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145◆挿絵あり
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「ああ、そういえばすっかり忘れていたがこの話を参考に作られた演劇があるらしいな」
「へぇ~」
「色んな国で上演され、平民には人気の演目のようだが」
俺は見た事はないので全てを知らない、とソランツェ。うん。逆に見た事あったら驚くよ、俺は。
「演劇では色々と味付けがされていますので、事実と組み合わせてお話いたしますが……」
王太子は一目見た瞬間に心を奪われた。それは第三王子も同様で二人は第三王子が特使として滞在している短期間で一気に愛を育てた。
そして、国交を結ぶかもしれないという時に起きたこの出会いは、自分達二人も両国間の国交も必ず結ばれる・結ばれなければならない運命であるから起きたのだと王太子は訴えた。
しかし、彼には婚約者がいる。
王太子の婚約者は、建国時より国を支えてきた家の一つである、当時鉱山やその関連事業でセラス国一番の財を成していた侯爵家の令嬢。
美人の部類ではあるが探せばよく居る程度のもので、気が強く甘やかされ我儘に育った事が顔に出ている・金の力で婚約者の座を手に入れただけのくせになどと陰で言われていた人物だった。
実際その通りの傍若無人ぶりで、彼女が参加する茶会や舞踏会などで何か騒動が起きるのは当たり前だったそう。
そんな人物でも王太子は第三王子が現れるまでは”色んな事に目を瞑り”ちゃんと令嬢を婚約者として扱っていたらしいが、もうそんな事は出来ないし彼以外は考えられないと王太子は彼女を拒んだ。
セラス国王としても、悪評ばかりの人物よりも今から国交を結び良好な友好関係でいようかと考えている国の王族で、自分の息子とも気持ちを通わせた両国間の友好の象徴ともなれる見目麗しい人物の方が良いと考えた。
ただ、婚約者というより建国時以来ずっと国を支えてきた侯爵家をどうするかだけは頭を悩ませた。
しかし、令嬢の父である侯爵がここですっぱり退いた方が自国にもルトゥスア国にも多大な恩を売れる事を、その方が良いと判断したおかげで何も問題なく第三王子が選ばれた。
問題は何も無くなった。
王太子としてはその勢いで一気に華々しく結婚と行きたかったらしいが元婚約者が事件を起こす。
「だよな。何も起きなかったとか言われた方が吃驚するし」
その事件とはルトゥスア国第三王子が「どうしても彼女と話がしたい」と、王太子の婚約者だった令嬢に会いに行った時に起きた事。
「ヤバそうな匂いしかしない……」
自身の父親にすらも選ばれなかった令嬢の元へ訪れた第三王子は、自分としては彼(王太子)と居られるのなら妾でだって構わないが、自分が王族である事と、この結婚が両国の友好の証としてこの上ないと判断されたのでそうは出来ない。貴女の位置を奪ってしまって申し訳ないと涙ながらに謝罪した。その時『王族なのに頭まで下げた』そうだ。
「うっわぁー……煽ってる訳じゃないだろうに、煽ってるとしか……」
で、予想通り。
セラス国は多妻(多夫)制ではないので間違いなく王太子妃として嫁ぐ予定だったのに、いきなり婚約白紙(王家により新たな婚約者の斡旋有り)にされたり、国交を結んだ後のルトゥスアでの場所の確保に注力している父親に(実は想いを寄せていたらしい)王太子を諦められないのなら妾にでもならせてもらえばいいと言われたり、全てに選ばれた人物からの意味のない謝罪をされたりした令嬢の気持ちも判らないでもないが……その令嬢は激昂。
頭を下げるルトゥスア国第三王子に向かって罵詈雑言を浴びせながら手元にあった中身の入ったティーカップを投げ付け、持っていた扇で攻撃しようとしたらしい。
「え、令嬢それダメじゃん」
「お茶がある程度温くなっていた為第三王子は大事に至らずという事でしたが、それはもう他国の王族相手にとんでもない事ですので……」
「殺された?!」
「いえ、攻撃が届く前に扇を持っていた腕を王子の護衛に切り落とされ即拘束されました」
「で、でも?!」
「まあ、処刑なのだろうな」
「はい」
「やっぱりなぁ……それ、間違いなく王太子主導だろ?」
「そうです。一族全てです」
しかも、侯爵家の上級使用人や令嬢専属として働いていた者たちもそれに含まれてルトゥスア国へ移送され、セラス国王太子も立ち合いの元、色んな方法で処刑されたらしい。色んな方法……??
「そんな怖い話が人気なのかよ……うへぇ……」
「いえ、事実は処刑ですが演劇では令嬢は腕を切り落とされておらず、一族は平民に落とされ国外追放となったとだけ描かれています」
「そうなのか?」
「演劇自体ルトゥスア発の物でルトゥスア流の味付けがされた演劇ですから……」
極刑だったのを自分の所為でもあると第三王子が減刑を願ったからだという件がしっかりとあるらしい。
「当時ならいざ知らず、現在の平民はちゃんとした事実など知る由もなく、そんな物なのかと受け入れているでしょう」
その演劇は二人の結婚式に合わせて両国同時に無料で上演が開始され、国内を隈なく回った後は周辺国でも上演された。そして、今現在も。
「うわ……なんか違う意味が出て来たな……余計怖ぇ~」
「それにしてもライアスは色々詳しいが、総教国の聖騎士団はこんな事まで教わるのか?」
「いえ、一夜漬けです」
ニッコリ笑うライアスの目の下のクマの存在感。
俺に提供する為に何を訊かれてもいい様にセラス国に関する色んな情報が一気に詰め込まれた感がすごい。
「何よりも情報持ち過ぎな総教国が一番怖いんだよなぁ……って、なんだか話が脱線してないか?」
つい、ポテトチップス(自家製)を用意してパリパリ食いながら合いの手入れつつ話聞いてたくらいには脱線している気がするんだけど。
「へぇ~」
「色んな国で上演され、平民には人気の演目のようだが」
俺は見た事はないので全てを知らない、とソランツェ。うん。逆に見た事あったら驚くよ、俺は。
「演劇では色々と味付けがされていますので、事実と組み合わせてお話いたしますが……」
王太子は一目見た瞬間に心を奪われた。それは第三王子も同様で二人は第三王子が特使として滞在している短期間で一気に愛を育てた。
そして、国交を結ぶかもしれないという時に起きたこの出会いは、自分達二人も両国間の国交も必ず結ばれる・結ばれなければならない運命であるから起きたのだと王太子は訴えた。
しかし、彼には婚約者がいる。
王太子の婚約者は、建国時より国を支えてきた家の一つである、当時鉱山やその関連事業でセラス国一番の財を成していた侯爵家の令嬢。
美人の部類ではあるが探せばよく居る程度のもので、気が強く甘やかされ我儘に育った事が顔に出ている・金の力で婚約者の座を手に入れただけのくせになどと陰で言われていた人物だった。
実際その通りの傍若無人ぶりで、彼女が参加する茶会や舞踏会などで何か騒動が起きるのは当たり前だったそう。
そんな人物でも王太子は第三王子が現れるまでは”色んな事に目を瞑り”ちゃんと令嬢を婚約者として扱っていたらしいが、もうそんな事は出来ないし彼以外は考えられないと王太子は彼女を拒んだ。
セラス国王としても、悪評ばかりの人物よりも今から国交を結び良好な友好関係でいようかと考えている国の王族で、自分の息子とも気持ちを通わせた両国間の友好の象徴ともなれる見目麗しい人物の方が良いと考えた。
ただ、婚約者というより建国時以来ずっと国を支えてきた侯爵家をどうするかだけは頭を悩ませた。
しかし、令嬢の父である侯爵がここですっぱり退いた方が自国にもルトゥスア国にも多大な恩を売れる事を、その方が良いと判断したおかげで何も問題なく第三王子が選ばれた。
問題は何も無くなった。
王太子としてはその勢いで一気に華々しく結婚と行きたかったらしいが元婚約者が事件を起こす。
「だよな。何も起きなかったとか言われた方が吃驚するし」
その事件とはルトゥスア国第三王子が「どうしても彼女と話がしたい」と、王太子の婚約者だった令嬢に会いに行った時に起きた事。
「ヤバそうな匂いしかしない……」
自身の父親にすらも選ばれなかった令嬢の元へ訪れた第三王子は、自分としては彼(王太子)と居られるのなら妾でだって構わないが、自分が王族である事と、この結婚が両国の友好の証としてこの上ないと判断されたのでそうは出来ない。貴女の位置を奪ってしまって申し訳ないと涙ながらに謝罪した。その時『王族なのに頭まで下げた』そうだ。
「うっわぁー……煽ってる訳じゃないだろうに、煽ってるとしか……」
で、予想通り。
セラス国は多妻(多夫)制ではないので間違いなく王太子妃として嫁ぐ予定だったのに、いきなり婚約白紙(王家により新たな婚約者の斡旋有り)にされたり、国交を結んだ後のルトゥスアでの場所の確保に注力している父親に(実は想いを寄せていたらしい)王太子を諦められないのなら妾にでもならせてもらえばいいと言われたり、全てに選ばれた人物からの意味のない謝罪をされたりした令嬢の気持ちも判らないでもないが……その令嬢は激昂。
頭を下げるルトゥスア国第三王子に向かって罵詈雑言を浴びせながら手元にあった中身の入ったティーカップを投げ付け、持っていた扇で攻撃しようとしたらしい。
「え、令嬢それダメじゃん」
「お茶がある程度温くなっていた為第三王子は大事に至らずという事でしたが、それはもう他国の王族相手にとんでもない事ですので……」
「殺された?!」
「いえ、攻撃が届く前に扇を持っていた腕を王子の護衛に切り落とされ即拘束されました」
「で、でも?!」
「まあ、処刑なのだろうな」
「はい」
「やっぱりなぁ……それ、間違いなく王太子主導だろ?」
「そうです。一族全てです」
しかも、侯爵家の上級使用人や令嬢専属として働いていた者たちもそれに含まれてルトゥスア国へ移送され、セラス国王太子も立ち合いの元、色んな方法で処刑されたらしい。色んな方法……??
「そんな怖い話が人気なのかよ……うへぇ……」
「いえ、事実は処刑ですが演劇では令嬢は腕を切り落とされておらず、一族は平民に落とされ国外追放となったとだけ描かれています」
「そうなのか?」
「演劇自体ルトゥスア発の物でルトゥスア流の味付けがされた演劇ですから……」
極刑だったのを自分の所為でもあると第三王子が減刑を願ったからだという件がしっかりとあるらしい。
「当時ならいざ知らず、現在の平民はちゃんとした事実など知る由もなく、そんな物なのかと受け入れているでしょう」
その演劇は二人の結婚式に合わせて両国同時に無料で上演が開始され、国内を隈なく回った後は周辺国でも上演された。そして、今現在も。
「うわ……なんか違う意味が出て来たな……余計怖ぇ~」
「それにしてもライアスは色々詳しいが、総教国の聖騎士団はこんな事まで教わるのか?」
「いえ、一夜漬けです」
ニッコリ笑うライアスの目の下のクマの存在感。
俺に提供する為に何を訊かれてもいい様にセラス国に関する色んな情報が一気に詰め込まれた感がすごい。
「何よりも情報持ち過ぎな総教国が一番怖いんだよなぁ……って、なんだか話が脱線してないか?」
つい、ポテトチップス(自家製)を用意してパリパリ食いながら合いの手入れつつ話聞いてたくらいには脱線している気がするんだけど。
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