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第三話 食事
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私が贅沢な時間を満喫していると死神ちゃんが目を覚ました。
「おはよう」
眠そうに目を擦る彼女にそう声をかける。
『おはよう』
そう返してからあくびを一つ。
『あれ、ごはん?』
死体を見た途端、寝起きの彼女の目が見開かれた。
「血を抜いてからね。その後食べていいから」
私は彼女にそう答える。すると
『はーい』
可愛らしい返事が返ってきた。私はイヤフォンを外しケースにしまう。寝っ転がっていたクッションからおり、代わりに小さくて固いクッションに座る、死神ちゃんはトコトコと私のそばに歩いてきて私の隣のふかふかなクッションに座る。無論、私の想像の話だが。死神ちゃんは実在しない。ただの私の概念だ。だが私は彼女が存在するように振る舞う。そうしなければ寂しさのあまり壊れてしまいそうだから。
私は死体に目をやる。血は抜け切ったらしい。瓶一杯に血が溜まっている。なんという視覚的暴力。その上、漂う血の香りが鼻腔をくすぐる。今すぐ飲み干してしまいたい。だが全てを飲むわけにはいかない。収穫がない日のために貯蔵しなければならない。私は手を振るわせながらカンロ杓子ーー梅酒などをすくう器具を使ってグラスに注ぐ。透明な器に注がれた血は光を浴びてキラキラと輝いて一層美しい。
私は一口で飲み干した。口いっぱいに広がる死の味、そしてドロッとした舌触り。だが少し香りが悪い。これはタバコを吸ってたな。嘘つき。メールでは吸ってないと言っていたのに。まあ味はいい。私はもう一度すくい取る。美しい赤。私がもう一度飲み干そうとすると、彼女に文句を言われた。
『ちょっと!あんたばっか飲んでないであたしにもちょうだいよ!』
「わかったって」
私はそう言い立ち上がる。キッチンに行き包丁を取り出す。戻ってきて死体の前に座る。その後彼女に問う。
「どこから食べる?」
『今日は足からよ』
「わかった。ちょっと待っててね」
私は包丁を使って大腿骨から肉を剥がす。さらに食べやすい大きさに切り分けてから死神ちゃんに差し出す。
『美味しいわ!やるじゃない」
満足いただけたようだ。私は味のしない肉片を咀嚼しながら思う。彼女は実際には食べられない。だから代わりに私が食べる。味はわからないが美味しいということにしておく。脳内では死神ちゃんが幸せそうに食事をとっている。その笑顔が可愛らしいからまた私は肉を口に含んでしまう。彼女の笑顔が血と同じくらい美味しいのだ。その美味しさのせいで私は死体を半分ほど食べてしまった。残りの半分は食べれるところは削ぎ落とし冷凍庫へ。
食べられない骨は昨日と同じように埋めに行く。今日は死神ちゃんが手伝ってくれている気がした。気のせいだが少し軽い気がする。私は黒いビニール袋に入った骨を持って山へ行く。そしてすぐに埋め帰ってきた。
最近は疲れやすいようだ。帰ったら手についた土を洗い流すことすら億劫になり床に倒れるようにして寝た。
「おはよう」
眠そうに目を擦る彼女にそう声をかける。
『おはよう』
そう返してからあくびを一つ。
『あれ、ごはん?』
死体を見た途端、寝起きの彼女の目が見開かれた。
「血を抜いてからね。その後食べていいから」
私は彼女にそう答える。すると
『はーい』
可愛らしい返事が返ってきた。私はイヤフォンを外しケースにしまう。寝っ転がっていたクッションからおり、代わりに小さくて固いクッションに座る、死神ちゃんはトコトコと私のそばに歩いてきて私の隣のふかふかなクッションに座る。無論、私の想像の話だが。死神ちゃんは実在しない。ただの私の概念だ。だが私は彼女が存在するように振る舞う。そうしなければ寂しさのあまり壊れてしまいそうだから。
私は死体に目をやる。血は抜け切ったらしい。瓶一杯に血が溜まっている。なんという視覚的暴力。その上、漂う血の香りが鼻腔をくすぐる。今すぐ飲み干してしまいたい。だが全てを飲むわけにはいかない。収穫がない日のために貯蔵しなければならない。私は手を振るわせながらカンロ杓子ーー梅酒などをすくう器具を使ってグラスに注ぐ。透明な器に注がれた血は光を浴びてキラキラと輝いて一層美しい。
私は一口で飲み干した。口いっぱいに広がる死の味、そしてドロッとした舌触り。だが少し香りが悪い。これはタバコを吸ってたな。嘘つき。メールでは吸ってないと言っていたのに。まあ味はいい。私はもう一度すくい取る。美しい赤。私がもう一度飲み干そうとすると、彼女に文句を言われた。
『ちょっと!あんたばっか飲んでないであたしにもちょうだいよ!』
「わかったって」
私はそう言い立ち上がる。キッチンに行き包丁を取り出す。戻ってきて死体の前に座る。その後彼女に問う。
「どこから食べる?」
『今日は足からよ』
「わかった。ちょっと待っててね」
私は包丁を使って大腿骨から肉を剥がす。さらに食べやすい大きさに切り分けてから死神ちゃんに差し出す。
『美味しいわ!やるじゃない」
満足いただけたようだ。私は味のしない肉片を咀嚼しながら思う。彼女は実際には食べられない。だから代わりに私が食べる。味はわからないが美味しいということにしておく。脳内では死神ちゃんが幸せそうに食事をとっている。その笑顔が可愛らしいからまた私は肉を口に含んでしまう。彼女の笑顔が血と同じくらい美味しいのだ。その美味しさのせいで私は死体を半分ほど食べてしまった。残りの半分は食べれるところは削ぎ落とし冷凍庫へ。
食べられない骨は昨日と同じように埋めに行く。今日は死神ちゃんが手伝ってくれている気がした。気のせいだが少し軽い気がする。私は黒いビニール袋に入った骨を持って山へ行く。そしてすぐに埋め帰ってきた。
最近は疲れやすいようだ。帰ったら手についた土を洗い流すことすら億劫になり床に倒れるようにして寝た。
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