のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

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126 ◆挿絵あり

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「ソランツェ、出来たよ」

 出来たものを一瓶持ってソファで外の監視をしているソランツェに見せにいく。たまにキッチンの方を見てたし過程も聞こえてただろうけど、仕上がり報告。

「綺麗な赤色だな」
「だろ?」

 近付いて瓶を見せてみれば、目線はジャムの瓶のまま手は動きスッと俺の腰を引き寄せようとする。どうもそのまま自分の横に座らせたいらしいので受け入れて座ると、すぐに俺の髪や首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぎだした。

「いつもより甘い匂いがするな」
「あは、くすぐったい」

 尻尾をパタパタ振りつつクンクンと何だか犬っぽいソランツェを見て、くすぐったいのともしかして一人で寂しかったのかなって思い付いて笑ってしまう。広いからリビングのソファとキッチンは距離があるけど同じ空間なのに。可愛い。
 でも、可愛いけどこのまま放っておくとキスやら愛撫やらに変わってライアス放置して寝室に連れ込まれそうなので、先にこっちから頬に『お預け』のキスして動きを止めさせる。

「試食しようと思って用意してるから、な?」
「……わかった」

 わかったと言いつつも口を尖らせた不満そうな顔も可愛いと思っていたら、しっかり空気を読んでいたライアスがタイミング良くキッチンから味見分を持って来てくれた。まあ、同じ空間なのでやり取りは丸見えなんだけどな。




「食べるのが楽しみです」

 持ってきた皿をテーブルに置きながら話すライアスの表情は変わらないが、目線はジャムに釘付けでどことなく声も弾んでいる様な気がする。もしかして、甘い物好きなんだろうか?

「よし、食べてみよう」

 試食の為に、薄くスライスして軽くトーストしたバゲットと牛乳とレモン果汁で作ったカッテージチーズを(魔法使用で)用意。チーズはお好みでジャムと一緒に。
 さて、手作りジャムはどんな出来なのか?まずはチーズ無しジャムだけ載せて、パクっと一口。

「おぉ、結構美味く出来てるじゃん」

 先生、調理実習役に立ってます!かなりの量の砂糖を使ったのに苺の甘酸っぱさは残ってて結構いい感じ。
 それにしてもジャム食べたのって久し振りな気がする。昔、元カノに連れられて行ったカフェで色々ゴテゴテに盛り付けられたパンケーキ食べた時以来?いや、あれってジャム?ソース?まあなんでもいいや。つーか、小さな頃母親が用意してくれていた数少ない食事の内の一品が安~いいちごジャム塗っただけの食パン一枚だったなってのも思い出した。あと、とけるタイプのスライスチーズだけ載せてトーストした食パンな。懐かしい。
 ……あー、食パンかあ。やっぱり食パン欲しいな。存在を思い出すとますます欲しくなってくる。材料揃えて型も作って自分で作るしかないか?

「……甘いな」

 ジャムそっちのけで食パンに思いを馳せていたらソランツェの小声のつぶやきが耳に入ってきた。どうもソランツェは甘い物が得意ではないみたいで、ジャムの甘さに眉間に皺が寄ってしまっている。

「あ、駄目だった?」
「いや、駄目という訳じゃないが……」
「これ載せたらちょっとまろやかっていうのかな、甘さ自体は和らぐ感じだよ」

 カッテージチーズを追加で載せて、あーんと食べさせてあげつつ、甘いのが苦手ならそこまでして食べるものではないけどな、なんて話していて思い出した。

「ライアスは? 甘さは――」

 大丈夫か?って聞こうとしてライアスの方を見ると、愚問だったなってくらい幸せそうな顔で食べているライアスがいた。めちゃくちゃ『味わって食べてます』感たっぷり。やっぱり甘い物好きだったんだな。
 俺達の視線に気付くと慌てて表情を戻して少し恥ずかしそうにすみませんって謝って来たけど、別に謝る事でもないぞ?

「甘い物好きなんだな」
「あ、……あの、恥ずかしながら……はい」

 高級品な蜜煮の事や蜂蜜の種類、砂糖の事情に詳しかったのは甘い物が好きだったからっぽい。砂糖を見た時の『これが砂糖か……』な反応って実は”憧れの物がここに!”的な感じだったって事か?え、可愛くね?

「作ったくせにって話だけど俺は甘い物は可もなく不可もなく普通って感じだし、ソランツェは甘い物不得意みたいだし、甘い物好きなんだったらライアスいっぱい食べてよ」
「ああ、遠慮せずに食べるといい」
「え、その、」

 いいんでしょうかって戸惑っているけど、問題ないぞ。いっぱいあるしいっぱい食べてくれ。作った内の二個くらいはイルム達にあげようと思うけど残りはお好きにどうぞ。まだまだジャムは作れるし。

「レパートリーは少ないけど他にも何か甘い物作ってやるな」
「あ、ありがとうございます……!」

 ライアスには存在しない尻尾がブンブン振られてるのが見える気がする。よしよし。
 ライアスのランチはフレンチトーストでも作ってやろうかな。
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