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停学処分
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その日の放課後のホームルームの時間帯、小高先生から剣道部でイジメがあったことを全員に報告した。
留伊が教室にいる間にそんな報告をすれば、誰もが留伊が犯人だと勘ぐるはずだ。
それでもそういうやり方をしたのは、きっと私にアピールするつもりだったんだろう。
言われた問題はちゃんと解決させたと知らせてきているのだ。
優の視線が留伊へ向かうが、留伊は気がついていながら無視を決め込んでいる。
「剣道部のイジメってもしかして……」
「たぶん、そうだよね? 結構幅利かせてたらしいし」
「相手は後輩? 可愛そうだよねぇ」
ヒソヒソと、あちこちから囁き声が聞こえてくる。
その声が耳に入る度に優はうつむき、唇をかみしめている。
彼氏が後輩イジメをしていたことを恥ずかしいと感じているのかもしれない。
今まで自分が同級生たちにしてきたことを棚に上げて、被害者みたいな顔をしている。
私は内心フンッと鼻で笑う。
留伊がしてきたことを咎めることなんてできないくせに、都合のいい雌ブタだ。
とりあえず、これで優と涼香、優と留伊の関係がこじれてくれた。
優は気がついているだろうか。
自分にとって一番親しい人間たちが、どんどん遠ざかっていくことに。
私はこらえきれずにふふっと笑みをこぼしたのだった。
☆☆☆
今日はどんな不穏ラジオが流れてくるだろうか。
どうか、私にとって都合のいいものでありますように。
もう少しでカースト上位の人間関係が完全に壊滅できるんだ。
あと、もう少しなんだ。
そう思うと胸がワクワクしてなかなか眠れない。
目を閉じて浮かんでくるのは涼香のオロオロした表情と、優と留伊の喧嘩しているときの表情だった。
みんな自分たちが私の手によってバラバラにされていることに気が付かない。
こんなに愉快なことは他に経験したことがなかった。
いつもよりも早めに布団に入り、ラジオが聞こえてくるのを心待ちにする。
目はすっかり冴えてしまって目を閉じていても眠気は襲ってこない。
そうして時間を過ごしているとあの音楽が脳内に流れ始めた。
待ちに待った不穏ラジオの時間だ!
私はパッと目を開けて暗闇を見つめる。
ラジオの音楽が小さくなっていくと、いつもの男性DJの声が聞こえ始めた。
【みなさまこんばんわぁ! 今日も始まりました不穏ラジオのお時間です!】
私は布団の中で手を叩く。
子供の頃女の子が悪者を倒していくマンガにハマっていた時期がある。
そのときもアニメのオープニングが流れるとこうして拍手していたっけ。
今、私は幼少期に戻った気持ちでラジオを聞いている。
【今日も相変わらず大谷高校2年A組についての不穏要素を暴露していきまっしょう!】
待ってました!
と、お囃子のように口の中で呟く。
それに答えるようにDJの声は更に軽快になっていく。
【今までも色々と不穏要素の多いクラスでしたが、今回は久保涼香についての不穏要素のお話です!】
涼香の番だ!
私は期待に胸をふくらませる。
今日だけで随分と優と涼香の関係をこじれさせることに成功していたけれど、さらなる不穏要素があれば決定的な亀裂を入れることができるかもしえない!
私はゴクリと唾を飲み込んで次の言葉を待った。
【久保涼香は実は……】
DJはいつものようにもったいつけて間を置く。
次の言葉を心待ちにしているせいか、その間はいつもよりも長く感じられてじれったい。
それでも我慢して待っていると、DJの愉快の声が聞こえてきた。
【実はかなりの嘘つきです!!】
十分な間を取ったわりにすでに知っている不穏要素だったので、口から息が漏れて出た。
今更そんなことを伝えられても、もうクラス全員が知っていることだ。
【嘘を長野優に吹き込んでクラス内でイジメを行う。かなりの悪事を働いているみたいですねぇ】
DJは深刻そのものの声色で説明を続けるが、私はすでに興味を失っていた。
涼香のデマ流しの被害はすでに何度も受けているし、別の生徒だって同じ被害に遭っている。
今日の不穏ラジオはどうやら不発だったようで、不服な気持ちが湧き上がってきた。
もう少しでカーストトップに君臨している奴らの関係を崩すことができると思っていたのに、これじゃ台無しだ。
けれど、ラジオは続いている。
もう聞かなくていいと判断しても自分の意思で消すことはできない。
DJの軽快な声が脳内に流れ続ける中、私は布団を頭からかぶって明日のことを考えた。
まぁいい。
今回は不穏ラジオの力を使わなくてもどうにかなりそうだから。
一刻も早く涼香を地獄へと突き落とす方法を、私は夜中まで考え続けたのだった。
☆☆☆
翌日学校へ行くと教室内が騒がしかった。
なにかあったんだろうか。
そう思っても私には質問する相手がいないので、そのまま自分の席に座る。
そして聞き耳を建ててみることにした。
「剣道部のイジメって、やっぱり留伊だったらしいな」
「かなりひどかったんだろ?」
「だから停学処分になったんだってよ」
男子たちの会話から、それらのことがわかった。
留伊が停学処分になった。
声を出して笑ってしまいそうになり、慌てて両手で自分の口を覆った。
悪いことをしていればそれがバレたときに相応のしっぺ返しがやってくるのは当然のことだ。
留伊がいない間、剣道部の後輩たちは思う存分部活を楽しむことができるだろう。
留伊が学校に戻ってきたとしても、再び剣道部で活動できるかどうかも怪しい。
成績優秀だったそうだから特別に再入部できたとしても、監視体勢は厳しいものになるはずだ。
今まで幅を聞かせていた留伊がしばらく学校に来ないとなると、私の心も軽かった。
しかし、それで不機嫌になる生徒もいる。
優だ。
優はまだ登校してきていないようだけれど、留伊の停学処分についてはすでに知っているかもしれない。
優が今日1日どんな様子で過ごすのか見るのが楽しみだった。
と、その前にやることがあったんだった。
私は机からノートを取り出すと、一番後ろのページを1枚破った。
教卓に置いてあるペン立てから太いマジックを一本拝借して、左手で持つ。
それは優の机に整形ブスと書いたメモを入れたときと同じやり方だった。
優はまだ、あのメモを書いた犯人が私だとは気がついていない。
もしかしたら一生気が付かないかもしれない。
そんな愉快な気持ちになりながら、下手な文字でなぐり書きをしていく。
『中西留伊がイジメをしていたのはデマ。デマを流したのは久保涼香』
前回よりも長い文章だからバレないか少し心配だけれど、これを優の机に入れておかなければ意味がない。
涼香のデマ流しは優もよく知っていることだから、きっとこのメモを信じてくれるはずだ。
涼香のせいで彼氏の留伊が停学処分になったとわかった優は、どういう反応を見せるだろう。
今から楽しみで仕方がない。
私は自分の席を立ち、通り過ぎるフリをして優の机の前を通った。
そっとノートに書いたメモを机の中に入れてそのまま通り過ぎる。
こういうとき、存在が空気な自分が本当に役立っていると思う。
私がなにをしようが、誰も気にとめる生徒はいないのだから。
そのまま教室を出ようとしたとき、正広が教室に入ってきて危うくぶつかりそうになってしまった。
慌てて足を止めて「ごめんなさい」と謝る。
正広からは爽やかなな柔軟剤の香りが漂ってきている。
「こっちこそごめん。ぶつかってないよね?」
正広は本当に心配そうな顔を私へ向けてくれた。
その時少し腰をかがめて身長を合わせてくれたので、正広の顔が至近距離にあって心臓が跳ね上がった。
「だ、大丈夫だよ」
カッと体温が急上昇して真っ直ぐに正広の顔を見ることができなくなる。
「それならよかった。あ、挨拶がまだったよね。おはよう」
にっこりと微笑む正広に頭がクラクラしてきてしまう。
クラス内で挨拶を交わした経験はほとんどない。
そんな私にでも正広は当然のように挨拶をしてくれる。
やっぱり、私の目に狂いはないんだ。
後輩イジメをしている留伊なんかよりも正広のよっぽどいい男だ。
「お、おはよう」
私は顔をほてらせながらそう返事をして、慌てて教室を出たのだった。
☆☆☆
そのまま女子トイレに入って鏡で自分の顔を確認する。
思っていたとおり耳まで真っ赤だ。
これじゃ正広に自分の気持を知られてしまったかもしれない。
「どうしよう……」
両手で自分の頬を包み込んで呟く。
今まで片思いが実ったことは1度もない。
だから今回も期待はしてない。
でも……相手から挨拶してもらえたのだって、今回が初めての経験だったのだ。
今まで好きな人ができて、頑張って自分から話し掛けても無視されることばかりだった。
それなら挨拶だけでもと思っても、私が挨拶すると必ず嫌そうな顔をされた。
その時点で私の恋は終わるのだ。
なにもっしていないのと同じ状態のまま、なぜか相手に嫌がられて距離ができる。
それはきっと私がいてもいなくてもいいような、透明人間だからだろう。
クラス内でも目立たず、ほとんど口も開かない。
そんな暗い女子生徒に気に入られても相手は困るだけなんだろう。
私のような生徒よりも、優みたいに華やかな生徒に気に入られるほうがいいに決まっている。
それは私だって理解していた。
でも、少しでもいいから私自身を見てほしかった。
一緒にいて距離が近くなれば、私だって普通に会話できるようになる。
もしかしたら、同じマンガを読んでいるかもしれないし、同じアーティストが好きかもしれない。
だけど毎回そうなる前に恋心は終わってしまうのだった。
「今回は違う。今回は絶対に違う」
私は鏡の中自分へ向けてそう言い聞かせた。
正広は優しい。
それは誰に対してでも同じだということはわかっている。
だからこそ、自分にもああして声をかけてくれているのだ。
だから、私にもみんなの同等にチャンスがあるはずなんだ。
冷たい水で化粧っ気のない顔を洗って熱を冷ます。
最近は不穏ラジオのおかげで自分の行動がアクティブになっていると自覚していた。
できればこの調子で恋愛も頑張っていきたい。
なによりも今の自分にはそれができると信じていた。
もう私は以前のような根暗女じゃない。
私は制服のポケットから色つきのリップクリームを取り出した。
唇が荒れるから持ち歩いているのだけれど、普段はあまり使わない。
間違えて色つきを購入してしまったせいで、周りからなにか言われるのではないかと、湖たかったからだ。
そのリップを丁寧に唇へ塗っていく。
これくらいのこと誰でもやってる。
違和感はない。
大丈夫。
たったそれだけで私の心臓は早鐘を打ったのだった。
☆☆☆
教室へ戻るとなんとなくみんなの視線を感じるような気がする。
リップを塗る。
ただそれだけの行為でさっきまでの教室とは別のものを見ているような気持ちになった。私は背筋を伸ばして自分の席へ向かう。
そんな私に気がついて風翔が視線を向けてきたけれど、無視した。
今の私には風翔になんて興味がない。
そのまま自分の席に座り、教室内を見回してみた。
優はまだ来ていないようだ。
涼香の方が先に登校してきていて、優が来るのを落ち着かない様子で待っている。
今日も涼香は優のご機嫌取りに勤しむことだろう。
でも、それがどれだけ効果があるだろうか。
もしかしたら、優の気持ちを逆なでして終わるかもしれない。
そんなことを考えていたら待ちに待っていた優が登校してきた。
優は朝から不機嫌そうな顔をしていて、教室に入ってくると同時に教室内をグルリとにらみつけるようにして見回した。
それは誰も自分に話し掛けてくるなといいたそうな、威圧的な視線だった。
彼氏が停学処分になってしまったのだから、今は誰からも話し掛けられたくない気分なんだろう。
それなら学校を休めばいいのにと思うが、きっと優のプライドがそれを許さないんだろう。
優は大股で自分の席まで移動すると、派手な音を立てて椅子を引き、そこに座った。
その一連の動作はわざとらしくて、余計に視線を集めている。
「ゆ、優、おはよう」
あんなに威圧的な空気を出しているのに、涼香が話し掛けに言った。
そっとしておけばいいのに、もしかしたら涼香はただのバカなのかもしれない。
「あ、あのさぁ。今日もジュースとか、その、色々買ってくるから、私になんでも言ってね」
しどろもどろになりながらも、自分は優の従順なしもべであると伝えている。
そんな涼香へ向けて優は「それならどっか行ってて。邪魔だから」と、一括した。
涼香は優の言葉にビクリと体を震わせると、慌てて自分の席へと戻っていく。
その姿が滑稽でふふっと小さく笑ってしまった。
一瞬涼香と視線がぶつかって睨まれてしまった。
でも、怖くない。
前は怖かったかもしれないけれど、今の涼香はトラである優を失ったただのキツネだ。
私はリップをつけた唇で微笑んで見せた。
涼香が私の反応に驚いて立ち止まる。
そしてなにかいいたげに口を開いたそのときだった。
いつの間にか優が涼香の真後ろに立っていた。
そして次の瞬間、涼香の後頭部を平手で叩いていたのだ。
パンッ! と音がして涼香の体がぐらりと揺れる。
打ちどころが悪かったのか、そのままへたり込んでしまった。
軽い脳震盪でも起こしているのか、へたり込んだ涼香の視線は定まらない。
そんな涼香を、優は真っ赤な顔で睨みつけた。
「お前のせいだ!!」
叫ぶ優の手には、私が仕込んでおいたメモ書きが握りしめられていたのだった。
☆☆☆
「し、知らない! 私じゃない!」
ようやく焦点が合ってきたのか、涼香は優の手に握りしめられているメモを見て青ざめた。
「お前はいつだって嘘つきだった! だから今回もお前がやったんだろ!」
「違うってば!」
涼香がいくら弁解しようとしても優は聞く耳を持たない。
それは普段の涼香が嘘を付き続けてきた結果だった。
優は闇雲に涼香を殴りつけ、涼香はそれから必死で逃げる。
「お前のせいで留伊が停学処分になったんだ!」
真っ赤な顔で起こり続ける優に、ついに涼香は教室を飛び出して行ってしまった。
きっと、休憩時間が終わるまで戻って来ることはないだろう。
優は肩で大きく呼吸をしてゴミ箱にメモを投げ入れたのだった。
☆☆☆
この日は私にとって人生で最も愉快な1日だったと言っても過言ではないかもしれない。
涼香はどうにか優の誤解を解こうと必死で、ご機嫌取りに余念がなかった。
けれど優は涼香を突っぱね続けて最終的には涼香の机から教科書やノートと引っ張り出すと、本人の目の前で切り刻んでしまったのだ。
それは今まで涼香と優のふたりが他の生徒のイジメで行ってきたのと、同じような行為だった。
自分へ向けられた本気の敵意に涼香は愕然とした表情を浮かべて、それ以降優に話しかけることはなくなった。
「ねぇ、一緒にお弁当食べない?」
それでも1人になるのが怖い涼香は普段一緒にいないグループの生徒たちへ声をかけはじめた。
声をかけられた生徒たちは一様に困った表情を浮かべて「ごめんね」とひとこと言うと、お弁当箱を持って教室から出ていってしまった。
きっと、優に目をつけられているから涼香と一緒に食事なんてできないんだろう。
優の怒りっぷりは尋常じゃないから、下手をすれば自分たちまで被害を受けてしまう。
だから、結局涼香は昼ごはんの時間も一人になっていた。
1人きりでお弁当箱を広げた涼香は居心地が悪そうに視線を泳がせている。
涼香以外に1人でお昼を食べている生徒は私と風翔くらいなものだ。
私はすでに一人での食事に慣れているからどうってことはないけれど、涼香は背中を丸めてなにかから隠れるようにして食べている。
時折視線がぶつかっても、涼香は決死て私に『お弁当一緒に食べない?』と、話し掛けてくることはなかった。
まるで、それをしてしまったら完全に終わってしまうとでも思っているように、頑なに声をかけてこない。
私はそんな涼香を見て鼻で軽く笑った。
クラス最底辺である私に話し掛けなくても、もうお前は終わってるんだよ。
心の中で毒づいて優へ視線を向ける。
涼香と違って他の友人らに囲まれてお弁当を広げている優は、涼香が他の生徒たちと仲良くしないように目を光らせているように見える。
ここまで追い詰められた涼香を見るのは初めてかもしれない。
私は自分の心が浮き立つのを感じる。
いつもずる賢く、優の腰巾着である涼香がしばらく静かにしてくれていれば、学生生活も穏やかなものになるはずだ。
ホッとするのと同時に視界の端に正広の姿が見えた。
正広は友人3人と一緒にお弁当を囲み、談笑しながら食べている。
その姿を見ているだけで胸がときめく。
穏やかな学生生活はどうにか手に入れることができそうだから、次はやっぱり彼氏だろうか。
今の私に決定的に欠けているものは、それだと思う。
私はソースのついた唇をペロリとなめる。
今すぐには無理でも、いつか正広の隣を歩いてみたい。
手をつないで帰ったり、休日に待ち合わせをしてデートをしたり。
それは今までの自分にとって無縁なものだと思っていた。
学校へ来ても誰ともまともに会話しない私にとって、恋愛なんて雲の上の出来事だったから。
でも、今は違う。
誰にも気が付かれていなくても、教室内の変化を作り上げたのはまちがいなく自分自身なのだ。
それは確実に自分の中で自信として蓄積されていっていた。
いつか恋人になった人の隣を歩くことができれば、それこそ自分の理想とする青春そのものだった。
私の視線に気がついたのか、正広がこちらを向いた。
咄嗟に目をふせて見ていないフリをする。
心臓がドキドキと音を立てているのを感じて、顔が熱くなっていく。
こんなんじゃ、自分の気持を悟られるのは時間の問題かもしれない。
私はそう感じたのだった。
留伊が教室にいる間にそんな報告をすれば、誰もが留伊が犯人だと勘ぐるはずだ。
それでもそういうやり方をしたのは、きっと私にアピールするつもりだったんだろう。
言われた問題はちゃんと解決させたと知らせてきているのだ。
優の視線が留伊へ向かうが、留伊は気がついていながら無視を決め込んでいる。
「剣道部のイジメってもしかして……」
「たぶん、そうだよね? 結構幅利かせてたらしいし」
「相手は後輩? 可愛そうだよねぇ」
ヒソヒソと、あちこちから囁き声が聞こえてくる。
その声が耳に入る度に優はうつむき、唇をかみしめている。
彼氏が後輩イジメをしていたことを恥ずかしいと感じているのかもしれない。
今まで自分が同級生たちにしてきたことを棚に上げて、被害者みたいな顔をしている。
私は内心フンッと鼻で笑う。
留伊がしてきたことを咎めることなんてできないくせに、都合のいい雌ブタだ。
とりあえず、これで優と涼香、優と留伊の関係がこじれてくれた。
優は気がついているだろうか。
自分にとって一番親しい人間たちが、どんどん遠ざかっていくことに。
私はこらえきれずにふふっと笑みをこぼしたのだった。
☆☆☆
今日はどんな不穏ラジオが流れてくるだろうか。
どうか、私にとって都合のいいものでありますように。
もう少しでカースト上位の人間関係が完全に壊滅できるんだ。
あと、もう少しなんだ。
そう思うと胸がワクワクしてなかなか眠れない。
目を閉じて浮かんでくるのは涼香のオロオロした表情と、優と留伊の喧嘩しているときの表情だった。
みんな自分たちが私の手によってバラバラにされていることに気が付かない。
こんなに愉快なことは他に経験したことがなかった。
いつもよりも早めに布団に入り、ラジオが聞こえてくるのを心待ちにする。
目はすっかり冴えてしまって目を閉じていても眠気は襲ってこない。
そうして時間を過ごしているとあの音楽が脳内に流れ始めた。
待ちに待った不穏ラジオの時間だ!
私はパッと目を開けて暗闇を見つめる。
ラジオの音楽が小さくなっていくと、いつもの男性DJの声が聞こえ始めた。
【みなさまこんばんわぁ! 今日も始まりました不穏ラジオのお時間です!】
私は布団の中で手を叩く。
子供の頃女の子が悪者を倒していくマンガにハマっていた時期がある。
そのときもアニメのオープニングが流れるとこうして拍手していたっけ。
今、私は幼少期に戻った気持ちでラジオを聞いている。
【今日も相変わらず大谷高校2年A組についての不穏要素を暴露していきまっしょう!】
待ってました!
と、お囃子のように口の中で呟く。
それに答えるようにDJの声は更に軽快になっていく。
【今までも色々と不穏要素の多いクラスでしたが、今回は久保涼香についての不穏要素のお話です!】
涼香の番だ!
私は期待に胸をふくらませる。
今日だけで随分と優と涼香の関係をこじれさせることに成功していたけれど、さらなる不穏要素があれば決定的な亀裂を入れることができるかもしえない!
私はゴクリと唾を飲み込んで次の言葉を待った。
【久保涼香は実は……】
DJはいつものようにもったいつけて間を置く。
次の言葉を心待ちにしているせいか、その間はいつもよりも長く感じられてじれったい。
それでも我慢して待っていると、DJの愉快の声が聞こえてきた。
【実はかなりの嘘つきです!!】
十分な間を取ったわりにすでに知っている不穏要素だったので、口から息が漏れて出た。
今更そんなことを伝えられても、もうクラス全員が知っていることだ。
【嘘を長野優に吹き込んでクラス内でイジメを行う。かなりの悪事を働いているみたいですねぇ】
DJは深刻そのものの声色で説明を続けるが、私はすでに興味を失っていた。
涼香のデマ流しの被害はすでに何度も受けているし、別の生徒だって同じ被害に遭っている。
今日の不穏ラジオはどうやら不発だったようで、不服な気持ちが湧き上がってきた。
もう少しでカーストトップに君臨している奴らの関係を崩すことができると思っていたのに、これじゃ台無しだ。
けれど、ラジオは続いている。
もう聞かなくていいと判断しても自分の意思で消すことはできない。
DJの軽快な声が脳内に流れ続ける中、私は布団を頭からかぶって明日のことを考えた。
まぁいい。
今回は不穏ラジオの力を使わなくてもどうにかなりそうだから。
一刻も早く涼香を地獄へと突き落とす方法を、私は夜中まで考え続けたのだった。
☆☆☆
翌日学校へ行くと教室内が騒がしかった。
なにかあったんだろうか。
そう思っても私には質問する相手がいないので、そのまま自分の席に座る。
そして聞き耳を建ててみることにした。
「剣道部のイジメって、やっぱり留伊だったらしいな」
「かなりひどかったんだろ?」
「だから停学処分になったんだってよ」
男子たちの会話から、それらのことがわかった。
留伊が停学処分になった。
声を出して笑ってしまいそうになり、慌てて両手で自分の口を覆った。
悪いことをしていればそれがバレたときに相応のしっぺ返しがやってくるのは当然のことだ。
留伊がいない間、剣道部の後輩たちは思う存分部活を楽しむことができるだろう。
留伊が学校に戻ってきたとしても、再び剣道部で活動できるかどうかも怪しい。
成績優秀だったそうだから特別に再入部できたとしても、監視体勢は厳しいものになるはずだ。
今まで幅を聞かせていた留伊がしばらく学校に来ないとなると、私の心も軽かった。
しかし、それで不機嫌になる生徒もいる。
優だ。
優はまだ登校してきていないようだけれど、留伊の停学処分についてはすでに知っているかもしれない。
優が今日1日どんな様子で過ごすのか見るのが楽しみだった。
と、その前にやることがあったんだった。
私は机からノートを取り出すと、一番後ろのページを1枚破った。
教卓に置いてあるペン立てから太いマジックを一本拝借して、左手で持つ。
それは優の机に整形ブスと書いたメモを入れたときと同じやり方だった。
優はまだ、あのメモを書いた犯人が私だとは気がついていない。
もしかしたら一生気が付かないかもしれない。
そんな愉快な気持ちになりながら、下手な文字でなぐり書きをしていく。
『中西留伊がイジメをしていたのはデマ。デマを流したのは久保涼香』
前回よりも長い文章だからバレないか少し心配だけれど、これを優の机に入れておかなければ意味がない。
涼香のデマ流しは優もよく知っていることだから、きっとこのメモを信じてくれるはずだ。
涼香のせいで彼氏の留伊が停学処分になったとわかった優は、どういう反応を見せるだろう。
今から楽しみで仕方がない。
私は自分の席を立ち、通り過ぎるフリをして優の机の前を通った。
そっとノートに書いたメモを机の中に入れてそのまま通り過ぎる。
こういうとき、存在が空気な自分が本当に役立っていると思う。
私がなにをしようが、誰も気にとめる生徒はいないのだから。
そのまま教室を出ようとしたとき、正広が教室に入ってきて危うくぶつかりそうになってしまった。
慌てて足を止めて「ごめんなさい」と謝る。
正広からは爽やかなな柔軟剤の香りが漂ってきている。
「こっちこそごめん。ぶつかってないよね?」
正広は本当に心配そうな顔を私へ向けてくれた。
その時少し腰をかがめて身長を合わせてくれたので、正広の顔が至近距離にあって心臓が跳ね上がった。
「だ、大丈夫だよ」
カッと体温が急上昇して真っ直ぐに正広の顔を見ることができなくなる。
「それならよかった。あ、挨拶がまだったよね。おはよう」
にっこりと微笑む正広に頭がクラクラしてきてしまう。
クラス内で挨拶を交わした経験はほとんどない。
そんな私にでも正広は当然のように挨拶をしてくれる。
やっぱり、私の目に狂いはないんだ。
後輩イジメをしている留伊なんかよりも正広のよっぽどいい男だ。
「お、おはよう」
私は顔をほてらせながらそう返事をして、慌てて教室を出たのだった。
☆☆☆
そのまま女子トイレに入って鏡で自分の顔を確認する。
思っていたとおり耳まで真っ赤だ。
これじゃ正広に自分の気持を知られてしまったかもしれない。
「どうしよう……」
両手で自分の頬を包み込んで呟く。
今まで片思いが実ったことは1度もない。
だから今回も期待はしてない。
でも……相手から挨拶してもらえたのだって、今回が初めての経験だったのだ。
今まで好きな人ができて、頑張って自分から話し掛けても無視されることばかりだった。
それなら挨拶だけでもと思っても、私が挨拶すると必ず嫌そうな顔をされた。
その時点で私の恋は終わるのだ。
なにもっしていないのと同じ状態のまま、なぜか相手に嫌がられて距離ができる。
それはきっと私がいてもいなくてもいいような、透明人間だからだろう。
クラス内でも目立たず、ほとんど口も開かない。
そんな暗い女子生徒に気に入られても相手は困るだけなんだろう。
私のような生徒よりも、優みたいに華やかな生徒に気に入られるほうがいいに決まっている。
それは私だって理解していた。
でも、少しでもいいから私自身を見てほしかった。
一緒にいて距離が近くなれば、私だって普通に会話できるようになる。
もしかしたら、同じマンガを読んでいるかもしれないし、同じアーティストが好きかもしれない。
だけど毎回そうなる前に恋心は終わってしまうのだった。
「今回は違う。今回は絶対に違う」
私は鏡の中自分へ向けてそう言い聞かせた。
正広は優しい。
それは誰に対してでも同じだということはわかっている。
だからこそ、自分にもああして声をかけてくれているのだ。
だから、私にもみんなの同等にチャンスがあるはずなんだ。
冷たい水で化粧っ気のない顔を洗って熱を冷ます。
最近は不穏ラジオのおかげで自分の行動がアクティブになっていると自覚していた。
できればこの調子で恋愛も頑張っていきたい。
なによりも今の自分にはそれができると信じていた。
もう私は以前のような根暗女じゃない。
私は制服のポケットから色つきのリップクリームを取り出した。
唇が荒れるから持ち歩いているのだけれど、普段はあまり使わない。
間違えて色つきを購入してしまったせいで、周りからなにか言われるのではないかと、湖たかったからだ。
そのリップを丁寧に唇へ塗っていく。
これくらいのこと誰でもやってる。
違和感はない。
大丈夫。
たったそれだけで私の心臓は早鐘を打ったのだった。
☆☆☆
教室へ戻るとなんとなくみんなの視線を感じるような気がする。
リップを塗る。
ただそれだけの行為でさっきまでの教室とは別のものを見ているような気持ちになった。私は背筋を伸ばして自分の席へ向かう。
そんな私に気がついて風翔が視線を向けてきたけれど、無視した。
今の私には風翔になんて興味がない。
そのまま自分の席に座り、教室内を見回してみた。
優はまだ来ていないようだ。
涼香の方が先に登校してきていて、優が来るのを落ち着かない様子で待っている。
今日も涼香は優のご機嫌取りに勤しむことだろう。
でも、それがどれだけ効果があるだろうか。
もしかしたら、優の気持ちを逆なでして終わるかもしれない。
そんなことを考えていたら待ちに待っていた優が登校してきた。
優は朝から不機嫌そうな顔をしていて、教室に入ってくると同時に教室内をグルリとにらみつけるようにして見回した。
それは誰も自分に話し掛けてくるなといいたそうな、威圧的な視線だった。
彼氏が停学処分になってしまったのだから、今は誰からも話し掛けられたくない気分なんだろう。
それなら学校を休めばいいのにと思うが、きっと優のプライドがそれを許さないんだろう。
優は大股で自分の席まで移動すると、派手な音を立てて椅子を引き、そこに座った。
その一連の動作はわざとらしくて、余計に視線を集めている。
「ゆ、優、おはよう」
あんなに威圧的な空気を出しているのに、涼香が話し掛けに言った。
そっとしておけばいいのに、もしかしたら涼香はただのバカなのかもしれない。
「あ、あのさぁ。今日もジュースとか、その、色々買ってくるから、私になんでも言ってね」
しどろもどろになりながらも、自分は優の従順なしもべであると伝えている。
そんな涼香へ向けて優は「それならどっか行ってて。邪魔だから」と、一括した。
涼香は優の言葉にビクリと体を震わせると、慌てて自分の席へと戻っていく。
その姿が滑稽でふふっと小さく笑ってしまった。
一瞬涼香と視線がぶつかって睨まれてしまった。
でも、怖くない。
前は怖かったかもしれないけれど、今の涼香はトラである優を失ったただのキツネだ。
私はリップをつけた唇で微笑んで見せた。
涼香が私の反応に驚いて立ち止まる。
そしてなにかいいたげに口を開いたそのときだった。
いつの間にか優が涼香の真後ろに立っていた。
そして次の瞬間、涼香の後頭部を平手で叩いていたのだ。
パンッ! と音がして涼香の体がぐらりと揺れる。
打ちどころが悪かったのか、そのままへたり込んでしまった。
軽い脳震盪でも起こしているのか、へたり込んだ涼香の視線は定まらない。
そんな涼香を、優は真っ赤な顔で睨みつけた。
「お前のせいだ!!」
叫ぶ優の手には、私が仕込んでおいたメモ書きが握りしめられていたのだった。
☆☆☆
「し、知らない! 私じゃない!」
ようやく焦点が合ってきたのか、涼香は優の手に握りしめられているメモを見て青ざめた。
「お前はいつだって嘘つきだった! だから今回もお前がやったんだろ!」
「違うってば!」
涼香がいくら弁解しようとしても優は聞く耳を持たない。
それは普段の涼香が嘘を付き続けてきた結果だった。
優は闇雲に涼香を殴りつけ、涼香はそれから必死で逃げる。
「お前のせいで留伊が停学処分になったんだ!」
真っ赤な顔で起こり続ける優に、ついに涼香は教室を飛び出して行ってしまった。
きっと、休憩時間が終わるまで戻って来ることはないだろう。
優は肩で大きく呼吸をしてゴミ箱にメモを投げ入れたのだった。
☆☆☆
この日は私にとって人生で最も愉快な1日だったと言っても過言ではないかもしれない。
涼香はどうにか優の誤解を解こうと必死で、ご機嫌取りに余念がなかった。
けれど優は涼香を突っぱね続けて最終的には涼香の机から教科書やノートと引っ張り出すと、本人の目の前で切り刻んでしまったのだ。
それは今まで涼香と優のふたりが他の生徒のイジメで行ってきたのと、同じような行為だった。
自分へ向けられた本気の敵意に涼香は愕然とした表情を浮かべて、それ以降優に話しかけることはなくなった。
「ねぇ、一緒にお弁当食べない?」
それでも1人になるのが怖い涼香は普段一緒にいないグループの生徒たちへ声をかけはじめた。
声をかけられた生徒たちは一様に困った表情を浮かべて「ごめんね」とひとこと言うと、お弁当箱を持って教室から出ていってしまった。
きっと、優に目をつけられているから涼香と一緒に食事なんてできないんだろう。
優の怒りっぷりは尋常じゃないから、下手をすれば自分たちまで被害を受けてしまう。
だから、結局涼香は昼ごはんの時間も一人になっていた。
1人きりでお弁当箱を広げた涼香は居心地が悪そうに視線を泳がせている。
涼香以外に1人でお昼を食べている生徒は私と風翔くらいなものだ。
私はすでに一人での食事に慣れているからどうってことはないけれど、涼香は背中を丸めてなにかから隠れるようにして食べている。
時折視線がぶつかっても、涼香は決死て私に『お弁当一緒に食べない?』と、話し掛けてくることはなかった。
まるで、それをしてしまったら完全に終わってしまうとでも思っているように、頑なに声をかけてこない。
私はそんな涼香を見て鼻で軽く笑った。
クラス最底辺である私に話し掛けなくても、もうお前は終わってるんだよ。
心の中で毒づいて優へ視線を向ける。
涼香と違って他の友人らに囲まれてお弁当を広げている優は、涼香が他の生徒たちと仲良くしないように目を光らせているように見える。
ここまで追い詰められた涼香を見るのは初めてかもしれない。
私は自分の心が浮き立つのを感じる。
いつもずる賢く、優の腰巾着である涼香がしばらく静かにしてくれていれば、学生生活も穏やかなものになるはずだ。
ホッとするのと同時に視界の端に正広の姿が見えた。
正広は友人3人と一緒にお弁当を囲み、談笑しながら食べている。
その姿を見ているだけで胸がときめく。
穏やかな学生生活はどうにか手に入れることができそうだから、次はやっぱり彼氏だろうか。
今の私に決定的に欠けているものは、それだと思う。
私はソースのついた唇をペロリとなめる。
今すぐには無理でも、いつか正広の隣を歩いてみたい。
手をつないで帰ったり、休日に待ち合わせをしてデートをしたり。
それは今までの自分にとって無縁なものだと思っていた。
学校へ来ても誰ともまともに会話しない私にとって、恋愛なんて雲の上の出来事だったから。
でも、今は違う。
誰にも気が付かれていなくても、教室内の変化を作り上げたのはまちがいなく自分自身なのだ。
それは確実に自分の中で自信として蓄積されていっていた。
いつか恋人になった人の隣を歩くことができれば、それこそ自分の理想とする青春そのものだった。
私の視線に気がついたのか、正広がこちらを向いた。
咄嗟に目をふせて見ていないフリをする。
心臓がドキドキと音を立てているのを感じて、顔が熱くなっていく。
こんなんじゃ、自分の気持を悟られるのは時間の問題かもしれない。
私はそう感じたのだった。
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