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ユキと千夜 気に食わないけど実力は認めてるケンカップル
麻雀でAIに勝たないと出れない部屋
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「次はどんな部屋だろうね」
「さあ。あ、パソコンがある」
相変わらず真っ白な部屋だ。
黒いパソコンとポップな表紙の本が浮いている。
「本は……麻雀入門編?」
あ、ユキが本を手に取ってしまった。
この活字中毒者は一度本を手に取るとよほどのことがない限り読み続ける。何人もそれを邪魔することはできない。
それこそ火事が起こったり餓死しかけたりしないと本を置かない。
ちなみに火事も餓死も本当に起きた事故だ。
5年も共にいれば色々あるのだ。
さて。こうなったユキはテコでも動かない。
仕方がないのでさっき走って疲れた脚をほぐそう。
どうせユキは数時間くらい使い物にならないんだし、ゆっくり念入りに手入れしておこう。
「麻雀を完全に理解した。今ならAIに勝てというこの空間からの命令も守れるよ」
読み始めてから3時間ほどたったところでそう言われた。
私はとっくにストレッチを終えて暇すぎて猫みたいに首の後ろに足を回して遊んでいた。
ユキの性格と普段の行動から考えて麻雀のルールを見るのは初めてだろう。
初見の人間が3時間で完璧に理解したということなら早いのだろう。
でも暇だった。暇すぎてイライラしてる。
「遅い」
「ごめんって。ちょっとAIぶっ倒してくるからもうちょっとだけ待っててね」
「はいはい。僕はおとなしくここで待ってるから、1秒でもはやく片付けてきて」
「任しときなさい」
ユキは意気揚々とモニターの前に座った。
私はそれを黙って見ていることしかできない。
ちょっともどかしい。でも、仕方ない。
牌の置かれる軽快な音がスピーカーを通して静かな部屋に響く。
ユキは無言でマウスとキーボードを操っている。
近づくことすら許されない集中モードだ。
ユキのモードは30分ほど続いた。そして。
「勝ったよ。千夜」
ユキはちょっと疲れた顔で笑いかけてきた。
頭を使って疲れたのだろう。
本当ならラムネでも渡したいがあいにく手持ちがない。
仕方がないので頭を撫でてやる。
「お疲れ様」
「それやめて。恥ずかしい」
「ここは誰もいないよ」
「未来の自分が思い出して恥ずかしくなるから。ほら、さっさと次の部屋行くよ」
「わかったよ」
撫でられている時のユキの顔がちょっと嬉しそうだったのは秘密にしておこう。
だって数少ないユキの好きなところだもの。
「さあ。あ、パソコンがある」
相変わらず真っ白な部屋だ。
黒いパソコンとポップな表紙の本が浮いている。
「本は……麻雀入門編?」
あ、ユキが本を手に取ってしまった。
この活字中毒者は一度本を手に取るとよほどのことがない限り読み続ける。何人もそれを邪魔することはできない。
それこそ火事が起こったり餓死しかけたりしないと本を置かない。
ちなみに火事も餓死も本当に起きた事故だ。
5年も共にいれば色々あるのだ。
さて。こうなったユキはテコでも動かない。
仕方がないのでさっき走って疲れた脚をほぐそう。
どうせユキは数時間くらい使い物にならないんだし、ゆっくり念入りに手入れしておこう。
「麻雀を完全に理解した。今ならAIに勝てというこの空間からの命令も守れるよ」
読み始めてから3時間ほどたったところでそう言われた。
私はとっくにストレッチを終えて暇すぎて猫みたいに首の後ろに足を回して遊んでいた。
ユキの性格と普段の行動から考えて麻雀のルールを見るのは初めてだろう。
初見の人間が3時間で完璧に理解したということなら早いのだろう。
でも暇だった。暇すぎてイライラしてる。
「遅い」
「ごめんって。ちょっとAIぶっ倒してくるからもうちょっとだけ待っててね」
「はいはい。僕はおとなしくここで待ってるから、1秒でもはやく片付けてきて」
「任しときなさい」
ユキは意気揚々とモニターの前に座った。
私はそれを黙って見ていることしかできない。
ちょっともどかしい。でも、仕方ない。
牌の置かれる軽快な音がスピーカーを通して静かな部屋に響く。
ユキは無言でマウスとキーボードを操っている。
近づくことすら許されない集中モードだ。
ユキのモードは30分ほど続いた。そして。
「勝ったよ。千夜」
ユキはちょっと疲れた顔で笑いかけてきた。
頭を使って疲れたのだろう。
本当ならラムネでも渡したいがあいにく手持ちがない。
仕方がないので頭を撫でてやる。
「お疲れ様」
「それやめて。恥ずかしい」
「ここは誰もいないよ」
「未来の自分が思い出して恥ずかしくなるから。ほら、さっさと次の部屋行くよ」
「わかったよ」
撫でられている時のユキの顔がちょっと嬉しそうだったのは秘密にしておこう。
だって数少ないユキの好きなところだもの。
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