72 / 76
ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル
お互いの失敗談を話すまで出れない部屋
しおりを挟む
「今度は何の部屋?」
「さぁ。また何もない部屋だよ」
あるのはカード一枚のみ。
僕はカードを拾い上げ、ユキに渡す。
「面白いお題だね」
「ユキからどうぞ?」
ユキは上を向いて、しばらくうんうんと唸っている。
そうして、イチオシを思いついたらしくこちらを向いてニヤリと笑った。
「すこーし前の話だね。千夜は電車が遅れてたから優雅に遅刻してきたのね。先生に「遅延です!』と届出を出したんだけど、千夜の背中には制鞄がなかったの。千夜は荷物をぜーんぶ家に忘れてきて、手ぶらで来てた」
……そういえばそんなこともあったなぁ。
あのときは疲れていたのだ。
大会後で疲れていたのだ。
だから仕方ない、はずだ。
「忘れてくれない?」
「嫌だ」
「だよね」
ユキが忘れるはずないよね。
うん。知ってた。
結構なダメージが入った。
だがこれも仕方のないこと。
小さなダメージを受けても相手に大きなダメージを与えることができたらOKだ。
「次は僕の番だね」
「さぁて。鶏並みの記憶力しかない千夜は私の失敗談を覚えているのか!」
「それくらい覚えてる!」
本当につくづく失礼なやつだ。
「ユキは本当に抜けているところが多い。例えば自分の机が片付けられなくてプリントまみれになったことがあった。そのとき、先生に強制的に机のプリントを全て取り出されてプリントの裏に書いた謎のポエムを見られてたことだね。しかもそのうえ焦りまくって先生のことをお母さんと呼ぶ始末。愉快ったらありゃしない」
ユキが珍しく失態を晒していて非常に面白かった。
ユキでもポエムは書くし、先生を間違えてお母さんって呼ぶんだ、と親近感が湧いた事件でもあった。
「それは、事故だから。今はもうそんなことしないし」
「そうかいそうかい。やっぱり恥ずかしいんだ」
「そりゃそうでしょ! もう、そんなことさっさと忘れてよ」
「嫌だね」
私は怒ったユキから逃げるようにして部屋を出た。
「さぁ。また何もない部屋だよ」
あるのはカード一枚のみ。
僕はカードを拾い上げ、ユキに渡す。
「面白いお題だね」
「ユキからどうぞ?」
ユキは上を向いて、しばらくうんうんと唸っている。
そうして、イチオシを思いついたらしくこちらを向いてニヤリと笑った。
「すこーし前の話だね。千夜は電車が遅れてたから優雅に遅刻してきたのね。先生に「遅延です!』と届出を出したんだけど、千夜の背中には制鞄がなかったの。千夜は荷物をぜーんぶ家に忘れてきて、手ぶらで来てた」
……そういえばそんなこともあったなぁ。
あのときは疲れていたのだ。
大会後で疲れていたのだ。
だから仕方ない、はずだ。
「忘れてくれない?」
「嫌だ」
「だよね」
ユキが忘れるはずないよね。
うん。知ってた。
結構なダメージが入った。
だがこれも仕方のないこと。
小さなダメージを受けても相手に大きなダメージを与えることができたらOKだ。
「次は僕の番だね」
「さぁて。鶏並みの記憶力しかない千夜は私の失敗談を覚えているのか!」
「それくらい覚えてる!」
本当につくづく失礼なやつだ。
「ユキは本当に抜けているところが多い。例えば自分の机が片付けられなくてプリントまみれになったことがあった。そのとき、先生に強制的に机のプリントを全て取り出されてプリントの裏に書いた謎のポエムを見られてたことだね。しかもそのうえ焦りまくって先生のことをお母さんと呼ぶ始末。愉快ったらありゃしない」
ユキが珍しく失態を晒していて非常に面白かった。
ユキでもポエムは書くし、先生を間違えてお母さんって呼ぶんだ、と親近感が湧いた事件でもあった。
「それは、事故だから。今はもうそんなことしないし」
「そうかいそうかい。やっぱり恥ずかしいんだ」
「そりゃそうでしょ! もう、そんなことさっさと忘れてよ」
「嫌だね」
私は怒ったユキから逃げるようにして部屋を出た。
0
お読みいただきありがとうございます!♡を押していただけると嬉しいです!!
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる