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ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル
どちらかがメイド服を着て『おかえりなさいませ、お嬢様♡」というまで出れない部屋
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「はい。着いたよ」
「ぐぇ」
担いでいたユキを床に放り投げると潰れた蛙のような声を出した。
僕に運ばせたのが悪いんだ。
「……そんなに乱暴に落とさないでくれる?」
人間って意外と怖やすいんだよ、とぶつぶつ文句を言いながらユキは立ち上がった。
「今度はメイド服、か」
「カード読むよ。どちらかがメイド服を着て『おかえりなさいませ、お嬢様♡』ともう一人へ可愛くいうまで出れない部屋。あ、今回は千夜にご指名かかってる」
「はぁ?」
ユキからカードを奪い取る。
そこには確かに僕を指名する文言が書いてある。
ただ……。
いいことを思いついた。
ほとんどないような頭でも捻ってみるものだ。
「ちょうどいい小道具もある」
僕はメイド服に着替え、小道具を手に持つ。
メイド服は袖もスカートの丈も長いので僕のゴツゴツとした腕や脚が見えない。
おかげでミニスカよりはらしくなっているのだろう。
どうでもいいが。
「準備できたよ」
僕はにやにやしながら振り向いたユキを蹴り倒した。
ユキが起き上がってくる前に足で踏みつけ、包丁を首元にあてる。
「お還帰りくださいませ、お嬢様♡」
「ねぇ! なんか漢字が違う気がするんだけど?」
「気のせいでは?」
僕はユキを踏みつける足に少し力をかけた。
「ねぇ、千夜?」
ユキの顔がこわばっている。
服の端をにぎる指先がプルプルと震えている。
もう十分か。
「びっくりした?」
私はユキから降りて聞く。
「した」
「これに懲りたら人を無断で実験に使うのをやめてね」
私は小道具の包丁をおき、メイド服を着替える。
「ただ、千夜は本気で私を殺そうとしたわけじゃないから安心したよ」
「どうしてそう思う?」
「私の首側にあったのはミネだから。殺そうと思ったなら刃のほうを向けるでしょ」
「今殺して部屋から出れなくなったら嫌なだけだし」
「そういうことにしといてあげる」
なんか、負けた気がした。
「ぐぇ」
担いでいたユキを床に放り投げると潰れた蛙のような声を出した。
僕に運ばせたのが悪いんだ。
「……そんなに乱暴に落とさないでくれる?」
人間って意外と怖やすいんだよ、とぶつぶつ文句を言いながらユキは立ち上がった。
「今度はメイド服、か」
「カード読むよ。どちらかがメイド服を着て『おかえりなさいませ、お嬢様♡』ともう一人へ可愛くいうまで出れない部屋。あ、今回は千夜にご指名かかってる」
「はぁ?」
ユキからカードを奪い取る。
そこには確かに僕を指名する文言が書いてある。
ただ……。
いいことを思いついた。
ほとんどないような頭でも捻ってみるものだ。
「ちょうどいい小道具もある」
僕はメイド服に着替え、小道具を手に持つ。
メイド服は袖もスカートの丈も長いので僕のゴツゴツとした腕や脚が見えない。
おかげでミニスカよりはらしくなっているのだろう。
どうでもいいが。
「準備できたよ」
僕はにやにやしながら振り向いたユキを蹴り倒した。
ユキが起き上がってくる前に足で踏みつけ、包丁を首元にあてる。
「お還帰りくださいませ、お嬢様♡」
「ねぇ! なんか漢字が違う気がするんだけど?」
「気のせいでは?」
僕はユキを踏みつける足に少し力をかけた。
「ねぇ、千夜?」
ユキの顔がこわばっている。
服の端をにぎる指先がプルプルと震えている。
もう十分か。
「びっくりした?」
私はユキから降りて聞く。
「した」
「これに懲りたら人を無断で実験に使うのをやめてね」
私は小道具の包丁をおき、メイド服を着替える。
「ただ、千夜は本気で私を殺そうとしたわけじゃないから安心したよ」
「どうしてそう思う?」
「私の首側にあったのはミネだから。殺そうと思ったなら刃のほうを向けるでしょ」
「今殺して部屋から出れなくなったら嫌なだけだし」
「そういうことにしといてあげる」
なんか、負けた気がした。
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