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ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル
壁ドンするまで出れない部屋
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「お次は何の部屋?」
「はやくこんなところ出てトレーニングに行きたい」
「ちゃんと課題もやるんだよ」
「わ、わかってる」
一々うるさい。それくらいわかってるっつうの!
ギギィッと睨みつけるがユキは気づかない。流れるような動作でカードを拾って読む。
「お題は?」
ユキは答えることなくカードから顔を上げ僕の方をみる。
怖いくらいの笑顔で私を見つめてくる。気味が悪い。
僕は思わず一歩後ずさる。するとユキもそれに合わせて一歩寄ってきた。
僕が二歩下がればユキは二歩近づく。
「ねえユキ?」
僕の問いに答えは返ってこない。
代わりとばかりに圧をかけられる。
じりじりと後ろへ追い詰められる。
一歩、二歩、三歩──は進めなかった。踵が壁にぶつかる。
気がついた時には手遅れ。逃げ道がない。追い詰められていた。
ベッタリと背中をつけ、できる限りユキから離れる。
ユキはニコニコしながら距離を詰めてくる。
ゆっくりと着実に性格の悪さを滲み出しながら寄ってくる。
ぶつかるまであと一歩のところまで来て、耳のそばでドンと音がした。
無駄に整った顔が近寄ってくる。
「大っ嫌い」
耳元でそう囁かれ思わず蹴り飛ばした。
私の右膝蹴りをまともに喰らったユキは尻餅をついて僕を見上げている。
「何するのよ」
「そりゃこっちのセリフ。気持ち悪い」
「壁ドンするのがお題だから仕方ない」
お題なら壁ドンは仕方ない。けど。
「だからって近寄りすぎ。肘曲げる必要はないしわざわざ囁く必要もない」
「顔真っ赤にして照れてたくせに」
「照れてない!」
別に顔が整ってようが中身はこれだ。
照れる要素なんてない。
私はユキの方を見ないようにしながらズカズカと扉へ歩いていった。
「はやくこんなところ出てトレーニングに行きたい」
「ちゃんと課題もやるんだよ」
「わ、わかってる」
一々うるさい。それくらいわかってるっつうの!
ギギィッと睨みつけるがユキは気づかない。流れるような動作でカードを拾って読む。
「お題は?」
ユキは答えることなくカードから顔を上げ僕の方をみる。
怖いくらいの笑顔で私を見つめてくる。気味が悪い。
僕は思わず一歩後ずさる。するとユキもそれに合わせて一歩寄ってきた。
僕が二歩下がればユキは二歩近づく。
「ねえユキ?」
僕の問いに答えは返ってこない。
代わりとばかりに圧をかけられる。
じりじりと後ろへ追い詰められる。
一歩、二歩、三歩──は進めなかった。踵が壁にぶつかる。
気がついた時には手遅れ。逃げ道がない。追い詰められていた。
ベッタリと背中をつけ、できる限りユキから離れる。
ユキはニコニコしながら距離を詰めてくる。
ゆっくりと着実に性格の悪さを滲み出しながら寄ってくる。
ぶつかるまであと一歩のところまで来て、耳のそばでドンと音がした。
無駄に整った顔が近寄ってくる。
「大っ嫌い」
耳元でそう囁かれ思わず蹴り飛ばした。
私の右膝蹴りをまともに喰らったユキは尻餅をついて僕を見上げている。
「何するのよ」
「そりゃこっちのセリフ。気持ち悪い」
「壁ドンするのがお題だから仕方ない」
お題なら壁ドンは仕方ない。けど。
「だからって近寄りすぎ。肘曲げる必要はないしわざわざ囁く必要もない」
「顔真っ赤にして照れてたくせに」
「照れてない!」
別に顔が整ってようが中身はこれだ。
照れる要素なんてない。
私はユキの方を見ないようにしながらズカズカと扉へ歩いていった。
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