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第十話 出発
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「お米、そろそろ良いかしら?」
鍋を開くと水が白く濁っている。計量カップは見当たらなかったので目分量で水を加えて鍋に蓋をし火にかける。鍋から泡の音がしたら少し火を弱め2、3分、さらに火を弱めて5分くらいで、正確にいうならば水が飛ばし切れたと思うまで火にかける。
ロールキャベツを見れば良さげだ。火を止める。野菜にまろやかにされた血と肉の香りに誘われて彼女のお腹が鳴る。頬に朱がさす。
火を止めた米の鍋は10分ほどほっといて、蓋を開けて軽く混ぜれば完成らしい。
「そろそろお皿を用意しないとね」
紙袋から皿を取り出していると、部屋のどこかから電子音が聞こえた。
「ん?なんでしょう」
彼女は音のする方へとおそるおそる近づく。音はリビングの隅に充電コードがついた状態で置いてあっるスマホから聞こえていた。赤いカバーのスマホだ。電話がかかってきている。彼女は手にとり通話ボタンを押した。相手が誰かわからないという恐怖、電話を使ってみたいという好奇心。その二つの感情に突き動かされ彼女は電話をとったのだ。
「もしもし?」
「あれ、今何時だ……?」
意識を取り戻した私はあたりを見渡す。相変わらず体はだるい。もしかしたら胃がやられただけでなく風邪を引いたのかもしれない。そう意識すると熱っぽい上に節々が痛いような気がしてくる。
「もう一回、だけかけて、みようかな」
私は手元のスマホの電話帳を開き、家にあるスマホへかける。
1コール、2コール、3コール目の途中で繋がった。
「もしもし?」
「し、死神ちゃ、ん?」
安心から涙が出そうになる。
「あの、体調、崩し、ちゃって……死神ちゃん、に、来て、欲しい」
電話口から聞こえる慌てた声を遮って続ける。
「道筋は、教え、るから……おねが、い」
断られたら、最悪の事態が脳裏をよぎる。このまま死んでしまうかもしれない。それは怖い。死神ちゃんはしばらく無言だったがやがて決意したようにうなずく声が聞こえた。
「姉さん。あたしに任せて。あたしが姉さんを助けてあげるわよ!」
元気に溢れた声。それを聞いただけで関節の痛みが引いた気がした。
「お願い、ね……」
「じゃあちょっと準備するから待ってね」
死神ちゃんは一度スマホを置き、ポシェットにお財布と鍵をいれ、頭のリボンをつけ直し、鍋の火が止まっているか確認する。スマホを手にとり、ブーツをはき、外に出て扉を施錠する。
「もしもし、姉さん。準備ができたわよ。今助けに行くわ!」
鍋を開くと水が白く濁っている。計量カップは見当たらなかったので目分量で水を加えて鍋に蓋をし火にかける。鍋から泡の音がしたら少し火を弱め2、3分、さらに火を弱めて5分くらいで、正確にいうならば水が飛ばし切れたと思うまで火にかける。
ロールキャベツを見れば良さげだ。火を止める。野菜にまろやかにされた血と肉の香りに誘われて彼女のお腹が鳴る。頬に朱がさす。
火を止めた米の鍋は10分ほどほっといて、蓋を開けて軽く混ぜれば完成らしい。
「そろそろお皿を用意しないとね」
紙袋から皿を取り出していると、部屋のどこかから電子音が聞こえた。
「ん?なんでしょう」
彼女は音のする方へとおそるおそる近づく。音はリビングの隅に充電コードがついた状態で置いてあっるスマホから聞こえていた。赤いカバーのスマホだ。電話がかかってきている。彼女は手にとり通話ボタンを押した。相手が誰かわからないという恐怖、電話を使ってみたいという好奇心。その二つの感情に突き動かされ彼女は電話をとったのだ。
「もしもし?」
「あれ、今何時だ……?」
意識を取り戻した私はあたりを見渡す。相変わらず体はだるい。もしかしたら胃がやられただけでなく風邪を引いたのかもしれない。そう意識すると熱っぽい上に節々が痛いような気がしてくる。
「もう一回、だけかけて、みようかな」
私は手元のスマホの電話帳を開き、家にあるスマホへかける。
1コール、2コール、3コール目の途中で繋がった。
「もしもし?」
「し、死神ちゃ、ん?」
安心から涙が出そうになる。
「あの、体調、崩し、ちゃって……死神ちゃん、に、来て、欲しい」
電話口から聞こえる慌てた声を遮って続ける。
「道筋は、教え、るから……おねが、い」
断られたら、最悪の事態が脳裏をよぎる。このまま死んでしまうかもしれない。それは怖い。死神ちゃんはしばらく無言だったがやがて決意したようにうなずく声が聞こえた。
「姉さん。あたしに任せて。あたしが姉さんを助けてあげるわよ!」
元気に溢れた声。それを聞いただけで関節の痛みが引いた気がした。
「お願い、ね……」
「じゃあちょっと準備するから待ってね」
死神ちゃんは一度スマホを置き、ポシェットにお財布と鍵をいれ、頭のリボンをつけ直し、鍋の火が止まっているか確認する。スマホを手にとり、ブーツをはき、外に出て扉を施錠する。
「もしもし、姉さん。準備ができたわよ。今助けに行くわ!」
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