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第二章
9-10.おしおき ♥
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名を呼ばれ、押し潰さんとした圧迫感が薄れていることに気付く。
動揺も聞こえず、静かな室内。そこで拘束も猿轡も外れていると自覚しても、痺れる腕は男の身体にしがみ付いたまま。懸命に、力を入れようと足掻いてしまう。
「もう大丈夫。あの人はいないよ」
それは男も分かっているのだろう。剥がすことはなく、繰り返し背を撫でる手も、呼びかける声も優しいまま。
時間が経てば経つほどに恐ろしさが蘇って、口から出る呻きを肩口で押し殺す。
あれが、魔王。あれが、この世界を支配した存在。
勝とうなどと、端から思っていなかった。敵う相手ではないというのは漠然とした認識であり、事実であったから。立ち向かったところで、両親を取り返すことも、ましてやこの世界を救うなんてできないと理解していたから。
だが、あの瞬間。間違いなくクラロは示された。敵わない。勝てるはずがない。
見られていると思うだけで。自分が彼らの息子だと認知されていると理解しただけで、何もかも塗り替えられてしまった。
クラロの予見は正しかったのだ。どれだけ束になろうと、どれだけ知恵を合わせようと、恐怖を振り絞り、勇気を奮わせ、全力で立ち向かおうとしたって、勝てないのだ。
人間は。自分たちはアレに勝てるはずがない。ましてやクラロ一人でなんて、勝てるわけがないのだ。
奴隷の姿でなくとも。もし、本当に立ち向かっていたとしたって。あんなの、どうやったって、
「クラロ」
「っ……は、げほっ! う、ぁ……あ……あ……っ……!」
「そう、ゆっくり息をして。じょうず。もう戻ってきたから、何も怖くないよ」
トン、と背を叩かれ、呼吸が戻る。必死に繰り返す呼吸は荒く、漏れる叫びは呻きにしかならない。
怖い。怖い。……怖、かった。
逃げたかったのに、逃げられなくて。終わりたかったのに終われなくて。ただ、その瞬間を待つしかできなかったのが。
自分で自分の終わりを選べなかったことが、何より。
「うぅ、う……ひ……っ……ううぅ……!」
「ごめん、あの人に会わせるつもりはなかったのに。怖かったね。もう大丈夫だからね」
何度も繰り返し撫でられ、少しずつ力が抜けていく。
少なくともここは大丈夫だと。あの存在はいないのだと、ほぐれきった身体が、ゆっくりと起こされる。
「落ち着いた?」
「……ん」
目尻から頬に、それから顎へと指が滑り、顔中を撫でられて息を吐く。そうして最後に髪を撫でつけられて、やっと男から離れることができた。
冷静さが戻れば、現状の理解もできる。クラロに与えられていたのとは違う部屋。大きすぎるベッド。その端。膝から伝わるのは固すぎず柔らかすぎない、丁度いい弾力のベッド。
質素ながら、飾られている調度品は高価と分かるもの。……これだけ材料が揃えば、この男の自室だと推測するのは容易。
途端、居心地が悪く感じるのは、そうだと理解した瞬間に抱いた安心感への戸惑い故。
クラロがどう思おうと、どれだけ意思を固くしようと、ここが一番安全なのだと刷り込まれている。
魔王に認知された今。ここが。ここだけが、唯一の。
「なら、僕の膝の上でお尻を出して」
「……え」
聞き間違いかと、思わず声が漏れる。案ずるような視線は既にそこにはなく、微笑む赤に戻るのはギラついた光。
「っ……べ、ぜ……?」
「そんな声で呼んでもダメだよ。言っただろ? 帰ったらお仕置きだって」
つい男の名を呼んでしまった失態を、ソレを含めて鼻で笑われる。
お仕置きの一言に息を呑み、無意識に離れかけた身体は腕を掴まれ引き止められる。
「あの人と会ったのは想定外だったけど、だからといって無しにはしないよ。これも言ったはずだ。遊びじゃないし、僕は怒っているって」
早く、と膝を叩かれ促される。無理矢理引っ張らないのは、クラロの意思を試しているのだ。
この期に及んでまだ逃げるのかと。まだ反省が足りないのかと。
咎める赤から目を逸らし、歯を噛む。……逃げられる、はずがない。
もうクラロは思い知っている。もう逃げられない。それは、自分の中から訴える声を捻じ伏せるほどに、思い知らされている。
そもそも、この男から逃げて、それからどうなるという? こんな姿にされて、周知されたうえに、魔王にまで認知された。
ここに居るのはペーターではなく、クラロだ。ペーターは……偽るための姿はもう、この日に殺されてしまったのだから。
ダメだ。ダメだけど――逃げられない。
広げられた足の間。ベッドに座る男の膝に跨がるよう、四つん這いに。
頭上から落ちる息は、笑うものでも呆れるものでもなく。その意味を理解するより先に伸びた手は臀部に添えられ、そのまま押しつけるように下へ。
「僕の膝に乗せて。手も、肘をつくように」
言われるまま身体を動かせば、男の膝を抱えるような姿勢になり、体重をかけないよう踏ん張れば、反れた背を撫でられて力が抜ける。
そのまま、まだ震えている乳首を撫でられれば余計に力は入らず、浮かせていた腰さえも沈む。
「お仕置きだから、これもそのままだからね。……さてと」
するり、指が躍る。背中から腰の窪みに。そうして、お尻の丸みを指先がトンと叩く。
「まず僕との約束を破って部屋から出たこと。僕から逃げようとしたこと。噛むなって言ったのに三回も噛んだことと、ちゃんと『お散歩』しなかったこと。……初めてだから、それぞれ五回ずつで許してあげる」
数えるのが終われば、軽い力で尻を叩かれ。その仕置きが何かを、感覚で分からせられる。
まさしく、古典的なお仕置きだ。親が子どもに行うものと同じ。絶対に覆らない優位関係。それを示すためのもの。
痛いのなら我慢できると、唇を噛んで息を整える。
それぞれ五回。合わせて、三十回。これまでの仕打ちを考えれば、耐えられないほどではない。
「自分で数えて。数え忘れたら、最初からだからね」
手が離れていく。振り上げられる気配に息を止めて、きたる衝動に備える。
たった三十回。十二時間も嬲られ続けたのに比べれば何てことはない。ただ痛いだけ。そこに他の苦痛も、困惑もない。ただ、痛みに意識を取られないようにすればいい。
「――っい! ち……っ……うぁ、あっ……?」
バチン、と乾いた音が鼓膜を叩く。鋭い痛みは余韻となって広がり、じわじわと広がる痛みと――僅かな、快楽。
感じるはずのない要素に声が漏れ、ピク、と腰が動く。
乳首からなら、まだ分かる。だが、感じたのは身体の奥。正確には、叩かれたその、ずっともっと奥。
痛みに耐えようと力んだ瞬間、忘れていた違和感によって引き起こされた連鎖。締めつけたのはクラロの中に埋められた異物。その先端によって叩かれたのは、男によって覚えさせられた内側の、一番弱い場所。
一度なら気のせい。二度なら勘違い。されど、三度となればもはや言い逃れはできない。
「っ、ベゼ、待っ――ひぐっ! っ……よ、んっ……ウェルゼッ……!」
「そんな可愛い声で呼んでもダメだって言っただろ」
「違っ……な、中の、抜っ――い゛っ……!」
一際強く肌を叩かれ、痛みと重なってじわじわと快楽が押し寄せる。
痛みのせいで無意識に力が入り、結果的に埋められたティルドを締めつけ、弛緩しはじめた頃に再び叩かれる悪循環。
自ら意思を持ったようにトンと凝りを叩かれ、届くほどに膨張していることを同時に突きつけられる。
「数え忘れたね。ほら、最初から」
予想もしない刺激に戸惑い、堪らず漏れた懇願は、容赦のない指摘にはね除けられる。
否定は叩く音に消され、呻きと共に絞り出す数を必死に辿る。
「いちっ……はぁ、あっ……ん゛ぅっ! っ……に、ぃ……!」
叩かれ、呻き、喘いで、繰り返し。痛みと快楽の余韻が長引き、競うように塗り替えられて、簡単な数字が頭の中から飛びそうになってしまう。
丸まろうとする背は、痛みと快楽のどちらに耐えようとしたのか。それも手を添えられ、上から押さえつけられることで元の姿勢に戻され、意味を為さず。
むしろ動いたことを咎めるように音が強くしなれば、その後の快楽も比例して増していくばかり。
だが、口から重ねる数字が増えるにつれて比率が傾いていく。痛みよりも快楽が長引き、漏れるのは苦痛ではない吐息。
男の膝にしがみ付き、込み上げてくる衝動をなんとか留めたいのに、波はますます大きく、強く、クラロの意識を攫おうとしていく。
気持ちいい。気持ちいいのに、足りない。欲しくないけど、それでも、足りない。
確かに触れているのに。触れてほしくないはずなのに、その一線を越えるには明らかに何かが、足りなくて、
「に、じゅう、ご……っはぁ、ん、っ……っあ、にじゅ、ろくっ……」
痛みが麻痺し、ジクジクと疼く感覚が背に這い上がってくる。余韻は爪先まで満たしきって、熱さに視界が滲んだまま。
痛いのに気持ちいい。痛いのに、足りない。矛盾していると分かっているのに抗えず、近づく終わりに胸が急く。
「……全く。ここまでしないと、素直にならないなんて」
「うぇる、ぜっ……んんっぁ、はっ……に、じゅっ……きゅ、う……?」
「ほら、最後までちゃんと数えて」
落ちた声が呆れたものと分かっても、意味は頭の中をすり抜け。叩く音が途切れたことに名を呼べば、すかさず与えられた一撃に背をしならせる。
言葉の意味は分からずとも、次が最後だということは理解できて。今までのどの一撃よりも軽い、柔らかな最後に数字は苦無く口からまろびでる。
「……はい、おしまい。ちゃんと数えれたね」
動揺も聞こえず、静かな室内。そこで拘束も猿轡も外れていると自覚しても、痺れる腕は男の身体にしがみ付いたまま。懸命に、力を入れようと足掻いてしまう。
「もう大丈夫。あの人はいないよ」
それは男も分かっているのだろう。剥がすことはなく、繰り返し背を撫でる手も、呼びかける声も優しいまま。
時間が経てば経つほどに恐ろしさが蘇って、口から出る呻きを肩口で押し殺す。
あれが、魔王。あれが、この世界を支配した存在。
勝とうなどと、端から思っていなかった。敵う相手ではないというのは漠然とした認識であり、事実であったから。立ち向かったところで、両親を取り返すことも、ましてやこの世界を救うなんてできないと理解していたから。
だが、あの瞬間。間違いなくクラロは示された。敵わない。勝てるはずがない。
見られていると思うだけで。自分が彼らの息子だと認知されていると理解しただけで、何もかも塗り替えられてしまった。
クラロの予見は正しかったのだ。どれだけ束になろうと、どれだけ知恵を合わせようと、恐怖を振り絞り、勇気を奮わせ、全力で立ち向かおうとしたって、勝てないのだ。
人間は。自分たちはアレに勝てるはずがない。ましてやクラロ一人でなんて、勝てるわけがないのだ。
奴隷の姿でなくとも。もし、本当に立ち向かっていたとしたって。あんなの、どうやったって、
「クラロ」
「っ……は、げほっ! う、ぁ……あ……あ……っ……!」
「そう、ゆっくり息をして。じょうず。もう戻ってきたから、何も怖くないよ」
トン、と背を叩かれ、呼吸が戻る。必死に繰り返す呼吸は荒く、漏れる叫びは呻きにしかならない。
怖い。怖い。……怖、かった。
逃げたかったのに、逃げられなくて。終わりたかったのに終われなくて。ただ、その瞬間を待つしかできなかったのが。
自分で自分の終わりを選べなかったことが、何より。
「うぅ、う……ひ……っ……ううぅ……!」
「ごめん、あの人に会わせるつもりはなかったのに。怖かったね。もう大丈夫だからね」
何度も繰り返し撫でられ、少しずつ力が抜けていく。
少なくともここは大丈夫だと。あの存在はいないのだと、ほぐれきった身体が、ゆっくりと起こされる。
「落ち着いた?」
「……ん」
目尻から頬に、それから顎へと指が滑り、顔中を撫でられて息を吐く。そうして最後に髪を撫でつけられて、やっと男から離れることができた。
冷静さが戻れば、現状の理解もできる。クラロに与えられていたのとは違う部屋。大きすぎるベッド。その端。膝から伝わるのは固すぎず柔らかすぎない、丁度いい弾力のベッド。
質素ながら、飾られている調度品は高価と分かるもの。……これだけ材料が揃えば、この男の自室だと推測するのは容易。
途端、居心地が悪く感じるのは、そうだと理解した瞬間に抱いた安心感への戸惑い故。
クラロがどう思おうと、どれだけ意思を固くしようと、ここが一番安全なのだと刷り込まれている。
魔王に認知された今。ここが。ここだけが、唯一の。
「なら、僕の膝の上でお尻を出して」
「……え」
聞き間違いかと、思わず声が漏れる。案ずるような視線は既にそこにはなく、微笑む赤に戻るのはギラついた光。
「っ……べ、ぜ……?」
「そんな声で呼んでもダメだよ。言っただろ? 帰ったらお仕置きだって」
つい男の名を呼んでしまった失態を、ソレを含めて鼻で笑われる。
お仕置きの一言に息を呑み、無意識に離れかけた身体は腕を掴まれ引き止められる。
「あの人と会ったのは想定外だったけど、だからといって無しにはしないよ。これも言ったはずだ。遊びじゃないし、僕は怒っているって」
早く、と膝を叩かれ促される。無理矢理引っ張らないのは、クラロの意思を試しているのだ。
この期に及んでまだ逃げるのかと。まだ反省が足りないのかと。
咎める赤から目を逸らし、歯を噛む。……逃げられる、はずがない。
もうクラロは思い知っている。もう逃げられない。それは、自分の中から訴える声を捻じ伏せるほどに、思い知らされている。
そもそも、この男から逃げて、それからどうなるという? こんな姿にされて、周知されたうえに、魔王にまで認知された。
ここに居るのはペーターではなく、クラロだ。ペーターは……偽るための姿はもう、この日に殺されてしまったのだから。
ダメだ。ダメだけど――逃げられない。
広げられた足の間。ベッドに座る男の膝に跨がるよう、四つん這いに。
頭上から落ちる息は、笑うものでも呆れるものでもなく。その意味を理解するより先に伸びた手は臀部に添えられ、そのまま押しつけるように下へ。
「僕の膝に乗せて。手も、肘をつくように」
言われるまま身体を動かせば、男の膝を抱えるような姿勢になり、体重をかけないよう踏ん張れば、反れた背を撫でられて力が抜ける。
そのまま、まだ震えている乳首を撫でられれば余計に力は入らず、浮かせていた腰さえも沈む。
「お仕置きだから、これもそのままだからね。……さてと」
するり、指が躍る。背中から腰の窪みに。そうして、お尻の丸みを指先がトンと叩く。
「まず僕との約束を破って部屋から出たこと。僕から逃げようとしたこと。噛むなって言ったのに三回も噛んだことと、ちゃんと『お散歩』しなかったこと。……初めてだから、それぞれ五回ずつで許してあげる」
数えるのが終われば、軽い力で尻を叩かれ。その仕置きが何かを、感覚で分からせられる。
まさしく、古典的なお仕置きだ。親が子どもに行うものと同じ。絶対に覆らない優位関係。それを示すためのもの。
痛いのなら我慢できると、唇を噛んで息を整える。
それぞれ五回。合わせて、三十回。これまでの仕打ちを考えれば、耐えられないほどではない。
「自分で数えて。数え忘れたら、最初からだからね」
手が離れていく。振り上げられる気配に息を止めて、きたる衝動に備える。
たった三十回。十二時間も嬲られ続けたのに比べれば何てことはない。ただ痛いだけ。そこに他の苦痛も、困惑もない。ただ、痛みに意識を取られないようにすればいい。
「――っい! ち……っ……うぁ、あっ……?」
バチン、と乾いた音が鼓膜を叩く。鋭い痛みは余韻となって広がり、じわじわと広がる痛みと――僅かな、快楽。
感じるはずのない要素に声が漏れ、ピク、と腰が動く。
乳首からなら、まだ分かる。だが、感じたのは身体の奥。正確には、叩かれたその、ずっともっと奥。
痛みに耐えようと力んだ瞬間、忘れていた違和感によって引き起こされた連鎖。締めつけたのはクラロの中に埋められた異物。その先端によって叩かれたのは、男によって覚えさせられた内側の、一番弱い場所。
一度なら気のせい。二度なら勘違い。されど、三度となればもはや言い逃れはできない。
「っ、ベゼ、待っ――ひぐっ! っ……よ、んっ……ウェルゼッ……!」
「そんな可愛い声で呼んでもダメだって言っただろ」
「違っ……な、中の、抜っ――い゛っ……!」
一際強く肌を叩かれ、痛みと重なってじわじわと快楽が押し寄せる。
痛みのせいで無意識に力が入り、結果的に埋められたティルドを締めつけ、弛緩しはじめた頃に再び叩かれる悪循環。
自ら意思を持ったようにトンと凝りを叩かれ、届くほどに膨張していることを同時に突きつけられる。
「数え忘れたね。ほら、最初から」
予想もしない刺激に戸惑い、堪らず漏れた懇願は、容赦のない指摘にはね除けられる。
否定は叩く音に消され、呻きと共に絞り出す数を必死に辿る。
「いちっ……はぁ、あっ……ん゛ぅっ! っ……に、ぃ……!」
叩かれ、呻き、喘いで、繰り返し。痛みと快楽の余韻が長引き、競うように塗り替えられて、簡単な数字が頭の中から飛びそうになってしまう。
丸まろうとする背は、痛みと快楽のどちらに耐えようとしたのか。それも手を添えられ、上から押さえつけられることで元の姿勢に戻され、意味を為さず。
むしろ動いたことを咎めるように音が強くしなれば、その後の快楽も比例して増していくばかり。
だが、口から重ねる数字が増えるにつれて比率が傾いていく。痛みよりも快楽が長引き、漏れるのは苦痛ではない吐息。
男の膝にしがみ付き、込み上げてくる衝動をなんとか留めたいのに、波はますます大きく、強く、クラロの意識を攫おうとしていく。
気持ちいい。気持ちいいのに、足りない。欲しくないけど、それでも、足りない。
確かに触れているのに。触れてほしくないはずなのに、その一線を越えるには明らかに何かが、足りなくて、
「に、じゅう、ご……っはぁ、ん、っ……っあ、にじゅ、ろくっ……」
痛みが麻痺し、ジクジクと疼く感覚が背に這い上がってくる。余韻は爪先まで満たしきって、熱さに視界が滲んだまま。
痛いのに気持ちいい。痛いのに、足りない。矛盾していると分かっているのに抗えず、近づく終わりに胸が急く。
「……全く。ここまでしないと、素直にならないなんて」
「うぇる、ぜっ……んんっぁ、はっ……に、じゅっ……きゅ、う……?」
「ほら、最後までちゃんと数えて」
落ちた声が呆れたものと分かっても、意味は頭の中をすり抜け。叩く音が途切れたことに名を呼べば、すかさず与えられた一撃に背をしならせる。
言葉の意味は分からずとも、次が最後だということは理解できて。今までのどの一撃よりも軽い、柔らかな最後に数字は苦無く口からまろびでる。
「……はい、おしまい。ちゃんと数えれたね」
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