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「今日は職人街を少し見て回ってから発つ、という事ですね」
「うん」
「承知いたしました。では、その様に」
他のメンバーに指示して来ると言ってライアスが部屋から出て行くのを見送ってから朝食。ライアスと話してる間にセッティングしてもらっていたので、ちゃんと見てなかったけど俺とソランツェのは内容が違うみたい。
ソランツェには肉!パン!って感じのものが用意されているから、各自好みに沿ったメニューなんだなって事でそれ自体は別にいいんだけども。ただ……
「どれも俺が好きな味の物しか出てない気がする……」
「良かったじゃないか」
「いや、良いんだけど――」
好きな味の物っていうか、正確に言うとほぼ『総教国滞在中に食べた物の中で俺の食いつきが良かった物』ばかり。
今、俺の目の前にあるパンも柔らかい物のみなんだけど、それも、手持ち食材のパンはバゲットのみで少し飽きていた俺は総教国での食事の時に出てた柔らかめのパンを喜んでそれしか食べなかったかもしれないって記憶があるし、しかも、飲み物にショルフの実の果汁も用意されてて……。ピンポイントで絞って来られ過ぎてんだよな。いや、良いんだけど!ね!俺の為にって事だし!……でも、ちょっと?って言う。めちゃくちゃ観察されてるんだなあって。
というか、ライアスが俺の食の好みを宿屋側に伝えたとしても普通は一人の宿泊客の為だけにこんなにも好みに沿ったメニューなんて用意されないと思う。なのに、これが用意出来るって事はさ、厨房乗っ取ってんのかな?って、厨房と言わず宿全体乗っ取ってんのかな?っていう疑問が……ね。なんという居心地の悪さだと思うけど……これについては訊かない、訊かないぞ……。
「知らぬが仏なんだよな」
「ほとけ? なんだ?」
「俺の事はほっとけ、ってな~。あはははは」
「??」
躊躇無くこんな事言っちゃうくらいだよ。はあ……。
なんだろう、寧ろ居心地悪くさせるのが目的だったりして~☆……って、んん?!?
++++++
浮かんだ考えは流石に被害妄想だろうよとなかった事にして、しっかり朝食を食べて宿を後に。
職人街は商業地区でも中心から離れている場所にあって鍛冶屋や家具屋とかの工房兼店舗などがあるらしくて、特に欲しい物はないんだけどちょっと見てみたいなって。
「店舗数っつーか、色んな工房がいっぱいあるんだな」
ダンジョンが間近なので武器や防具を専門とする鍛冶屋の数が多いみたいだけど、鋳物専門の所もあって鍋とか調理器具が売っていたり、多分木彫りの熊的な感じなんだろうけど、何かの魔物をモチーフにしたっぽい木彫り人形ばかり売っている店だったり、薬店、靴工房、機織り(?)の工房があったりで見ているだけでも結構楽しい。
欲しい物は特に無いなって思っていたけど、うろうろ歩いていると観光地特有の『冷静に考えると絶対いらない物なのについ変な土産物を買いたくなる感覚』になってしまってモチーフのよく判らない木彫り人形をペアで買ってみたりしてみた。リビングに飾ろう。ソランツェに本当に買うのかって小声で何回も言われたけど、もうこんなのはフィーリングなんで。うん。
その後も、南部鉄器の鉄瓶っぽいのが売っていたので何となく買って、すき焼き鍋みたいなのもあったので買ってみたし、地球のどっかの民族衣装で見た様な模様の絨毯も買ってみたし、家具屋ではロッキングチェアっぽいのがあったんでそれも買ってみた。よーし、暖炉造ろうっと。
「まだ買うのか?」
他にも何か面白い物あるかなと色々見て歩いているとソランツェから呼び止められる。
「ん?」
「いや、リヒトが良いなら良いんだが……」
ぼかした言葉が何なのか一瞬判らなかったが、すぐに気付く。もしかしなくてもお金の事か。
ポンポンと買っていたけど、そういえば残金を気にしていなかったなとソランツェの言葉で思い出した。ソランツェはまだまだ大丈夫だろうけど散財が過ぎるとダンジョン潜ったりして金策に励まなきゃいけなくなるぞって言いたいんだろう。
よく判らないペアの木彫りの人形に金貨二枚だもん。二万円か……何気に高い。そりゃ、ソランツェも心配になるかもしれない。スマン。
『冷静に考えると絶対いらない物なのについ変な土産物を買いたくなる感覚』は怖いなと、ちょっと理性が戻ってきたので、一応残金を確認してみようと自分だけに見える様にステータスパネルを出し手持ち金額を表示させると―――
「はぁ?」
大金貨が百枚ほど増えてるけど??!
「うん」
「承知いたしました。では、その様に」
他のメンバーに指示して来ると言ってライアスが部屋から出て行くのを見送ってから朝食。ライアスと話してる間にセッティングしてもらっていたので、ちゃんと見てなかったけど俺とソランツェのは内容が違うみたい。
ソランツェには肉!パン!って感じのものが用意されているから、各自好みに沿ったメニューなんだなって事でそれ自体は別にいいんだけども。ただ……
「どれも俺が好きな味の物しか出てない気がする……」
「良かったじゃないか」
「いや、良いんだけど――」
好きな味の物っていうか、正確に言うとほぼ『総教国滞在中に食べた物の中で俺の食いつきが良かった物』ばかり。
今、俺の目の前にあるパンも柔らかい物のみなんだけど、それも、手持ち食材のパンはバゲットのみで少し飽きていた俺は総教国での食事の時に出てた柔らかめのパンを喜んでそれしか食べなかったかもしれないって記憶があるし、しかも、飲み物にショルフの実の果汁も用意されてて……。ピンポイントで絞って来られ過ぎてんだよな。いや、良いんだけど!ね!俺の為にって事だし!……でも、ちょっと?って言う。めちゃくちゃ観察されてるんだなあって。
というか、ライアスが俺の食の好みを宿屋側に伝えたとしても普通は一人の宿泊客の為だけにこんなにも好みに沿ったメニューなんて用意されないと思う。なのに、これが用意出来るって事はさ、厨房乗っ取ってんのかな?って、厨房と言わず宿全体乗っ取ってんのかな?っていう疑問が……ね。なんという居心地の悪さだと思うけど……これについては訊かない、訊かないぞ……。
「知らぬが仏なんだよな」
「ほとけ? なんだ?」
「俺の事はほっとけ、ってな~。あはははは」
「??」
躊躇無くこんな事言っちゃうくらいだよ。はあ……。
なんだろう、寧ろ居心地悪くさせるのが目的だったりして~☆……って、んん?!?
++++++
浮かんだ考えは流石に被害妄想だろうよとなかった事にして、しっかり朝食を食べて宿を後に。
職人街は商業地区でも中心から離れている場所にあって鍛冶屋や家具屋とかの工房兼店舗などがあるらしくて、特に欲しい物はないんだけどちょっと見てみたいなって。
「店舗数っつーか、色んな工房がいっぱいあるんだな」
ダンジョンが間近なので武器や防具を専門とする鍛冶屋の数が多いみたいだけど、鋳物専門の所もあって鍋とか調理器具が売っていたり、多分木彫りの熊的な感じなんだろうけど、何かの魔物をモチーフにしたっぽい木彫り人形ばかり売っている店だったり、薬店、靴工房、機織り(?)の工房があったりで見ているだけでも結構楽しい。
欲しい物は特に無いなって思っていたけど、うろうろ歩いていると観光地特有の『冷静に考えると絶対いらない物なのについ変な土産物を買いたくなる感覚』になってしまってモチーフのよく判らない木彫り人形をペアで買ってみたりしてみた。リビングに飾ろう。ソランツェに本当に買うのかって小声で何回も言われたけど、もうこんなのはフィーリングなんで。うん。
その後も、南部鉄器の鉄瓶っぽいのが売っていたので何となく買って、すき焼き鍋みたいなのもあったので買ってみたし、地球のどっかの民族衣装で見た様な模様の絨毯も買ってみたし、家具屋ではロッキングチェアっぽいのがあったんでそれも買ってみた。よーし、暖炉造ろうっと。
「まだ買うのか?」
他にも何か面白い物あるかなと色々見て歩いているとソランツェから呼び止められる。
「ん?」
「いや、リヒトが良いなら良いんだが……」
ぼかした言葉が何なのか一瞬判らなかったが、すぐに気付く。もしかしなくてもお金の事か。
ポンポンと買っていたけど、そういえば残金を気にしていなかったなとソランツェの言葉で思い出した。ソランツェはまだまだ大丈夫だろうけど散財が過ぎるとダンジョン潜ったりして金策に励まなきゃいけなくなるぞって言いたいんだろう。
よく判らないペアの木彫りの人形に金貨二枚だもん。二万円か……何気に高い。そりゃ、ソランツェも心配になるかもしれない。スマン。
『冷静に考えると絶対いらない物なのについ変な土産物を買いたくなる感覚』は怖いなと、ちょっと理性が戻ってきたので、一応残金を確認してみようと自分だけに見える様にステータスパネルを出し手持ち金額を表示させると―――
「はぁ?」
大金貨が百枚ほど増えてるけど??!
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