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「テッドさん達の金銭面の負担は一切無いんです!俺が全部やりますから!パパ~ッと魔法で!」
リフォーム工事飛び込み営業マンと化した俺はポカンとしているままのテッドさんに、身振り手振りも大いに使いガンガン営業をかけていく。だって、俺が資材調達も工事も全部やるから元手ゼロなんだしさ!
「実はですね、公式発表はまだなんですがこの度ファンディオのあのダンジョンが拡張しまして、今後それを目当てに冒険者がいっぱいファンディオに訪れる様になると予想されます!」
「は、はぁ……」
「ですので!明日からの事もありますし、今後を見据え機会損失を少しでも減らすべく増改築を行い客室を増やすというのはどうで――痛ぁっ?!」
頭にゴツンと衝撃が来て、バッと振り返るとソランツェが怖い顔をして腕を組んで立っていた。うわ、やっべぇ。
「リヒト」
声が低い。うん、やばい。
見なかった事にして顔をそーっと戻そうとしたが、顎というか頬というか顔をガッと掴まれて阻止される。痛いよー!こういう時はしっかり痛覚が仕事しやがる……。
「ホァンフェ、いひゃぃ(ソランツェ、痛い)」
「まず、落ち着け」
「……ふぁい(はい)」
見ればテッドさんドン引きだよ。申し訳ない。
「すみません、つい……」
集客力があるらしい俺の所為で明日以降も満室が予想されるけど、断らなきゃいけない客が増えた場合機会損失以外にも、その『お断り』の対応に時間を割く事になるので大変かもっていうのも考えてしまって、俺の所為で引き起こされるそういう面倒を少しでもどうにか緩和出来る様にお手伝いしたいと……。
「で、増改築なら俺簡単に出来るじゃん!って……」
「初めから落ち着いてそう言ってくれ。驚くだろう?」
ソランツェは俺の頭を撫でながら盛大な溜息を吐く。イルムがポカーンとしたまま俺を見上げている視線が……うぅ……。
「増改築ですか……」
「はい。いつまで俺の存在の効果が続くかは判りませんが、ダンジョン目当てに今後人が増えるだろうというのは間違いないと思います」
「そうなんですか?」
「SS級のアイテム目当てにいっぱい来ると思いますよ」
俺以外入手出来ないやつだから、俺がそれを取らない以上人は集まって来るだろうし、取っても人は来るだろうと思う。イルム達を引き取った分これからお金はかかるだろうから、この事を利用してもらって収入を増やせる時に増やしてもらえればっていう気持ちもある。
「宿屋の身としては嬉しい話ですね」
「本当にお金とか掛からないので、どうですか?部屋も客も増えた分初めの内は大変になるでしょうけど……」
勿論、出来るだけ目立たない様にするし、いっそ目くらましの幻覚魔法とか使っちゃえばいいし、どうかな。
「ロスティルとも少し話して来て良いですか?」
「はい、勿論」
++++++
イルムに案内してもらって部屋に行く。そういえばと思いアルミオは?と訊くとこの時間はロスティルさんの手伝いをしているらしい。野菜の皮むきだとかしているみたい。頑張ってるね。
「どうかなー?部屋数は増やさなくてもイルム達の部屋作るだけでも、テッドさん達の居住スペースだけでも改築させてくれないかな」
「目的が変わってるじゃないか」
「だってさー」
客室のシングルの部屋を一つ潰してアルミオ達の部屋にする予定だったらしいけど、客が増えたので現在事務作業をする為の狭い部屋に予備の寝具を持ち込んで寝ているそうで、ずっとそのままという訳にもいかないのは確からしい。
「だから、遠慮せず便利屋な俺を使って欲しい訳だよ」
「便利屋って……」
使える力使ってこそでしょう!と言うとちょっと呆れ顔だったけど、同意はしてくれた。
「もし、やるとなった場合はやり過ぎない様にな」
「やり過ぎラインがどこら辺か判んないけど気を付ける」
って、言ったけど設備工事と考えて思い付いたから試してみたい事あるんだよな。せめてこれだけでも設置させて欲しいなって思うやつ。
「でさぁ、話は変わるんだけど、水属性魔法が付与された魔道具ってないよな?大きい甕に付与して水を常時湧き出させる様にとか。必要魔力は魔石からって感じの」
馬車のはアシュマルナ製だから除外して。
「……何だか話が変わっている気がしないぞ?」
「気のせい気のせい」
「全然気のせいじゃないと思うが……」
まあ、予想通り水魔法の付与された魔道具は聞いた事がないらしい。馬車のやつ驚いてたもんね。そもそも付与出来るのか不明だと。
「ま、出来る人がいたら既にそういう物は存在して普及してるだろうし、子供は連れ去られてないよな」
「そうだな」
なんでだろう、ただ単にスペック不足?なら俺には出来るはずだよな?
「はい、実験!」
亜空間収納から洗面器を取り出して、テーブルに置く。この中に水が常時湧き出るようにというか、減った分が常に湧き出るようにしたい。なので、そう思いながら指を鳴らすも洗面器に変化はない。ふむ。
「ここで魔石が必要なのかな?」
「そうだな。俺に訊くならまず一体何をし始めたのか説明してくれ」
「おっと」
ソランツェに一応訊いてみたがお小言の予感に説明は後からにして、さっさと手持ちの魔石を取り出し洗面器に入れ『必要な魔力はそこから』と魔法を重ね掛けしてみる。すると、じわーっと水が湧き出て来たのでどうやら成功の様子。チョロいぜ。
「これ!」
「……ああ、うん」
ちょっとドヤって見せたら、頷かれただけだった。呆れた顔で。
「あ、でも……」
使った魔石がすごく小さかったせいか満タン手前で内蔵魔力が尽きたみたいだ。
「再補充すれば良いけど何回かで壊れるんだよね……?」
「使うなら大きな魔石がいいだろうな」
「買うと高い?」
「大きいのはな」
小さいの集めて合体出来たりしないかな?
「うーん……?」
リフォーム工事飛び込み営業マンと化した俺はポカンとしているままのテッドさんに、身振り手振りも大いに使いガンガン営業をかけていく。だって、俺が資材調達も工事も全部やるから元手ゼロなんだしさ!
「実はですね、公式発表はまだなんですがこの度ファンディオのあのダンジョンが拡張しまして、今後それを目当てに冒険者がいっぱいファンディオに訪れる様になると予想されます!」
「は、はぁ……」
「ですので!明日からの事もありますし、今後を見据え機会損失を少しでも減らすべく増改築を行い客室を増やすというのはどうで――痛ぁっ?!」
頭にゴツンと衝撃が来て、バッと振り返るとソランツェが怖い顔をして腕を組んで立っていた。うわ、やっべぇ。
「リヒト」
声が低い。うん、やばい。
見なかった事にして顔をそーっと戻そうとしたが、顎というか頬というか顔をガッと掴まれて阻止される。痛いよー!こういう時はしっかり痛覚が仕事しやがる……。
「ホァンフェ、いひゃぃ(ソランツェ、痛い)」
「まず、落ち着け」
「……ふぁい(はい)」
見ればテッドさんドン引きだよ。申し訳ない。
「すみません、つい……」
集客力があるらしい俺の所為で明日以降も満室が予想されるけど、断らなきゃいけない客が増えた場合機会損失以外にも、その『お断り』の対応に時間を割く事になるので大変かもっていうのも考えてしまって、俺の所為で引き起こされるそういう面倒を少しでもどうにか緩和出来る様にお手伝いしたいと……。
「で、増改築なら俺簡単に出来るじゃん!って……」
「初めから落ち着いてそう言ってくれ。驚くだろう?」
ソランツェは俺の頭を撫でながら盛大な溜息を吐く。イルムがポカーンとしたまま俺を見上げている視線が……うぅ……。
「増改築ですか……」
「はい。いつまで俺の存在の効果が続くかは判りませんが、ダンジョン目当てに今後人が増えるだろうというのは間違いないと思います」
「そうなんですか?」
「SS級のアイテム目当てにいっぱい来ると思いますよ」
俺以外入手出来ないやつだから、俺がそれを取らない以上人は集まって来るだろうし、取っても人は来るだろうと思う。イルム達を引き取った分これからお金はかかるだろうから、この事を利用してもらって収入を増やせる時に増やしてもらえればっていう気持ちもある。
「宿屋の身としては嬉しい話ですね」
「本当にお金とか掛からないので、どうですか?部屋も客も増えた分初めの内は大変になるでしょうけど……」
勿論、出来るだけ目立たない様にするし、いっそ目くらましの幻覚魔法とか使っちゃえばいいし、どうかな。
「ロスティルとも少し話して来て良いですか?」
「はい、勿論」
++++++
イルムに案内してもらって部屋に行く。そういえばと思いアルミオは?と訊くとこの時間はロスティルさんの手伝いをしているらしい。野菜の皮むきだとかしているみたい。頑張ってるね。
「どうかなー?部屋数は増やさなくてもイルム達の部屋作るだけでも、テッドさん達の居住スペースだけでも改築させてくれないかな」
「目的が変わってるじゃないか」
「だってさー」
客室のシングルの部屋を一つ潰してアルミオ達の部屋にする予定だったらしいけど、客が増えたので現在事務作業をする為の狭い部屋に予備の寝具を持ち込んで寝ているそうで、ずっとそのままという訳にもいかないのは確からしい。
「だから、遠慮せず便利屋な俺を使って欲しい訳だよ」
「便利屋って……」
使える力使ってこそでしょう!と言うとちょっと呆れ顔だったけど、同意はしてくれた。
「もし、やるとなった場合はやり過ぎない様にな」
「やり過ぎラインがどこら辺か判んないけど気を付ける」
って、言ったけど設備工事と考えて思い付いたから試してみたい事あるんだよな。せめてこれだけでも設置させて欲しいなって思うやつ。
「でさぁ、話は変わるんだけど、水属性魔法が付与された魔道具ってないよな?大きい甕に付与して水を常時湧き出させる様にとか。必要魔力は魔石からって感じの」
馬車のはアシュマルナ製だから除外して。
「……何だか話が変わっている気がしないぞ?」
「気のせい気のせい」
「全然気のせいじゃないと思うが……」
まあ、予想通り水魔法の付与された魔道具は聞いた事がないらしい。馬車のやつ驚いてたもんね。そもそも付与出来るのか不明だと。
「ま、出来る人がいたら既にそういう物は存在して普及してるだろうし、子供は連れ去られてないよな」
「そうだな」
なんでだろう、ただ単にスペック不足?なら俺には出来るはずだよな?
「はい、実験!」
亜空間収納から洗面器を取り出して、テーブルに置く。この中に水が常時湧き出るようにというか、減った分が常に湧き出るようにしたい。なので、そう思いながら指を鳴らすも洗面器に変化はない。ふむ。
「ここで魔石が必要なのかな?」
「そうだな。俺に訊くならまず一体何をし始めたのか説明してくれ」
「おっと」
ソランツェに一応訊いてみたがお小言の予感に説明は後からにして、さっさと手持ちの魔石を取り出し洗面器に入れ『必要な魔力はそこから』と魔法を重ね掛けしてみる。すると、じわーっと水が湧き出て来たのでどうやら成功の様子。チョロいぜ。
「これ!」
「……ああ、うん」
ちょっとドヤって見せたら、頷かれただけだった。呆れた顔で。
「あ、でも……」
使った魔石がすごく小さかったせいか満タン手前で内蔵魔力が尽きたみたいだ。
「再補充すれば良いけど何回かで壊れるんだよね……?」
「使うなら大きな魔石がいいだろうな」
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