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第八話 問題
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「うぅ、おなか痛い」
私は倉庫の屋根裏部屋でうめいていた。ひたすらにおなかが痛い、いや腹痛が痛くて痛くて仕方がないのだ。
たしかに今朝からおなかに違和感はあった。まだ胃にものが残っているような気持ち悪さも少しあった。だがここまでではなかった。憶測ではあるが急にささみなどの人肉を食べたから胃がびっくりしたとかそんな感じだろう。
「駄目だ。気持ち悪い」
下の倉庫に吐瀉物を撒き散らす。あとで掃除しないと、なんて呑気なことを考えながらひたすら吐き出した。少しおちついてからクッションにもたれかかる。もう、動けそうにない。寒くて、心細くて、苦しい。
私は存在しない誰かの手を掴もうと手を伸ばした。だがそれも空を切るばかりで、余計にしんどくなる。
「死神ちゃん……」
口からこぼれた彼女の名。私はスマホを手にとった。
死神ちゃんはこの日最後の目的地の米屋に来ていた。
「おじいさん、お米10キロいただける?」
「おお、わかった。ってお姉ちゃん。そんな大荷物でお米運べるかい?」
そう、彼女はすでに野菜と食器を抱えているのだ。加えてお米10キロなど一般的なこの見た目の少女が運べる量ではない。
「大丈夫。あたしはこう見えても力持ちなんだからね!」
だが、彼女は死神。見た目より少しはやく成長してあるのだ。
「そうかい。なら良いんじゃけど」納得はいかなくとも理解はしていただけたようだ。「じゃあ4400円じゃ」
「はい」
「きっかりじゃね」お釣りを数えたおじいさんが顔をあげた。気をつけて帰るんだぞ」
「はーい。さようなら、おじいさん!」
こうして死神ちゃんは買い物を終え、家へと帰る。彼女は右手でそれぞれ野菜と食器の入った袋を、左手で米を担いで歩いていく。だがあまりにも荷物が多く彼女が小さいために荷物が歩いているように見える。
その荷物は右へ左へ揺られながらも無事家に帰り着いた。途中、死神ちゃんが四葉のクローバーを見つけて取るために立ち止まったのはたいした問題ではないだろう。
「ただいま!」
彼女の挨拶に返答はない。
「あれ?まだ姉さん帰ってきてないのかな?それにしても遅い気がするけど」
訝しみつつもひとまず荷物を置くことを優先にした。一度玄関で荷物を下し、ブーツを脱ぐ。そして再び荷物を持って台所まで運びこんだ。食器は今朝整理整頓した食器棚へ。食材は今から料理をするのに使うのでカウンターへ。お米はひとまずキッチンの横に立てかけておく。後で置き場を決めなければ。炊飯器の近くに……と思うもこの家にはまだ炊飯器がないのだった。
「お米は……鍋で炊けば良いわね」
今度は炊飯器を買いに行かなければならないわね、などと考える彼女の頬は緩んでいた。姉さんとのデートチャンスだからだ。
えいしょよいしょと動かしているとき、家のどこかから電子音が鳴った。だがすぐに止んだその音を死神ちゃんは気のせいということにしてしまった。
私は倉庫の屋根裏部屋でうめいていた。ひたすらにおなかが痛い、いや腹痛が痛くて痛くて仕方がないのだ。
たしかに今朝からおなかに違和感はあった。まだ胃にものが残っているような気持ち悪さも少しあった。だがここまでではなかった。憶測ではあるが急にささみなどの人肉を食べたから胃がびっくりしたとかそんな感じだろう。
「駄目だ。気持ち悪い」
下の倉庫に吐瀉物を撒き散らす。あとで掃除しないと、なんて呑気なことを考えながらひたすら吐き出した。少しおちついてからクッションにもたれかかる。もう、動けそうにない。寒くて、心細くて、苦しい。
私は存在しない誰かの手を掴もうと手を伸ばした。だがそれも空を切るばかりで、余計にしんどくなる。
「死神ちゃん……」
口からこぼれた彼女の名。私はスマホを手にとった。
死神ちゃんはこの日最後の目的地の米屋に来ていた。
「おじいさん、お米10キロいただける?」
「おお、わかった。ってお姉ちゃん。そんな大荷物でお米運べるかい?」
そう、彼女はすでに野菜と食器を抱えているのだ。加えてお米10キロなど一般的なこの見た目の少女が運べる量ではない。
「大丈夫。あたしはこう見えても力持ちなんだからね!」
だが、彼女は死神。見た目より少しはやく成長してあるのだ。
「そうかい。なら良いんじゃけど」納得はいかなくとも理解はしていただけたようだ。「じゃあ4400円じゃ」
「はい」
「きっかりじゃね」お釣りを数えたおじいさんが顔をあげた。気をつけて帰るんだぞ」
「はーい。さようなら、おじいさん!」
こうして死神ちゃんは買い物を終え、家へと帰る。彼女は右手でそれぞれ野菜と食器の入った袋を、左手で米を担いで歩いていく。だがあまりにも荷物が多く彼女が小さいために荷物が歩いているように見える。
その荷物は右へ左へ揺られながらも無事家に帰り着いた。途中、死神ちゃんが四葉のクローバーを見つけて取るために立ち止まったのはたいした問題ではないだろう。
「ただいま!」
彼女の挨拶に返答はない。
「あれ?まだ姉さん帰ってきてないのかな?それにしても遅い気がするけど」
訝しみつつもひとまず荷物を置くことを優先にした。一度玄関で荷物を下し、ブーツを脱ぐ。そして再び荷物を持って台所まで運びこんだ。食器は今朝整理整頓した食器棚へ。食材は今から料理をするのに使うのでカウンターへ。お米はひとまずキッチンの横に立てかけておく。後で置き場を決めなければ。炊飯器の近くに……と思うもこの家にはまだ炊飯器がないのだった。
「お米は……鍋で炊けば良いわね」
今度は炊飯器を買いに行かなければならないわね、などと考える彼女の頬は緩んでいた。姉さんとのデートチャンスだからだ。
えいしょよいしょと動かしているとき、家のどこかから電子音が鳴った。だがすぐに止んだその音を死神ちゃんは気のせいということにしてしまった。
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