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「ライアスはそこに寝かせてあげて」
あの後、一回マジでトリラウーユとやらと俺も話してみたいんだけど呼び掛ければいいのか、とアシュマルナに言ってみたら「絶対やめておけ」「ダメだ」だって。理由を聞いたら「伴侶との平穏を望むならやめろ」とかって何やら不吉な事を真剣な顔で言うので踏み止まった。え、何、怖い。その理由が気になるけど、気にしない方が良さそう……。
とまあ、そういう事でアシュマルナとの通話を終えた後、目を覚まさないライアスを連れてドイドラから出てすぐ近くの平原に転移し馬車を出した。
無理に起こさず一部を畳の和室に改造した馬車の中に敷いた布団にライアスを寝かせておき、その間に俺達はお昼ご飯。作る気力なんか湧く訳が無いよなって事で魔法でやる。
肉好きソランツェに合わせ、ララタスで買っていた牛バラ肉とモモ肉を両方使ってローストビーフ丼にする。魔法だと温度管理の手間なしだからいいね。
「……美味い」
「おかわりする?」
「もちろん」
ソランツェは上に乗せた卵黄とタレが気に入ったらしく、いっぱいおかわりしたので二キロ分の肉があっという間に無くなった……。あれ?
使った肉は無限ボーナス分じゃないからまた買わなきゃいけないけど、俺が思うよりももっと多めに買わないといけないみたい。つーか、魔物でも美味しいって言われる肉を探し出して狩ってしまう方がいいかもしれない。ソランツェ知ってるかな。
「ライアスの分先に取っておけばよかったな」
「……すまない」
「起きたらまた何か用意するから大丈夫」
ちょっと耳と尻尾がしょんぼりしているソランツェが可愛いんだが?とか、そんな事を思っていたら畳の方でライアスの動く気配と呻き声がする。ワンクッション的な意味で先にソランツェを派遣。
「大丈夫か?」
「あ、あの……ここは?」
「リヒトの馬車の中だ」
「馬車?」
「ああ。……そうだな、この先細かい事は気にしない方がいい」
「え?」
「考えるだけ不毛だ」
随分はっきり言うソランツェに笑ってしまいそうになる。ここまでの間の事で戸惑うだけ無駄って事を身をもって体験してるからな。
ライアスの方はそんな事を言われて尚更戸惑うような声しか出してないけど無理もない。慣れだ慣れ。
「ライアス、大丈夫?」
「! リヒト様……!」
これ以上混乱させるのも可哀想なので俺も近くへ行く。ソランツェの後ろから顔を覗かせるとライアスは弾かれた様に起き上がりひれ伏そうとしたので、大丈夫だよとライアスを制し、とりあえず水でも飲んで落ち着く様にと水を渡す。
「飲んで落ち着こう」
「は、はい……」
ライアスは俺が目の前でパッと出した水の入ったグラスを受け取り、数秒ほどじっと眺めてから目を閉じて飲み干しそのまま深く深呼吸する事数回、その後目を開けたライアスは俺の方に身体を向け頭を下げる。
「お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございませんでした」
「いやいや、あれはもういきなり神様の顔だよ~ってやっちゃった全面的に俺が悪いからさ」
「そうだぞ、気にするな」
「くっ……」
ソランツェがしっかり背中を刺してくるのに反論出来ないのが辛い。迂闊な俺が悪かった。
「それで、あの……」
「うん。言える事だけになるけど説明するな」
「はい」
さっきの深呼吸の間に全てを飲み込む覚悟を決めたのかって思える様な顔のライアスに、言える範囲で説明していく。
まずはあのアシュマルナは本物で俺だけはいつでも通信可能だという事。アシュマルナに対しての俺の態度だが、経緯は絶対言えないけどアイツが悪いし気にしないで欲しいという事。例のソランツェへの問いかけで『我が子』って言われてた事の説明がジェロイスさんからあったかもしれないけど、『我が子』ってのは愛し子を指してるんじゃなくてそのままの意味で俺は本当の本当に神の子なんだって事。だから、人の生死は除くけど力を使えば「神力」で、ライアス達が想像もつかない様な事まで何でも出来るという事。例えば、どんな魔法も自由自在だし、この特殊な馬車とかさっきの通信用の魔道具だとかも簡単に作れたりするって事。因みに神の子って事を受け入れたのはつい最近だしこの世界の事もあんまり知らないので自覚が色々足りないんだよねって付け加えておいた。
「まあ、何でも出来るしソランツェも居るから身体面では護衛の必要性ってあんまり感じないんだけどな」
でも、今からトゥアンニコにて起こりそうな予感のする対人トラブル避けに、利用する様で悪いけどライアス達聖騎士は近くに居た方がいいのかなって思うので、俺の事を知ったライアスが大丈夫ならこのまま護衛を続けて欲しいと告げる。
「今から起こりそう、ですか?」
「うん」
「何か心当たりがあるのか?」
「心当たりっていうか……今から海の魔物に翻弄されているトゥアンニコに行くだろ?」
「ああ、行った方がいいのは確実だな」
これは既に冒険者ギルドにて緊急討伐依頼が出ていて、多分Aランク専用依頼。そして、おそらくB+のソランツェ宛にもその討伐依頼が来ていて受注可能と思われるし、他にも国軍が動くらしいけど……。
「俺の予想では、多分俺以外その魔物倒せないかもしれないんだよねー……」
「ん?」
「え?」
ちょっと歯切れの悪い言い方だが自分の予想を二人に告げると、ソランツェは何やら思い出した上で何かに勘付き俺をじーっと見てくる。今更だがダンジョン型仕送りシステムの事、先に教えておけばよかったかもしれない……。
「どういう事でしょうか?」
「えーっと……」
俺のお小遣い稼ぎ専用魔物だからってのを聞こえの良い様にどう言えばいいかな……。
あの後、一回マジでトリラウーユとやらと俺も話してみたいんだけど呼び掛ければいいのか、とアシュマルナに言ってみたら「絶対やめておけ」「ダメだ」だって。理由を聞いたら「伴侶との平穏を望むならやめろ」とかって何やら不吉な事を真剣な顔で言うので踏み止まった。え、何、怖い。その理由が気になるけど、気にしない方が良さそう……。
とまあ、そういう事でアシュマルナとの通話を終えた後、目を覚まさないライアスを連れてドイドラから出てすぐ近くの平原に転移し馬車を出した。
無理に起こさず一部を畳の和室に改造した馬車の中に敷いた布団にライアスを寝かせておき、その間に俺達はお昼ご飯。作る気力なんか湧く訳が無いよなって事で魔法でやる。
肉好きソランツェに合わせ、ララタスで買っていた牛バラ肉とモモ肉を両方使ってローストビーフ丼にする。魔法だと温度管理の手間なしだからいいね。
「……美味い」
「おかわりする?」
「もちろん」
ソランツェは上に乗せた卵黄とタレが気に入ったらしく、いっぱいおかわりしたので二キロ分の肉があっという間に無くなった……。あれ?
使った肉は無限ボーナス分じゃないからまた買わなきゃいけないけど、俺が思うよりももっと多めに買わないといけないみたい。つーか、魔物でも美味しいって言われる肉を探し出して狩ってしまう方がいいかもしれない。ソランツェ知ってるかな。
「ライアスの分先に取っておけばよかったな」
「……すまない」
「起きたらまた何か用意するから大丈夫」
ちょっと耳と尻尾がしょんぼりしているソランツェが可愛いんだが?とか、そんな事を思っていたら畳の方でライアスの動く気配と呻き声がする。ワンクッション的な意味で先にソランツェを派遣。
「大丈夫か?」
「あ、あの……ここは?」
「リヒトの馬車の中だ」
「馬車?」
「ああ。……そうだな、この先細かい事は気にしない方がいい」
「え?」
「考えるだけ不毛だ」
随分はっきり言うソランツェに笑ってしまいそうになる。ここまでの間の事で戸惑うだけ無駄って事を身をもって体験してるからな。
ライアスの方はそんな事を言われて尚更戸惑うような声しか出してないけど無理もない。慣れだ慣れ。
「ライアス、大丈夫?」
「! リヒト様……!」
これ以上混乱させるのも可哀想なので俺も近くへ行く。ソランツェの後ろから顔を覗かせるとライアスは弾かれた様に起き上がりひれ伏そうとしたので、大丈夫だよとライアスを制し、とりあえず水でも飲んで落ち着く様にと水を渡す。
「飲んで落ち着こう」
「は、はい……」
ライアスは俺が目の前でパッと出した水の入ったグラスを受け取り、数秒ほどじっと眺めてから目を閉じて飲み干しそのまま深く深呼吸する事数回、その後目を開けたライアスは俺の方に身体を向け頭を下げる。
「お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございませんでした」
「いやいや、あれはもういきなり神様の顔だよ~ってやっちゃった全面的に俺が悪いからさ」
「そうだぞ、気にするな」
「くっ……」
ソランツェがしっかり背中を刺してくるのに反論出来ないのが辛い。迂闊な俺が悪かった。
「それで、あの……」
「うん。言える事だけになるけど説明するな」
「はい」
さっきの深呼吸の間に全てを飲み込む覚悟を決めたのかって思える様な顔のライアスに、言える範囲で説明していく。
まずはあのアシュマルナは本物で俺だけはいつでも通信可能だという事。アシュマルナに対しての俺の態度だが、経緯は絶対言えないけどアイツが悪いし気にしないで欲しいという事。例のソランツェへの問いかけで『我が子』って言われてた事の説明がジェロイスさんからあったかもしれないけど、『我が子』ってのは愛し子を指してるんじゃなくてそのままの意味で俺は本当の本当に神の子なんだって事。だから、人の生死は除くけど力を使えば「神力」で、ライアス達が想像もつかない様な事まで何でも出来るという事。例えば、どんな魔法も自由自在だし、この特殊な馬車とかさっきの通信用の魔道具だとかも簡単に作れたりするって事。因みに神の子って事を受け入れたのはつい最近だしこの世界の事もあんまり知らないので自覚が色々足りないんだよねって付け加えておいた。
「まあ、何でも出来るしソランツェも居るから身体面では護衛の必要性ってあんまり感じないんだけどな」
でも、今からトゥアンニコにて起こりそうな予感のする対人トラブル避けに、利用する様で悪いけどライアス達聖騎士は近くに居た方がいいのかなって思うので、俺の事を知ったライアスが大丈夫ならこのまま護衛を続けて欲しいと告げる。
「今から起こりそう、ですか?」
「うん」
「何か心当たりがあるのか?」
「心当たりっていうか……今から海の魔物に翻弄されているトゥアンニコに行くだろ?」
「ああ、行った方がいいのは確実だな」
これは既に冒険者ギルドにて緊急討伐依頼が出ていて、多分Aランク専用依頼。そして、おそらくB+のソランツェ宛にもその討伐依頼が来ていて受注可能と思われるし、他にも国軍が動くらしいけど……。
「俺の予想では、多分俺以外その魔物倒せないかもしれないんだよねー……」
「ん?」
「え?」
ちょっと歯切れの悪い言い方だが自分の予想を二人に告げると、ソランツェは何やら思い出した上で何かに勘付き俺をじーっと見てくる。今更だがダンジョン型仕送りシステムの事、先に教えておけばよかったかもしれない……。
「どういう事でしょうか?」
「えーっと……」
俺のお小遣い稼ぎ専用魔物だからってのを聞こえの良い様にどう言えばいいかな……。
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