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 どんな触れ込みでもってどこにどんだけ散らばってんのかね、なんてうっかりまた疑問を持ってしまったので忘れようと思う。俺は何も知らないし気付いてないんだ。のんびりと旅をするんだよ俺は。


 さて、のんびりとはいえ体の大きなブランの歩幅は大きいので暗くなる少し前に街道にある一つ目の宿場町・ピヴィラに到着した。
 規模は大きくなく小さめの町って感じで、その町の真ん中に街道が通っている。街道を挟んで何軒も建ち並ぶ宿もそこまで大きな建物ではないけどどれもレンガ造りで、自分の中にある日本の宿場町との違いが新鮮で見ていて楽しい。

「どこの宿がいいんだろう?」
「空きがあればいいが……」

 王都(便宜上)とガルゴドン王国を繋ぐメイン街道なので、そこそこ人が多く賑わっている。商人やガルゴドンに旅行に行くのかなって感じの人とかがいっぱい。

「そういえば、冒険者ですって感じの人あんまり見ないな」

 商人に用心棒として雇われた様な人はいるけど。

「ここに来るまでに魔物に遭遇しなかった事にも気付いてるか?」
「あ、言われてみれば」

 転移してから街道をずっと来たけど、魔物に一度も遭遇しなかったのを思い出す。

「アシュマルナのお膝元だし、そもそも生息してないとか?」
「そんな訳はないと思うが……」
「何かしらの力は働いてるっぽい?」

 あの花の木はここに植えられていないけど、要所要所を繋ぐ街道沿いだし一応、護ってやるか的な感じか?というか、よくよく見てみると町を囲う防護壁なんてものも無いのに気付いた。

「めちゃくちゃ平和」

 各都市も同じ様に護られてるんだろうし、魔物と戦わないでいいとか楽じゃん。もう慣れてきたけど戦わなくていいなら戦いたくないという気持ちはどこかやっぱり微かに残っている。いや、まあ、厳密に言うと戦ってすらないけど。
 俺、旅も終わってどっかに住むっていうんなら総教国内がいいかも?いや、でも自由は無くなりそう?

「うーん……」
「?」




 宿は二軒目に入った所にツインの空きがあったのでそこに泊まる事にした。一軒目はシングルが空いていたけどソランツェがツインがいいそうで却下してた。俺はどっちでもいいんだけど。

 ピヴィラの宿はどこも一階の受付の他に食堂兼酒場があって賑やかだ。賑やかと言ってもお酒を飲んでウェーイ!みたいに騒いでいるという訳ではない。穏やかな賑やかさ。
 客層はいい感じだなと、ソランツェが受付をしている横で辺りを観察していると酒場の給仕の女の子がソランツェの事をうっとりと見ていて、だよね!ソランツェかっこいいもんね!と共感するがちょっとモヤモヤもする。俺のなのって主張したい。
 という訳で、そう思ってしまったが最後、俺って性格悪いなあと思いながら、受付が終わり鍵を受け取ったソランツェの腕に抱きつき、客室へ続く酒場奥の階段に行く前に通り過ぎるその子に向けてニッコリと会釈しておいた。伝われ俺の思い。

「ん?」

 ソランツェは人前で急に腕を組んで甘えてきた俺にいまいち理解が追い付いていない様だけど、そんな事は無視してグイグイ引っ張って部屋へと移動した。

「一体どうしたんだ?」
「アピールはしておくべきかと」
「何のだ?」
「うーん。ソランツェも俺の事言えないくらい無自覚だね?」

 首を傾げる仕草が可愛いぞ。



 宿の部屋は、漆喰だろうか白い塗り壁の綺麗な部屋だった。ベッドもぴっしり綺麗にメイクされていて、マットレスとかの寝具はこの世界標準の物なので寝心地は期待は出来ないんだけど、いい感じ。部屋の照明はランタンみたいな魔道具だったり、花が飾られていたり、使われている家具なんかもしっかりしている。

「判ってはいたけど総教国って裕福だな」
「そうだな」
「国の収入源って……あ、やっぱいいや」

 色々気にしないって決めたのに色々気になってしまう。くそ~。








++++++








「次はメーディヴィラって所か」
「ここより少しだけ大きいらしい」

 翌日、宿を出て道沿いの屋台にて朝ご飯を買って歩きながら食べる。
 昨日の夜は亜空間収納からゲーム機を取り出して昔のRPGを少しプレイしてみる(ソランツェはゲームを見て驚いていた)以外は特に何事もなく普通にイチャついて過ごした。

 買った朝食はソランツェは鶏肉(?)が挟まれたピタパンみたいなやつで、俺はチュロスみたいな細長いやつ。サクッとした歯ごたえで甘くなくてちょっと塩味がある。結構美味しい。ソランツェの方も一口もらったけど美味しかったし、昨日の宿で食べた夕飯の牛肉(?)の煮込みも美味しかった。どうやら総教国は食べ物が美味いらしい。外食が美味い所は住みたくなるね。

「食は大事……なんだけど……」

 何か餌付けされてる感があるのはどうしてだろうか……。
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