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仮面
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どうせならさっそくこの仮面をつけてみよう。
校舎を出たクルミは近くの公園のトイレに入り、仮面を見つめていた。
このまま帰ってもどうせ勉強をさせられるだけだ。
それなら少し遊んでいってやろうと考えたのだ。
クルミは手洗い場の鏡の前で自分の顔に仮面を当てて「ガオー」と怪獣のような声をあげて見る。
しかし仮面は能面なので全然迫力はでなかった。
「そうだ。マジックで顔を描けばもっと面白いかも」
思い立ってペンケースからマジックを出すため仮面を外そうとした。
その瞬間、仮面はクルミの顔に吸い付いてきたのだ。
ツルリとした心地のいい感触にクルミは両手を離す。
しかし、仮面は顔に引っ付いたまま離れない。
なに!?
悲鳴は喉の奥にかき消され、変わりにクルミの足は勝手にトイレから出ていた。
そのまま早足でどこかへ向かっているが、どこへ向かっているのかわからない。
止まって!
お願いとまって!
クルミが心の中でどれだけ懇願しても足は止まらない。
気がつけばクツミが知らない場所に到着していた。
周囲には民家が立ち並んでいるが、空き家が多いようで窓ガラスが割られていたり、壁に蔦が絡まったりしている。
なにここ。
私こんな場所知らない。
走ったせいで汗がにじみ、息が切れている。
すぐに帰ろうとするのに、クルミの体はそれを許さなかった。
クルミはの体は勝手に空き家の庭へ侵入すると、乾いた草を踏んで家に近づいていく。
こんな汚いところ嫌だ。
すぐに出たい。
クルミの体は割られた窓の前で立ち止まった。
すると今度は右手が勝手に動いた。
スカートのポケットをまさぐり、あの100円ライターを握り締めて取り出す。
使い物にならないライターだったが、クルミはなんとなく捨てることができずに持っていたのだ。
右手は乾いた草の上でライターをすった。
カシュッカシュッと、乾いた音がして、不発の火薬の臭いがただよい始める。
どうせつかない。
そう思った次の瞬間、火がついた。
えっ!?
驚いているクルミを横目に一瞬ついた火はすぐに乾いた草に燃え移る。
クルミの足は再び勝手に動き出して、空き家から逃げ出したのだった。
☆☆☆
クルミが家に戻ったとき、外から消防車のサイレンが聞こえてきた。
それがどこへ向かっているのか、クルミは興味のないフリをするので精一杯だ。
「どうした食欲がないのか?」
父親にそう聞かれてクルミはハッと我に返った。
クルミは今食卓についていて、目の前に出されている肉料理に少しも手を伸ばしていなかったのだ。
「ううん、そんなことは――」
そう言って肉に手を出そうとするが、頭の中は空き家での出来事がグルグルと繰り返し再生されている。
あの仮面は本物だった。
そして自分はどうやら放火の才能を手に入れることができたらしい。
そう思うととてもご飯なんて喉を通らなかった。
こんなこと誰にも言えない。
言うつもりもない。
「やっぱり、今日は少し体調がよくないみたいだから、横になるね」
クルミはそういって席を立つ。
両親に背中を向けてダイニングから出るクルミの顔には、笑顔が浮かんでいたのだった。
クルミの体調がよくないということで、今日の勉強は見送りになった。
だけどクルミは別に嬉しさを感じることはなかった。
そのかわり土日の勉強時間が増えることはすでに知っている。
夜になるのを待ち、クルミはそっと自分のベッドから置きだした。
ベッドの下に自分で準備しておいたジーンズとTシャツという姿に着替えをして、同じようにベッド下に隠していた点火棒を取り出す。
これはキッチンで使われていたもので、クルミは寝る前にこっそりと盗んできていたのだ。
準備を整え、仮面を両手に持った。
窓からの月明かりで輝いて見える。
昼間これを見つけたときもそうだった。
この仮面は迷える人の心に寄り添ってくれる。
こうして光を照らしてくれるものなのだ。
クルミは口元に笑みを浮かべて、仮面を自分の顔に近づけた。
まだ2度目だというのに仮面のすっかり肌触りのとりこになっていた。
うっとりと目を閉じて仮面をつけるとすぐに吸い付いてくる。
この瞬間、自分と仮面がひとつになったと感じることができるのだ。
仮面をつけて真っ白な顔になったクルミの行動は早かった。
素早くドアを開けて廊下を確認し、誰もいないことがわかると足音を殺して玄関まで向かう。
警備会社へ通じているスイッチを切り、鍵を開けて外に出るまでほんの数分間だった。
本来のクルミだったら部屋に出るだけでも何十分も迷っていたに違いない。
それからクルミは裏手に回り、そこに常備してある灯油缶へ視線を向けた。
もちろんクルミ本人が風呂やストーブに灯油を入れたことは1度もない。
しかし、そこに灯油があることは知っていた。
お手伝いさんの仕事を見ていたら、どうやって缶の蓋を開けるのかもわかっている。
クルミの心臓は早鐘を打ち始め、緊張で背中に汗が流れていく。
しかし、手足は勝手に動き続けていた。
灯油缶へ近づき、その蓋を開ける。
持ち上げようとしてその重さに一瞬ひるんでしまった。
こんなに重たいものを持っていたの!?
女性のお手伝いさんがこれを両手で持って運んでいた光景を思い出し、クルミは目を見開いた。
こんなに大変な作業をしているとは夢にも思っていなかったのだ。
クルミは歯を食いしばり、どうにか灯油缶を持ち上げると家の周りに透明な液体を巻き始めた。
液体は刺激臭を放っていて、長時間においをかいでいると気分が悪くなりようだった。
しかしクルミの手際はよかった。
灯油缶をすべてまき終えると、家の裏手へと戻っていく。
裏から火をつければ生垣の隙間からすぐに逃げ出すことができる。
家の横側からだと高い塀が立っているので逃げることは困難だ。
クルミ自身はとても緊張していてそんなことまで気が回っていなかったが、体は勝手に動いてくれる。
もう少し。
もう少しで私は自由になれる。
その期待だけを胸に秘めて裏へと戻ったときだった。
黒い人影が見えてクルミは咄嗟に身を隠した。
こんな時間に一体誰だろう?
お手伝いさんはもうみんな帰ったはずだし、両親も眠っているはずだ。
ドクドクと心臓が高鳴る中、クルミはそっと顔だけ出して人影があった場所を確認した。
そこは勝手口だったが人の気配はない。
こんな時間に勝手口から誰かが出入りすることはないから、きっと見間違いだったんだ。
たとえば少し大きな野良犬とか、そういう野生動物が横切っていったのだろう。
クルミは自分にそう言いきかせ、点火棒をまいた灯油に近づけたのだった。
☆☆☆
炎はあっという間に燃え上がった。
灯油に火をつけるとこんなにも簡単に火が燃え上がるのだと、クルミは初めて知った。
裏から逃げ出したクルミは自分の家が燃えているのを見つめながら後退し、裏路地を逃げる。
十分火の手が屋敷を包み込んでから助けを呼ぶつもりだった。
もしかしたらその前に近所の人に気がつかれて通報されるかもしれないが、その時は全力で逃げるだけだ。
家から十分距離をとった場所で立ち止まり、クルミはようやく仮面を脱いだ。
オレンジ色の炎に照らされたクルミの顔は汗が流れていて、表情も引きつっている。
しかし胸の中は爽快感に溢れていた。
これで自分は自由になる。
勉強だってもうしなくていいし、生活するには困らないくらいのお金だってある。
そう思うと自然と笑みがこぼれた。
普段みんなからお金持ちのお嬢様だと羨ましがられてきた。
その度に、じゃあ私と変わってよと言ってやりたかった。
毎日毎日一秒単位でやることを決められている窮屈な生活になってみなよと。
クルミにとって今の学校は唯一自分の意思が反映されたものだった。
だけど正直期待はずれだった。
みんなはクルミのことを理解しようとする前に決め付けて羨ましがる。
なんの苦労もないのだと思い込んでしまっている。
そんな中で友人を作るのは一苦労だった。
でも、もちろんそんなことは父親の耳に入れていない。
そんなことを言えば「だから私の言うことを聞いていればよかったんだ」と、威圧的に言われるのがオチだからだ。
「そろそろ、かな」
クルミは屋敷を包み込む炎を見て呟く。
スマホを取り出そうとしたとき、近所の人が異変に気がついて外へ出てきた。
それを確認してクルミはスマホをポケットに戻した。
通報する必要もなさそうだ。
消防車が到着したら、屋敷の中から逃げ出てきたと思わせないといけない。
その時はクルミの演技にかかっているが、きっと大丈夫だろう。
なにせこの仮面を使って放火したのだ。
バレることはないという自信があった。
裏路地からジッと様子を伺っていたクルミの元に近づいてくる人影があった。
その人物の顔は真っ白で、まるであの仮面のような顔をしている。
その人物は、気がつけばクルミのすぐ真横に立っていた。
「え?」
クルミが相手に気がついて声を上げた次の瞬間なにかを押し当てられ、クルミはその場に倒れこんだのだった。
校舎を出たクルミは近くの公園のトイレに入り、仮面を見つめていた。
このまま帰ってもどうせ勉強をさせられるだけだ。
それなら少し遊んでいってやろうと考えたのだ。
クルミは手洗い場の鏡の前で自分の顔に仮面を当てて「ガオー」と怪獣のような声をあげて見る。
しかし仮面は能面なので全然迫力はでなかった。
「そうだ。マジックで顔を描けばもっと面白いかも」
思い立ってペンケースからマジックを出すため仮面を外そうとした。
その瞬間、仮面はクルミの顔に吸い付いてきたのだ。
ツルリとした心地のいい感触にクルミは両手を離す。
しかし、仮面は顔に引っ付いたまま離れない。
なに!?
悲鳴は喉の奥にかき消され、変わりにクルミの足は勝手にトイレから出ていた。
そのまま早足でどこかへ向かっているが、どこへ向かっているのかわからない。
止まって!
お願いとまって!
クルミが心の中でどれだけ懇願しても足は止まらない。
気がつけばクツミが知らない場所に到着していた。
周囲には民家が立ち並んでいるが、空き家が多いようで窓ガラスが割られていたり、壁に蔦が絡まったりしている。
なにここ。
私こんな場所知らない。
走ったせいで汗がにじみ、息が切れている。
すぐに帰ろうとするのに、クルミの体はそれを許さなかった。
クルミはの体は勝手に空き家の庭へ侵入すると、乾いた草を踏んで家に近づいていく。
こんな汚いところ嫌だ。
すぐに出たい。
クルミの体は割られた窓の前で立ち止まった。
すると今度は右手が勝手に動いた。
スカートのポケットをまさぐり、あの100円ライターを握り締めて取り出す。
使い物にならないライターだったが、クルミはなんとなく捨てることができずに持っていたのだ。
右手は乾いた草の上でライターをすった。
カシュッカシュッと、乾いた音がして、不発の火薬の臭いがただよい始める。
どうせつかない。
そう思った次の瞬間、火がついた。
えっ!?
驚いているクルミを横目に一瞬ついた火はすぐに乾いた草に燃え移る。
クルミの足は再び勝手に動き出して、空き家から逃げ出したのだった。
☆☆☆
クルミが家に戻ったとき、外から消防車のサイレンが聞こえてきた。
それがどこへ向かっているのか、クルミは興味のないフリをするので精一杯だ。
「どうした食欲がないのか?」
父親にそう聞かれてクルミはハッと我に返った。
クルミは今食卓についていて、目の前に出されている肉料理に少しも手を伸ばしていなかったのだ。
「ううん、そんなことは――」
そう言って肉に手を出そうとするが、頭の中は空き家での出来事がグルグルと繰り返し再生されている。
あの仮面は本物だった。
そして自分はどうやら放火の才能を手に入れることができたらしい。
そう思うととてもご飯なんて喉を通らなかった。
こんなこと誰にも言えない。
言うつもりもない。
「やっぱり、今日は少し体調がよくないみたいだから、横になるね」
クルミはそういって席を立つ。
両親に背中を向けてダイニングから出るクルミの顔には、笑顔が浮かんでいたのだった。
クルミの体調がよくないということで、今日の勉強は見送りになった。
だけどクルミは別に嬉しさを感じることはなかった。
そのかわり土日の勉強時間が増えることはすでに知っている。
夜になるのを待ち、クルミはそっと自分のベッドから置きだした。
ベッドの下に自分で準備しておいたジーンズとTシャツという姿に着替えをして、同じようにベッド下に隠していた点火棒を取り出す。
これはキッチンで使われていたもので、クルミは寝る前にこっそりと盗んできていたのだ。
準備を整え、仮面を両手に持った。
窓からの月明かりで輝いて見える。
昼間これを見つけたときもそうだった。
この仮面は迷える人の心に寄り添ってくれる。
こうして光を照らしてくれるものなのだ。
クルミは口元に笑みを浮かべて、仮面を自分の顔に近づけた。
まだ2度目だというのに仮面のすっかり肌触りのとりこになっていた。
うっとりと目を閉じて仮面をつけるとすぐに吸い付いてくる。
この瞬間、自分と仮面がひとつになったと感じることができるのだ。
仮面をつけて真っ白な顔になったクルミの行動は早かった。
素早くドアを開けて廊下を確認し、誰もいないことがわかると足音を殺して玄関まで向かう。
警備会社へ通じているスイッチを切り、鍵を開けて外に出るまでほんの数分間だった。
本来のクルミだったら部屋に出るだけでも何十分も迷っていたに違いない。
それからクルミは裏手に回り、そこに常備してある灯油缶へ視線を向けた。
もちろんクルミ本人が風呂やストーブに灯油を入れたことは1度もない。
しかし、そこに灯油があることは知っていた。
お手伝いさんの仕事を見ていたら、どうやって缶の蓋を開けるのかもわかっている。
クルミの心臓は早鐘を打ち始め、緊張で背中に汗が流れていく。
しかし、手足は勝手に動き続けていた。
灯油缶へ近づき、その蓋を開ける。
持ち上げようとしてその重さに一瞬ひるんでしまった。
こんなに重たいものを持っていたの!?
女性のお手伝いさんがこれを両手で持って運んでいた光景を思い出し、クルミは目を見開いた。
こんなに大変な作業をしているとは夢にも思っていなかったのだ。
クルミは歯を食いしばり、どうにか灯油缶を持ち上げると家の周りに透明な液体を巻き始めた。
液体は刺激臭を放っていて、長時間においをかいでいると気分が悪くなりようだった。
しかしクルミの手際はよかった。
灯油缶をすべてまき終えると、家の裏手へと戻っていく。
裏から火をつければ生垣の隙間からすぐに逃げ出すことができる。
家の横側からだと高い塀が立っているので逃げることは困難だ。
クルミ自身はとても緊張していてそんなことまで気が回っていなかったが、体は勝手に動いてくれる。
もう少し。
もう少しで私は自由になれる。
その期待だけを胸に秘めて裏へと戻ったときだった。
黒い人影が見えてクルミは咄嗟に身を隠した。
こんな時間に一体誰だろう?
お手伝いさんはもうみんな帰ったはずだし、両親も眠っているはずだ。
ドクドクと心臓が高鳴る中、クルミはそっと顔だけ出して人影があった場所を確認した。
そこは勝手口だったが人の気配はない。
こんな時間に勝手口から誰かが出入りすることはないから、きっと見間違いだったんだ。
たとえば少し大きな野良犬とか、そういう野生動物が横切っていったのだろう。
クルミは自分にそう言いきかせ、点火棒をまいた灯油に近づけたのだった。
☆☆☆
炎はあっという間に燃え上がった。
灯油に火をつけるとこんなにも簡単に火が燃え上がるのだと、クルミは初めて知った。
裏から逃げ出したクルミは自分の家が燃えているのを見つめながら後退し、裏路地を逃げる。
十分火の手が屋敷を包み込んでから助けを呼ぶつもりだった。
もしかしたらその前に近所の人に気がつかれて通報されるかもしれないが、その時は全力で逃げるだけだ。
家から十分距離をとった場所で立ち止まり、クルミはようやく仮面を脱いだ。
オレンジ色の炎に照らされたクルミの顔は汗が流れていて、表情も引きつっている。
しかし胸の中は爽快感に溢れていた。
これで自分は自由になる。
勉強だってもうしなくていいし、生活するには困らないくらいのお金だってある。
そう思うと自然と笑みがこぼれた。
普段みんなからお金持ちのお嬢様だと羨ましがられてきた。
その度に、じゃあ私と変わってよと言ってやりたかった。
毎日毎日一秒単位でやることを決められている窮屈な生活になってみなよと。
クルミにとって今の学校は唯一自分の意思が反映されたものだった。
だけど正直期待はずれだった。
みんなはクルミのことを理解しようとする前に決め付けて羨ましがる。
なんの苦労もないのだと思い込んでしまっている。
そんな中で友人を作るのは一苦労だった。
でも、もちろんそんなことは父親の耳に入れていない。
そんなことを言えば「だから私の言うことを聞いていればよかったんだ」と、威圧的に言われるのがオチだからだ。
「そろそろ、かな」
クルミは屋敷を包み込む炎を見て呟く。
スマホを取り出そうとしたとき、近所の人が異変に気がついて外へ出てきた。
それを確認してクルミはスマホをポケットに戻した。
通報する必要もなさそうだ。
消防車が到着したら、屋敷の中から逃げ出てきたと思わせないといけない。
その時はクルミの演技にかかっているが、きっと大丈夫だろう。
なにせこの仮面を使って放火したのだ。
バレることはないという自信があった。
裏路地からジッと様子を伺っていたクルミの元に近づいてくる人影があった。
その人物の顔は真っ白で、まるであの仮面のような顔をしている。
その人物は、気がつけばクルミのすぐ真横に立っていた。
「え?」
クルミが相手に気がついて声を上げた次の瞬間なにかを押し当てられ、クルミはその場に倒れこんだのだった。
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