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第二章
8-5.帰路にて ♥
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下から突き上げるような衝動は、これで何度目になるだろうか。
木製の座面はクラロの臀部を守ることなく、整備されていない道は馬車にとっては悪路。
閉めきられた窓。その向こうに広がる景色は見られず、静かに前を見据えるだけ。
対面に座る影はなく、一人きり。会話する相手もいなければ、これを仕組んだ張本人だって、まだ現れる兆しはない。
あまりにも多くの事がありすぎて、まだ数時間の出来事とは思えない。
城から転移させられたことも、魔物に襲われたことも。……そして、あの村に向かわされたことも。
息をつく気力さえもう残らず、飽和する頭は鈍い痛みを訴えている。
どこまでがあの男の狙い通りだったのだろう。転移も、魔物から逃げ切ることも、あの村に留まろうとしないことも。全て、クラロに所有物だと公言させるための罠。
それとも、あの村に戻れないことを自覚させる方が目的で……だとしたって、悪趣味すぎる。
最初から戻るつもりなどなかった。帰ろうとすら思っていなかった。
今更突きつけられずとも、理解していたことだ。
だからこそ、ずっと仕方ないと言い聞かせていた。あの時はそうするしかなかったのだと、だから恨んだところで意味はないのだと。怒りを抱いたところで、虚しいだけなのだと。
こんな……こんな形で、改めて自覚させる必要など。こんな大がかりな事をしてまで。
最初から逃げられない場所を今更奪いにかからずとも、結果は変わらなかったはずだ。あの男だって、これで助けを求めるなどとは思っていないはず。
暇つぶしにしたって、あまりにも……あまりにも、悪趣味すぎる。
今も、疲労するクラロをどこかから愉しんでいるのだろう。
理解しながら弄ばれ、思い通りに動く姿を。無駄だと知りながらも抗い続ける、馬鹿げた一連を。
人々を救わないと決めて、それなのに抗い続けているクラロを。
逃げられないと知っているのに、無駄だと分かっているのに、それでも諦められない様を。あの赤は、ずっと。
指輪を見下ろし、歯を噛む。投影機能だけではないと思っていたが、ここまで仕込んでいたとは。
自分から危険な場所に放り込んでおいて、本当に助けを求めるとでも思っているのか?
こんなだまし討ちのような真似をしておいて、助けたいなどと、どの口が言うのか。
息を吐き、項垂れ。足の間から床を見つめ、頭を押さえる。
……そう、悪趣味だ。本当に彼がしたなら。本当に、あの男が仕組んだことなら。
疲労以上に込み上げるのは、拭いきれない違和感。
書庫に追い詰められた時も、『食事会』の時も、個室で術にかけられた時だって。あの男は姿を現し、クラロの反応を愉しんでいた。
前回の一連だってそうだ。明確に言葉にしたのは遅かったが、クラロに気付くだけの材料は十分に与えていた。
だが、今回は違う。認識のない部下、前置きのない魔術、そして……故郷への帰還。
あの男なら、事前に揺さぶりをかけるはずだ。そうして、これも遊びの一環であると気付かせるはず。
信じているわけではない。今回はそういう趣旨である可能性だってある。
それでも、何かが引っ掛かる。本当にあの男なのかという疑いが、消えてくれない。
『――絶対に呼んでね』
念押しされた言葉が今になって蘇る。あれが、この展開への伏線とも考えられるだろう。
だとすれば、逆に。あの場でクラロが彼を呼ぶと……あの男が、考えるだろうか。
どこまでがあの男の狙いで、どこまでがクラロの深読みなのか。この思考すらも想定内なのか。
答えは与えられず、揺れる馬車に響くのは耳慣れた笑いではなく自身の溜め息だけ。
もしも、全てがクラロの思い違いなら。
あの男の仕組んだことではなく、他の誰かの思惑であったなら。本当にクラロを、殺そうとしたのであれば。
「……?」
振動が止み、蹄の音も聞こえなくなる。
車輪が嵌まったのでも、目的地に着いたのでもない。この停止が意図的なものだと気付き、息を呑む。
馬が鼻を鳴らす音に紛れるのは、聞こえるはずのない会話。御者として乗ったのは、クラロを見つけた淫魔一人だけ。他に対話する者はいなかったはず。
あの男なら、迎えの馬車に乗っているぐらいするはずと。よぎる不安のまま、伸ばした手が窓に触れたところで弾かれる。
強い痛みと弾ける音。覆った指先に外傷はなくとも、明らかな拒絶に目を見開く。
先ほど、窓に手をかけた時はなんともなかったはずだ。
明らかに外部からかけられた魔術。それも、御者を勤めている下級の淫魔では扱えないレベルのもの。
逃げ出さないと表明している者にはあまりに過剰すぎる。嫌な予感はますます募り、咄嗟に探した逃げ場は塞がれた扉だけ。
「ですが――」
「黙っていれば――こっちに――始末――」
焦っていても、外からの会話は中にまで響く。距離があるせいで途切れ途切れだが、あの男でないのは明らか。
片方は御者、ではもう一人は……と。冷静でいられたのは、そこまでだった。
「……っ!?」
馬の嘶きと同時に地面が揺れ、壁に叩き付けられる身体。激しく揺れ続ける世界にしがみ付き、突き上げる衝動の強さに身を縮ませる。
叫ぶ声に返事もなく、馬を宥める音だって聞こえない。嵌められたと気付いて、咄嗟に伸ばした手は揺れのせいでしがみ付いたまま剥がれない。
木に掠り、枝の折れる音。制御を失った馬車の中、やっと触れた指は先ほどと同じく弾かれて終わる。
逃げ場はない。止める術もない。
馬車に穴を、いいや魔術が張られている時点で無効化されるだけ。かといって、このままでは……!
「っくそ……!」
せめて障壁をと、判断したところで後ろから突き飛ばされるような感覚に襲われる。
ゆっくりと近づく壁。ぶつかると理解しても動けない身体。
座面の角が間近に迫って――そこで、景色が切り替わる。
一瞬に思えた空白。実際に気を失っていたのは何分、あるいは何十分だったのか。
横たわる身体。天地が狂い、窓が真上にある馬車。横転したと気付いて、起き上がろうとした身体に走る痛み。
頭を強く打ったせいか、四肢の感覚が鈍い。馬の音は聞こえず、金具が外れて逃げたか、そうでなくとも乗って逃げるのは現実的ではない。
だが、ここに留まるわけにはいかないと。力を振り絞ろうとし、息を吸った瞬間、肺を満たすのは、むせかえるような甘い香り。
甲高い耳鳴りとうなじの痛み。ハッキリとする意識に、それが頭を打ちつけたのではなく、蔓延する毒のせいと自覚したところで、今度こそ現実を認識する。
横転する馬車。僅かに開いた窓。そこから覗く――極彩色。
呻きとも嗤いともつかぬ異音。蠢く音は、窓からだけではなく背後からも。
「っ、の……離せっ……!」
引きずり出すには小さすぎても、触手を忍ばせるには十分すぎるだけの隙間。手足に絡みつく力は弱くとも、束で襲いかかられては為す術もない。
火を使えばこの馬車ごと燃えてしまう。
ならばと、切り刻もうとした矢先、吹き込まれる花粉の毒で思考が溶ける。
クラロの防衛本能が働かないギリギリの、だからこそ質の悪い毒に翻弄され、身体が違う意味で大きく跳ねる。
吸ってはならないと、荒い呼吸を止めようとしても手遅れ。
目に見えるほどに濃く、ほぼ密封された空間。
鼻腔から脳へ染みこむ甘味が、脳髄を伝って全身に広がっていく。身じろぎするだけで耐えがたい掻痒感に襲われて、それなのに弄る触手は止まらない。
服の裾から忍び込んだ先端は、手足に絡まっているものに比べてあまりに細すぎる。それこそ、太さは小指の爪の半分以下、ただの革紐と見間違えてもおかしくはない。
一つだけならくすぐったくとも、束となれば無視しがたい違和感。ただでさえ敏感な肌に粘膜を塗りつけられ、ひくついた腹部までも丁寧に嬲られてしまう。
ゆっくりと、形を確かめるように上がってくる触腕。
脇腹から胸に、そして首から耳元へ。捕食とは思えぬ程の丁寧な動きに、目眩と快楽が同時に襲いかかって、漏れる息はどうしても弾んでしまう。
「ぁ、は……っ……んん、っあ……!」
腰から背筋に痺れが駆け上がり、追いかけるように触手に撫でられ、耐えられない。
このままではいけないと、なんとかして振り払わなければと。分かっているのに、内からも外からも甘さに浸され、頭の中が蕩けていく。
障壁は、もう今からでは意味がない。炎は燃えてしまう。やっぱり、切るしか、方法は。
でも、下手に打てば馬車が、壊れて、
「ひっ、ぁ! 待っ――うぁ、あ、あっ!」
沈む思考を、根元から絞り出された乳首が引き戻す。
ぐ、と引っ張られた皮膚の痛みさえもジクジクと疼き、引かれる度に腰の重みが増す。
無意識に突き出した背は腹部に回る触腕に押さえつけられ、耳まで愛撫されて、聴覚まで犯される。
産毛を逆撫でされ、空気の弾ける音にすくめた首を舐める動きは、まるで宥めるかのように。
あまりに人間じみた動きに、よぎるのは調教されたスライムの姿。
いっそ操られていたなら、と、そう考えるのはまだあの男の仕業だと思いたいからなのか。
だって、そうでなければ。そうでないのなら、この行為の果てに待っているのは、死だ。
犯され、搾り取られ。誰にも見つかることなく、朽ち果てるだけの。尊厳も何もない、ただの肉の袋になる、耐えがたい死。
始末を、と。聞こえていた声が頭をよぎる。
あの男の仕業ではなく、それでもクラロ自身を狙ったのなら、それは……そこに助かる道は、なくて。
木製の座面はクラロの臀部を守ることなく、整備されていない道は馬車にとっては悪路。
閉めきられた窓。その向こうに広がる景色は見られず、静かに前を見据えるだけ。
対面に座る影はなく、一人きり。会話する相手もいなければ、これを仕組んだ張本人だって、まだ現れる兆しはない。
あまりにも多くの事がありすぎて、まだ数時間の出来事とは思えない。
城から転移させられたことも、魔物に襲われたことも。……そして、あの村に向かわされたことも。
息をつく気力さえもう残らず、飽和する頭は鈍い痛みを訴えている。
どこまでがあの男の狙い通りだったのだろう。転移も、魔物から逃げ切ることも、あの村に留まろうとしないことも。全て、クラロに所有物だと公言させるための罠。
それとも、あの村に戻れないことを自覚させる方が目的で……だとしたって、悪趣味すぎる。
最初から戻るつもりなどなかった。帰ろうとすら思っていなかった。
今更突きつけられずとも、理解していたことだ。
だからこそ、ずっと仕方ないと言い聞かせていた。あの時はそうするしかなかったのだと、だから恨んだところで意味はないのだと。怒りを抱いたところで、虚しいだけなのだと。
こんな……こんな形で、改めて自覚させる必要など。こんな大がかりな事をしてまで。
最初から逃げられない場所を今更奪いにかからずとも、結果は変わらなかったはずだ。あの男だって、これで助けを求めるなどとは思っていないはず。
暇つぶしにしたって、あまりにも……あまりにも、悪趣味すぎる。
今も、疲労するクラロをどこかから愉しんでいるのだろう。
理解しながら弄ばれ、思い通りに動く姿を。無駄だと知りながらも抗い続ける、馬鹿げた一連を。
人々を救わないと決めて、それなのに抗い続けているクラロを。
逃げられないと知っているのに、無駄だと分かっているのに、それでも諦められない様を。あの赤は、ずっと。
指輪を見下ろし、歯を噛む。投影機能だけではないと思っていたが、ここまで仕込んでいたとは。
自分から危険な場所に放り込んでおいて、本当に助けを求めるとでも思っているのか?
こんなだまし討ちのような真似をしておいて、助けたいなどと、どの口が言うのか。
息を吐き、項垂れ。足の間から床を見つめ、頭を押さえる。
……そう、悪趣味だ。本当に彼がしたなら。本当に、あの男が仕組んだことなら。
疲労以上に込み上げるのは、拭いきれない違和感。
書庫に追い詰められた時も、『食事会』の時も、個室で術にかけられた時だって。あの男は姿を現し、クラロの反応を愉しんでいた。
前回の一連だってそうだ。明確に言葉にしたのは遅かったが、クラロに気付くだけの材料は十分に与えていた。
だが、今回は違う。認識のない部下、前置きのない魔術、そして……故郷への帰還。
あの男なら、事前に揺さぶりをかけるはずだ。そうして、これも遊びの一環であると気付かせるはず。
信じているわけではない。今回はそういう趣旨である可能性だってある。
それでも、何かが引っ掛かる。本当にあの男なのかという疑いが、消えてくれない。
『――絶対に呼んでね』
念押しされた言葉が今になって蘇る。あれが、この展開への伏線とも考えられるだろう。
だとすれば、逆に。あの場でクラロが彼を呼ぶと……あの男が、考えるだろうか。
どこまでがあの男の狙いで、どこまでがクラロの深読みなのか。この思考すらも想定内なのか。
答えは与えられず、揺れる馬車に響くのは耳慣れた笑いではなく自身の溜め息だけ。
もしも、全てがクラロの思い違いなら。
あの男の仕組んだことではなく、他の誰かの思惑であったなら。本当にクラロを、殺そうとしたのであれば。
「……?」
振動が止み、蹄の音も聞こえなくなる。
車輪が嵌まったのでも、目的地に着いたのでもない。この停止が意図的なものだと気付き、息を呑む。
馬が鼻を鳴らす音に紛れるのは、聞こえるはずのない会話。御者として乗ったのは、クラロを見つけた淫魔一人だけ。他に対話する者はいなかったはず。
あの男なら、迎えの馬車に乗っているぐらいするはずと。よぎる不安のまま、伸ばした手が窓に触れたところで弾かれる。
強い痛みと弾ける音。覆った指先に外傷はなくとも、明らかな拒絶に目を見開く。
先ほど、窓に手をかけた時はなんともなかったはずだ。
明らかに外部からかけられた魔術。それも、御者を勤めている下級の淫魔では扱えないレベルのもの。
逃げ出さないと表明している者にはあまりに過剰すぎる。嫌な予感はますます募り、咄嗟に探した逃げ場は塞がれた扉だけ。
「ですが――」
「黙っていれば――こっちに――始末――」
焦っていても、外からの会話は中にまで響く。距離があるせいで途切れ途切れだが、あの男でないのは明らか。
片方は御者、ではもう一人は……と。冷静でいられたのは、そこまでだった。
「……っ!?」
馬の嘶きと同時に地面が揺れ、壁に叩き付けられる身体。激しく揺れ続ける世界にしがみ付き、突き上げる衝動の強さに身を縮ませる。
叫ぶ声に返事もなく、馬を宥める音だって聞こえない。嵌められたと気付いて、咄嗟に伸ばした手は揺れのせいでしがみ付いたまま剥がれない。
木に掠り、枝の折れる音。制御を失った馬車の中、やっと触れた指は先ほどと同じく弾かれて終わる。
逃げ場はない。止める術もない。
馬車に穴を、いいや魔術が張られている時点で無効化されるだけ。かといって、このままでは……!
「っくそ……!」
せめて障壁をと、判断したところで後ろから突き飛ばされるような感覚に襲われる。
ゆっくりと近づく壁。ぶつかると理解しても動けない身体。
座面の角が間近に迫って――そこで、景色が切り替わる。
一瞬に思えた空白。実際に気を失っていたのは何分、あるいは何十分だったのか。
横たわる身体。天地が狂い、窓が真上にある馬車。横転したと気付いて、起き上がろうとした身体に走る痛み。
頭を強く打ったせいか、四肢の感覚が鈍い。馬の音は聞こえず、金具が外れて逃げたか、そうでなくとも乗って逃げるのは現実的ではない。
だが、ここに留まるわけにはいかないと。力を振り絞ろうとし、息を吸った瞬間、肺を満たすのは、むせかえるような甘い香り。
甲高い耳鳴りとうなじの痛み。ハッキリとする意識に、それが頭を打ちつけたのではなく、蔓延する毒のせいと自覚したところで、今度こそ現実を認識する。
横転する馬車。僅かに開いた窓。そこから覗く――極彩色。
呻きとも嗤いともつかぬ異音。蠢く音は、窓からだけではなく背後からも。
「っ、の……離せっ……!」
引きずり出すには小さすぎても、触手を忍ばせるには十分すぎるだけの隙間。手足に絡みつく力は弱くとも、束で襲いかかられては為す術もない。
火を使えばこの馬車ごと燃えてしまう。
ならばと、切り刻もうとした矢先、吹き込まれる花粉の毒で思考が溶ける。
クラロの防衛本能が働かないギリギリの、だからこそ質の悪い毒に翻弄され、身体が違う意味で大きく跳ねる。
吸ってはならないと、荒い呼吸を止めようとしても手遅れ。
目に見えるほどに濃く、ほぼ密封された空間。
鼻腔から脳へ染みこむ甘味が、脳髄を伝って全身に広がっていく。身じろぎするだけで耐えがたい掻痒感に襲われて、それなのに弄る触手は止まらない。
服の裾から忍び込んだ先端は、手足に絡まっているものに比べてあまりに細すぎる。それこそ、太さは小指の爪の半分以下、ただの革紐と見間違えてもおかしくはない。
一つだけならくすぐったくとも、束となれば無視しがたい違和感。ただでさえ敏感な肌に粘膜を塗りつけられ、ひくついた腹部までも丁寧に嬲られてしまう。
ゆっくりと、形を確かめるように上がってくる触腕。
脇腹から胸に、そして首から耳元へ。捕食とは思えぬ程の丁寧な動きに、目眩と快楽が同時に襲いかかって、漏れる息はどうしても弾んでしまう。
「ぁ、は……っ……んん、っあ……!」
腰から背筋に痺れが駆け上がり、追いかけるように触手に撫でられ、耐えられない。
このままではいけないと、なんとかして振り払わなければと。分かっているのに、内からも外からも甘さに浸され、頭の中が蕩けていく。
障壁は、もう今からでは意味がない。炎は燃えてしまう。やっぱり、切るしか、方法は。
でも、下手に打てば馬車が、壊れて、
「ひっ、ぁ! 待っ――うぁ、あ、あっ!」
沈む思考を、根元から絞り出された乳首が引き戻す。
ぐ、と引っ張られた皮膚の痛みさえもジクジクと疼き、引かれる度に腰の重みが増す。
無意識に突き出した背は腹部に回る触腕に押さえつけられ、耳まで愛撫されて、聴覚まで犯される。
産毛を逆撫でされ、空気の弾ける音にすくめた首を舐める動きは、まるで宥めるかのように。
あまりに人間じみた動きに、よぎるのは調教されたスライムの姿。
いっそ操られていたなら、と、そう考えるのはまだあの男の仕業だと思いたいからなのか。
だって、そうでなければ。そうでないのなら、この行為の果てに待っているのは、死だ。
犯され、搾り取られ。誰にも見つかることなく、朽ち果てるだけの。尊厳も何もない、ただの肉の袋になる、耐えがたい死。
始末を、と。聞こえていた声が頭をよぎる。
あの男の仕業ではなく、それでもクラロ自身を狙ったのなら、それは……そこに助かる道は、なくて。
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