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私は予定していた通り、百恵と一緒にお弁当を食べたあとホスト科へ向かった。
ドアの前で立ち止まり、スカートのポケットに入れてきたお世話係のネームを左胸につける。
ノックをしてドアを開けると、昨日と同じメンバーが全員揃っていた。
「愛美ちゃん、おはよう!」
一番に侑介が駆け寄ってきてそのまま抱きついてきた。
ボッと顔から火が出るほど体が熱くなり、固まってしまう。
そんな私を見て尋が呆れ顔で近づいてくると、「侑介、ダメでしょう?」と言いながら引き剥がしてくれた。
侑介が離れてくれてホッと息を吐き出す。
「愛美ちゃん、部室めっちゃ綺麗だね! ありがとう!」
侑介がその場で飛び跳ねて言うので私はにっこりと微笑んで「どういたしまして」と、返事をした。
正直どこまで掃除していいのやらわからなかったから不安が残っていたけれど、満足してくれたみたいでよかった。
「尋さんはこれから仕事だよね?」
聞くと尋は頷いた。
「はい。これから行ってきます」
と、お弁当の入った袋を見せてきた。
食べずに女の子との約束時間まで待っていたみたいだ。
「せっかくだから、見学してくるか」
私へ向けてそう提案したのは汰斗だった。
汰斗は元々細い目を更に細めて私をジッと見つめてくる。
「え、いいの!?」
「それも勉強の一貫だからな。ただし遠くから見るだけ。相手の女の子にバレないように気をつけること」
「わ、わかった」
隠れて観察しろということなんだろう。
それって私にできるだろうか?
不安だけれど、せっかくだからホスト科の活動をしっかりと見ておきたい。
その上で一ヶ月間お世話係をして、続けられるかどうか考えるのもありだった。
「尋さん、ついて行っても大丈夫?」
「もちろんです」
尋が笑顔で頷いてくれたことによって、私は一緒に部室を出ることになったのだった。
☆☆☆
約束場所の自販機の前で待っていたのは小柄で可愛らしい女の子だった。
尋が現れると頬をピンク色に染めて手招きをした。
「待たせてごめんなさい」
「ううん。今来たところ!」
女の子は嬉しそうに尋と一緒にベンチに座る。
そしてスカートから取り出した茶封筒を尋に手渡した。
尋は中身を確認して頷いて見せている。
あの中に千円が入っているんだろう。
私はその様子を柱のカゲに隠れて見ていた。
「飲み物はなにがいいですか?」
尋が自販機の前に立って女の子に質問している。
「お茶がいいな」
「はい、わかりました」
尋は今受け取ったばかりの千円札を使って、二人分のお茶を買うと、またベンチに座った。
校内で使うお金なんてこれくらいのことしかないだろうから、かなり残っていくんじゃないだろうか?
それからふたりは他愛のない会話をしながらお弁当を食べ始めた。
「それってもしかして手作りですか?」
「えへへ。わかっちゃった?」
「わかりますよ。すっごく美味しそうなので」
女子生徒は終始嬉しそうな顔で、頬を赤らめている。
そしてお弁当を食べ終わったタイミングで尋がズボンのポケットからなにかを取り出した。それは薄いもので、ピンク色の包装紙でラッピングされているものだった。
「今日で3度目ですね。記念にこれを買ってきたんです。よかったら受け取ってください」
「うそ! どうして今日私が尋くんを指名するってわかってたの?」
「ただの感ですよ。そろそろかなって思ってたましたから」
尋からプレゼントと手渡された女子生徒は泣きそうな顔になり、プレゼントを胸のあたりで抱きしめた。
「開けてみください」
「うん」
尋に促されて包装紙を丁寧に丁寧に開けていく。
彼女はこの包装紙もきっと大切に持ち帰るつもりなんだろう。
「うわぁ、綺麗!」
包装紙の中からでてきたのは白色のハンカチだった。
ピンクと青の小花が刺繍で散らされていて、周りはレースで縁取られている。
女子生徒の印象にピッタリな、清楚で可愛らしいものだった。
「君にピッタリだと思って買ってきたんです」
「ありがとう、すごく嬉しい!」
それからのふたりは更に盛り上がって、あっという間に昼休憩が残りわずかになってしまった。
「そろそろ時間ですから、クラスまで送りましょう」
「うん」
女子生徒は名残惜しそうに尋を見つめている。
「尋くん、また指名してもいい?」
「もちろんです。僕はいつでも君のことを待っていますよ。だけど、友達のことも大切にしなきゃダメですからね?」
「うん。そうだよね……実はね今日尋くんを指名したのは友達とうまくいってないからなんだ」
「そうだったんですか?」
「うん。一週間前くらいに風邪で休んだんだけど、その次の日からなんだかみんなの態度がよそよそしくて。それで、偶然私の陰口言っているのを聞いたりしちゃって、どうすればいいのかわからなくて」
本当に深刻なのだろう。
さっきまで楽しそうにしていた女子生徒の顔は暗くなり、目には涙が滲んできている。
「君が休んでいた日になにかがあったのは間違いないみたいですね。気になるなら、一緒に友達に話しを聞きに行ってあげましょうか?」
尋がそっと女子生徒に寄り添う。
「でも、そこまでしてもらうのは悪いよ」
「大丈夫。時間はまだ残っているんですから心配しないで」
尋に促されて女子生徒は一緒に歩き出した。
その子は3年生だったようで、やってきたのは3年C組の教室だった。
女子生徒が教室内を覗き込んで様子を伺っている。
「君の友達って、どの子ですか?」
「あそこで雑誌を広げてる子たちだよ」
そう言われて視線を向けると、3人の女の子たちが楽しそうに雑誌を見て雑談している。これからどうするつもりだろうと思ってみていると、尋が教室の中へズンズン入っていってしまった。
「君たちはあの子の友達ですか?」
突然の闖入者に驚きながらも、尋の顔を見て嬉しそうにしている3人組。
ドアの前で女子生徒がひとりで気まずそうに立っている。
「そうだけど、あなたは誰?」
「僕はあの子の相談相手です。最近友達とうまくいっていなくて悩んでいるみたいなんですよ」
直球でそう言われて3人組は顔を見合わせている。
「そんなの気のせいだよ。私達、ちゃんと仲良しだし」
「だよねぇ。考えすぎでしょう?」
そう言う顔が楽しそうに笑っていて、やっぱり裏がありそうに見えてしまう。
「そうなんですね? それなら僕の大切な人の勘違いってことでいいでしょうか? それを彼女にそのまま伝えますよ?」
尋がそう言うと3人組は黙り込んでしまった。
そういう言い方をされると怯んでしまうのは、後ろめたいことがある証拠だ。
「言っておきますが、大切な人を傷つけられたら僕は黙っていませんよ?」
尋は笑顔なのに、ゾクッとするほど冷たく聞こえた。
「私らが悪いんじゃないし。あの子が私らの悪口を言いふらしてたんだよ」
1人の子が尋を睨みつけて言った。
「詳しく聞かせてくれますか?」
「あの子が風邪で休んだ日、他の子から聞いたの。あの子が私達の悪口言ってたよって」
「そ、そんなこと言ってない!」
女子生徒が慌てて友人らに駆け寄っていく。
その顔は青ざめていたけれど、目はまっすぐに友人へ向けられている。
「そんな噂を言ってたのは誰ですか?」
尋の質問に、3人組の視線が別の女子生徒へと向いた。
その子は黒縁メガネをかけた地味な女子生徒で、1人で席に座って本を読んでいた。
尋がその子に近づいていく。
「ちょっと話しがしたいんですけど、いいですか?」
突然尋に声をかけられてとまどいながらも、本から目を離して頬を赤らめている。
どんな子でも尋をひと目みた瞬間に頬が赤くなっている。
それくらい、尋はかっこよかった。
「この子が友達の悪口を言ってたらしいですけど、それはいつ聞いたんですか?」
「そ、それは、えっと……ひと月前だったかな?」
突然女の子がしどろもどろになって尋から視線をそらせた。
「ひと月前、どこで聞いたんですか?」
「えっと……あれは……ト、トイレだったかな?」
「どんな陰口を言ってたんですか?」
「バ、バカとか、アホとか」
「じゃあ彼女が話をしていた相手は誰だったんですか?」
「え?」
「陰口ってことは、それを誰かに話してたってことですよね? 相手は誰でしたか?」
「それは……えっと……」
女の子は完全に黙り込んでしまった。
顔色が悪く、うつむいている。
「私、陰口なんて言ってない!」
女子生徒が叫ぶように言う。
尋は優しい笑顔で頷いた。
「そう。君は陰口なんて言っていません。だからこうして質問しても答えられなくなっているんでしょう。どうしてそんな嘘をついたんですか?」
メガネの女の子の肩が小刻みに震えている。
「だって……その子はいつでも明るくて可愛くて人気者で……私だって、そういう人になりたかったのになれなくて、だから……!」
「はぁ? あんた私らに嘘ついてたの!?」
黙って話を聞いていた3人組が割って入ってきた。
彼女たちはみんなメガネの子を睨みつけている。
「だ、だって……」
「言い訳はよくないですね。だけどこの子もきっと本当に人気者になりたくて悩んでたんだと思います。だから責めるのもよくないかと思うんです」
「でも!」
3人組は納得できない様子だけれど、尋がそれをたしなめた。
「君たちだってよくないですね。この子の友達なら、どうしてそんな嘘を信じたりしたんですか?」
「それは……」
「友達なら、まずはちゃんと話をして噂が本当かどうか確認しないといけなかったんじゃないですか?」
尋の言う通りだ。
悪いのはメガネの子だけじゃない。
友達のことを信用しきれなかった3人も悪い。
そして3人に問いただすことのできなかった女子生徒もちょっとは悪かったのかも知れない。
「……ごめんね。私達友達なのに疑ったりして」
「ううん。こっちこそごめん。もっと勇気を持ってみんなに話をきけばよかった」
それからメガネの子は4人全員に謝っていた。
仲良くなれるかどうかわからないけれど、4人のいるグループに入れてもらえたみたいだ。
「すごいね……」
ホスト科へ戻った後もすべてを解決へ導いてしまった尋に驚きを隠せなかった。
尋は本当にかっこよかったんだ。
「それくらい誰でもできるぞ」
私の感動を消し去るように言ったのは大だった。
というか、戻ってきたら汰斗と侑介のふたりも突如入った依頼で部室にはいなくて、大だけが残っていたのだ。
「大くんにもできるって言うの?」
「もちろんだ。ちなみにハンカチのプレゼントは部室に常備してあるやつだぜ。何度も指名してくれた場合は、相手に合わせて持っていくんだ」
そう言って棚に置かれている箱を取り出して開けて見せてきた。
そこにはさっきと同じ、色違いの包装紙で包まれたハンカチが沢山入っていて唖然としてしまった。
「このハンカチは一枚500円。デートで余ったお金はオレたちの飲食だけで消えるわけじゃねぇってこと」
はぁ……。
それはいいけれど突然ホスト科のリアルを突きつけられた気分になってなんだか落ち込んでしまう。
さっきまでは私まで夢を見ている気持ちでいたのに、ガッカリだ。
「嫌になりましたか?」
尋に聞かれて私は複雑な心境で苦笑いを浮かべた。
「少しだけ。でも、あの子が救われたことは事実だと思うし、ダメとは言い切れないのがもどかしいよ」
「これがホストの光と闇の部分ですね。だけど僕たちはお客さんたちを破滅へ追い込みたいわけじゃない。ちゃんと線引をして接して、ホスト狂にならないように気をつけているつもりですよ」
確かに、今日の尋を見ていると友達も大切にと言っていたっけ。
「だけど、ホスト科が人気にならなきゃ自分たちの活動場所がなくなっちゃうでしょう?」
「できればホスト科はなくなった方がいいんだって。昨日も言ったけど、深刻な悩みや悲しみなんてない方がいいんだからよ」
大が麦茶を一気に飲み干して言った。
自分たちの居場所がなくなってもいいからみんなが穏やかに過ごせますように。
大はそう言っているように聞こえたのだった。
☆☆☆
「すっごい! ちゃんとホストやってるんだねぇ」
5時間目の授業を終えたところで百恵が私の席にやってきて、昼間の活動について話をし終えたところだった。
百恵は私が話をしている間ずっと目を輝かせて聞いてくれていた。
「うん。私もびっくりした。あんな風に生徒によりそってるとは思ってなかったから」
「それなのにホストってことで学校側はちゃんと部活動として許可を下ろすことができないってことかぁ」
百恵はそう言うと指先を顎にあてて考え込んでしまった。
過去には自殺してしまいそうだった女子生徒を救ったとも言う。
そんな彼らの活動を少しでも認めてほしいと、私も感じていた。
「名称が悪いのかも知れないよね。ホストなんて言うとどうしてもチャライイメージがあるし。みんなの相談係とかだったらいいんじゃない!?」
百恵がいいことを思いついたと手を打ってそう言った。
みんなの相談係。
たしかにそれならチャライイメージはなくなる。
「でも、それでみんなが興味持って使ってくれるかなぁ?」
「あぁ……使わないかも」
百恵もはたと気がついて苦笑いを浮かべた。
彼らの顔を思い出すとどうしても相談係って感じでもない。
ホストと言ってしまった方がしっくりくる。
「う~ん、難しいなぁ」
百恵は腕組みをして考え込んでしまったのだった。
☆☆☆
放課後になると百恵に先に帰ってもらって、私は再びホスト科へ向かった。
部室棟へとつながっている渡り廊下には沢山の生徒たちが行き来している。
今はもう放課後だから、これから部活動が始める生徒たちだ。
私はそんな生徒たちに流されるように部室棟へと向かい、誰もいないホスト科へと続く廊下を歩いた。
「このあたりは生徒がいなくて寂しいなぁ」
つい、ポロリとこぼしてしまう。
他の部室は部室棟の1階と2階に集まっていて、ホスト科だけが2階の隅っこにある。
プレートも出ていないし、まるで他の部活動からはじき出されてしまったような寂しさがある。
ドアをノックして部室へ入ると全員が出払ってしまっていた。
手帳でスケジュールを確認すると、放課後はほぼ毎日全員が出払っていることがわかった。
「以外と忙しいのに先生たちに認められないなんて……」
ぶつぶつと口の中で文句を言いながら冷蔵庫を開けて麦茶を取り出し、自分の分だけ入れてソファに座った。
一口飲んでホッと息を吐き出したタイミングで電話がなり始めた。
驚いて飛び上がり、すぐに電話を取る。
明日の放課後の予約だ。
「わかりました。汰斗に伝えておきます」
メモを取りながら通話を終えて受話器を置いたと思うと、また電話がかかってくる。
「も、もしもし?」
とまどいながら対応すると、また明日の放課後の予約だった。
どんどん埋まっていく4人のスケジュールに、対応するこっちまでジワリと汗が滲んでくる。
「すごい。放課後って一番人気なのかも」
明日の日付は放課後の指名で埋まってしまった。
それからも電話がなり続けて対応するのに一苦労だった。
10分ほど会話できればいいと言う子もいれば、1時間くらいデートしたいと言う子もいる。
そんな子たちの要望を聞くために何度もスケジュールを確認し直して予定を埋めていかないといけない。
30分ほどぶっ続けで電話対応した私はぐったりとソファに座り込んでしまった。
「お世話係って、結構大変なのかも」
と、呟く。
今朝の掃除はどうってことなかった。
掃除は元々嫌いじゃないし、ここの部室はそれほど広くもないから。
だけどこれだけひっきりなしに電話が鳴るのなら、そっちにかなりの時間を取られてしまうことがわかった。
「あ、愛美ちゃん来てたんだ!」
ドアが開くと同時にそんな声が聞こえてきて振り向くと、侑介が駆け寄ってきてそのまま抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと」
慌てて引き剥がそうとしたところ、冷たい表情の汰斗がやってきて侑介を引き離してくれた。
無理やり引き離された侑介はまるで母猫に首根っこを噛まれて移動する子猫みたいで可愛らしい。
「お前はどうしてそういちいち抱きつきに行くんだ」
「だってぇ、ボク愛美ちゃんと仲良くなりたくてぇ」
「抱きつかなくても仲良くできるだろ!」
と、げんこつまで落とされている。
侑介にはちょっとかわいそうだけれど、私は内心ホッとしていた。
会うたびに抱きつかれていたら、心臓がもたない。
「お疲れ様。えっと、みんな放課後の仕事は終わったのかな?」
それから大と尋も部室へ戻ってきたので、私は全員分の麦茶を入れてそう質問した。
「あぁ。今日はこれで全部終わりだ。結構早めに終わったな」
大が一気に麦茶を飲み干して答えた。
「そっか。あ、明日のスケジュールなんだけど」
「電話予約があったか? それならメッセージで共有してくれ」
汰斗に言われて私は手帳を広げて自分で書いたスケジュールの写真を取って、メッセージで共有した。
「えぇ~、明日結構忙しそう」
スケジュールを確認した侑介がさっそく顔をしかめている。
それでも本当に嫌そうには見えないのは、本人が楽しんでいるからだろう。
「そういえば10分間だけ話がしたいって人もいたんだけど、そういう子からも同じだけのお金をもらうの?」
電話対応をしているときに疑問に感じたことをそのまま口に出して質問した。
尋がニッコリと微笑んで「もちろん。みんな対等ですからね」と、答える。
だけど1時間もホストと一緒にいる子と10分しか一緒にいない子が同じだけの金額を支払うのは納得いかない。
「時間が短くても千円支払うのはみんな理解してる。その上で10分間でいいって予約なんだ。そういう子にはあのハンカチをプレゼントしてもいいし、お金を使い切れるように工夫もする」
と、汰斗が説明してくれた。
なるほど。
一応平等になるようにはしているみたいだ。
「そっか……相手が納得していることだから、大丈夫ってこと?」
汰斗がコクリと頷いた。
「この活動はみんなからの信頼で成り立ってるようなものなんだ。相手が満足できるかどうかが問題で、時間の問題じゃない」
なんだかカッコイイかも。
そう思って自分の頬を両手で包み込んでみると、普段よりも熱くなっていることがわかって少し慌てた。
「あれ、愛美ちゃん熱でもあるの?」
侑介が心配して私の顔を覗き込んでくるから「だ、大丈夫だよ」と、答えて慌てて顔をそむけたのだった。
ドアの前で立ち止まり、スカートのポケットに入れてきたお世話係のネームを左胸につける。
ノックをしてドアを開けると、昨日と同じメンバーが全員揃っていた。
「愛美ちゃん、おはよう!」
一番に侑介が駆け寄ってきてそのまま抱きついてきた。
ボッと顔から火が出るほど体が熱くなり、固まってしまう。
そんな私を見て尋が呆れ顔で近づいてくると、「侑介、ダメでしょう?」と言いながら引き剥がしてくれた。
侑介が離れてくれてホッと息を吐き出す。
「愛美ちゃん、部室めっちゃ綺麗だね! ありがとう!」
侑介がその場で飛び跳ねて言うので私はにっこりと微笑んで「どういたしまして」と、返事をした。
正直どこまで掃除していいのやらわからなかったから不安が残っていたけれど、満足してくれたみたいでよかった。
「尋さんはこれから仕事だよね?」
聞くと尋は頷いた。
「はい。これから行ってきます」
と、お弁当の入った袋を見せてきた。
食べずに女の子との約束時間まで待っていたみたいだ。
「せっかくだから、見学してくるか」
私へ向けてそう提案したのは汰斗だった。
汰斗は元々細い目を更に細めて私をジッと見つめてくる。
「え、いいの!?」
「それも勉強の一貫だからな。ただし遠くから見るだけ。相手の女の子にバレないように気をつけること」
「わ、わかった」
隠れて観察しろということなんだろう。
それって私にできるだろうか?
不安だけれど、せっかくだからホスト科の活動をしっかりと見ておきたい。
その上で一ヶ月間お世話係をして、続けられるかどうか考えるのもありだった。
「尋さん、ついて行っても大丈夫?」
「もちろんです」
尋が笑顔で頷いてくれたことによって、私は一緒に部室を出ることになったのだった。
☆☆☆
約束場所の自販機の前で待っていたのは小柄で可愛らしい女の子だった。
尋が現れると頬をピンク色に染めて手招きをした。
「待たせてごめんなさい」
「ううん。今来たところ!」
女の子は嬉しそうに尋と一緒にベンチに座る。
そしてスカートから取り出した茶封筒を尋に手渡した。
尋は中身を確認して頷いて見せている。
あの中に千円が入っているんだろう。
私はその様子を柱のカゲに隠れて見ていた。
「飲み物はなにがいいですか?」
尋が自販機の前に立って女の子に質問している。
「お茶がいいな」
「はい、わかりました」
尋は今受け取ったばかりの千円札を使って、二人分のお茶を買うと、またベンチに座った。
校内で使うお金なんてこれくらいのことしかないだろうから、かなり残っていくんじゃないだろうか?
それからふたりは他愛のない会話をしながらお弁当を食べ始めた。
「それってもしかして手作りですか?」
「えへへ。わかっちゃった?」
「わかりますよ。すっごく美味しそうなので」
女子生徒は終始嬉しそうな顔で、頬を赤らめている。
そしてお弁当を食べ終わったタイミングで尋がズボンのポケットからなにかを取り出した。それは薄いもので、ピンク色の包装紙でラッピングされているものだった。
「今日で3度目ですね。記念にこれを買ってきたんです。よかったら受け取ってください」
「うそ! どうして今日私が尋くんを指名するってわかってたの?」
「ただの感ですよ。そろそろかなって思ってたましたから」
尋からプレゼントと手渡された女子生徒は泣きそうな顔になり、プレゼントを胸のあたりで抱きしめた。
「開けてみください」
「うん」
尋に促されて包装紙を丁寧に丁寧に開けていく。
彼女はこの包装紙もきっと大切に持ち帰るつもりなんだろう。
「うわぁ、綺麗!」
包装紙の中からでてきたのは白色のハンカチだった。
ピンクと青の小花が刺繍で散らされていて、周りはレースで縁取られている。
女子生徒の印象にピッタリな、清楚で可愛らしいものだった。
「君にピッタリだと思って買ってきたんです」
「ありがとう、すごく嬉しい!」
それからのふたりは更に盛り上がって、あっという間に昼休憩が残りわずかになってしまった。
「そろそろ時間ですから、クラスまで送りましょう」
「うん」
女子生徒は名残惜しそうに尋を見つめている。
「尋くん、また指名してもいい?」
「もちろんです。僕はいつでも君のことを待っていますよ。だけど、友達のことも大切にしなきゃダメですからね?」
「うん。そうだよね……実はね今日尋くんを指名したのは友達とうまくいってないからなんだ」
「そうだったんですか?」
「うん。一週間前くらいに風邪で休んだんだけど、その次の日からなんだかみんなの態度がよそよそしくて。それで、偶然私の陰口言っているのを聞いたりしちゃって、どうすればいいのかわからなくて」
本当に深刻なのだろう。
さっきまで楽しそうにしていた女子生徒の顔は暗くなり、目には涙が滲んできている。
「君が休んでいた日になにかがあったのは間違いないみたいですね。気になるなら、一緒に友達に話しを聞きに行ってあげましょうか?」
尋がそっと女子生徒に寄り添う。
「でも、そこまでしてもらうのは悪いよ」
「大丈夫。時間はまだ残っているんですから心配しないで」
尋に促されて女子生徒は一緒に歩き出した。
その子は3年生だったようで、やってきたのは3年C組の教室だった。
女子生徒が教室内を覗き込んで様子を伺っている。
「君の友達って、どの子ですか?」
「あそこで雑誌を広げてる子たちだよ」
そう言われて視線を向けると、3人の女の子たちが楽しそうに雑誌を見て雑談している。これからどうするつもりだろうと思ってみていると、尋が教室の中へズンズン入っていってしまった。
「君たちはあの子の友達ですか?」
突然の闖入者に驚きながらも、尋の顔を見て嬉しそうにしている3人組。
ドアの前で女子生徒がひとりで気まずそうに立っている。
「そうだけど、あなたは誰?」
「僕はあの子の相談相手です。最近友達とうまくいっていなくて悩んでいるみたいなんですよ」
直球でそう言われて3人組は顔を見合わせている。
「そんなの気のせいだよ。私達、ちゃんと仲良しだし」
「だよねぇ。考えすぎでしょう?」
そう言う顔が楽しそうに笑っていて、やっぱり裏がありそうに見えてしまう。
「そうなんですね? それなら僕の大切な人の勘違いってことでいいでしょうか? それを彼女にそのまま伝えますよ?」
尋がそう言うと3人組は黙り込んでしまった。
そういう言い方をされると怯んでしまうのは、後ろめたいことがある証拠だ。
「言っておきますが、大切な人を傷つけられたら僕は黙っていませんよ?」
尋は笑顔なのに、ゾクッとするほど冷たく聞こえた。
「私らが悪いんじゃないし。あの子が私らの悪口を言いふらしてたんだよ」
1人の子が尋を睨みつけて言った。
「詳しく聞かせてくれますか?」
「あの子が風邪で休んだ日、他の子から聞いたの。あの子が私達の悪口言ってたよって」
「そ、そんなこと言ってない!」
女子生徒が慌てて友人らに駆け寄っていく。
その顔は青ざめていたけれど、目はまっすぐに友人へ向けられている。
「そんな噂を言ってたのは誰ですか?」
尋の質問に、3人組の視線が別の女子生徒へと向いた。
その子は黒縁メガネをかけた地味な女子生徒で、1人で席に座って本を読んでいた。
尋がその子に近づいていく。
「ちょっと話しがしたいんですけど、いいですか?」
突然尋に声をかけられてとまどいながらも、本から目を離して頬を赤らめている。
どんな子でも尋をひと目みた瞬間に頬が赤くなっている。
それくらい、尋はかっこよかった。
「この子が友達の悪口を言ってたらしいですけど、それはいつ聞いたんですか?」
「そ、それは、えっと……ひと月前だったかな?」
突然女の子がしどろもどろになって尋から視線をそらせた。
「ひと月前、どこで聞いたんですか?」
「えっと……あれは……ト、トイレだったかな?」
「どんな陰口を言ってたんですか?」
「バ、バカとか、アホとか」
「じゃあ彼女が話をしていた相手は誰だったんですか?」
「え?」
「陰口ってことは、それを誰かに話してたってことですよね? 相手は誰でしたか?」
「それは……えっと……」
女の子は完全に黙り込んでしまった。
顔色が悪く、うつむいている。
「私、陰口なんて言ってない!」
女子生徒が叫ぶように言う。
尋は優しい笑顔で頷いた。
「そう。君は陰口なんて言っていません。だからこうして質問しても答えられなくなっているんでしょう。どうしてそんな嘘をついたんですか?」
メガネの女の子の肩が小刻みに震えている。
「だって……その子はいつでも明るくて可愛くて人気者で……私だって、そういう人になりたかったのになれなくて、だから……!」
「はぁ? あんた私らに嘘ついてたの!?」
黙って話を聞いていた3人組が割って入ってきた。
彼女たちはみんなメガネの子を睨みつけている。
「だ、だって……」
「言い訳はよくないですね。だけどこの子もきっと本当に人気者になりたくて悩んでたんだと思います。だから責めるのもよくないかと思うんです」
「でも!」
3人組は納得できない様子だけれど、尋がそれをたしなめた。
「君たちだってよくないですね。この子の友達なら、どうしてそんな嘘を信じたりしたんですか?」
「それは……」
「友達なら、まずはちゃんと話をして噂が本当かどうか確認しないといけなかったんじゃないですか?」
尋の言う通りだ。
悪いのはメガネの子だけじゃない。
友達のことを信用しきれなかった3人も悪い。
そして3人に問いただすことのできなかった女子生徒もちょっとは悪かったのかも知れない。
「……ごめんね。私達友達なのに疑ったりして」
「ううん。こっちこそごめん。もっと勇気を持ってみんなに話をきけばよかった」
それからメガネの子は4人全員に謝っていた。
仲良くなれるかどうかわからないけれど、4人のいるグループに入れてもらえたみたいだ。
「すごいね……」
ホスト科へ戻った後もすべてを解決へ導いてしまった尋に驚きを隠せなかった。
尋は本当にかっこよかったんだ。
「それくらい誰でもできるぞ」
私の感動を消し去るように言ったのは大だった。
というか、戻ってきたら汰斗と侑介のふたりも突如入った依頼で部室にはいなくて、大だけが残っていたのだ。
「大くんにもできるって言うの?」
「もちろんだ。ちなみにハンカチのプレゼントは部室に常備してあるやつだぜ。何度も指名してくれた場合は、相手に合わせて持っていくんだ」
そう言って棚に置かれている箱を取り出して開けて見せてきた。
そこにはさっきと同じ、色違いの包装紙で包まれたハンカチが沢山入っていて唖然としてしまった。
「このハンカチは一枚500円。デートで余ったお金はオレたちの飲食だけで消えるわけじゃねぇってこと」
はぁ……。
それはいいけれど突然ホスト科のリアルを突きつけられた気分になってなんだか落ち込んでしまう。
さっきまでは私まで夢を見ている気持ちでいたのに、ガッカリだ。
「嫌になりましたか?」
尋に聞かれて私は複雑な心境で苦笑いを浮かべた。
「少しだけ。でも、あの子が救われたことは事実だと思うし、ダメとは言い切れないのがもどかしいよ」
「これがホストの光と闇の部分ですね。だけど僕たちはお客さんたちを破滅へ追い込みたいわけじゃない。ちゃんと線引をして接して、ホスト狂にならないように気をつけているつもりですよ」
確かに、今日の尋を見ていると友達も大切にと言っていたっけ。
「だけど、ホスト科が人気にならなきゃ自分たちの活動場所がなくなっちゃうでしょう?」
「できればホスト科はなくなった方がいいんだって。昨日も言ったけど、深刻な悩みや悲しみなんてない方がいいんだからよ」
大が麦茶を一気に飲み干して言った。
自分たちの居場所がなくなってもいいからみんなが穏やかに過ごせますように。
大はそう言っているように聞こえたのだった。
☆☆☆
「すっごい! ちゃんとホストやってるんだねぇ」
5時間目の授業を終えたところで百恵が私の席にやってきて、昼間の活動について話をし終えたところだった。
百恵は私が話をしている間ずっと目を輝かせて聞いてくれていた。
「うん。私もびっくりした。あんな風に生徒によりそってるとは思ってなかったから」
「それなのにホストってことで学校側はちゃんと部活動として許可を下ろすことができないってことかぁ」
百恵はそう言うと指先を顎にあてて考え込んでしまった。
過去には自殺してしまいそうだった女子生徒を救ったとも言う。
そんな彼らの活動を少しでも認めてほしいと、私も感じていた。
「名称が悪いのかも知れないよね。ホストなんて言うとどうしてもチャライイメージがあるし。みんなの相談係とかだったらいいんじゃない!?」
百恵がいいことを思いついたと手を打ってそう言った。
みんなの相談係。
たしかにそれならチャライイメージはなくなる。
「でも、それでみんなが興味持って使ってくれるかなぁ?」
「あぁ……使わないかも」
百恵もはたと気がついて苦笑いを浮かべた。
彼らの顔を思い出すとどうしても相談係って感じでもない。
ホストと言ってしまった方がしっくりくる。
「う~ん、難しいなぁ」
百恵は腕組みをして考え込んでしまったのだった。
☆☆☆
放課後になると百恵に先に帰ってもらって、私は再びホスト科へ向かった。
部室棟へとつながっている渡り廊下には沢山の生徒たちが行き来している。
今はもう放課後だから、これから部活動が始める生徒たちだ。
私はそんな生徒たちに流されるように部室棟へと向かい、誰もいないホスト科へと続く廊下を歩いた。
「このあたりは生徒がいなくて寂しいなぁ」
つい、ポロリとこぼしてしまう。
他の部室は部室棟の1階と2階に集まっていて、ホスト科だけが2階の隅っこにある。
プレートも出ていないし、まるで他の部活動からはじき出されてしまったような寂しさがある。
ドアをノックして部室へ入ると全員が出払ってしまっていた。
手帳でスケジュールを確認すると、放課後はほぼ毎日全員が出払っていることがわかった。
「以外と忙しいのに先生たちに認められないなんて……」
ぶつぶつと口の中で文句を言いながら冷蔵庫を開けて麦茶を取り出し、自分の分だけ入れてソファに座った。
一口飲んでホッと息を吐き出したタイミングで電話がなり始めた。
驚いて飛び上がり、すぐに電話を取る。
明日の放課後の予約だ。
「わかりました。汰斗に伝えておきます」
メモを取りながら通話を終えて受話器を置いたと思うと、また電話がかかってくる。
「も、もしもし?」
とまどいながら対応すると、また明日の放課後の予約だった。
どんどん埋まっていく4人のスケジュールに、対応するこっちまでジワリと汗が滲んでくる。
「すごい。放課後って一番人気なのかも」
明日の日付は放課後の指名で埋まってしまった。
それからも電話がなり続けて対応するのに一苦労だった。
10分ほど会話できればいいと言う子もいれば、1時間くらいデートしたいと言う子もいる。
そんな子たちの要望を聞くために何度もスケジュールを確認し直して予定を埋めていかないといけない。
30分ほどぶっ続けで電話対応した私はぐったりとソファに座り込んでしまった。
「お世話係って、結構大変なのかも」
と、呟く。
今朝の掃除はどうってことなかった。
掃除は元々嫌いじゃないし、ここの部室はそれほど広くもないから。
だけどこれだけひっきりなしに電話が鳴るのなら、そっちにかなりの時間を取られてしまうことがわかった。
「あ、愛美ちゃん来てたんだ!」
ドアが開くと同時にそんな声が聞こえてきて振り向くと、侑介が駆け寄ってきてそのまま抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと」
慌てて引き剥がそうとしたところ、冷たい表情の汰斗がやってきて侑介を引き離してくれた。
無理やり引き離された侑介はまるで母猫に首根っこを噛まれて移動する子猫みたいで可愛らしい。
「お前はどうしてそういちいち抱きつきに行くんだ」
「だってぇ、ボク愛美ちゃんと仲良くなりたくてぇ」
「抱きつかなくても仲良くできるだろ!」
と、げんこつまで落とされている。
侑介にはちょっとかわいそうだけれど、私は内心ホッとしていた。
会うたびに抱きつかれていたら、心臓がもたない。
「お疲れ様。えっと、みんな放課後の仕事は終わったのかな?」
それから大と尋も部室へ戻ってきたので、私は全員分の麦茶を入れてそう質問した。
「あぁ。今日はこれで全部終わりだ。結構早めに終わったな」
大が一気に麦茶を飲み干して答えた。
「そっか。あ、明日のスケジュールなんだけど」
「電話予約があったか? それならメッセージで共有してくれ」
汰斗に言われて私は手帳を広げて自分で書いたスケジュールの写真を取って、メッセージで共有した。
「えぇ~、明日結構忙しそう」
スケジュールを確認した侑介がさっそく顔をしかめている。
それでも本当に嫌そうには見えないのは、本人が楽しんでいるからだろう。
「そういえば10分間だけ話がしたいって人もいたんだけど、そういう子からも同じだけのお金をもらうの?」
電話対応をしているときに疑問に感じたことをそのまま口に出して質問した。
尋がニッコリと微笑んで「もちろん。みんな対等ですからね」と、答える。
だけど1時間もホストと一緒にいる子と10分しか一緒にいない子が同じだけの金額を支払うのは納得いかない。
「時間が短くても千円支払うのはみんな理解してる。その上で10分間でいいって予約なんだ。そういう子にはあのハンカチをプレゼントしてもいいし、お金を使い切れるように工夫もする」
と、汰斗が説明してくれた。
なるほど。
一応平等になるようにはしているみたいだ。
「そっか……相手が納得していることだから、大丈夫ってこと?」
汰斗がコクリと頷いた。
「この活動はみんなからの信頼で成り立ってるようなものなんだ。相手が満足できるかどうかが問題で、時間の問題じゃない」
なんだかカッコイイかも。
そう思って自分の頬を両手で包み込んでみると、普段よりも熱くなっていることがわかって少し慌てた。
「あれ、愛美ちゃん熱でもあるの?」
侑介が心配して私の顔を覗き込んでくるから「だ、大丈夫だよ」と、答えて慌てて顔をそむけたのだった。
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