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「あー……判ったよ、いいよ。やるよ。あの部屋」
同居の希望を叶えてやるよ。どうせ俺の動向なんて元々全部見られてんだから今更だし。
ここに滞在している期間、アシュマルナの姿が視認出来るか出来ないかの違いだけであって、なんかもう然程変わりはないかと思う。多分……ん?いや、変わるか?変わるな……ん~……でもまあ、いいや。断るより交換条件で特典貰う方がいい。
『そうか』
「うん」
喜びに弾んだ声色に、改めてアシュマルナを見てみれば表情は柔和な笑みのまま変わらないけど、纏う空気がパーッと花が開いたみたいな、なんかぽわぽわしているというか、すごく嬉しそう。あ~~~ダメだ……くそ、絆されてんだろうなあ、俺。
『ならば、言った通りにしてやろう』
「……うん、よろしく」
俺の返事と共に俺の頭上に七色の光の粒が現れて体の周りをクルクルッと回ってから光が体内に入ってきた。痛くも痒くも何ともないけど、何かが内部に入ってきた感はある。
「これでOK?」
『そうだな』
「じゃ、試しに……」
手のひらをパッと開いて、玉ねぎの種出て来いと念じればポンッと手のひらサイズの小袋が現れた。
「おぉ、マジで出て来た……」
小袋を開けてみれば黒胡麻みたいな小さな粒がいっぱい。これが玉ねぎの種、らしい。初めて見た……。やっぱりあのまま植えても意味無かったって事だよな。つーか、あのまま植えたらどうなるんだろ?
「で、これを蒔けばいいんだな」
出て来た数を全部蒔いたらかなりの数が収穫出来そうだ。よしよし。
++++++
「っつー事で、ここに滞在中はコイツも同居するから」
ソランツェとライアスを呼び寄せて、能力と引き換えにしたという経緯説明を簡単にする。
「……判った」
「ごめんな、事後報告で」
さすがにソランツェも少々戸惑っているのが伝わってくるが、問題がある感じではなさそうな様子。だけど―――
「いや、俺は問題ないが」
ソランツェがそう言いながら向けた目線の先には……
「あー……っと、ライアス~?」
気の毒なくらい真っ青な顔で硬直してるライアス。呼び寄せて間近でアシュマルナと再び対面した時からこんな感じな様な気がする。うーん……説明聞けてたか?
「お~~~い?? 息、してる?」
呼吸してんのかなって心配なくらい微動だにしない。目の前で手をヒラヒラさせてみても、まばたきすら?固まってる?……って、だよな、そうなるよな。相手は一応……一応、神様だもんな。ごめん。忘れてた訳じゃ……いや、忘れてたわ、マジでごめん。俺にとっては箱庭ゲームの管理人・制作者くらいの感覚になってたけど、神様だったよ、アシュマルナって。
『なんだ、軟な小僧だのう』
「いやいや、お前だろうがよ」
困った奴め、みたいな顔してるけど、どう考えたってお前がいる所為だけど?……まあ、そこに俺のパーセンテージもない訳ではないが自分の事は棚の上の隅でも置いておこう。つーか、本当に大丈夫?生きてる?つついてみても全く動かなくて恐怖感とか緊張感とかから硬直っていうには固まり過ぎていておかしくないか??
『――ああ、そうか』
「?」
『此奴はまだ人だったな』
「うん、人。……って、うん???」
『忘れておったわ』
……??
『人の身では近過ぎたか』
そう言って自分から一度離す様に向こうに連れて行けとソランツェに指示しているけど……。
「……何?」
心の平穏の為に知り過ぎたくないから色々詳しく教えてくれなくていいので大まかに説明しろと言えば、俺やソランツェには関係ないがアシュマルナから出る”神のオーラ”的な物が『人(ライアス)』にはキッツイ物らしいから硬直はその所為と思えと。本当は少し違うらしいけど要望通りいい感じに濁す説明ありがとう。
つーか、オーラの所為ってなあ……出て来た時はキャパオーバーの沈没と被ってたから硬直に気付かなかったな。
『あの小僧もお前と同じにしてやろうかのう』
ソランツェに軽々と担がれダイニングまで戻されたライアスが”息を吹き返す”様に動き出したのを確認しつつアシュマルナがポツッと零した言葉に、ん?と引っ掛かる。
「な、何? 何、何? 何が? 何言い出したんだお前!?」
何やら不穏な気配を俺のセンサーが察知したんだけどっていうか、俺と同じ?お、……なじ??
「同じ!?」
同じ~~~っっっ!!!!?!??!!!
『どうした?』
「いやいやいやいや!!!! 駄目だって!!! 何言ってんだ馬鹿!!!」
俺と同じは駄目だろうが!!俺やソランツェには『関係ない』っていう事と同じって事は、そういう事じゃねえか!!
「ライアスは駄目だろ! アイツは普通に生きて普通に生涯を終えてもらわないと駄目なんだから!」
『そうか?』
「そうなの! 出来れば結婚相手とか子供とか孫に囲まれてる老いたライアスを見てみたいって希望まであるよ、俺は」
こんなくだらない事で縛り付けるなよ。どう考えたってそれは駄目だろうが。ピースの扱いが雑過ぎる……。
「お前が”出力”押さえたらいいだけの話じゃねえか。出来なくはないんだろ?」
『なぜ、私が変えねばならん』
うわあ、心底「何故?」って顔してる。そりゃ、お前にっては砂粒一個……俺の横にいなけりゃって相手だけども。
「俺と住みたいならお前が変われよ」
『む……』
ピクッと眉が少しだけ動いたのを確認しつつ、上手くいくか判らないが
「さっき貰った特典返上するから部屋の話無かった事にしようかな。何なら俺達がここにはもう戻って来ないってのでもいいな」
なんて言ってみれば、
『――……わかった』
チョロい。
同居の希望を叶えてやるよ。どうせ俺の動向なんて元々全部見られてんだから今更だし。
ここに滞在している期間、アシュマルナの姿が視認出来るか出来ないかの違いだけであって、なんかもう然程変わりはないかと思う。多分……ん?いや、変わるか?変わるな……ん~……でもまあ、いいや。断るより交換条件で特典貰う方がいい。
『そうか』
「うん」
喜びに弾んだ声色に、改めてアシュマルナを見てみれば表情は柔和な笑みのまま変わらないけど、纏う空気がパーッと花が開いたみたいな、なんかぽわぽわしているというか、すごく嬉しそう。あ~~~ダメだ……くそ、絆されてんだろうなあ、俺。
『ならば、言った通りにしてやろう』
「……うん、よろしく」
俺の返事と共に俺の頭上に七色の光の粒が現れて体の周りをクルクルッと回ってから光が体内に入ってきた。痛くも痒くも何ともないけど、何かが内部に入ってきた感はある。
「これでOK?」
『そうだな』
「じゃ、試しに……」
手のひらをパッと開いて、玉ねぎの種出て来いと念じればポンッと手のひらサイズの小袋が現れた。
「おぉ、マジで出て来た……」
小袋を開けてみれば黒胡麻みたいな小さな粒がいっぱい。これが玉ねぎの種、らしい。初めて見た……。やっぱりあのまま植えても意味無かったって事だよな。つーか、あのまま植えたらどうなるんだろ?
「で、これを蒔けばいいんだな」
出て来た数を全部蒔いたらかなりの数が収穫出来そうだ。よしよし。
++++++
「っつー事で、ここに滞在中はコイツも同居するから」
ソランツェとライアスを呼び寄せて、能力と引き換えにしたという経緯説明を簡単にする。
「……判った」
「ごめんな、事後報告で」
さすがにソランツェも少々戸惑っているのが伝わってくるが、問題がある感じではなさそうな様子。だけど―――
「いや、俺は問題ないが」
ソランツェがそう言いながら向けた目線の先には……
「あー……っと、ライアス~?」
気の毒なくらい真っ青な顔で硬直してるライアス。呼び寄せて間近でアシュマルナと再び対面した時からこんな感じな様な気がする。うーん……説明聞けてたか?
「お~~~い?? 息、してる?」
呼吸してんのかなって心配なくらい微動だにしない。目の前で手をヒラヒラさせてみても、まばたきすら?固まってる?……って、だよな、そうなるよな。相手は一応……一応、神様だもんな。ごめん。忘れてた訳じゃ……いや、忘れてたわ、マジでごめん。俺にとっては箱庭ゲームの管理人・制作者くらいの感覚になってたけど、神様だったよ、アシュマルナって。
『なんだ、軟な小僧だのう』
「いやいや、お前だろうがよ」
困った奴め、みたいな顔してるけど、どう考えたってお前がいる所為だけど?……まあ、そこに俺のパーセンテージもない訳ではないが自分の事は棚の上の隅でも置いておこう。つーか、本当に大丈夫?生きてる?つついてみても全く動かなくて恐怖感とか緊張感とかから硬直っていうには固まり過ぎていておかしくないか??
『――ああ、そうか』
「?」
『此奴はまだ人だったな』
「うん、人。……って、うん???」
『忘れておったわ』
……??
『人の身では近過ぎたか』
そう言って自分から一度離す様に向こうに連れて行けとソランツェに指示しているけど……。
「……何?」
心の平穏の為に知り過ぎたくないから色々詳しく教えてくれなくていいので大まかに説明しろと言えば、俺やソランツェには関係ないがアシュマルナから出る”神のオーラ”的な物が『人(ライアス)』にはキッツイ物らしいから硬直はその所為と思えと。本当は少し違うらしいけど要望通りいい感じに濁す説明ありがとう。
つーか、オーラの所為ってなあ……出て来た時はキャパオーバーの沈没と被ってたから硬直に気付かなかったな。
『あの小僧もお前と同じにしてやろうかのう』
ソランツェに軽々と担がれダイニングまで戻されたライアスが”息を吹き返す”様に動き出したのを確認しつつアシュマルナがポツッと零した言葉に、ん?と引っ掛かる。
「な、何? 何、何? 何が? 何言い出したんだお前!?」
何やら不穏な気配を俺のセンサーが察知したんだけどっていうか、俺と同じ?お、……なじ??
「同じ!?」
同じ~~~っっっ!!!!?!??!!!
『どうした?』
「いやいやいやいや!!!! 駄目だって!!! 何言ってんだ馬鹿!!!」
俺と同じは駄目だろうが!!俺やソランツェには『関係ない』っていう事と同じって事は、そういう事じゃねえか!!
「ライアスは駄目だろ! アイツは普通に生きて普通に生涯を終えてもらわないと駄目なんだから!」
『そうか?』
「そうなの! 出来れば結婚相手とか子供とか孫に囲まれてる老いたライアスを見てみたいって希望まであるよ、俺は」
こんなくだらない事で縛り付けるなよ。どう考えたってそれは駄目だろうが。ピースの扱いが雑過ぎる……。
「お前が”出力”押さえたらいいだけの話じゃねえか。出来なくはないんだろ?」
『なぜ、私が変えねばならん』
うわあ、心底「何故?」って顔してる。そりゃ、お前にっては砂粒一個……俺の横にいなけりゃって相手だけども。
「俺と住みたいならお前が変われよ」
『む……』
ピクッと眉が少しだけ動いたのを確認しつつ、上手くいくか判らないが
「さっき貰った特典返上するから部屋の話無かった事にしようかな。何なら俺達がここにはもう戻って来ないってのでもいいな」
なんて言ってみれば、
『――……わかった』
チョロい。
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