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「はい、大丈夫ですよ。何でしょう?」
さっき汚れた服を魔法で綺麗にしながら、愛し子の力はちゃんと見て頂けました?と声を掛けてきた人物・騎士団長に訊ねる。あはは。気まずそうな顔してるね。
「……ああ」
「現物確認されます?」
騎士団長の返答を聞く前に、首をオス・メス一つずつ亜空間収納からポイポイッと取り出す。全部出せるスペースは無いから一つずつ。
「なっ……」
ドーンッという音と共にそこに出現した見た事のない魔物の首のその不気味な大きさにギャラリーのあちこちから悲鳴が聞こえる。ようやく恐ろしさを実感したらしい。そうだよ、のん気に見学とかしてる場合じゃないんだよ~。俺だったから良かったものの。
「こんなにも大きかったのか」
「どう考えても私達には手に負えませんね」
「あぁ……愛し子様が来て下さって本当に助かりました……」
ソランツェとライアスと領主さんは事前に映像で確認済みなので実物にそこまで驚く事もなく、ペタペタ触ってみたりしている。俺も後で触ってみよう。
「これがあと一対あります、が、これってどうするんです?」
「……どうするとは?」
「もらっていいのかって事です。討伐報酬なんていりませんし」
「あー……」
と、唸りつつ騎士団長の目線は魔物の額の魔石に向いている。
勝手に討伐に参加したとはいえ、普通なら素材の権利は討伐した人の物なはずだから俺がもらっていいと思うけど、そこら辺確認してなかったし一応訊いてみたら少し微妙な顔。
大きく綺麗な魔石だから惜しくなった?というか、俺が討伐出来ると思っていなかったから報酬とかそこら辺考えていなかったのかもしれないし、ソランツェの力で討伐出来ていたとしても俺を詐欺師として捕まえるからその時のゴタゴタで有耶無耶に出来ると思っていたとかでその顔?なんだかなー……。
「あれだけ大きくて綺麗な魔石、欲しがる感じですか? 国王とか国の機関で何かしら研究されてる人達とか?」
「……そう、だな」
「俺は胴体は確実に欲しいなって感じなんで渡しませんけど」
「胴体?」
「魔石はそうでもないし、赤青各色二つずつあるんで頭部丸ごと一つずつ差し上げますよ」
「は?」
思いがけない俺の提案に案の定何故だ?と訝しんでいる騎士団長に条件を提示する。
「この先少しこの国に滞在させてもらう予定ですが、その間一切の接触をせず俺達を放っておいてくれたらそれでいい。元々のんびりと海辺の街を巡るだけが目的なので煩わしいの嫌なんですよね」
「……しかし、そういう訳にもいかないというか――」
「何ですか? 今更どうにかなると思ってます?」
「いや……」
もしかして、本当の愛し子って判ったから色々ヤバイかもっていうんで、ご機嫌取りに王宮に連れて行っておもてなしでもしてくれる予定だったんだろうか?そんな訳ないよな?普通はそこら辺ちゃんと考えるっつーか……まあ、考えてたら浅はかさしかない行動なんか取らないか……。
「じゃあ、そういう事で。あれ置いていきますね」
「ま、待ってくれ」
なんだかこれ以上この人と話すのも面倒臭いので話を切り上げ、立ち去ろうとすると『最後に一つ聞かせてくれ』と止められる。
「なんですか?」
「……神が、神がいるというならば」
「あ、待って」
すっごい面倒臭い質問の予感がしたので、俺達二人だけを防音結界で覆う。ソランツェが気付いて近付いて来ようとしていたが、手で制止する。
「はい、どうぞ。予想はつくけど」
「貴方のあの力を見てしまうと神がいるのだろうと受け入れざるを得ない」
「はぁ、そうですか」
でも、ディスった事は謝りはしないのか。なんだコイツ。
「しかし、ならば何故、神は救われないのだ」
「あー? 何を?」
まあ、詳しく聞き返さなくても何を言いたいか判るけど。
「貧困にあえぐもの、病気に苦しむもの……他にも神に助けを乞い祈るものはたくさんいる」
はい、予想通りの質問。
「そんなの俺が知る訳ねぇしっつーか、あんた国の上の方にいるくせにそんなのを疑問に持っちゃうのかよ」
「どういう事だ」
は?え?マジで言ってんのか?
「あんたの所の王って平民一人一人の事認識してるの? 平民一人一人陳情聞いてあげてるの? そんな訳ないよな?」
「それと同じだとでも言うのか? 神なのに――」
「全部やるべきだって? 馬鹿馬鹿しいしおこがましい事言うなあ。さすが脳が筋肉で出来ていらっしゃる」
「なんだと?!」
癇に障ったのか結界内にピリッとした空気が漂うが構わず、近くの砂浜を指差して視線を向けさせる。
「あれをこの世界と考えたらいい。神は砂浜が波に削られ過ぎない様に大きく管理はしてる。で、基本的にはそれだけしかしてないと思いなよ」
「砂が我々だというのか?」
「あくまで俺の認識を下敷きにして話すけど、神にとっては自分達がそれぐらいの物って認識しておいた方がいい。ソランツェの様に生まれつき力を持って生まれた人でも精々貝殻かなあ。貝殻すら目を留めるかも目を留めても拾うかどうかすらも判らないのに砂粒一つ一つになんて興味示すと思うか?」
騎士団長はただ黙って俺の話を聞いている。相槌くらい打てよ。
「でもまあ、極稀だけど気まぐれに指で砂粒をすくう事もあるんだろうね。だから、みんなその気まぐれを奇跡と呼んで神の存在を信じ次は自分にと希って祈る、と。神は想像以上の気分屋なんだと俺は思ってるよってゆーか、何話してんのかよく判んなくなって来たけど、まあ、そういう物と考えなよ」
「……貝殻か」
この人の言動の背景なんか知りたくもないから、何で貝殻に引っ掛かってんだが知らないがさっさと話を終わらせたい。
「で、一応教えておきますけど、俺ってその砂浜で”自由に遊んでいいよ”って言われた子供なんだよ」
「子供?」
「子供の近くにいればたとえ砂粒でも目に留まるみたいで……。この意味がちゃんと判ればもしかしたら俺に言いたい事が出来てまた会いたくなるかもしれないけど、俺はもう二度と会うつもりはないよって事を教えておきます」
意味が判っていない騎士団長ににっこりと最上の笑顔を見せつつ、それではごきげんよう、と言い終わると同時に海蛇の首と兵士達と一緒にまとめて王宮に飛ばしてやった。魔法使えなくなるくらいで済めばいいね。さようなら。
さっき汚れた服を魔法で綺麗にしながら、愛し子の力はちゃんと見て頂けました?と声を掛けてきた人物・騎士団長に訊ねる。あはは。気まずそうな顔してるね。
「……ああ」
「現物確認されます?」
騎士団長の返答を聞く前に、首をオス・メス一つずつ亜空間収納からポイポイッと取り出す。全部出せるスペースは無いから一つずつ。
「なっ……」
ドーンッという音と共にそこに出現した見た事のない魔物の首のその不気味な大きさにギャラリーのあちこちから悲鳴が聞こえる。ようやく恐ろしさを実感したらしい。そうだよ、のん気に見学とかしてる場合じゃないんだよ~。俺だったから良かったものの。
「こんなにも大きかったのか」
「どう考えても私達には手に負えませんね」
「あぁ……愛し子様が来て下さって本当に助かりました……」
ソランツェとライアスと領主さんは事前に映像で確認済みなので実物にそこまで驚く事もなく、ペタペタ触ってみたりしている。俺も後で触ってみよう。
「これがあと一対あります、が、これってどうするんです?」
「……どうするとは?」
「もらっていいのかって事です。討伐報酬なんていりませんし」
「あー……」
と、唸りつつ騎士団長の目線は魔物の額の魔石に向いている。
勝手に討伐に参加したとはいえ、普通なら素材の権利は討伐した人の物なはずだから俺がもらっていいと思うけど、そこら辺確認してなかったし一応訊いてみたら少し微妙な顔。
大きく綺麗な魔石だから惜しくなった?というか、俺が討伐出来ると思っていなかったから報酬とかそこら辺考えていなかったのかもしれないし、ソランツェの力で討伐出来ていたとしても俺を詐欺師として捕まえるからその時のゴタゴタで有耶無耶に出来ると思っていたとかでその顔?なんだかなー……。
「あれだけ大きくて綺麗な魔石、欲しがる感じですか? 国王とか国の機関で何かしら研究されてる人達とか?」
「……そう、だな」
「俺は胴体は確実に欲しいなって感じなんで渡しませんけど」
「胴体?」
「魔石はそうでもないし、赤青各色二つずつあるんで頭部丸ごと一つずつ差し上げますよ」
「は?」
思いがけない俺の提案に案の定何故だ?と訝しんでいる騎士団長に条件を提示する。
「この先少しこの国に滞在させてもらう予定ですが、その間一切の接触をせず俺達を放っておいてくれたらそれでいい。元々のんびりと海辺の街を巡るだけが目的なので煩わしいの嫌なんですよね」
「……しかし、そういう訳にもいかないというか――」
「何ですか? 今更どうにかなると思ってます?」
「いや……」
もしかして、本当の愛し子って判ったから色々ヤバイかもっていうんで、ご機嫌取りに王宮に連れて行っておもてなしでもしてくれる予定だったんだろうか?そんな訳ないよな?普通はそこら辺ちゃんと考えるっつーか……まあ、考えてたら浅はかさしかない行動なんか取らないか……。
「じゃあ、そういう事で。あれ置いていきますね」
「ま、待ってくれ」
なんだかこれ以上この人と話すのも面倒臭いので話を切り上げ、立ち去ろうとすると『最後に一つ聞かせてくれ』と止められる。
「なんですか?」
「……神が、神がいるというならば」
「あ、待って」
すっごい面倒臭い質問の予感がしたので、俺達二人だけを防音結界で覆う。ソランツェが気付いて近付いて来ようとしていたが、手で制止する。
「はい、どうぞ。予想はつくけど」
「貴方のあの力を見てしまうと神がいるのだろうと受け入れざるを得ない」
「はぁ、そうですか」
でも、ディスった事は謝りはしないのか。なんだコイツ。
「しかし、ならば何故、神は救われないのだ」
「あー? 何を?」
まあ、詳しく聞き返さなくても何を言いたいか判るけど。
「貧困にあえぐもの、病気に苦しむもの……他にも神に助けを乞い祈るものはたくさんいる」
はい、予想通りの質問。
「そんなの俺が知る訳ねぇしっつーか、あんた国の上の方にいるくせにそんなのを疑問に持っちゃうのかよ」
「どういう事だ」
は?え?マジで言ってんのか?
「あんたの所の王って平民一人一人の事認識してるの? 平民一人一人陳情聞いてあげてるの? そんな訳ないよな?」
「それと同じだとでも言うのか? 神なのに――」
「全部やるべきだって? 馬鹿馬鹿しいしおこがましい事言うなあ。さすが脳が筋肉で出来ていらっしゃる」
「なんだと?!」
癇に障ったのか結界内にピリッとした空気が漂うが構わず、近くの砂浜を指差して視線を向けさせる。
「あれをこの世界と考えたらいい。神は砂浜が波に削られ過ぎない様に大きく管理はしてる。で、基本的にはそれだけしかしてないと思いなよ」
「砂が我々だというのか?」
「あくまで俺の認識を下敷きにして話すけど、神にとっては自分達がそれぐらいの物って認識しておいた方がいい。ソランツェの様に生まれつき力を持って生まれた人でも精々貝殻かなあ。貝殻すら目を留めるかも目を留めても拾うかどうかすらも判らないのに砂粒一つ一つになんて興味示すと思うか?」
騎士団長はただ黙って俺の話を聞いている。相槌くらい打てよ。
「でもまあ、極稀だけど気まぐれに指で砂粒をすくう事もあるんだろうね。だから、みんなその気まぐれを奇跡と呼んで神の存在を信じ次は自分にと希って祈る、と。神は想像以上の気分屋なんだと俺は思ってるよってゆーか、何話してんのかよく判んなくなって来たけど、まあ、そういう物と考えなよ」
「……貝殻か」
この人の言動の背景なんか知りたくもないから、何で貝殻に引っ掛かってんだが知らないがさっさと話を終わらせたい。
「で、一応教えておきますけど、俺ってその砂浜で”自由に遊んでいいよ”って言われた子供なんだよ」
「子供?」
「子供の近くにいればたとえ砂粒でも目に留まるみたいで……。この意味がちゃんと判ればもしかしたら俺に言いたい事が出来てまた会いたくなるかもしれないけど、俺はもう二度と会うつもりはないよって事を教えておきます」
意味が判っていない騎士団長ににっこりと最上の笑顔を見せつつ、それではごきげんよう、と言い終わると同時に海蛇の首と兵士達と一緒にまとめて王宮に飛ばしてやった。魔法使えなくなるくらいで済めばいいね。さようなら。
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