のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

文字の大きさ
上 下
129 / 148

127

しおりを挟む
 ユグイトに到着してまず驚いたのは、街とダンジョンの距離が二百メートルも離れていない事。元々、ダンジョンに挑戦していた冒険者達が入口の側でよく野営していたらしい事から年月をかけて村になって都市になって……という歴史らしい。入場の時に通った建物の中に『この街の歴史』的な絵画と説明文があって非常に勉強になりましたっと。

 それにしてもこんなに近くて、ダンジョンから魔物がいっぱい出てくるとかいうもしもの時に大丈夫なのかと思ったが、一応少しの対策はされていた。
 ダンジョンの入口は後付けで作った石造りの大きな建物の中にあり、その建物の周囲に少し広めの空堀。で、そのきわや堀の中には尖った杭だとか罠がいっぱい設置されてあって、ダンジョン側に行くには街側から下ろしている跳ね橋を渡っていくしかない造り。ダンジョンに異変があり魔物が溢れて来る様な事があれば、橋を上げてしまうそうだ。これで多少の時間稼ぎは出来る、と。
 ここは立地柄が出来ている現役冒険者や元冒険者が数多く住んでいるので戦闘の準備が出来る時間が稼げるだけでいいらしいよ。うわぁ戦闘民族~!




「まずは、宿を手配していますのでそちらに向かいましょうか」
「え、あ……?」

 街の中に入ってすぐの場所にある広場で、街の簡易地図が描かれている掲示板を見に行こうとしているとライアスから止める声がかかり、そう言われる。

「その後、リヒト様ご希望の市場など商業地区を巡りましょう。では、先導致します」
「……う、うん」

 いや、宿の手配っていつの間に……?
 あまりにも当たり前のようにサラッと言われてしまったし、ライアスはさっさと歩き出してしまったのでツッコミのタイミングを逃してしまったけどどういう事?ソランツェに目で訊ねてみるも首を傾げているし……。
 宿探しをしなくても良いと考えるなら、まあ……いいんだけど。いつの間にって、な?


 夜にでも聞こうかと思いつつライアスに付いて、酒場や宿屋が連なる通りを行っていると、突き当りに周囲と比べて一際大きな立派な洋館が見えてくる。他と比べるとTHE高級宿!みたいな外観で、まさかここじゃないよな?なんて思っていたら、これまた当たり前のようにライアスが宿の前で立ち止まる。

「到着しました」
「うーん……まさかを行くのか……」
「お気に召しませんか?」
「……いや、大丈夫」

 だけども。うん。


 宿の受付はライアスがやってくれるというので、俺とソランツェはロビーのソファで待機中。
 中に入ってすぐど真ん中にドーンと階段があって右側に受付、左側はソファとかがある休憩スペース。座ったままクルッと周囲を見てみれば内装も豪華な感じで『金持ってないと泊まれません』な空気が凄い。いやまあ、外観の段階で予想付いてましたけど。

「落ち着かねえよ……」
「多少派手か」
「多少ねえ……」

 キラキラし過ぎじゃね?って言いたくなるシャンデリアがあるのが全然おかしくないこの空間が”多少”派手とは……マジで生育環境の違いだよな……とか考えていたら受付を終えたライアスがやって来た。

「一度部屋に向かわれますか?」
「あー、どうする?」

 荷物は全部亜空間収納の中だから邪魔だし置いていくかっていう荷物も無いし別に部屋に行かなくても問題は無し。
 一応、ソランツェにも訊くと、

「どちらでも」
「じゃあ、帰って来てからでいいや」
「承知致しました」

 じゃあ、目的の買い物ツアーに行くぞ~。









++++++








 宿から出て商業地区に向けて歩き始める前、ふと見るとソランツェとライアスが目で会話をして何かを確かめる様に無言で頷き合うという事をしていた。なんだ?

「どうした?」

 何となく気になったので何かあったのかと首を傾げてみると、何でもない大丈夫だとソランツェに言われ、ライアスからは市場はあちらの道からですなんて言葉が続く。むむむ?

「……何?」
「何、とは?」
「何かあった?」

 二人して流す気満々に感じたので少し不機嫌そうな声で問うと、またもライアスと目で会話したソランツェは子供を宥めるみたいな顔で、ただこれから人の多い場所に行くから何かあった場合に於ける動きの確認をしただけだと答えてくれたが……本当にそれだけか?そもそも目だけで動きの確認なんて出来るのか?
 何だろうなあ、何だか気になるんだよなあ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...