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ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル
原稿用紙10枚にお互いの名前を書き終えるまで出れない部屋
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「今度はなんの部屋だろ」
「はやくこんなところ脱出して実験の続きをしたいんだけど」
「迷惑はかけるなよ」
ユキには前科が多すぎる。
ほんと勘弁してほしい。
「カードあった。なるほど。やりたくない」
「カード見るよ。あー、千夜はこういう作業嫌いだもんね。ラッキー」
「何がラッキーだよ」
「千夜が嫌いなことをしないといけないから」
それでラッキーというとはなんとも性格の捻じ曲がったやつだ。
まあそれで前の部屋で悪くなった機嫌が戻ったからいいけれど。
「やらなきゃいけない?」
「もちろん!」
清々しい笑顔で言われてしまった。
改めて部屋の中央にある机とカードを見比べる。
この部屋のお題はお互いの名前を原稿用紙10枚にビッシリ書くことだ。
机に座ることさえ苦痛な僕にとっては地獄みたいなお題だ。
「さーて、やってくよ」
ユキは400字詰めの原稿用紙を一枚ちぎり、シャーペンを走らせはじめた。
サラサラと僕の名前が書かれてゆく。
僕もいい加減に覚悟を決めて椅子に座る。
向かい合わせなのが気に食わないので机を動かそうとしたが、部屋と一体化しているのか動かない。
「ちょっと、揺らさないでよ。あ、もしかして私の綺麗な顔面が気になって集中できないの?」
「そんな訳ない。調子乗らないで」
全く。ユキの顔が整っているのは否定しないが見慣れすぎて今更どうも思わない。いや、ちょっと腹立つくらいだ。
私は無心になってユキと書き続けた。ユキという字が字でなくなるまで書き続けた。
「やっと終わった」
「遅かったね」
「別にいいでしょ」
いちいちユキの言動に腹が立つものの、それに言い返すほどの気力は残っていない。
僕はフラフラとしながら扉を開けた。
「はやくこんなところ脱出して実験の続きをしたいんだけど」
「迷惑はかけるなよ」
ユキには前科が多すぎる。
ほんと勘弁してほしい。
「カードあった。なるほど。やりたくない」
「カード見るよ。あー、千夜はこういう作業嫌いだもんね。ラッキー」
「何がラッキーだよ」
「千夜が嫌いなことをしないといけないから」
それでラッキーというとはなんとも性格の捻じ曲がったやつだ。
まあそれで前の部屋で悪くなった機嫌が戻ったからいいけれど。
「やらなきゃいけない?」
「もちろん!」
清々しい笑顔で言われてしまった。
改めて部屋の中央にある机とカードを見比べる。
この部屋のお題はお互いの名前を原稿用紙10枚にビッシリ書くことだ。
机に座ることさえ苦痛な僕にとっては地獄みたいなお題だ。
「さーて、やってくよ」
ユキは400字詰めの原稿用紙を一枚ちぎり、シャーペンを走らせはじめた。
サラサラと僕の名前が書かれてゆく。
僕もいい加減に覚悟を決めて椅子に座る。
向かい合わせなのが気に食わないので机を動かそうとしたが、部屋と一体化しているのか動かない。
「ちょっと、揺らさないでよ。あ、もしかして私の綺麗な顔面が気になって集中できないの?」
「そんな訳ない。調子乗らないで」
全く。ユキの顔が整っているのは否定しないが見慣れすぎて今更どうも思わない。いや、ちょっと腹立つくらいだ。
私は無心になってユキと書き続けた。ユキという字が字でなくなるまで書き続けた。
「やっと終わった」
「遅かったね」
「別にいいでしょ」
いちいちユキの言動に腹が立つものの、それに言い返すほどの気力は残っていない。
僕はフラフラとしながら扉を開けた。
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