上 下
120 / 148

118

しおりを挟む
 さて、海と言えばちょっと遊んでいきたいなと思うんです。めちゃくちゃ綺麗な海だからちょっと遊びたい。社員旅行の時に買った水着もあるし。浮き輪とかも手持ちのあらゆる素材を駆使すれば多分作れるんじゃないかなと思うし。

 なので、そういう想いを二人に訴えた所――

「いや……遊ぶとは……?」
「具体的にどういった事を?」
「は? え? マジで言ってる?」

 いまいちピンと来ていないらしい二人の反応に驚く。マジかよ。海で遊ぶ事に具体的な内容を求められるとは思わなかった。泳いだりビーチバレー……はここに無いか?えーっと、水掛け合ったりとか貝探してみたり砂で色々作ったり、なんつーかフィーリングじゃん!と思ったが訊けば、海に限らずそもそもあまり遊んだ事がない……だと……?え、どうなってんの?幼い頃から勉強と鍛錬ばかり?うっわぁぉ……。

「……えーと、海水浴って言葉も知らない?」
「「海水浴?」」
「あ……やっぱそういう感じ?」

 示し合わせた訳でもないのに本当に不思議そうに首を傾げるを見て俺は理解した。ここの世界には海水浴っていうものは無いんだな。
 海で泳いだりする人とかもいないのかと訊いたら、いないんだって。海で泳いでいるのは少数だが素潜りで漁をしている泳ぎに慣れた人くらいなものなのではないかとライアスが教えてくれた。へぇ~。

「……ソランツェ達は一応泳げはするんだよね?」
「ああ、川や湖でしか泳いだ事がないがな」
「装備のまま川を渡れるように訓練したりもしていますよ」
「oh……」

 なんつーか、このままいくと砂浜でタイヤ引いてのスレッド走トレーニングが似合う二人は、海で……いや、そもそも遊ぶ事に何の意味が?とか言い出しそうなのでさっさと行動しよう。よし。

「アシュマルナ、二人の水着お願い~!」

 アシュマルナに二人のをお願いするとともに、自分の水着への着替えと浮き輪・ビーチボール・シート・パラソルといった海水浴セットの生成を一気に済ませる。

「お、二人とも似合ってる」
「リヒト?!」
「……!?」

 俺は元々持っていた遊泳用のサーフパンツだけど、二人の水着はスパッツタイプの競泳水着みたいな運動用……筋肉あってこそ映えるみたいなやつ。ソランツェは黒地に白いライン、ライアスは紺地に赤いライン。
 似合ってるな~やっぱり筋肉はかっこいいな~と感心していると、ソランツェは唖然としているしライアスは何やら狼狽えているのが目に入る。
 アシュマルナに直接着替えさせられるって思わなかった?ライアスはまだしもソランツェは魔法での着替えに慣れてると思ったんだけど変なの。まあ、いいや。パラソル立てよう。ドサッと足元に全部出現した物達を確認すると不足なく作れている様だし。



「この…………格好は……なん、だろうか?」
「ん?」

 ソランツェ達を放っておいて良さそうな場所にシートを敷いてパラソルを設置しようとしていると、我に返った(?)ソランツェ達が近付いて来た……けど、何か戸惑っている様子?

「水着の事? 俺のと形違うけど総称は一緒だよ」
「「っな!?」」
「あ、そうだ」

 水着の裾をつまみあげて見せていて気が付いたけど、アレを忘れていた。

「ラッシュガード持ってたんだった」

 そこまで日差しが強い訳じゃないけど、着ていた方が日焼けとか心配しなくていいかなってゆーか、この体は日焼けするのかどうか知らないけど、一応着ておこう。
 魔法でラッシュガードをパッと身に着け、ソランツェ達の方を改めて向く。
 この格好に戸惑う二人に水着の説明をしてあげないと。考えてみれば、海水浴なんてないんだから水着って呼ばれる物もないんだった。さっき変だったのはそれの所為だよな。いきなり半裸にされてソランツェ達にとっては未知の素材のピタッとした変なもの着させられるんだもん、そりゃ吃驚するか。不親切でゴメンな。

「これ水着って呼ばれててさ、水の中でも動きやすい服装って言ったらいいのかな。男女ともに色んな形の物があるんだよ」

 ポケットが付いているバックデザインも見せられる様にクルッと一回り。パーカータイプのラッシュガードも着ているし、ちょっとくらいならこれでウロウロ出来る。

「……そう、ですか」
「……みんな、その……上半身は裸なのか?」
「男性はね。でも、俺が今着てる上半身を保護する服を着てる人も多いし、上半身も覆う一体型のもあるよ」
「そうか」
「うん。俺のは泳ぐっていうより遊び用って感じだけど、ソランツェ達のは水の抵抗も少なくて泳ぎやすいタイプのやつだね」

 ソランツェ達にもラッシュガード着せた方がいいかな。肌とか強そうだけど一応。

「(そうか……そうだな……うん、そうだろう……)」
「(悪気はないというか……いや、自覚が無いというのは非常に厄介なものですね)」
「(本当にな)」
「……ん?」

 二人はプルオーバーのラッシュガードの方が似合いそうだな、アシュマルナに出してもらおう、と考えているとボソボソと二人で話す声。

「なんか言った?」
「「いや、何も」」

 二人揃って微笑みながら首を振るけど……なんか言われていた気がする……。だって、なんかため息っぽいのも聞こえた様な?んん~?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界のオークションで落札された俺は男娼となる

mamaマリナ
BL
 親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。  異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。  俺の異世界での男娼としてのお話。    ※Rは18です

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

異世界召喚に巻き込まれ転移中に魔法陣から押し出され、ボッチで泣いてたらイケメン幼馴染が追いかけてきた件<改定版>

緒沢 利乃
BL
僕、桜川凛は高校の卒業式の日に、教室に突然現れた魔法陣のせいで同級生の数人と一緒に異世界に転移することになった。しかも、転移の途中に同級生の誰かに魔法陣から押し出されてしまう。 えーっ、そんな、僕どうなっちゃうの? 目覚めると森らしきところに一人ボッチでした。 小柄でやせ型で学校でも地味で目立たない特技なしの僕。 冒険者初心者でも楽勝の小型魔獣でさえ倒すこともできず泣きながら逃げ回り、それでもなんとか異世界で生き延びれるよう四苦八苦しながら頑張っていたら……。 幼稚園のときからの幼馴染、橘悠真が現れた。 あれ? 一緒に異世界転移したけれど、悠真は召喚された場所にみんなといたはずでしょ? なんで、ここにいるの? 小学校高学年から言葉も交わさず、視線も合わさず、完全に避けられていたのに、急に優しくされて、守ってくれて……ちょっとドキドキしちゃう。 えっ、どこ触ってるの? いや、大丈夫だから、撫でないで、ギュッとしないで、チュッてしちゃダメー! ※R18は予告なしで入ります。 この作品は別名義で掲載していましたが、今回「緒沢利乃」名義で改定しました。 どうぞ、よろしくお願いします。 ※更新は不定期です。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙
BL
薬学部に通う理人は植物採集に山に行った際、救世主として異世界に召喚されるが、熊の獣人に拾われてツガイにされてしまい、もう元の世界には帰れない身体になったと言われる。そして、世界の終わりの原因は伝染病だと判明し……。 

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

処理中です...