のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

文字の大きさ
上 下
127 / 148

125

しおりを挟む
「これ植え替えって出来るかな?」

 アシュマルナからもらった例のあの場所、『拠点』とでも呼ぼうと思うが、その拠点に畑を作って栽培したいなと思い付く。自由に出来る土地はいっぱいあるんだし植物系は他の物も自家栽培すればいいのでは?苗とか種とか手に入れて……。

「リヒトは農作業の経験があるのか?」
「学級菜園くらいかな」
「がっきゅうさいえん?」
「あー、子供の頃って事だよ」

 小学校の時にあったんだよ。きゅうりとかなすとかとうもろこしとかをクラス用の畑で育てて収穫した記憶がある。あと、さつまいも掘りとか校庭にあったミニ田んぼでもち米作りをやった記憶も。

「でも、やったなって記憶があるだけで細かい事とか覚えてないけど」
「その状態でよくやってみようと……」
「いや、魔法でいけるかなって」

 ちょっとソランツェも呆れ顔だけど、土耕したり草抜きとか水やりとか、ほら、魔法が。肥料とかよく判んないけど魔法で(アシュマルナが)どうにかしてくれそうだし。品種改良っぽい事も出来たりするのかな?

「リヒトの場合は魔法というか、まあ……リヒトの場合は出来るんだろうからな。やってみればいいだろう」
「じゃあ、ユグイトの後に拠点に畑を作りに行こうか。あと、ついでに家もちゃんとしたの作る」

 どんな感じにしようかとソランツェに希望があるか訊いていると、

「あの……拠点といいますと?」
「あ、言ってなかった?」

 すっかり置いてけぼりだったライアスに総教国の遥か上空、シシュヴァルト山頂部に俺の土地があるんだよと説明。今度連れて行くよ~。

「あ、ライアスの家も建てちゃう?」
「はぁ?」

 お、素が出た。めちゃくちゃ眉間に皺寄ってるぞ。あはは。









++++++









 翌日、ユグイトに着くまでの間にいっぱい収穫した苺(ラリアフ)の一部でジャム作り。助手はライアス君でーす。
 材料は砂糖もレモン果汁もあるし、ジャムの作り方も中学の頃リンゴジャムを調理実習で作ったので何となくは覚えているのでいけるはず。

「出来るだけ魔法は使わずやるぞ~!」

 お~!と手をあげてチラッとライアスを見てみれば戸惑いながら「お~……?」ってやってくれた。いい子だな、君は。


 さて、魔法を使わないので苺のヘタ取りも手作業。二人でキッチンに並んで黙々と洗った苺のヘタ部分を切り落としていく。とりあえず仕上がり一キロ分くらい?
 ヘタを取り終わったら砂糖とレモン果汁を満遍なくぶっかけて水分出し。水分が出て来るまで休憩。

「リヒト様、この白い物は一体何でしょうか?」
「砂糖だけど、見た事ない?」
「さとう……、砂糖……これが」

 なんか微妙な反応だったので続きを促せば、存在は知っているが口にした事がないと。
 砂糖は南方の気温が高い国で生産されている物で、作るのに手間もかかるので生産国以外で手に入る物ではないという知識だけを持っているそう。それでも一応生産国以外でも国自体には入っては来ているらしいが、

「上と上の方だけのやり取りで国に入り、上だけで消費される物ですね」
「あー そういうレベルのやつかあ」

 そのレベルの物をここでは何の躊躇もなく五百グラム以上使ってるんだから微妙な反応にもなるか……と、そういえば、ララタスでは皆に飴配っちゃったしイルム達にも渡したけど大丈夫かな?砂糖そのものって訳じゃないしバレないかな?
 気になったので一般の甘味料はどうなっているのか訊くと、そこそこ値は張るものだが平民でも一応買える蜂蜜か樹液を煮詰めた物らしい。樹液ってメープルシロップみたいなのかな?原材料言わない限りは多分、大丈夫そう。

「それで、このラリアフはどんな物に仕上がるんですか?」
「ジャムって判る? 果物を甘く煮てドロッとしたソースみたいなのを作って保存するやつ」

 パンに塗ったりして食べるんだけど、と説明すれば首を傾げつつ少し考えて何か判ったらしく。

「あぁ、蜜煮の事ですか? 蜂蜜で果物を甘く煮て潰した物がありますね」
「蜜煮……?」

 今度は俺が首を傾げる番。俺の知ってる『蜜煮』とジャムは違うけど……でも、俺の説明でライアスは『蜜煮』に辿り着くなら一緒か?蜂蜜でもジャムって作れるんだっけ?糖分で煮るって所が一緒だし作れるのかな?習ったんだろうけどそこら辺まで覚えてないからなあ。

「現物見たいな。市場とかで売ってる?」
「どうでしょうか……どちらかというと蜜煮は家庭で作られるものなので……。貴重な魔蜂の蜜の物は貴族向けの店でたまに売られていたりもしますが」
「魔蜂の蜜? 貴重?」

 んん?なんだそれ。気になるぞ。

「はい。貴重な高級品ですね」

 どんな物かと訊くと、普通の蜂蜜などは甘味が控えめなあっさりとした味わいのものだけど、魔蜂の蜜は甘味が強くて濃い味わいのものらしい。
 で、平民でも買える価格の蜂蜜と魔蜂の蜜は違って、まず平民には手が届かない価格のもの。普通の蜂が生息しないらしい高地で蜜を集める魔蜂の巣は断崖にあり蜂蜜を手に入れるのがすごく大変なのでそこら辺も価格に反映されていると。もたもたしていたら魔蜂の猛攻を受けるそうだ。そりゃそうだ。巣だもん。


 水分が出たら火にかけて、灰汁を取ってとろみがつくまで煮詰めたら出来上がり。がっつり潰さずおおまかに形は残すタイプにしてみた。
 味見用に三人分小皿に取って残りを熱い内に瓶に詰める。瓶詰だけは魔法でやった。殺菌とか密封とかあるし。あと、忘れていたけど、効きはしないが薬って事ならば一応薬効成分は抜いた方がいいかもしれないと気付いて魔法で処理もしておいた。塵も積もれば山となってなんか影響出たら困るしな。クスリはリスクって言うし。
 冷ますのも魔法でやって本当に完成。あとは試食だな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...