転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店

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第6章

7話 精霊の迷い家~当事者の苦闘と見物人の呟き~

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 皆様おはようございます。
 王国軍が突入してから更に時間が流れまして、現在の時刻は午前6時。私だけでなく村のみんなも既に、山頂に立てた避難所の共同住居にあるベッドから起き出し、1階にある食堂でのんびり朝ご飯を取っている所です。
 当然、身支度は完全に終わっている。
 この村は世帯の大半が農家だから、朝がだいぶ早いのだ。

 今日のメニューは、村のみんなが避難所の備蓄で作ってくれた、ベーコンエッグと人参のサラダ、厚切り全粒粉食パンのトーストの計3品で、飲み物は搾りたてのミルク。これってある意味、最高の贅沢だよね。

 カリカリに焼かれた、ちょっとだけ厚みのあるベーコンと、程よい半熟具合に焼き上がった目玉焼きのコンビは最強だと思う。
 それに、村の人達が生卵や半熟卵に忌避感持ってなくてホントによかった。
 新鮮な卵が手に入りやすい、田舎の村であるがゆえの感覚と習慣に心からの感謝を。

 勿論、人参サラダだって美味しい。丁寧に細切りにしてある人参の、程よい食感もナイスだけど、なによりドレッシングが凄い絶妙な味。どうやって作ってるのか、絶対後で教えてもらわねば。
 それに、野イバラの実のジャムをたっぷり乗せたトーストも最高だ。トーストされて香ばしさが増した全粒粉パンに、爽やかな風味と甘酸っぱさを兼ね備えたジャムがベストマッチ。
 こいつら間違いなく終生のズッ友だよ。ああ幸せ。

 美味しいご飯に舌鼓を打ち、みんなで楽しくおしゃべりしながら至福のご飯タイムを済ませ、洗い物を終わらせたのち(私も洗い物くらいはしましたよ?)、再び昨日と同じモニター前へ集まって、クソ王達の見物……もとい、監視を再開する。

 どうやら連中は、論理クイズの出題場所で夜を明かしたようだ。
 床の上で車座になり、揃いも揃ってあんまりよろしくない顔色に辛気臭い表情を張り付け、ジャーキーやナッツといった、なんとも味気なさそうな携帯食料をモソモソんでいる。脇にある革袋には、多分水かなんかが入ってるんだろう。
 あーあ、あんなわびしいご飯じゃ元気出ないだろうな。

 でもまあ、それも仕方がない事だ。
 あちらさんとしては、精々半日程度でとっとと決着つける腹積もりだったんだろうし、野営の為の食糧や、煮炊きをする為の道具なんて持ち込んでる訳がない。
 携帯食料の持ち合わせがあっただけ、まだマシだろうよ。

 昨日は、クソ王達が第2領域の最終局面である論理クイズでつまづきまくり、6問目から全く進めなくなった所で監視に飽きて、みんな揃って避難所の中に引っ込んで以降、ほとんど様子を見てなかったから、今どうなってんのかな、と思ったら、なんと8問目にまで到達していてびっくり。
 なんか、思った以上に頑張って解いてるじゃん。
 結構ややこしい設問が多かったのに、やるな。

 あのクソ王、性格は実にクソだが、オツムの出来は相当いいようだ。
 こりゃ場合によっては救済措置が必要かな、とも思ってたが、この分ならもうしばらく放置して様子を見ててもいいだろう。
 こういうクイズ中心の見世物は派手さに欠けるから、劇的な回答でも出ない限り、見てるうちにだんだんダレてくるけどね……。

 ああ。こんな時、録画機能があったらなあ。
 そしたら、昨日の面白名場面を抜き出して、暇潰しに流していられたのに。
 結構面白い所多かったんだよな。『ドキッ! 落とし穴だらけの殺風景な大広間』では、部下の兵士共々落とし穴にポロポロ落っこちまくってたし、落っこち方がまた滑稽で笑えた。


 何より、『ピタゴラスイッチの嫌がらせ大迷路』での連中の動きは、バラエティ番組としてかなり秀逸だったように思う。
 クソ王だけでなく、将軍も兵士も時間差で起動する罠に、そりゃあ面白いように引っかかりまくってねぇ。
 片足ロープの罠にかかって逆さ吊りになって、半ばパニック起こしてジタバタもがいて騒ぐ将軍とか、めっちゃ笑えたな。てか、ぶっちゃけ今日び、身体張る系のお笑い芸人でも、あそこまで罠に引っかったりしないんじゃね?

 あと、先へ進む為の鍵を取るギミックを、わざと『棒と椅子を上手く使ってバナナを取る』タイプの、チンパンジーの知能テストみたいなヤツにしといた時のも面白かった。
 あのクソ王、「どこまで私をコケにするつもりだー!」とか言って、マジギレして大騒ぎするんだもん。

 いつの間にやら、お目目の部分に分かりやすい青タンこさえて、ほっぺを半端に腫らしたクソ王が大口開けて喚くたび、一本欠けた前歯が視界に入って絶妙に笑いのツボを刺激してくるし、残りの兵士と将軍は狼狽えまくって右往左往するばっかだし……あれは腹抱えて笑ったな。

 あー、あれもういっぺん見たかった。
 ホント、録画機能が存在しない事が惜しまれてならない。録画観てる間だって、現状の進み具合を画面の端っこ辺りにワイプで抜いときゃ、忘れてほったらかしたりせずに済むしさ。


「――プリム、プリム。そろそろ起きた方がいいよ、プリム」

「ん……う~~ん……。むにゃ……。ふあぁあ……。なに、何か進展あった?」

 ため息交じりにボケッとしながら画面を見続ける事、2時間あまり。
 案の定、8問目以降の回答が遅々として進まず、モニターを見るのに飽きてうっかり居眠りしていた所を、リトスに横からつつかれて起こされた。

「うん。今王様達、最後の問題を解いたよ。もうすぐ第2領域から抜けると思う」

「……ほーん。ちゃんと自力で何とかできたんだ。見た感じ、心身共にヘロヘロになってるみたいだけど」

「そりゃまあ、ヘロヘロにもなると思うよ……。さっきモーリン様に、暇潰しに設問の一部を見せてもらったけど、どれも回答する以前に、読解自体が面倒な問いばっかりだったし」

「でしょうねえ。私でも解けないもの。あの問題。でも……それをほぼ自分1人の力で解いてのける辺り、やっぱあのクソ王、頭の回転だけはお見事みたいね。次の領域は、そうはいかないけど」

「難しいの?」

「勿論。ただ……次の領域では、頭はほとんど使わないわ。連中を待ってるのは、気合と根性とガチンコ体力勝負の、泥臭い肉弾戦よ」

 リトスの問いかけに、私はニヤリと笑いながら答える。
 最後の領域のクリア条件は単純明快だけど、クソ王達が超不利な事に変わりはないのだ。

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