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魔法少女派遣会社
ちんぷんかん☆ロストワールドってなんじゃらホイ
しおりを挟む「死んだ……? へ? どういう意味?」
「あれ? アネさんもしかして、その辺の説明は、まだダ眼鏡のほうから受けてないんスか?」
「う、うん、説明を受けるもなにも、その情報自体はじめて聞いたっていうか……え、どういう事? 私……というかツカサの言い方からすると、私たち、いま死んでるの?」
「や、まあ……、死んでるか死んでないかで言えば、今は生きてるんスけど、うーん……じゃあこれ、ウチから言うべきじゃなかったんかな……まいったな、アネさんが知らないんだったら、こんな事訊くべきじゃないよな……とはいえ、これを言わないダ眼鏡の考えもわけわかんねぇし……」
ツカサは口をへの字に曲げて難しそうな顔をすると、腕を組み、うんうんと唸り始めた。
〝今は生きている……?〟
という事は、つまり一度は死んでいるって事? 何?
さっぱりわからない。さっきまでのほろ酔い気分は抜け、いまの私は完全にシラフになっていた。
「ツカサ、その話めっちゃ気になるんだけど」
「そりゃ……そっスよね。すんません、なんか混乱させちゃって。……でも、アネさんが知らないって事は、ダ眼鏡はあえてアネさんに伝えてなかったんスかね……、それとも、単に忘れていただけか……」
「忘れてただけだと思うよ」
キッパリという。
ただツカサの話の続きが気になるから急かしているだけ、というのもあるけど、玄間さんは玄間さんで、たぶんそこまで考えてないと思う。バカっぽいし。
「うーん、そうなんスかねぇ……」
「今日玄間さんと初対面だったけど、あの人なんか抜けてるっぽいし、言いそびれたんだと思うよ」
「たしかに、その可能性もあるっスよね。……うーん、でも、やっぱりダ眼鏡からの説明を受けたほうが……なによりウチ、そういうの説明するの、あんまり上手くないっスからね……」
「お願いツカサ! ツカサのほしいもの、なんでも買ってあげるから!」
「わかったっス!」
これまた即答。
ツカサの部屋を見た限りだと(引っ越したばかりというのもあるけど)、あんまり物が置いてないから、そんなに物欲はなさそうって思ってたけど、結構高いほうなのかな?
まあ無いとは思うけど、三桁万円くらいするブランド物のバッグとかねだられたら、しばらくは小麦粉生活かな。でも、それくらい気になってしまうワケで──
「じゃあ不肖、この芝桑司が、頑張って魔法少女について説明していくっスね」
「うん、おねがいね」
「そっスね……じゃあとりあえず、アネさんがどこまで〝魔法少女〟を理解してるか知りたいから、まず質問したいんスけど、アネさんはあの日、インベーダーたちがこの世界に攻めてきた日、何をされてたっスか?」
「インベーダーたちが攻めてきた日……ごめん、その日なんだけど……たぶん、私寝てたかも……」
「ね、寝てた……?」
「うん。じつは私、最近までずっと留置場にいてさ……」
「り、留置場?! ……アネさん、何やらかしたんスか!」
人を二人殺しました。しかも連続強姦殺人犯を。後に国公認になったけど。
……なんて、言ってもビックリされるか引かれるだけだ。ここは適当にはぐらかしておこう。とはいえ、留置場にいれられそうな犯罪なんて、すぐには思いつかない。ここは──
「えっと、まあ色々……?」
「い、色々ヤったんスか……!? スゲー……! でも、それってやっぱ、訊かないほうがいいんスよね、んー、でも聞きてー……! アネさんの武勇伝!」
色々勘違いされてる気がしなくもない……いや、勘違いとも言い切れないか。
ともかく、ここはサラッと流しておこう。
「そ、それはまた今度ね。……話を戻すけど、留置場に入る前は病院にいて、そこでずっと寝てたらしいんだ。その、インベーダーが攻めてきてた間もね。だから、私もよくわかってないんだよね。現状やらなにやらと」
「病院スか……? さすがに色々ヤったとなると、アネさんといえど無傷ってわけにはいかなかいんスね……」
サラっと言ったから聞き流してほしかったけど、やっぱり病院のくだりは拾っちゃうよね。
それになんか、ツカサの中での私が、どんどん化物になってってない? 大丈夫かな、これ。あとで辻褄とか合わすのスゴイ大変そう。
「でも、あんなことが起きたのに、病院で寝てただけなんて、やっぱりアネさんはすごいっス!」
「……それ、なんかバカにしてない?」
「とんでもない! 人類が滅びかけた日も、ずっと気にせず寝てたって事なんスよね? もうそれ、ある意味超越してるじゃないっスか! 人間を! マジリスペクトっスよ!」
なんかちょくちょく『ん?』ってなるような事を言ってくるけど、首が千切れそうになるくらい激しく左右に振ってるし、悪気はないと思う。……思いたい。
「──まあ、今のアネさんとの話で、大体アネさんがどのくらい〝魔法少女〟を知ってるか理解できたっス」
「そうなんだ。ちなみに、どのくらい理解してた?」
「全然っスね!」
「またそんなハッキリと……でもツカサの言う通り、私って全然、この世界の事も、魔法少女の事もわかってないんだよね」
「そんなの全然問題じゃないっスよ。これから知っていけばいいんスから」
「ん、だね。とりあえず、私がほとんど何も知らない体で話してくれる?」
「了解っス! ……じゃあまずは、〝ウチらが死んでるかも〟についてなんスけど、正確に言うと、〝死んでるかも〟ではなく、〝一度死んだ〟っスね」
「一度死んだ……私たち、つまり魔法少女が?」
「そス。ウチ含め、魔法少女になってるヤツら全員が、あの日、インベーダーが攻めてきた日に、何かしらの理由で一度死んでるんス」
「何らかの理由……か」
「はい。その理由についてはもう、そいつによって色々あるんで、特に関係は無さそうなんスが、とにかくその日、〝ウチらは死んでいた〟というのだけ覚えておいてくださいっス」
「そう……なんだ」
「こんな事訊くのもアレなんスけど、アネさんには心当たりはないっスか? まあ、アネさんの場合もう神っスから、気合で魔法少女になったって言われても全然信じるっスけど」
「……あるかも。心当たり」
〝私が死んだ心当たり〟
改めて言葉にすると、文字にして反芻してみると、多少違和感があるけど、その心当たりは確かにある。あの時、強姦殺人犯の男に刺された時、私は確かに私が死んでいくのを感じた。
「じゃあその時、何か……こう……暖かいものに包まれたのは覚えてますか?」
「うん、覚えてる。あの時、天国にいるのかなとか思ってたから」
「ウチもそんな感じでした。……で、これはまだ確証(?)は得てないんスけど、それがウチら魔法少女が〝力〟を得た理由らしいんス」
「えっと、つまりどういう事……?」
「ここからがちょっと複雑になるんスけど、まずインベーダーって、この世界に昔からいた化物じゃなかったんスよ。じゃあどこから来たんだって話になるんスけど、どうやらヤツら、ここではない世界〝ロストワールド〟とかいうところからやってきたらしいんすよね」
「ろ、ろすとわーるど……」
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