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カラカラカラ。
タイヤが壊れたピエロは横倒しになってタイヤを空転させる。
手に持っていたナイフは地面に落ちて、それは今健太が握りしめていた。
追いかける術も、攻撃するすべもうしなったピエロはただただタイヤを回すだけだった。
「これ、どうする?」
哀れな姿のピエロを取り囲んで健太が呟く。
自分たちを追いかけ回し、恐怖に追いつめたピエロ。
このまま焼却処分してしまいたかったけれど、さっきみた映像が頭から離れなかった。
「スマホはまだ使えないし、誰もいないってことは、まだ終わってないってことなんだと思う」
私はピエロを見下ろして言った。
まだ終わっていない。
私達が勝利したわけじゃない。
だけど、これは勝ち負けの勝負だったんだろうか?
今ではそんな疑問が浮かんでくる。
「映像の中で見えたふれあいホームって、私知ってるよ」
随分と顔色がよくなった綾が言う。
「知ってるの?」
「うん。私のおばあちゃんが利用してる老人ホームなの。今も週に一度くらい会いに行ってる」
「それなら、場所がわかる?」
「もちろん」
頷く綾に、私は竜二と健太へ視線を向けた。
ピエロの持ち主だった美月ちゃんは、きっとそこにいる。
「ピエロを美月ちゃんに合わせてあげたい」
私の言葉に竜二が「でも、どうやって?」と、聞き返してきた。
ピエロは今は無力だけど、いつまた襲ってくるかわからない。
そんな危険なものを持ち運んで老人ホームへ行くには工夫が必要だった。
「それならピエロをカバンに入れて持っていくのはどうだろう?」
健太が提案する。
「カバンの中から逃げ出したりしねぇか?」
「わからない。でもこのタイヤを完全にはずしておけば、走ることはできないから逃げ切ることができる」
健太はそう言うと竜二からマイナスドライバーを受け取り、タイヤの付け根に突き刺した。
それは簡単な構造でピエロの胴体とつながっていたようで、すぐに外すことができた。
タイヤの回転は止まり、ピエロの音楽も止まった。
「そんなことして直せるの?」
美月ちゃんの前に持って行ったときにピエロがこんな状態じゃ、きっと悲しむと思った。
だけど健太は笑顔で「大丈夫。すぐに直せるから」と、言った。
それから部活用の大きなカバンを持ってきてピエロをその中に入れた。
ピエロはとてもおとなしくて、まるで普通の人形みたいに見える。
「よし、じゃあ行くか!」
竜二の言葉を合図にして、私達はグラウンドを出たのだった。
タイヤが壊れたピエロは横倒しになってタイヤを空転させる。
手に持っていたナイフは地面に落ちて、それは今健太が握りしめていた。
追いかける術も、攻撃するすべもうしなったピエロはただただタイヤを回すだけだった。
「これ、どうする?」
哀れな姿のピエロを取り囲んで健太が呟く。
自分たちを追いかけ回し、恐怖に追いつめたピエロ。
このまま焼却処分してしまいたかったけれど、さっきみた映像が頭から離れなかった。
「スマホはまだ使えないし、誰もいないってことは、まだ終わってないってことなんだと思う」
私はピエロを見下ろして言った。
まだ終わっていない。
私達が勝利したわけじゃない。
だけど、これは勝ち負けの勝負だったんだろうか?
今ではそんな疑問が浮かんでくる。
「映像の中で見えたふれあいホームって、私知ってるよ」
随分と顔色がよくなった綾が言う。
「知ってるの?」
「うん。私のおばあちゃんが利用してる老人ホームなの。今も週に一度くらい会いに行ってる」
「それなら、場所がわかる?」
「もちろん」
頷く綾に、私は竜二と健太へ視線を向けた。
ピエロの持ち主だった美月ちゃんは、きっとそこにいる。
「ピエロを美月ちゃんに合わせてあげたい」
私の言葉に竜二が「でも、どうやって?」と、聞き返してきた。
ピエロは今は無力だけど、いつまた襲ってくるかわからない。
そんな危険なものを持ち運んで老人ホームへ行くには工夫が必要だった。
「それならピエロをカバンに入れて持っていくのはどうだろう?」
健太が提案する。
「カバンの中から逃げ出したりしねぇか?」
「わからない。でもこのタイヤを完全にはずしておけば、走ることはできないから逃げ切ることができる」
健太はそう言うと竜二からマイナスドライバーを受け取り、タイヤの付け根に突き刺した。
それは簡単な構造でピエロの胴体とつながっていたようで、すぐに外すことができた。
タイヤの回転は止まり、ピエロの音楽も止まった。
「そんなことして直せるの?」
美月ちゃんの前に持って行ったときにピエロがこんな状態じゃ、きっと悲しむと思った。
だけど健太は笑顔で「大丈夫。すぐに直せるから」と、言った。
それから部活用の大きなカバンを持ってきてピエロをその中に入れた。
ピエロはとてもおとなしくて、まるで普通の人形みたいに見える。
「よし、じゃあ行くか!」
竜二の言葉を合図にして、私達はグラウンドを出たのだった。
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