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怖い話
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「部活動はほどほどにしなさいって言ってるでしょう?」
「わかってるよ。だけどやりたいことがあるんだもん」
「放課後は早く帰ってきなさい。生徒がひとり行方不明になってるんだから、見つかるまで安心できないでしょう」
「わかった。わかったってば」
(階段を駆け上がる足音、ドアを乱暴に閉める音)
ふぅ……うるさいんだから。
あれ?
ボイスレコーダーのスイッチが入ってる。
ポケットに入れて持ちあるかないほうがいいのかな。
はぁ、まぁいいや。
このまま少し吐き出そう。
私、新井皐月の両親は久保田先輩が行方不明になってからちょっと神経質になっていて、私の放課後活動を制限しようとしてる。
部活は早めに切り上げて、すぐに帰ってきてほしいみたい。
気持ちはわかるけど、でも3年生になれば嫌でも部活動は引退するんだから、今は好きにさせてほしいと思う。
そういえば、今日は久保田センパいの友達ふたりと接触できたから、それもまとめておかなきゃ。
☆☆☆
新井皐月の日記より
6月☆日
今日は阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩に話を聞くことができた。
ふたりとも久保田先輩と仲良しで、いい子だったと教えてくれた。
だけど『寺』の話しになったとき、急に黙り込んでしまった。
どうしたのか質問するとなにも言わずに逃げてしまったし、なにかがあるんだと思う。
明日はそのなにかがわかればいいんだけれど……。
正直あまり自信はない。
今日みたいに逃げられちゃうかもしれない。
でもやらなきゃ。
今動いているのは私だけなんだから。
明日は昼休憩を使って取材してみようかな。
そうすれば放課後はもっと早く切り上げることができるかもしれない。
我ながら名案。
☆☆☆
新井皐月のボイスレコーダーより
はい。
今は昼間です。
給食を食べ終えて、みんなダラダラしてます。
「ちょっと皐月、もしかしてそれボイスレコーダー?」
あ、結ちゃん。
「すごいね。新聞部で使ってるの?」
うん、そうだよ。
「ちょっと見せてー!」
あ……。
「はい。なんちゃって新聞部の結ちゃんです! 新井皐月ちゃんに質問ですが、どうして昼間から部活動をしているんですか?」
あぁ~えっと、それは昼間の方が取材しやすいからです。
「あはは! 普通すぎてつまんない!」
えぇ~……。
「あ、先生だ! こっちは担任の瀬野先生です! 34歳独身です!」
「おい、余計なことを言わないでくれ」
「でも事実でぇす」
ちょっと、結ちゃん。
「新井は部活動に熱心だな。いいことだぞ」
あ、はい。
ありがとうございます。
「瀬野先生は銀色メガネをかけていて、窓際に立つとフレームが光って眩しいでぇす!」
「おい、余計なことばかり言うんじゃない!」
「あははっ! 怒られた怒られた! はい、皐月返す!」
あ、ちょっと投げないでよ!
(ボイスレーコーダをキャッチする音)
ふぅ。
危ない危ない。
☆☆☆
新井皐月のボスレコーダーより
はい。
今教室から出てきて、3年生の教室へ向かっています。
友達の結に危うくボイスレコーダーを壊されそうになってしまいました。
あ、結っていうのは私の友達で、明るくて元気で、ちょっと時々ハメが外れすぎる子です。
でもムードメーカーだし、とてもいい子です。
そういえば阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩も、いなくなった久保田先輩のことをいい子だって言っていました。
きっと私と結みたいな関係だったのかなって、勝手に想像してます。
(コンコンとノック音、戸が開く音)
あ、あの、阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩はいますか?
……あ、昨日はお話聞かせてもらってありがとうございました。
それで、今日も……。
え、もうダメ?
な、なんでですか?
まだほとんどなにも聞けてないんですが。
あ、ちょっと……。
(ピシャリと戸が閉まる音)
…………。
どうしよう、閉められちゃった。
えっと……ふたりにまた接触したんですが、ダメでした。
もう話はしないと言われてしまいました。
ここからどうすればいいかちょっと……考え直さないといけません。
あのふたりからなにかもっと重要なことが聞き出せるかもしれないと思ってたので……。
☆☆☆
新井皐月のボイスレコーダーより
「ねぇ、大丈夫?」
え、あ、緒方先輩。
昨日はあのふたりを紹介してもらって、ありがとうございました。
「いいのいいの。それより、さっきの見てたけど今日は取材を断られたの?」
……はい。
「そっかぁ。あのふたりからしてもキツイ出来事だったから、あまり思い出したくないのかも」
確かに、友達がいなくなって今も見つかってないっていうのは、キツイことだと思います。
今日の取材は諦めようと思います。
「あ、ちょっと待って! それで思ったんだけど、春華ちゃんの幼馴染を紹介しようか?」
え?
「なんかさぁ。私も春華ちゃんの行方不明事件ってしっくりきてなくて。みんな憶測で悪い噂ばっかり立ててさ、気分悪いんだよね。だから協力したいの」
あ、ありがとうございます!
「ううん。私にできることなんてこれくらいだし。春華ちゃんの幼馴染は隣のクラスの子なの。こっち来て」
☆☆☆
新井皐月の覚え書き
久保田春華先輩の幼馴染、飯島裕香先輩からの情報。
久保田春華先輩と阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩の3人は怖い話が好きだった。
久保田春華先輩は、怖い話の収集家でもあった。
「わかってるよ。だけどやりたいことがあるんだもん」
「放課後は早く帰ってきなさい。生徒がひとり行方不明になってるんだから、見つかるまで安心できないでしょう」
「わかった。わかったってば」
(階段を駆け上がる足音、ドアを乱暴に閉める音)
ふぅ……うるさいんだから。
あれ?
ボイスレコーダーのスイッチが入ってる。
ポケットに入れて持ちあるかないほうがいいのかな。
はぁ、まぁいいや。
このまま少し吐き出そう。
私、新井皐月の両親は久保田先輩が行方不明になってからちょっと神経質になっていて、私の放課後活動を制限しようとしてる。
部活は早めに切り上げて、すぐに帰ってきてほしいみたい。
気持ちはわかるけど、でも3年生になれば嫌でも部活動は引退するんだから、今は好きにさせてほしいと思う。
そういえば、今日は久保田センパいの友達ふたりと接触できたから、それもまとめておかなきゃ。
☆☆☆
新井皐月の日記より
6月☆日
今日は阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩に話を聞くことができた。
ふたりとも久保田先輩と仲良しで、いい子だったと教えてくれた。
だけど『寺』の話しになったとき、急に黙り込んでしまった。
どうしたのか質問するとなにも言わずに逃げてしまったし、なにかがあるんだと思う。
明日はそのなにかがわかればいいんだけれど……。
正直あまり自信はない。
今日みたいに逃げられちゃうかもしれない。
でもやらなきゃ。
今動いているのは私だけなんだから。
明日は昼休憩を使って取材してみようかな。
そうすれば放課後はもっと早く切り上げることができるかもしれない。
我ながら名案。
☆☆☆
新井皐月のボイスレコーダーより
はい。
今は昼間です。
給食を食べ終えて、みんなダラダラしてます。
「ちょっと皐月、もしかしてそれボイスレコーダー?」
あ、結ちゃん。
「すごいね。新聞部で使ってるの?」
うん、そうだよ。
「ちょっと見せてー!」
あ……。
「はい。なんちゃって新聞部の結ちゃんです! 新井皐月ちゃんに質問ですが、どうして昼間から部活動をしているんですか?」
あぁ~えっと、それは昼間の方が取材しやすいからです。
「あはは! 普通すぎてつまんない!」
えぇ~……。
「あ、先生だ! こっちは担任の瀬野先生です! 34歳独身です!」
「おい、余計なことを言わないでくれ」
「でも事実でぇす」
ちょっと、結ちゃん。
「新井は部活動に熱心だな。いいことだぞ」
あ、はい。
ありがとうございます。
「瀬野先生は銀色メガネをかけていて、窓際に立つとフレームが光って眩しいでぇす!」
「おい、余計なことばかり言うんじゃない!」
「あははっ! 怒られた怒られた! はい、皐月返す!」
あ、ちょっと投げないでよ!
(ボイスレーコーダをキャッチする音)
ふぅ。
危ない危ない。
☆☆☆
新井皐月のボスレコーダーより
はい。
今教室から出てきて、3年生の教室へ向かっています。
友達の結に危うくボイスレコーダーを壊されそうになってしまいました。
あ、結っていうのは私の友達で、明るくて元気で、ちょっと時々ハメが外れすぎる子です。
でもムードメーカーだし、とてもいい子です。
そういえば阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩も、いなくなった久保田先輩のことをいい子だって言っていました。
きっと私と結みたいな関係だったのかなって、勝手に想像してます。
(コンコンとノック音、戸が開く音)
あ、あの、阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩はいますか?
……あ、昨日はお話聞かせてもらってありがとうございました。
それで、今日も……。
え、もうダメ?
な、なんでですか?
まだほとんどなにも聞けてないんですが。
あ、ちょっと……。
(ピシャリと戸が閉まる音)
…………。
どうしよう、閉められちゃった。
えっと……ふたりにまた接触したんですが、ダメでした。
もう話はしないと言われてしまいました。
ここからどうすればいいかちょっと……考え直さないといけません。
あのふたりからなにかもっと重要なことが聞き出せるかもしれないと思ってたので……。
☆☆☆
新井皐月のボイスレコーダーより
「ねぇ、大丈夫?」
え、あ、緒方先輩。
昨日はあのふたりを紹介してもらって、ありがとうございました。
「いいのいいの。それより、さっきの見てたけど今日は取材を断られたの?」
……はい。
「そっかぁ。あのふたりからしてもキツイ出来事だったから、あまり思い出したくないのかも」
確かに、友達がいなくなって今も見つかってないっていうのは、キツイことだと思います。
今日の取材は諦めようと思います。
「あ、ちょっと待って! それで思ったんだけど、春華ちゃんの幼馴染を紹介しようか?」
え?
「なんかさぁ。私も春華ちゃんの行方不明事件ってしっくりきてなくて。みんな憶測で悪い噂ばっかり立ててさ、気分悪いんだよね。だから協力したいの」
あ、ありがとうございます!
「ううん。私にできることなんてこれくらいだし。春華ちゃんの幼馴染は隣のクラスの子なの。こっち来て」
☆☆☆
新井皐月の覚え書き
久保田春華先輩の幼馴染、飯島裕香先輩からの情報。
久保田春華先輩と阿達麻衣子先輩と伊藤孝明先輩の3人は怖い話が好きだった。
久保田春華先輩は、怖い話の収集家でもあった。
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