもう1度ドアの隙間に自分の腕を突っ込んで見せた。
腕は関節部分までするっと部屋に入る。
これだけ腕を差し込むことができれば、ドアに御札を貼ってからカギを閉めることは容易いことだ。
「御札の裏はシールみたいになってるから、半分をドアに貼り付けて、締めるときにもう半分が壁にくっつくようにすればいい」
説明しながら修はドアの隙間に指だけ突っ込んで、再現して見ている。
これが指でなくてもっと細いものなら、隙間から御札を壁に押し付けることも可能だ。
たとえばものさしとか。
そう考えて私はゆるく息を吐き出した。
ここは勉強合宿で使われている施設だから、それくらいの道具なら沢山ある。
「つまり、中には誰もいない状態で御札が貼られたってこと?」
「おそらくはね」
修は小さく息を吐き出してドアを開いた。
無理やりにでもドアに御札を貼りたかった。
そうしないといけない理由があったということだ。
再び和室に足を踏み入れた私達は今度は部屋の中を調べてみることにした。
といっても、調べられる場所は限られている。
窓の前に置かれている机と、襖の中くらいだ。
私はまっすぐに机へと向かった。
最初にこの部屋に入ったときも、たしかこの当たりで人のうめき声を聞いた気がする。
またあの声が聞こえてきたらと思うと恐怖で硬直してしまいそうになるけれど、どうにか気持ちを奮い立たせる。
まずは一番上の引き出しに手をかけて、勢いに任せて開けた。
中にはなにも入っていない。
少し埃が舞い上がったくらいだ。
次の引き出しにも、その次の引き出しにも何も入っていない。
一番下の大きな引き出しに手をかけたとき、ガッと音がして引き出しの動きが止まった。
「カギがかかってる」
学生机には珍しく、一番下の大きな引き出しにカギ穴があるタイプのものだ。
「ちょっと、どいて」
机のカギくらいなら簡単に開くと考えたのか、修が私と場所を変わった。
そのまま力づくで引き出しを開こうとしている。
ガタガタと上下に揺らしてみたりしているけれど、そう簡単には開かないようだ。
「カギを探さないとダメみたいだね」
そう言って部屋の中を見回してみるけれど、探す場所はもうほとんどない。
私は襖に手をかけて横に引いた。
襖の中には沢山の布団が山積みにされていて、思わず飛び退いた。
「昔はこの部屋もちゃんと宿泊場所として使われてたんだろうな」
修が私の後ろに移動してきて呟く。
「そうだね。とにかくカギを探さなきゃ」
これだけ布団があっても、探すのはすぐに終わる。
私は布団の山に手をかけて、一気に引きずり出したのだった。
☆☆☆
それから数分後、私達は殻になった押し入れの中の確認していた。
布団はすべて出し切ったけれど、カギらしいものは見つけられなかった。
もしかしたらこの部屋の中にはないのかもしれない。
「事務室にあるのかもしれないな」
この部屋にカギがないとすれば、次に可能性が高いのは事務室だ。
けれど、机のカギは部屋のカギほど厳重に扱われてはいなかっただろうから、最悪紛失している可能性もある。
私は奥歯を噛み締めたくなる気持ちをグッと押し殺した。
「本当にこの引き出しにヒントや答えがあるのかな」
どうしても開くことのない引き出しへ視線を向けて呟く。
「それしかないだろ?」
「でも、ここまでなにもないガランとした部屋なんだよ? 御札を貼る前になにもかも持ち出してるかも」
ここでなにが起こったのかはわからない。
でも、御札を貼って、入るなと注意されるくらいには誰にも近づけたいない場所なんだ。
そんな場所に、いわくつきのものをいつまでも置いておくとも思えない。
本当はもうヒントなんて残されていなくて、とっくに供養されたりしているんじゃないだろうか?
そんなネガティブな感情が湧き上がってくるのはきっと、もう疲れ切っているからだ。
一刻も早くここから出たいという気持ちと、諦めの気持ち。
私は今その間に立たされている。
「なにかがあるから、カギがかけられたままなんだ」
それでも修はまだ希望を捨てていない。
私は下唇を噛み締めてキツク目を閉じた。
カギがかかったままの金庫を開けてみても、中は空だったという話は嫌というほど聞いたことがある。
今回だってそれと同じじゃないか。
そんな気持ちが湧いてくるけれど、どうにか自分の中に押し込めた。
修と喧嘩はしたくない。
「……そうだね。ネガティブなことを言ってごめん。もう1度、よく探してみよう」
それから私達は布団にかけられているシーツ一枚一枚を外して確認する作業を始めた。
もしかしたらシーツの中に紛れ込んでいるかもしれない。
限りなくゼロに近い可能性でも、試してみることになったのだ。
けれど、どれだけ探してみてもカギはどこからも出てこない。
すべてのシーツを外し終えて、私と修はその場に座り込んでしまった。
「やっぱり、事務室かな」
そう言う修の顔には疲れが滲んできている。
決して後ろ向きな発言はしない修だけれど、実は誰よりも疲弊しているのかもしれない。
「そうかもしれないね。探してみなきゃ」
口ではそういうものの、すぐに動くことはできなかった。
今日は朝からなにも食べていないし、体力的にも限界だ。
「ちょっと、休憩してからにしない?」
どんなに食欲がなくたって、スープくらい口にしないといけない。
少しでも口になにかを入れれば気分も変わるはずだ。
私の提案に修は「そうだな」と頷いた。
食堂へ向かうために立ち上がろうとした、そのときだった。
机の下にキラリと光るなにかがあることに気がついて私は動きを止めた。
「どうした?」
「なにかあるみたい」
早口に説明すると、修が畳に頬をこすりつけるようにして机の下を確認した。
そこには確かにキラッと光るものがある。
私達は座り込んだ状態で目を見合わせた。
まさか!
勢いよく立ち上がり、協力して机を少しずつズラしていく。
中身の入っていない机は簡単に動かすことができた。
埃に塗れた机の下から出てきたのは小さなカギだ。
「あった!」
今までの疲労が嘘のように吹き飛んでいく。
私は飛びつくようにしてカギを握りしめた。
まとわりついている埃を手で払えば、ちょうど引き出しの鍵穴に入りそうな小さなカギが姿を見せた。
「よし! やったぞ!」
修がガッツポーズを取る中、私はすぐに引き出しにカギを入れた。
案の定、カギはすんなり鍵穴に入って、回すとカチャリと音を立てた。
開いた!
引き出しを引いて中を覗き込んでみると、そこには一冊のノートが置かれていた。
ごく普通の大学ノートで、ずっと暗闇の中にいたためかそれほど劣化もしていない。
修が壊れ物のようにそっとノートを取り出して、畳の上に置いた。
「名前が書いてあるけど、見えないな」
そのノートには5年1組と書かれた横に誰かの名前も書かれていたようだけれど、名前の部分はかすれてしまって読めなくなっていた。
「5年ってことは、小学生だよね?」
文字も、それくらい幼いものに見えた。
「この施設は幅広く使われてるみたいだからな」
修は頷いてそう言った。
「でも、どうしてこのノートはここに残ってたんだろう? 他のものはほとんど何も残されてないのに」
あったのは最初からこの部屋にあったのだろう、布団と机だけだ。
個人を特定するようなものは、このノートしかない。
「きっと、この引き出しに入れてカギをかけたのは、この小学生の子なんだろうな。カギを見つけられないように机に下に隠したんだ」
誰にも見つけられないようにしたということだ。
それくらい大切なことがこのノートには記されている。
私はゴクリと唾を飲み込んでノートを見つめた。
名前が読めなくなってしまったその子のことを考えながら、ゆっくりとページを開く。
そこには日付と、ちょっとした出来事が記されていた。
【7月30日。
今日から3泊4日の合宿!
空気のいい場所だから、ぜんそくがよくなるかもしれないって、お母さんが言ってた。
昼間はみんなで勉強をして、夜からはキャンプファイヤーをした。
みんなで作ったカレーはとってもおいしかった!】
「日記か?」
修が呟く。
どうやら、これは小学生の日記みたいだ。
「ここへ来てから書き始めたんだろうね。合宿の思い出を残そうと思ったのかも」
答えながら私は文字を何度も見つめる。
子供らしい文字で書かれた文章の中から、この子が喘息持ちだったことがわかる。
空気のいい山の中の合宿に来ることを母親も賛成していたようだ。
でも、ここにくるまでに山道を歩かないといけなかっただろうから、それはこの子にとって大変なことだっただろう。
日記はそれに触れることはなく、楽しかった思い出が綴られている。
私は更に日記を読み勧めた。
【カレーを食べた後でみんなは遊んでたけど、僕はぜんそくの発作が出たから休んでた。
先生がずっとついていてくれたから、辛くはなかった。】
「男の子だ!」
やっと日記の主の性別がわかって思わず声をあげる。
僕という一人称から判断するには早すぎるかもしれないけれど、おそらく間違えてはいないだろう。
この日記は書いた子は小学5年生の男の子だ。
【7月31日。
2日目の今日は朝から勉強ばっかり。
僕は苦手な算数をずっとやらされて、途中から頭が痛くなっちゃった。
先生が『今晩ちえねつが出るかもね』って言ってきて、なんのことかわからなかったから質問したら『一生懸命がんばった子に出る熱だよ』って教えてくれた。
僕は今日すごく頑張ったから、きっと熱が出ると思う。】
2日目の日記にも先生のことが書かれている。
きっとこの子は先生のことが大好きだったんだろう。
苦手な算数を教わりながら先生に甘えている様子が浮かんでくるようだ。
「苦手科目は算数か。歩と一緒だな」
「私は数学だもん」
言い返すと修は軽く笑い声を上げた。
算数と数学では天と地ほどの差があると思っているのだけれど、修からすればどんぐりの背比べなのかもしれない。
それにしても、ここに来てから久しぶりに修の笑い声を聞いた気がする。
私はつられて笑う。
日記を発見したことで少し前進した。
だから心に余裕が生まれたのかも知れない。
【先生が言うちえねつは出なかったけれど、夜からやっぱりぜんそくが出た。
お母さんは空気がいい場所ではぜんそくも良くなるって言ってたけど、違うのかも。
お母さんでも間違えることがあるのかもしれない。】
少年は2日目も喘息の発作で苦しんだようだ。
もちろん薬などは持ってきているだろうけれど、仲間と参加する合宿で力を発揮できないのは辛いことだろう。
「先生のこととお母さんのことしか出てこないな」
「それがどうかしたの?」
首を傾げて聞くと修は眉間にシワを寄せた。
「お父さんがいるかどうかは別として、合宿に来ているんだから友達のことが書かれていてもいいのにと思ったんだ」
「あっ」
そう言われればそうかもしれない。
初日はキャンプファイヤーをしたと書かれていたけれど、具体的な内容は書かれていなかった。
友達の誰と遊んだとか、一緒に勉強したとか、そういう内容ではなかった。
それどころか【みんなは遊んでたけど、僕はぜんそくの発作が出たから休んでた。】と、書かれていたのだ。
そして少年が喘息で休んでいたときに一緒にいたのは、友人ではなく、先生だった。
遊びたい盛の子供にとっては、少しひっかかることかもしれない。
【8月1日。
合宿最終日。
今日で終わりかぁと思って、外で日記を書いてたら、クラスの子に声をかけられた。
みんなが僕に話しかけてくれることなんてあまりないから、嬉しくて、「ついてこい」って言われて素直にしたがった。
そしたら、この部屋に入れられちゃった。】
合宿最終日の日記にしていきなり雰囲気が変化している。
私は自分の心臓が早鐘を打ち始めるのを感じていた。
このまま日記を読み勧めていいのかどうかわからない。
これ以上読むと、この少年のプライバシーを侵害してしまうことになるんじゃないかと、不安になる。
だけど、読み進めないとここでなにがあったのかもわからないままだ。
「大丈夫?」
私は呼吸することも忘れてしまっていることで、修が心配そうに顔を覗き込んできた。
「無理そうなら、ここから先は俺1人で読むけど」
修の優しさについ甘えてしまいそうになる。
だけど私は左右に首を振った。
「大丈夫。私も一緒に見る」
自分だけ逃げるわけにはいかない。
初日にこの部屋に入ってしまったのは修ではなく、私なんだから。
「そっか。無理はしなくていいから」
私は頷き、そしてまた少年の日記に視線を落としたのだた。
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【この部屋は和室で、あまり使われてないみたい。
外からみんなの声が聞こえてくる。
「下山するときにお前がいたらじゃまなんだよ」って言ってる。
やっぱり、そうだったんだ。
山を登っているときも僕だけ遅れてたから、みんなめいわくしてたんだ。】
やっとクラスメートの話題が出てきたと思ったら、それは胸が苦しくなるような内容だった。
【ドアが何度もけられて、すごい音がしてる。
僕は怖くて、布団を出してくるまってる。
とても暑いけど、音を聞いていたくない】
真夏に布団をかぶらなければならなかった少年の心境に胸がチクチクと痛くなる。
少年が他の人と同じようにできないのは病のせいなのに、それが理解されない世界にいたんだ。
【音が止まった。
でも、ドアが開かない。
もしかして閉じ込められたのかな?】
閉じ込められたという文字を見た瞬間息を飲んでいた。
真夏にこんな部屋に閉じ込められた?
冷暖房もなく、外に連絡を取る手段もない部屋に?
【暑い。息が苦しい】
少年の文章が乱れてきた。
今までは罫線にそって丁寧に書かれいた文字がブレで、罫線からはみ出している。
【発作が出てきた。でも薬をもってない。誰か】
その文字は苦痛に歪み、指で擦れてしまっている。
ノートのあちこちにシミができていて、それは少年が苦しんで流した涙のあとだということがわかった。
「日記はここで終わってる」
修がノートを何度もめくって確認している。
これが少年が最後に残したメッセージだったのかもしれないけれど、わからない。
この施設で誰かが死んだとか、そういう話はまだ聞いたことがなかった。
「私達これからどうすればいいの?」
私の声は自分でもびっくりするほど震えていた。
自分ではその震えを止めることができない。
「この子について調べよう」
「でも、名前もわからないのに、どうやって?」
「事務所にいけば、施設の利用者ファイルがあるかもしれない」
そう言って修が立ち上がる。
その足が少しふらついていた。
修も、この部屋で起きた悲惨な出来事に動揺しているんだ。
私は奥歯を食いしばって立ち上がり、修と共に部屋を出たのだった。
修が銀色のドアノブに手を伸ばして、それを勢いよく開いた。
奥に現れたのは前回みたのと同じ和室だった。
相変わらず中は埃っぽく、空気の流れと共に埃が外に舞出てくる。
修が自分の口に手を当てて何度か咳払いをした。
一歩部屋に足を踏み入れ、手探りで電気をつける。
天井のLEDライトがパッと周囲を照らし出す。
「和室か」
明るくなって初めて気がついたように修が呟く。
畳の色は古く、茶色くなっていてところどころが毛羽立っている。
その上には破れた御札が落ちていた。
初日に私達が破いてしまったものだ。
あのときは暗くて部屋の状態がよくわからなかったけれど、今ならしっかりと確認することができる。
部屋の奥、窓辺には机がひとつ置かれていて、入って右手には襖がある。
カーテンには他の部屋とは違う、分厚い遮光カーテンが下げられているのがわかった。
ここの部屋の窓は施設の裏側に位置しているから、それほど日光が入ってくるとも思えないけれど、どうしてだろう?
不思議に感じて近寄り、カーテンにふれる。
しっかりとした手触りのカーテンがふわりと揺れたとき、その奥になにかが見えた。
「なんだろう」
ひとり呟いてカーテンを開ける。
すると窓にはビッシリとお守りが貼り付けられいたのだ。
窓のすべてを覆い隠すように貼られた無数の御札に「キャア!」と悲鳴を上げて飛び退くと、そのまま尻もちをついてしまった。
「なんだよこれ」
修もその異様な光景に唖然としている。
「御札はドアだけじゃなかったんだ」
畳に落ちている破れた御札に視線を落として呟く。
こんなにも頑丈に出入り口を塞ぐように御札がはられているということは、なにか重大なことが起こったに違いない。
私はゴクリと唾を飲み込んでどうにか立ち上がる。
「これだけ頑丈に御札が貼られてるのに、ドアには一枚だけか……」
修が考え込むように手で顎を触れた。
そして和室の中を歩き回る。
なにかわかるのかもしれない。
緊張しながら修の答えを待っていると、修がドアに向き直って動きを止めた。
「もしかして」
そう呟いて部屋から出る。
「待って!」
私は慌ててその後を追いかけた。
この部屋にひとりでいるなんて絶対に嫌だった。
修と共に廊下へ出ると、修はしきりにドアを気にし始めた。
ドアを少しだけ開けて、腕を差し入れたりしている。
そして大きく息を吐き出した。
「なにかわかったの?」
聞くと修は大きく頷いて見せた。
「御札がドアの内側に貼られていたなら、部屋の中に人がいたんだと思ってた。でも、違うかもしれない」
「どういうこと?」
部屋の中に誰もいない状態で御札を貼ることができるとは思えなくて、首をかしげる。
「1枚のお札を貼るだけなら、腕を伸ばせば届くんだ」
そう言って修はもう1度ドアの隙間に自分の腕を突っ込んで見せた。
腕は関節部分までするっと部屋に入る。
これだけ腕を差し込むことができれば、ドアに御札を貼ってからカギを閉めることは容易いことだ。
「御札の裏はシールみたいになってるから、半分をドアに貼り付けて、締めるときにもう半分が壁にくっつくようにすればいい」
説明しながら修はドアの隙間に指だけ突っ込んで、再現して見ている。
これが指でなくてもっと細いものなら、隙間から御札を壁に押し付けることも可能だ。
たとえばものさしとか。
そう考えて私はゆるく息を吐き出した。
ここは勉強合宿で使われている施設だから、それくらいの道具なら沢山ある。
「つまり、中には誰もいない状態で御札が貼られたってこと?」
「おそらくはね」
修は小さく息を吐き出してドアを開いた。
無理やりにでもドアに御札を貼りたかった。
そうしないといけない理由があったということだ。
再び和室に足を踏み入れた私達は今度は部屋の中を調べてみることにした。
といっても、調べられる場所は限られている。
窓の前に置かれている机と、襖の中くらいだ。
私はまっすぐに机へと向かった。
最初にこの部屋に入ったときも、たしかこの当たりで人のうめき声を聞いた気がする。
またあの声が聞こえてきたらと思うと恐怖で硬直してしまいそうになるけれど、どうにか気持ちを奮い立たせる。
まずは一番上の引き出しに手をかけて、勢いに任せて開けた。
中にはなにも入っていない。
少し埃が舞い上がったくらいだ。
次の引き出しにも、その次の引き出しにも何も入っていない。
一番下の大きな引き出しに手をかけたとき、ガッと音がして引き出しの動きが止まった。
「カギがかかってる」
学生机には珍しく、一番下の大きな引き出しにカギ穴があるタイプのものだ。
「ちょっと、どいて」
机のカギくらいなら簡単に開くと考えたのか、修が私と場所を変わった。
そのまま力づくで引き出しを開こうとしている。
ガタガタと上下に揺らしてみたりしているけれど、そう簡単には開かないようだ。
「カギを探さないとダメみたいだね」
そう言って部屋の中を見回してみるけれど、探す場所はもうほとんどない。
私は襖に手をかけて横に引いた。
襖の中には沢山の布団が山積みにされていて、思わず飛び退いた。
「昔はこの部屋もちゃんと宿泊場所として使われてたんだろうな」
修が私の後ろに移動してきて呟く。
「そうだね。とにかくカギを探さなきゃ」
これだけ布団があっても、探すのはすぐに終わる。
私は布団の山に手をかけて、一気に引きずり出したのだった。
☆☆☆
それから数分後、私達は殻になった押し入れの中の確認していた。
布団はすべて出し切ったけれど、カギらしいものは見つけられなかった。
もしかしたらこの部屋の中にはないのかもしれない。
「事務室にあるのかもしれないな」
この部屋にカギがないとすれば、次に可能性が高いのは事務室だ。
けれど、机のカギは部屋のカギほど厳重に扱われてはいなかっただろうから、最悪紛失している可能性もある。
私は奥歯を噛み締めたくなる気持ちをグッと押し殺した。
「本当にこの引き出しにヒントや答えがあるのかな」
どうしても開くことのない引き出しへ視線を向けて呟く。
「それしかないだろ?」
「でも、ここまでなにもないガランとした部屋なんだよ? 御札を貼る前になにもかも持ち出してるかも」
ここでなにが起こったのかはわからない。
でも、御札を貼って、入るなと注意されるくらいには誰にも近づけたいない場所なんだ。
そんな場所に、いわくつきのものをいつまでも置いておくとも思えない。
本当はもうヒントなんて残されていなくて、とっくに供養されたりしているんじゃないだろうか?
そんなネガティブな感情が湧き上がってくるのはきっと、もう疲れ切っているからだ。
一刻も早くここから出たいという気持ちと、諦めの気持ち。
私は今その間に立たされている。
「なにかがあるから、カギがかけられたままなんだ」
それでも修はまだ希望を捨てていない。
私は下唇を噛み締めてキツク目を閉じた。
カギがかかったままの金庫を開けてみても、中は空だったという話は嫌というほど聞いたことがある。
今回だってそれと同じじゃないか。
そんな気持ちが湧いてくるけれど、どうにか自分の中に押し込めた。
修と喧嘩はしたくない。
「……そうだね。ネガティブなことを言ってごめん。もう1度、よく探してみよう」
それから私達は布団にかけられているシーツ一枚一枚を外して確認する作業を始めた。
もしかしたらシーツの中に紛れ込んでいるかもしれない。
限りなくゼロに近い可能性でも、試してみることになったのだ。
けれど、どれだけ探してみてもカギはどこからも出てこない。
すべてのシーツを外し終えて、私と修はその場に座り込んでしまった。
「やっぱり、事務室かな」
そう言う修の顔には疲れが滲んできている。
決して後ろ向きな発言はしない修だけれど、実は誰よりも疲弊しているのかもしれない。
「そうかもしれないね。探してみなきゃ」
口ではそういうものの、すぐに動くことはできなかった。
今日は朝からなにも食べていないし、体力的にも限界だ。
「ちょっと、休憩してからにしない?」
どんなに食欲がなくたって、スープくらい口にしないといけない。
少しでも口になにかを入れれば気分も変わるはずだ。
私の提案に修は「そうだな」と頷いた。
食堂へ向かうために立ち上がろうとした、そのときだった。
机の下にキラリと光るなにかがあることに気がついて私は動きを止めた。
「どうした?」
「なにかあるみたい」
早口に説明すると、修が畳に頬をこすりつけるようにして机の下を確認した。
そこには確かにキラッと光るものがある。
私達は座り込んだ状態で目を見合わせた。
まさか!
勢いよく立ち上がり、協力して机を少しずつズラしていく。
中身の入っていない机は簡単に動かすことができた。
埃に塗れた机の下から出てきたのは小さなカギだ。
「あった!」
今までの疲労が嘘のように吹き飛んでいく。
私は飛びつくようにしてカギを握りしめた。
まとわりついている埃を手で払えば、ちょうど引き出しの鍵穴に入りそうな小さなカギが姿を見せた。
「よし! やったぞ!」
修がガッツポーズを取る中、私はすぐに引き出しにカギを入れた。
案の定、カギはすんなり鍵穴に入って、回すとカチャリと音を立てた。
開いた!
引き出しを引いて中を覗き込んでみると、そこには一冊のノートが置かれていた。
ごく普通の大学ノートで、ずっと暗闇の中にいたためかそれほど劣化もしていない。
修が壊れ物のようにそっとノートを取り出して、畳の上に置いた。
「名前が書いてあるけど、見えないな」
そのノートには5年1組と書かれた横に誰かの名前も書かれていたようだけれど、名前の部分はかすれてしまって読めなくなっていた。
「5年ってことは、小学生だよね?」
文字も、それくらい幼いものに見えた。
「この施設は幅広く使われてるみたいだからな」
修は頷いてそう言った。
「でも、どうしてこのノートはここに残ってたんだろう? 他のものはほとんど何も残されてないのに」
あったのは最初からこの部屋にあったのだろう、布団と机だけだ。
個人を特定するようなものは、このノートしかない。
「きっと、この引き出しに入れてカギをかけたのは、この小学生の子なんだろうな。カギを見つけられないように机に下に隠したんだ」
誰にも見つけられないようにしたということだ。
それくらい大切なことがこのノートには記されている。
私はゴクリと唾を飲み込んでノートを見つめた。
名前が読めなくなってしまったその子のことを考えながら、ゆっくりとページを開く。
そこには日付と、ちょっとした出来事が記されていた。
【7月30日。
今日から3泊4日の合宿!
空気のいい場所だから、ぜんそくがよくなるかもしれないって、お母さんが言ってた。
昼間はみんなで勉強をして、夜からはキャンプファイヤーをした。
みんなで作ったカレーはとってもおいしかった!】
「日記か?」
修が呟く。
どうやら、これは小学生の日記みたいだ。
「ここへ来てから書き始めたんだろうね。合宿の思い出を残そうと思ったのかも」
答えながら私は文字を何度も見つめる。
子供らしい文字で書かれた文章の中から、この子が喘息持ちだったことがわかる。
空気のいい山の中の合宿に来ることを母親も賛成していたようだ。
でも、ここにくるまでに山道を歩かないといけなかっただろうから、それはこの子にとって大変なことだっただろう。
日記はそれに触れることはなく、楽しかった思い出が綴られている。
私は更に日記を読み勧めた。
【カレーを食べた後でみんなは遊んでたけど、僕はぜんそくの発作が出たから休んでた。
先生がずっとついていてくれたから、辛くはなかった。】
「男の子だ!」
やっと日記の主の性別がわかって思わず声をあげる。
僕という一人称から判断するには早すぎるかもしれないけれど、おそらく間違えてはいないだろう。
この日記は書いた子は小学5年生の男の子だ。
【7月31日。
2日目の今日は朝から勉強ばっかり。
僕は苦手な算数をずっとやらされて、途中から頭が痛くなっちゃった。
先生が『今晩ちえねつが出るかもね』って言ってきて、なんのことかわからなかったから質問したら『一生懸命がんばった子に出る熱だよ』って教えてくれた。
僕は今日すごく頑張ったから、きっと熱が出ると思う。】
2日目の日記にも先生のことが書かれている。
きっとこの子は先生のことが大好きだったんだろう。
苦手な算数を教わりながら先生に甘えている様子が浮かんでくるようだ。
「苦手科目は算数か。歩と一緒だな」
「私は数学だもん」
言い返すと修は軽く笑い声を上げた。
算数と数学では天と地ほどの差があると思っているのだけれど、修からすればどんぐりの背比べなのかもしれない。
それにしても、ここに来てから久しぶりに修の笑い声を聞いた気がする。
私はつられて笑う。
日記を発見したことで少し前進した。
だから心に余裕が生まれたのかも知れない。
【先生が言うちえねつは出なかったけれど、夜からやっぱりぜんそくが出た。
お母さんは空気がいい場所ではぜんそくも良くなるって言ってたけど、違うのかも。
お母さんでも間違えることがあるのかもしれない。】
少年は2日目も喘息の発作で苦しんだようだ。
もちろん薬などは持ってきているだろうけれど、仲間と参加する合宿で力を発揮できないのは辛いことだろう。
「先生のこととお母さんのことしか出てこないな」
「それがどうかしたの?」
首を傾げて聞くと修は眉間にシワを寄せた。
「お父さんがいるかどうかは別として、合宿に来ているんだから友達のことが書かれていてもいいのにと思ったんだ」
「あっ」
そう言われればそうかもしれない。
初日はキャンプファイヤーをしたと書かれていたけれど、具体的な内容は書かれていなかった。
友達の誰と遊んだとか、一緒に勉強したとか、そういう内容ではなかった。
それどころか【みんなは遊んでたけど、僕はぜんそくの発作が出たから休んでた。】と、書かれていたのだ。
そして少年が喘息で休んでいたときに一緒にいたのは、友人ではなく、先生だった。
遊びたい盛の子供にとっては、少しひっかかることかもしれない。
【8月1日。
合宿最終日。
今日で終わりかぁと思って、外で日記を書いてたら、クラスの子に声をかけられた。
みんなが僕に話しかけてくれることなんてあまりないから、嬉しくて、「ついてこい」って言われて素直にしたがった。
そしたら、この部屋に入れられちゃった。】
合宿最終日の日記にしていきなり雰囲気が変化している。
私は自分の心臓が早鐘を打ち始めるのを感じていた。
このまま日記を読み勧めていいのかどうかわからない。
これ以上読むと、この少年のプライバシーを侵害してしまうことになるんじゃないかと、不安になる。
だけど、読み進めないとここでなにがあったのかもわからないままだ。
「大丈夫?」
私は呼吸することも忘れてしまっていることで、修が心配そうに顔を覗き込んできた。
「無理そうなら、ここから先は俺1人で読むけど」
修の優しさについ甘えてしまいそうになる。
だけど私は左右に首を振った。
「大丈夫。私も一緒に見る」
自分だけ逃げるわけにはいかない。
初日にこの部屋に入ってしまったのは修ではなく、私なんだから。
「そっか。無理はしなくていいから」
私は頷き、そしてまた少年の日記に視線を落としたのだた。
215 / 236
【この部屋は和室で、あまり使われてないみたい。
外からみんなの声が聞こえてくる。
「下山するときにお前がいたらじゃまなんだよ」って言ってる。
やっぱり、そうだったんだ。
山を登っているときも僕だけ遅れてたから、みんなめいわくしてたんだ。】
やっとクラスメートの話題が出てきたと思ったら、それは胸が苦しくなるような内容だった。
【ドアが何度もけられて、すごい音がしてる。
僕は怖くて、布団を出してくるまってる。
とても暑いけど、音を聞いていたくない】
真夏に布団をかぶらなければならなかった少年の心境に胸がチクチクと痛くなる。
少年が他の人と同じようにできないのは病のせいなのに、それが理解されない世界にいたんだ。
【音が止まった。
でも、ドアが開かない。
もしかして閉じ込められたのかな?】
閉じ込められたという文字を見た瞬間息を飲んでいた。
真夏にこんな部屋に閉じ込められた?
冷暖房もなく、外に連絡を取る手段もない部屋に?
【暑い。息が苦しい】
少年の文章が乱れてきた。
今までは罫線にそって丁寧に書かれいた文字がブレで、罫線からはみ出している。
【発作が出てきた。でも薬をもってない。誰か】
その文字は苦痛に歪み、指で擦れてしまっている。
ノートのあちこちにシミができていて、それは少年が苦しんで流した涙のあとだということがわかった。
「日記はここで終わってる」
修がノートを何度もめくって確認している。
これが少年が最後に残したメッセージだったのかもしれないけれど、わからない。
この施設で誰かが死んだとか、そういう話はまだ聞いたことがなかった。
「私達これからどうすればいいの?」
私の声は自分でもびっくりするほど震えていた。
自分ではその震えを止めることができない。
「この子について調べよう」
「でも、名前もわからないのに、どうやって?」
「事務所にいけば、施設の利用者ファイルがあるかもしれない」
そう言って修が立ち上がる。
その足が少しふらついていた。
修も、この部屋で起きた悲惨な出来事に動揺しているんだ。
私は奥歯を食いしばって立ち上がり、修と共に部屋を出たのだった。
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