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第二話 生活
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目が覚めたのはお昼頃。親の遺産で残りの人生過ごせそうな私は高校にも行かず一人血を飲むだけの生活をしているので昼に起きるなど日常茶飯時だ。
だが死神ちゃんはもっと起きるのが遅い。猫のように一日のほとんどを寝て過ごす。私は死神ちゃんの寝顔を思い浮かべる。病的に色白い肌、目と呼ばれる空洞は閉じられ、死体と同じように寝ている。ときおり寝返りをうつと安心する。彼女には心臓はなければ血液もない。スカートから覗く白い脚を撫でる。柔らかくすべすべな脚は小学生のよう。だが彼女は死神であり実体はない。私がうみ出した概念にすぎない。
私はスマホを開き通知で溢れるメッセージを見る。それなりに美味しそうなやつをセレクトし会話をスタートする。同時に相手の情報から死んでも周囲に気づかれない人を選ぶ。今日の獲物が決まった。佐藤太郎。35歳。フリーター。両親とは離縁。兄弟なし。恋人もなし。裏も取れてる。
借りている倉庫に呼び出し、部屋で待つように指示する。ベッドを置いておけば男は大抵油断する。その隙に外から鍵をかける。その後天井裏に周り男にキャンセルする旨のメールを送る。そうすれば男は怒って出ようとする。だが扉は開かない。さらに怒り狂い視界が狭まるその間にロープを首に引っ掛ける。てこの原理を使えば小柄な私でも男の体は持ち上がる。首が絞まり男が暴れる。吐き出せなかった空気に男がむせる。うるさいのでイヤフォンをつけてしばらく待つ。
数曲聴き終わった頃には静かになっていたのでダンボールに詰めて持ち帰る。この作業は重いからあまり好きではない。だが次の作業をおもえば頑張れる。死神ちゃんに手伝ってほしいが寝たふりを決め込んでいる。静かに寝息を立てる様子は可愛らしく私には起こせない。仕方なく一人で寂しく運ぶ。
自室に持ち帰った死体から血を抜く。私はこの作業が一番好きだ。真っ赤な血が細い管を通って瓶に入る様子の美しさは百人一首に詠まれた秋に色づいた紅葉が流れる竜田川にも勝るだろう。時間がかかる作業なので明日用にキープする獲物にメッセージを送っておく。それが終わればあとはふかふかなクッションに寝っ転がって血を眺めながら音楽を聴く。とても贅沢な時間だ。視覚、嗅覚、聴覚、触覚の四つが満たされているのだ。私は残りの一つを埋めるために瓶の縁についた血を指でとり、舐める。口中に甘酢っぱい味が広がる。これで五感全てが満たされた。
あぁ、なんて贅沢な時間だろう。
だが死神ちゃんはもっと起きるのが遅い。猫のように一日のほとんどを寝て過ごす。私は死神ちゃんの寝顔を思い浮かべる。病的に色白い肌、目と呼ばれる空洞は閉じられ、死体と同じように寝ている。ときおり寝返りをうつと安心する。彼女には心臓はなければ血液もない。スカートから覗く白い脚を撫でる。柔らかくすべすべな脚は小学生のよう。だが彼女は死神であり実体はない。私がうみ出した概念にすぎない。
私はスマホを開き通知で溢れるメッセージを見る。それなりに美味しそうなやつをセレクトし会話をスタートする。同時に相手の情報から死んでも周囲に気づかれない人を選ぶ。今日の獲物が決まった。佐藤太郎。35歳。フリーター。両親とは離縁。兄弟なし。恋人もなし。裏も取れてる。
借りている倉庫に呼び出し、部屋で待つように指示する。ベッドを置いておけば男は大抵油断する。その隙に外から鍵をかける。その後天井裏に周り男にキャンセルする旨のメールを送る。そうすれば男は怒って出ようとする。だが扉は開かない。さらに怒り狂い視界が狭まるその間にロープを首に引っ掛ける。てこの原理を使えば小柄な私でも男の体は持ち上がる。首が絞まり男が暴れる。吐き出せなかった空気に男がむせる。うるさいのでイヤフォンをつけてしばらく待つ。
数曲聴き終わった頃には静かになっていたのでダンボールに詰めて持ち帰る。この作業は重いからあまり好きではない。だが次の作業をおもえば頑張れる。死神ちゃんに手伝ってほしいが寝たふりを決め込んでいる。静かに寝息を立てる様子は可愛らしく私には起こせない。仕方なく一人で寂しく運ぶ。
自室に持ち帰った死体から血を抜く。私はこの作業が一番好きだ。真っ赤な血が細い管を通って瓶に入る様子の美しさは百人一首に詠まれた秋に色づいた紅葉が流れる竜田川にも勝るだろう。時間がかかる作業なので明日用にキープする獲物にメッセージを送っておく。それが終わればあとはふかふかなクッションに寝っ転がって血を眺めながら音楽を聴く。とても贅沢な時間だ。視覚、嗅覚、聴覚、触覚の四つが満たされているのだ。私は残りの一つを埋めるために瓶の縁についた血を指でとり、舐める。口中に甘酢っぱい味が広がる。これで五感全てが満たされた。
あぁ、なんて贅沢な時間だろう。
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