上 下
27 / 61
魔法少女派遣会社

ちんぷんかん☆ロストワールドってなんじゃらホイ

しおりを挟む

「死んだ……? へ? どういう意味?」

「あれ? アネさんもしかして、その辺の説明は、まだダ眼鏡のほうから受けてないんスか?」

「う、うん、説明を受けるもなにも、その情報自体はじめて聞いたっていうか……え、どういう事? 私……というかツカサの言い方からすると、私たち、いま死んでるの?」

「や、まあ……、死んでるか死んでないかで言えば、今は生きてるんスけど、うーん……じゃあこれ、ウチから言うべきじゃなかったんかな……まいったな、アネさんが知らないんだったら、こんな事訊くべきじゃないよな……とはいえ、これを言わないダ眼鏡の考えもわけわかんねぇし……」


 ツカサは口をへの字に曲げて難しそうな顔をすると、腕を組み、うんうんと唸り始めた。

〝今は生きている……?〟
 という事は、つまり一度は死んでいるって事? 何?
 さっぱりわからない。さっきまでのほろ酔い気分は抜け、いまの私は完全にシラフになっていた。


「ツカサ、その話めっちゃ気になるんだけど」

「そりゃ……そっスよね。すんません、なんか混乱させちゃって。……でも、アネさんが知らないって事は、ダ眼鏡はあえてアネさんに伝えてなかったんスかね……、それとも、単に忘れていただけか……」

「忘れてただけだと思うよ」


 キッパリという。
 ただツカサの話の続きが気になるから急かしているだけ、というのもあるけど、玄間さんは玄間さんで、たぶんそこまで考えてないと思う。バカっぽいし。


「うーん、そうなんスかねぇ……」

「今日玄間さんと初対面だったけど、あの人なんか抜けてるっぽいし、言いそびれたんだと思うよ」

「たしかに、その可能性もあるっスよね。……うーん、でも、やっぱりダ眼鏡からの説明を受けたほうが……なによりウチ、そういうの説明するの、あんまり上手くないっスからね……」

「お願いツカサ! ツカサのほしいもの、なんでも買ってあげるから!」

「わかったっス!」


 これまた即答。
 ツカサの部屋を見た限りだと(引っ越したばかりというのもあるけど)、あんまり物が置いてないから、そんなに物欲はなさそうって思ってたけど、結構高いほうなのかな?
 まあ無いとは思うけど、三桁万円くらいするブランド物のバッグとかねだられたら、しばらくは小麦粉生活かな。でも、それくらい気になってしまうワケで──


「じゃあ不肖、この芝桑司が、頑張って魔法少女について説明していくっスね」

「うん、おねがいね」

「そっスね……じゃあとりあえず、アネさんがどこまで〝魔法少女〟を理解してるか知りたいから、まず質問したいんスけど、アネさんはあの日、インベーダーたちがこの世界に攻めてきた日、何をされてたっスか?」

「インベーダーたちが攻めてきた日……ごめん、その日なんだけど……たぶん、私寝てたかも……」

「ね、寝てた……?」

「うん。じつは私、最近までずっと留置場にいてさ……」

「り、留置場?! ……アネさん、何やらかしたんスか!」


 人を二人殺しました。しかも連続強姦殺人犯を。後に国公認になったけど。
 ……なんて、言ってもビックリされるか引かれるだけだ。ここは適当にはぐらかしておこう。とはいえ、留置場にいれられそうな犯罪なんて、すぐには思いつかない。ここは──


「えっと、まあ色々……?」

「い、色々ヤったんスか……!? スゲー……! でも、それってやっぱ、訊かないほうがいいんスよね、んー、でも聞きてー……! アネさんの武勇伝!」


 色々勘違いされてる気がしなくもない……いや、勘違いとも言い切れないか。
 ともかく、ここはサラッと流しておこう。


「そ、それはまた今度ね。……話を戻すけど、留置場に入る前は病院にいて、そこでずっと寝てたらしいんだ。その、インベーダーが攻めてきてた間もね。だから、私もよくわかってないんだよね。現状やらなにやらと」

「病院スか……? さすがに色々ヤったとなると、アネさんといえど無傷ってわけにはいかなかいんスね……」


 サラっと言ったから聞き流してほしかったけど、やっぱり病院のくだりは拾っちゃうよね。
 それになんか、ツカサの中での私が、どんどん化物になってってない? 大丈夫かな、これ。あとで辻褄とか合わすのスゴイ大変そう。


「でも、あんなことが起きたのに、病院で寝てただけなんて、やっぱりアネさんはすごいっス!」

「……それ、なんかバカにしてない?」

「とんでもない! 人類が滅びかけた日も、ずっと気にせず寝てたって事なんスよね? もうそれ、ある意味超越してるじゃないっスか! 人間を! マジリスペクトっスよ!」


 なんかちょくちょく『ん?』ってなるような事を言ってくるけど、首が千切れそうになるくらい激しく左右に振ってるし、悪気はないと思う。……思いたい。


「──まあ、今のアネさんとの話で、大体アネさんがどのくらい〝魔法少女〟を知ってるか理解できたっス」

「そうなんだ。ちなみに、どのくらい理解してた?」

「全然っスね!」

「またそんなハッキリと……でもツカサの言う通り、私って全然、この世界の事も、魔法少女の事もわかってないんだよね」

「そんなの全然問題じゃないっスよ。これから知っていけばいいんスから」

「ん、だね。とりあえず、私がほとんど何も知らない体で話してくれる?」

「了解っス! ……じゃあまずは、〝ウチらが死んでるかも〟についてなんスけど、正確に言うと、〝死んでるかも〟ではなく、〝一度死んだ〟っスね」

「一度死んだ……私たち、つまり魔法少女が?」

「そス。ウチ含め、魔法少女になってるヤツら全員が、あの日、インベーダーが攻めてきた日に、何かしらの理由で一度死んでるんス」

「何らかの理由……か」

「はい。その理由についてはもう、そいつによって色々あるんで、特に関係は無さそうなんスが、とにかくその日、〝ウチらは死んでいた〟というのだけ覚えておいてくださいっス」

「そう……なんだ」

「こんな事訊くのもアレなんスけど、アネさんには心当たりはないっスか? まあ、アネさんの場合もう神っスから、気合で魔法少女になったって言われても全然信じるっスけど」

「……あるかも。心当たり」


〝私が死んだ心当たり〟
 改めて言葉にすると、文字にして反芻してみると、多少違和感があるけど、その心当たりは確かにある。あの時、強姦殺人犯の男に刺された時、私は確かに私が死んでいくのを感じた。


「じゃあその時、何か……こう……暖かいものに包まれたのは覚えてますか?」

「うん、覚えてる。あの時、天国にいるのかなとか思ってたから」

「ウチもそんな感じでした。……で、これはまだ確証(?)は得てないんスけど、それがウチら魔法少女が〝力〟を得た理由らしいんス」

「えっと、つまりどういう事……?」

「ここからがちょっと複雑になるんスけど、まずインベーダーって、この世界に昔からいた化物じゃなかったんスよ。じゃあどこから来たんだって話になるんスけど、どうやらヤツら、ここではない世界〝ロストワールド〟とかいうところからやってきたらしいんすよね」

「ろ、ろすとわーるど……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

平凡なサラリーマンのオレが異世界最強になってしまった件について

楠乃小玉
ファンタジー
上司から意地悪されて、会社の交流会の飲み会でグチグチ嫌味言われながらも、 就職氷河期にやっと見つけた職場を退職できないオレ。 それでも毎日真面目に仕事し続けてきた。 ある時、コンビニの横でオタクが不良に集団暴行されていた。 道行く人はみんな無視していたが、何の気なしに、「やめろよ」って 注意してしまった。 不良たちの怒りはオレに向く。 バットだの鉄パイプだので滅多打ちにされる。 誰も助けてくれない。 ただただ真面目に、コツコツと誰にも迷惑をかけずに生きてきたのに、こんな不条理ってあるか?  ゴキッとイヤな音がして意識が跳んだ。  目が覚めると、目の前に女神様がいた。  「はいはい、次の人、まったく最近は猫も杓子も異世界転生ね、で、あんたは何になりたいの?」  女神様はオレの顔を覗き込んで、そう尋ねた。 「……異世界転生かよ」

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

処理中です...