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第二話 検査結果
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一時間前に帰りたい。結果が表示されたタブレットを閉じてから思う。もう一度画面を開き確認する。
「あなたはSubです」
これはある種の死刑宣告にも近かった。Subは良きパートナーを見つけなければ死んでしまう。面倒だからと就職でも落とされやすい。そんなSubだと宣告されたのだ。
前の席から奈々が
「どうだった?」
と聞いてくる。
どうしよう、自分がSubなんて言えないけれど嘘をつくのは苦手だ。教師の
「人のダイナミクスなんて聞くもんじゃありません」
という助け舟によってこの場は収められた訳だが、今後はどうすれば良いのだろう。画面に映る三文字が重くのしかかる。
一時間前と同じ顔をしている奈々を見ないようにと廊下へ目をやると、一人の美女に目を奪われた。長くて美しい黒髪、雪のように白い肌、月夜が似合いそうな彼女に私は目も心も奪われた。
「おーい佳子?」
奈々にそう声を掛けられるまで私はぼんやりと窓から見えた一瞬を引き延ばして見ていた。
その後ぼんやりと終礼を聞き、私は奈々の誘いを断って多目的室Aに向かう。そこでダイナミクスについての詳しい説明があるらしい。おそるおそる扉を開くと暗い顔をした同級生が十人ほど。さらに増えて二十人になった頃には部屋中に暗雲が立ち込めていた。
「こんにちは。養護教諭の木村です」
「同じく養護教諭の鈴木です」
二人によって説明が行われていく。木村先生は長袖ハイネックの黒Tシャツとスウェットに白衣を、鈴木先生は暗めの赤のスクラブと黒の長袖のインナーを着ている。
「みんな知っての通りDomは支配したい、Subは支配されたい、という欲求を持つと言われているね」
「でも実はそれだけでないの。Domは支配したいだけでなくSubを大事にしたい、甘やかしたい、という欲求も持っているの」
「反対にSubは支配されたいだけでなくDomに大事にされたい、甘やかされたい、という欲求も持っている」
「これ、大事なことだから忘れちゃダメよ」
甘やかされたい、など初めて聞いた。だがそれによってショックが和らぐことはない。具体的な説明に入ればやはり怖いことに変わりない。
「DomとSubはパートナーとしてCommandと呼ばれるDomの力のこもった命令をしたりご褒美やお仕置きをしたりして互いの欲望を満たすのよ」
「だがパートナーを持たないSubはどのDomの命令も聞いてしまうのよ」
「だからパートナーを作る必要がある」
どのDomの命令も聞いてしまう。この厄介な性質のせいで近年トラブルが急増しているらしい。
何を考えているかわからない他人に命令された通り動く。この恐怖におびえながら生きる。そんなの真っ平ごめんだ。いつものところで首を吊って死んでやろうか、そんな考えまで頭をよぎる。だがきちんと対処法はあるらしい。
「だからパートナーを作る必要があるの。パートナーのいるSubはパートナー以外のDomからの影響を受けなくなるからね」
「ただし、パートナーのDomからの影響は大きくなる」
「そう。だからみんな、後で配る中一のDom一覧から信頼できるパートナを探してね」
信頼できるDomを探す。このことの困難さといったらない。まだ入学して間もないのにそんな相手を探すなどかなりの困難だ。
「信頼できるDomとパートナーになったらcolorをもらうこと。パートナーの証だよ。一年で効果が切れるから毎年付け直してもらうのを忘れずに」
不安なところはまだあるが先生たちは冊子を配り始めてしまった。仕方ない、覚悟を決めて帰ろうと思っていると最後に最大の不安要素を投げかけられる。
「みんな十四歳になるまでにパートナーを探すこと。でないとSubはその後一ヶ月で死んでしまうから」
どこか残念そうな声で告げられたその事実に私は再び首吊りを考える。
「あなたはSubです」
これはある種の死刑宣告にも近かった。Subは良きパートナーを見つけなければ死んでしまう。面倒だからと就職でも落とされやすい。そんなSubだと宣告されたのだ。
前の席から奈々が
「どうだった?」
と聞いてくる。
どうしよう、自分がSubなんて言えないけれど嘘をつくのは苦手だ。教師の
「人のダイナミクスなんて聞くもんじゃありません」
という助け舟によってこの場は収められた訳だが、今後はどうすれば良いのだろう。画面に映る三文字が重くのしかかる。
一時間前と同じ顔をしている奈々を見ないようにと廊下へ目をやると、一人の美女に目を奪われた。長くて美しい黒髪、雪のように白い肌、月夜が似合いそうな彼女に私は目も心も奪われた。
「おーい佳子?」
奈々にそう声を掛けられるまで私はぼんやりと窓から見えた一瞬を引き延ばして見ていた。
その後ぼんやりと終礼を聞き、私は奈々の誘いを断って多目的室Aに向かう。そこでダイナミクスについての詳しい説明があるらしい。おそるおそる扉を開くと暗い顔をした同級生が十人ほど。さらに増えて二十人になった頃には部屋中に暗雲が立ち込めていた。
「こんにちは。養護教諭の木村です」
「同じく養護教諭の鈴木です」
二人によって説明が行われていく。木村先生は長袖ハイネックの黒Tシャツとスウェットに白衣を、鈴木先生は暗めの赤のスクラブと黒の長袖のインナーを着ている。
「みんな知っての通りDomは支配したい、Subは支配されたい、という欲求を持つと言われているね」
「でも実はそれだけでないの。Domは支配したいだけでなくSubを大事にしたい、甘やかしたい、という欲求も持っているの」
「反対にSubは支配されたいだけでなくDomに大事にされたい、甘やかされたい、という欲求も持っている」
「これ、大事なことだから忘れちゃダメよ」
甘やかされたい、など初めて聞いた。だがそれによってショックが和らぐことはない。具体的な説明に入ればやはり怖いことに変わりない。
「DomとSubはパートナーとしてCommandと呼ばれるDomの力のこもった命令をしたりご褒美やお仕置きをしたりして互いの欲望を満たすのよ」
「だがパートナーを持たないSubはどのDomの命令も聞いてしまうのよ」
「だからパートナーを作る必要がある」
どのDomの命令も聞いてしまう。この厄介な性質のせいで近年トラブルが急増しているらしい。
何を考えているかわからない他人に命令された通り動く。この恐怖におびえながら生きる。そんなの真っ平ごめんだ。いつものところで首を吊って死んでやろうか、そんな考えまで頭をよぎる。だがきちんと対処法はあるらしい。
「だからパートナーを作る必要があるの。パートナーのいるSubはパートナー以外のDomからの影響を受けなくなるからね」
「ただし、パートナーのDomからの影響は大きくなる」
「そう。だからみんな、後で配る中一のDom一覧から信頼できるパートナを探してね」
信頼できるDomを探す。このことの困難さといったらない。まだ入学して間もないのにそんな相手を探すなどかなりの困難だ。
「信頼できるDomとパートナーになったらcolorをもらうこと。パートナーの証だよ。一年で効果が切れるから毎年付け直してもらうのを忘れずに」
不安なところはまだあるが先生たちは冊子を配り始めてしまった。仕方ない、覚悟を決めて帰ろうと思っていると最後に最大の不安要素を投げかけられる。
「みんな十四歳になるまでにパートナーを探すこと。でないとSubはその後一ヶ月で死んでしまうから」
どこか残念そうな声で告げられたその事実に私は再び首吊りを考える。
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