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 宿に着いて俺とソランツェが案内された部屋は、この宿で一番の部屋っぽいが総教国にあるは勿論、トゥアンニコ中央教会の貴賓室よりも少し劣るかな?って感じの部屋だった。
 幾分マシだけども落ち着かなさは変わらないなと思ったが、どこもインテリアがロココ調(っていうのか?)な感じの家具ばかりで、早い話が趣味じゃないから居心地が悪いのかもしれないと気付いた。改造した馬車の内装はシックモダンって感じだし。

 手配してもらっておいて文句言うのもって話だけど、俺は普通の宿で普通の部屋で良いのに……まあ、そうはいかないよな、総教国としては。
 ライアスが手配したってのをいつの間にって疑問に思っていたが、ちゃんと考えるとライアスが直接手配したわけじゃなくて俺達がユグイトに行くってライアスから連絡を受けた総教国側が手配して指示って話だよなと気付く。そこら辺今後要検討だな……。

 で、そこに気付いたついでに今更だけど一つ気付いたのは、ライアスが持ってる通信用の魔道具の事。
 スマホ云々考えていたが俺達と護衛チーム用にもうワンペア用意すれば行動も自由に出来て良かったのではとか色々思ったが、本当にもう今更だ。今更ライアスを同行させるの取り止めるのもなあって思うし。

「ライアスは? 部屋どこ?」
「一応、隣らしいぞ」
「そっか。……よし、聞きたい事あるし行ってこよっと」

 他にももう一つ気付いた事があって、一応確認しておこうかなと思いソファから立とうとすると横からソランツェの手が伸びて来て動きを制限される。

「……用があると言っていたから部屋にいないんじゃないか?」

 言いながら頬や鼻・口・顎・首とキスしてきて、徐々にソファに押し倒され……手も腰や太ももの辺りを妖しく動いているが……本気じゃないっていうか。これは……うーん、まあ、こういうな所が可愛いなって思うけど。

「んー……っと、別に部屋に居たからって怒りはしないけど?」

 戯れてくるソランツェの顔を両手で挟み今度は俺から動きを止めさせる。

「ああ、気付いていたか」
「うーん……ついさっきだけど」
「リヒトが嫌がるかもしれないから協力したんだが……」

 はい、予想通り。

「護衛なんて今更だろ」





 つー事で、ライアスを呼んで一応確認。
 宿に先に向かったのはライアス以外の残りの護衛チームとのスムーズな合流の為で、人の多い商業地区に入る前に確実に合流したかったからと。俺の推測通り。
 で、その合流はライアスが同行してるのにもかかわらず、変わらず護衛チームも付いて来るって事に俺が怒るかもしれないからバレない様に水面下で遂行をと……いや、もう、俺どんだけ狭量だと思われてんだよっていう……。嫌がりはするかもしれないが……そんなので怒んないし。

「いえ、そうなのですが……そういう指示でしたので……」

 申し訳ございませんだって。まあ、しょうがない。
 で、ソランツェは宿を出る前に外に配置されているのに気付いていて、出発の時にライアスに護衛チームの存在の確認OKの合図送ったって所を俺が目撃→取り繕う、だったらしい。やっぱりな。ソランツェって察しは良いけど……取り繕ったりってのはあんまり……。

「一応、ソランツェに教えておくけど、何かありそうな時に『何でもない、大丈夫』っていうのは俺相手には悪手だからな」
「……ん?」
「気にしてくれって言ってる様なもんだよ」
「そうか?」

 いや、『何かがある』のに『何でもない』、『大丈夫じゃない』のに『大丈夫』って言う言葉を使われて、そうなんだ~ってのんきに本当にスルーしたら、その後面倒臭い事になったりした経験が過去にあるからスルー出来ないだけなんだけど……。理人は私の事なんてどうでもいいんだね!!とかってさぁ、俺はどうしたの大丈夫?って聞いたじゃん?!――って駄目だ駄目だ。状況は違うのに同じ言葉がトリガーになって記憶の扉が全開になってしまう。閉じよう。一刻も早く。あ、あとはアシュマルナの所為。

「……ま、ああいう時はテキトーに、護衛いなくて自分達だけだからしっかりやるぞって確認し合っただけだって普通の顔して嘘吐くもんだよ。ソランツェが下手を打った所為でライアスまで困って下手な誘導しちゃってたし」
「あー……そうですね」
「むぅ……」
「つーか、俺はライアスと判ってる感出してるのが嫌だったなー」
「ん?」「え?」「あ」

 ……口が滑った。

「可愛い苦情だな」
「恥ず……」

 めちゃくちゃ嬉しそうに尻尾振るじゃん……。
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