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手伝ってくれるのも予測済み
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女子校にはたいてい王子様と呼ばれる存在がいる。例えば僕。短髪だったせいで王子様にされてしまった。ウィッグを被るときに髪の毛が邪魔だっただけなのに。
可愛いものが大好きなのに、僕と一人称もあって王子様にされてしまったのだ。どうせならお姫様がよかった。
これは私服がロリータしかない僕が憧れの学校のお姫様と突然デートに行かなくてはならなくなった話である。
ことの発端は昼休みのちょっとした出来事。
僕が購買にお昼を買いに行こうと歩いていると前から学校一美人なお姫様、柳さんが歩いてきた。
長いまつ毛。陶器のように白い肌。綺麗にお団子にまとめられた髪。
どこをとってもお姫様にしか見えない。本当に可愛い。憧れの相手だ。
そんな彼女がなぜか大量のノートを抱えて歩いていた。
いつもだったら彼女が運ぼうとしても誰かが代わりに運んで行くのに、なぜか今日は誰もいない。
ノートはクラス全員分だと約40冊。一人で持つには少し多い。
彼女が綺麗な顔に汗が滲んでいる。つらそうだ。
さて、どうしたものか。他の人なら僕も普通に助けるのだが、今回は学校一の美人だ。
しかも他クラスと言うこともあって関わりがない。話すだけでも恐れ多い。
だが、困っている美人を無視できるほど僕はできた人間ではないようだ。
「大丈夫? 僕が半分もつよ」
気づけば僕は彼女に声をかけていた。
「いいのですか?」
「別にたいした用事はないし大丈夫。ほら、半分貸して?」
なかば無理矢理奪いとるような形で半分と少しを持つ。残念ながら僕も一応ただの女子中学生。全部は持てそうにない。
「ありがとうございます」
彼女はぺこりとお辞儀した。
「どうも。これ、どこに持っていくの?」
「職員室までよ。お財布持ってるなら購買に行くんじゃないですか? お昼売り切れないかしら」
彼女に心配そうに聞かれた。優しい人だ。
「全然大丈夫。なんとかなるよ」
一食くらい食べなくったってなんとでもなる。
「そう。ならいいのだけど。では、よろしくお願いします」
柳さんと並んでノートを運ぶ。
少々お腹がすいたがたいした問題ではない。
「そういえば、あなた。お名前は?」
そういえばまだ名前を言っていなかった。
「僕は、川岸葵。よろしくね」
「私は柳サラです。よろしくお願いします」
落とさないように気をつけて二人並んでノートを運ぶ。
その様子を二人の女子生徒が見ていた。
「うまく接触できた見たいね」
「そうね。あとは帰ってきたところを囲えばいけるわね」
彼女らの声は二人に聞こえていない。
職員室に行き、ノートを先生に渡す。
仲のいい先生に「さすが学校一のイケメン」とからかわれた。うるさい。
届け終わったら教室に戻る。
「あら、購買には行かないのですか?」
「うん。多分もう売り切れてるだろうし」
「そうですか。なら一緒にお菓子でも食べませんか? 私、友人とお菓子パーティーをしようと話していたんです。きっと歓迎してくれますよ」
まるでいいアイデアだとばかりに話す彼女。後で聞いた話だがこれも計画の一部だったらしい。
「いいの? 僕、お菓子持ってないし……」
「大丈夫! 私の仕事を手伝ってくれたって言ったらみんな喜んで分けてくれるよ」
女子とは繋がりが強い生物だ。
他人の幸も不幸も、借りも貸し、自分ごとのように考えるから今のようなことが起こりえる。
僕にはさっぱりわからないけれど。
その無知さも僕を王子様にしてしまった一因であるから困ったものだ。
「ほら、はやく行きましょう?」
お姫様に手を引かれて僕はパーティー会場である教室へと連れて行かれた。
可愛いものが大好きなのに、僕と一人称もあって王子様にされてしまったのだ。どうせならお姫様がよかった。
これは私服がロリータしかない僕が憧れの学校のお姫様と突然デートに行かなくてはならなくなった話である。
ことの発端は昼休みのちょっとした出来事。
僕が購買にお昼を買いに行こうと歩いていると前から学校一美人なお姫様、柳さんが歩いてきた。
長いまつ毛。陶器のように白い肌。綺麗にお団子にまとめられた髪。
どこをとってもお姫様にしか見えない。本当に可愛い。憧れの相手だ。
そんな彼女がなぜか大量のノートを抱えて歩いていた。
いつもだったら彼女が運ぼうとしても誰かが代わりに運んで行くのに、なぜか今日は誰もいない。
ノートはクラス全員分だと約40冊。一人で持つには少し多い。
彼女が綺麗な顔に汗が滲んでいる。つらそうだ。
さて、どうしたものか。他の人なら僕も普通に助けるのだが、今回は学校一の美人だ。
しかも他クラスと言うこともあって関わりがない。話すだけでも恐れ多い。
だが、困っている美人を無視できるほど僕はできた人間ではないようだ。
「大丈夫? 僕が半分もつよ」
気づけば僕は彼女に声をかけていた。
「いいのですか?」
「別にたいした用事はないし大丈夫。ほら、半分貸して?」
なかば無理矢理奪いとるような形で半分と少しを持つ。残念ながら僕も一応ただの女子中学生。全部は持てそうにない。
「ありがとうございます」
彼女はぺこりとお辞儀した。
「どうも。これ、どこに持っていくの?」
「職員室までよ。お財布持ってるなら購買に行くんじゃないですか? お昼売り切れないかしら」
彼女に心配そうに聞かれた。優しい人だ。
「全然大丈夫。なんとかなるよ」
一食くらい食べなくったってなんとでもなる。
「そう。ならいいのだけど。では、よろしくお願いします」
柳さんと並んでノートを運ぶ。
少々お腹がすいたがたいした問題ではない。
「そういえば、あなた。お名前は?」
そういえばまだ名前を言っていなかった。
「僕は、川岸葵。よろしくね」
「私は柳サラです。よろしくお願いします」
落とさないように気をつけて二人並んでノートを運ぶ。
その様子を二人の女子生徒が見ていた。
「うまく接触できた見たいね」
「そうね。あとは帰ってきたところを囲えばいけるわね」
彼女らの声は二人に聞こえていない。
職員室に行き、ノートを先生に渡す。
仲のいい先生に「さすが学校一のイケメン」とからかわれた。うるさい。
届け終わったら教室に戻る。
「あら、購買には行かないのですか?」
「うん。多分もう売り切れてるだろうし」
「そうですか。なら一緒にお菓子でも食べませんか? 私、友人とお菓子パーティーをしようと話していたんです。きっと歓迎してくれますよ」
まるでいいアイデアだとばかりに話す彼女。後で聞いた話だがこれも計画の一部だったらしい。
「いいの? 僕、お菓子持ってないし……」
「大丈夫! 私の仕事を手伝ってくれたって言ったらみんな喜んで分けてくれるよ」
女子とは繋がりが強い生物だ。
他人の幸も不幸も、借りも貸し、自分ごとのように考えるから今のようなことが起こりえる。
僕にはさっぱりわからないけれど。
その無知さも僕を王子様にしてしまった一因であるから困ったものだ。
「ほら、はやく行きましょう?」
お姫様に手を引かれて僕はパーティー会場である教室へと連れて行かれた。
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