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お姫様とデート
しおりを挟むお姫様は約束の五分前にやってきた。私はその格好に驚かされた。
彼女は黒髪をツインテールにまとめ、黒いミニスカートやフリルのついたシャツ。
その上ピンク色の小さなリュックサックを背負っている。
学校ではお上品はお姫様である彼女は地雷系女子だったのだ。
驚いたのはお互いさまだった。彼女も私を見て驚いている。
「川岸さん、ロリータ好きなのね」
「柳さん、地雷系女子だったのね」
お互い目を見合わせて思う。思いは同じだと。
「せーので言おうか」
「うん」
柳さんの合図で同時に言う。
「すごく似合ってる!」
僕は心の底から安心した。柳さんは僕の服を受け入れてくれた。
とっても可愛くて憧れの柳さんに。
それは彼女も同じだったようだ。嬉しそうに笑っている。
「僕の服のこと、誰にも言わないでくれる?」
彼女に問うとにっこり笑って告げられた。
「もちろんだよ。あなたも私の服のこと言わないでね」
二人だけの秘密、と意味ありげに付け足された言葉はなんだかとても甘美なものな気がした。
「じゃあプリクラ取りに行かない? あそこなら衣装借りれるから、証拠写真でバレない」
「そんなのあるんだ。連れてってもらえる? 僕、そういうのにうとくって」
「私に任せなさい」
柳さんに連れられてショッピングモールへと歩いて行った。
「衣装どれにする?」
「どれでも柳さんなら似合うと思うよ」
僕にはさっぱりわからない世界の話なのでとりあえず柳さんに任せる。
「その、柳さんじゃなくてサラって呼んで。そっちの方が馴染むから」
こんなお姫様を名前呼び捨てにするのは気が引ける。
「サラさん?」
「まあいいよ、葵ちゃん」
ちゃん付けで呼ばれるのは何年ぶりだろうか。
久しぶりに自分が女の子として扱われた気がして、嬉しいような恥ずかしいような気持ちになった。
「はい、衣装はこれね」
サラさんに渡されたのは学ラン。
「可愛い葵ちゃんは私だけが知ってたらいいの」
そう言ってサラさんはセーラー服片手に更衣室へ行ってしまった。
私も衣装を持って着替えに行く。
「やっぱり似合うね」
「サラさんも似合ってる」
サラさんのような美人さんは何でも似合うのだとつくづく実感した。
「じゃあ撮りに行こう」
学校ではお姫様のふりをしているが彼女は本当は王子様なのではと疑いたくなってしまった。
プリクラを撮って、彼女に王子様キャラを守れる服を選んでもらって、楽しいデートとなった。
憧れてる大好きな彼女との最初で最後のデート。
お別れの時は寂しくて泣きたくなったけど、彼女は笑顔のまま「また明日」と言っていた。
学校でなら会える。そう自分に言い聞かせて帰路についた。
それから数日後、僕はサラさんが先日の友人たちと話しているのを聞いてしまった。
「サラ、よかったね。計画通りに好きな人とデートできて」
「本当に良かった。そうそう、川岸さんね、普段はかっこいんだけど、休日は可愛いんだ」
「え? どんなふうに可愛いの?」
「秘密!」
彼女は笑って誤魔化している。
秘密は守られたようだ。
だがそれが些細なことに感じるほど、後の話で知る事実が衝撃的だった。
「それにしてもよかったよね。好きな人とデートに行けて」
「ほんとそれ! ねえ告白した?」
「それは……まだ」
どうやら彼女は僕のことを好いてくれているらしい。
憧れの大好きな彼女がだ。
僕の頭はパニックになった。だからその場の勢いで言ってしまった。
「サラさん。僕と付き合ってください」
「ありがとう。よろしくね、葵ちゃん」
僕は学年一可愛いお姫様と付き合うことになったのだった。
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