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「リヒト様、お待ちしておりました」
「ぅえ?!」
教会へ入るとすぐの所にライアス達が立っていて驚いてしまった。だって、格好が普通の冒険者風だったり街の人風だったりで。甲冑姿じゃないからなんか新鮮だな。
「もしかしなくても、街の中ではその格好で紛れて護ってくれるって事だよな?」
「はい」
「おー……まんまアレじゃん……」
「?」
お使いに行く子供を大人達が変装して見守りつつカメラで撮影するアレ。ソランツェは勿論みんな首を傾げていて、誰にも伝わらないのが残念だけど、それにしても。
「俺達がここに居るってよく判ったね?」
「こちらへ向かう様にとの御指示がありました」
誰からだよ?とかどういう事だ?とか聞いてしまいたいが
「へ~そっかぁ~」
ニコッと笑って受け入れる。
俺はさ、学習したんだよね、気になったからって色々何でもかんでも訊かない方がいいって。だから、今、ふと脳裏に浮かんで来た、点と点、及びそれを結ぶ線を見なかった事にしてもう一度沈めようと思う。まだはっきりとは見えてないからそのまま忘れたい。俺は何も気付いてない、気付いてないぞ。
用事は伝言のみだったので、本人に会ったならもう用は無いから宿屋に行くと言えば、もし転移で城門から外に出ずファンディオからそのまま出発する時は教会へ立ち寄ってからでお願いしますと言われた。ライアス達は出発まで周辺を警護し、その後ここで俺達を見送った後はまた総教国に戻るらしい。
「なんかごめんね……大変な仕事だよなあ」
「いえ、リヒト様の心の赴くままにお過ごし下さる事が私達にとって幸いですので」
どうかお気遣いはなさらないでください、と普通の服を着て控えめに微笑みながらそう言ったライアスは、さぞ、おモテになるんでしょうねって感じだった。今まで無表情というかキリッと隙が無い硬い顔が基本って感じだったからそこそこイケメンって評してたけど、笑うと結構違った。なんつーか、失礼だけど……手に届きそうなイケメンってモテるよな。
++++++
「おや、いらっしゃいませ」
「どうも。誕生日にとか言っておいてすぐに来ちゃいました」
「いらっしゃいませ!!」
二、三日しか経っていないが顔を出せば、イルムは可愛い笑顔で飛び付いて来てくれた。
「おー!元気だな」
抱き上げてみれば体はまだまだ細くて軽いけど、あの飴にかけた『お願い』のおかげなのか数日なのに何だか健康な感じに近付きつつあった。このまますくすく元気に育って欲しいな。
俺の次はソランツェの腕にぶら下がって遊びながら、今日は泊まるの?とイルムは期待のまなざしを向けてくる。
「リヒトどうする?」
「顔出すだけって思ったけど、そろそろ暗くなるし部屋が空いてるなら」
運よくツインが空いていて泊まる事になったが、テッドさんによるとたった二、三日なのに、あの騒動とあの大名行列もどきとで『愛し子がファンディオに来た時に泊まっていた宿』と広まりつつあるらしい。外で掃除をしていると声を掛けてくる人がいっぱい居て、昨日一昨日と宿は満室だったと。話題のものに飛び付く人達はどこにでもいるんだなあ。
ファンディオにはここ以外にも宿屋はあるし一階に酒場もない分、満室になる事はあまり多くなかったそうなんだけど今日も俺達が泊まる事で満室になった。なんかすごいなあ~明日になったら大々的に公表されちゃうけどどうなるんだろ~?とぼんやり他人事だったが、そういう事ならぼんやりしてる場合じゃなさそうだと気が付く。
「実は明日なんですが……」
絵姿付きで公表される事は教えておいた方がいいはずとテッドさん達に話す。
「もっと人が来るようになっちゃうかも……」
「でしょうなあ。まあ、部屋は限りがありますから早い者勝ちですよ」
満室の場合、折角来たお客さん断らないといけない訳で、もしかしたらそれがずっと続くかもしれないって……
「えー?断っちゃうの?」
ソランツェに抱き上げられてぐるぐると振り回してもらい喜んで遊んでいたイルムがソランツェに勿体無いよね?って聞いている。
そう、勿体ない。これって機会損失ってやつじゃない?宿泊施設が需要に合わせて価格変動するっていうのがこの世界にはある?いや、無さそう……。
「部屋が無いとどうしようもないからな」
うん、部屋が無いとな。
「増やしたらいいんじゃない?」
テッドさんはどうか知らないけど、俺だったら増やしたいって思う。
「そう簡単に出来る話じゃないぞ」
改装や増築はお金も時間もかかるもんな。
「そっかぁ……」
うん、そうだよなー………うん。
……うん?
もしか……
しなくても、俺ならいけるんじゃない?
「……テッドさん!」
「は、はいっ?!」
「リヒト!?」
カウンター内でイルムとソランツェのやり取りをニコニコと笑って見ていたテッドさんの手をガシッと掴む。いきなりの俺の行動にソランツェまで吃驚しているが、思い付いてしまったんだから訊いてみたい!!
「増改築にご興味御座いませんか!?!」
「ぅえ?!」
教会へ入るとすぐの所にライアス達が立っていて驚いてしまった。だって、格好が普通の冒険者風だったり街の人風だったりで。甲冑姿じゃないからなんか新鮮だな。
「もしかしなくても、街の中ではその格好で紛れて護ってくれるって事だよな?」
「はい」
「おー……まんまアレじゃん……」
「?」
お使いに行く子供を大人達が変装して見守りつつカメラで撮影するアレ。ソランツェは勿論みんな首を傾げていて、誰にも伝わらないのが残念だけど、それにしても。
「俺達がここに居るってよく判ったね?」
「こちらへ向かう様にとの御指示がありました」
誰からだよ?とかどういう事だ?とか聞いてしまいたいが
「へ~そっかぁ~」
ニコッと笑って受け入れる。
俺はさ、学習したんだよね、気になったからって色々何でもかんでも訊かない方がいいって。だから、今、ふと脳裏に浮かんで来た、点と点、及びそれを結ぶ線を見なかった事にしてもう一度沈めようと思う。まだはっきりとは見えてないからそのまま忘れたい。俺は何も気付いてない、気付いてないぞ。
用事は伝言のみだったので、本人に会ったならもう用は無いから宿屋に行くと言えば、もし転移で城門から外に出ずファンディオからそのまま出発する時は教会へ立ち寄ってからでお願いしますと言われた。ライアス達は出発まで周辺を警護し、その後ここで俺達を見送った後はまた総教国に戻るらしい。
「なんかごめんね……大変な仕事だよなあ」
「いえ、リヒト様の心の赴くままにお過ごし下さる事が私達にとって幸いですので」
どうかお気遣いはなさらないでください、と普通の服を着て控えめに微笑みながらそう言ったライアスは、さぞ、おモテになるんでしょうねって感じだった。今まで無表情というかキリッと隙が無い硬い顔が基本って感じだったからそこそこイケメンって評してたけど、笑うと結構違った。なんつーか、失礼だけど……手に届きそうなイケメンってモテるよな。
++++++
「おや、いらっしゃいませ」
「どうも。誕生日にとか言っておいてすぐに来ちゃいました」
「いらっしゃいませ!!」
二、三日しか経っていないが顔を出せば、イルムは可愛い笑顔で飛び付いて来てくれた。
「おー!元気だな」
抱き上げてみれば体はまだまだ細くて軽いけど、あの飴にかけた『お願い』のおかげなのか数日なのに何だか健康な感じに近付きつつあった。このまますくすく元気に育って欲しいな。
俺の次はソランツェの腕にぶら下がって遊びながら、今日は泊まるの?とイルムは期待のまなざしを向けてくる。
「リヒトどうする?」
「顔出すだけって思ったけど、そろそろ暗くなるし部屋が空いてるなら」
運よくツインが空いていて泊まる事になったが、テッドさんによるとたった二、三日なのに、あの騒動とあの大名行列もどきとで『愛し子がファンディオに来た時に泊まっていた宿』と広まりつつあるらしい。外で掃除をしていると声を掛けてくる人がいっぱい居て、昨日一昨日と宿は満室だったと。話題のものに飛び付く人達はどこにでもいるんだなあ。
ファンディオにはここ以外にも宿屋はあるし一階に酒場もない分、満室になる事はあまり多くなかったそうなんだけど今日も俺達が泊まる事で満室になった。なんかすごいなあ~明日になったら大々的に公表されちゃうけどどうなるんだろ~?とぼんやり他人事だったが、そういう事ならぼんやりしてる場合じゃなさそうだと気が付く。
「実は明日なんですが……」
絵姿付きで公表される事は教えておいた方がいいはずとテッドさん達に話す。
「もっと人が来るようになっちゃうかも……」
「でしょうなあ。まあ、部屋は限りがありますから早い者勝ちですよ」
満室の場合、折角来たお客さん断らないといけない訳で、もしかしたらそれがずっと続くかもしれないって……
「えー?断っちゃうの?」
ソランツェに抱き上げられてぐるぐると振り回してもらい喜んで遊んでいたイルムがソランツェに勿体無いよね?って聞いている。
そう、勿体ない。これって機会損失ってやつじゃない?宿泊施設が需要に合わせて価格変動するっていうのがこの世界にはある?いや、無さそう……。
「部屋が無いとどうしようもないからな」
うん、部屋が無いとな。
「増やしたらいいんじゃない?」
テッドさんはどうか知らないけど、俺だったら増やしたいって思う。
「そう簡単に出来る話じゃないぞ」
改装や増築はお金も時間もかかるもんな。
「そっかぁ……」
うん、そうだよなー………うん。
……うん?
もしか……
しなくても、俺ならいけるんじゃない?
「……テッドさん!」
「は、はいっ?!」
「リヒト!?」
カウンター内でイルムとソランツェのやり取りをニコニコと笑って見ていたテッドさんの手をガシッと掴む。いきなりの俺の行動にソランツェまで吃驚しているが、思い付いてしまったんだから訊いてみたい!!
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