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「それにしても効果覿面過ぎじゃない?」
「例のあの時、あの場に居なくても話だけは知っていたのでしょう。ソランツェさんの容姿までは知らなかったからリヒト様達が”話の中心人物”だとすぐに気付けなかった、と」
「知ってたら、俺に繋がるソランツェに突っかかりはしないもんね」
ギルマスの部屋へ行くまでにアレンさんと話しながら歩いているが、彼は何も言わなくても言葉は丁寧だけど”普通な感じ”で会話してくれるんだよね。元々冒険者としてここに来た事やあの時のライアスとの会話から俺が特別視されるのを嫌うって事を判ってくれてるっぽい。出来るイケメンだ。
「あとは、あの後にここに来た人達だから何も知らないけれど、職員が慌てる程の身分の高い人物と判って黙ったという感じでしょうか。彼らにとっても”お客様”になる可能性が高いですから」
「得策じゃない、もんな」
そういえば?とギルマスの部屋に入る前に、あの例のギルドマスターはどうなったかと思い出したので小声で訊けば、どうも即日首を切られたそう。
俺達がライアス達と総教国に出発した日(翌日)の午前中には職員へと本部から知らされたらしい。
「え?いくら何でも早くない?」
「確かにな」
「他に何かやっちゃってたの?」
「私達は何も知らないんですが、何かやってそうと言えば何かやってそうな人物でしたからね。何も不思議とは思えないです」
「ふはっ」
アレンさんがあまりにも普通の顔で言うので笑ってしまった。言うねえ。
ま、あのうさ耳ガールをそばに置くくらいだし、何かしらありそうだなとは思う。それにしても、処分が早過ぎるよね?と気になったが、物事はあまり深く知ろうとしない方が精神衛生上良さそうと色々と学習したので追求せずに行こう。うん。俺はいい感じに無知で生きると決めたんだ。うんうん。
++++++
入った部屋は、応接セットに執務机などごく普通の役員室という感じで、側面の壁には給湯室に続くドアがあって、アレンさんと先にギルマスに伝えに行った職員さんがお茶の用意をしてくれている。執務机の奥にももう一つドアがあるのは何だろう。というか、世界は違えど役職持ちの部屋はこんな感じになるんだなあと思考を飛ばす。
「早速だが、本題に入ろう」
「はい、お願いします」
副ギルマスから繰り上がりでファンディオ支部の新ギルドマスターになったウーリュオさんと挨拶もそこそこに本題に入り(こういう事はソランツェの出番だな)、ダンジョンに入った時に、地震が起こった事とその後転移陣の色が赤に変わった事を教える。
「地震に、色が変わった転移陣……ですか」
「色の意味ついては冒険者ギルドは知っていたりするのか?」
「いえ、私は就任したばかりですから……実際どうなのか判りません。私自身も何も知らないです……」
ソランツェ以外にも、あの場にいた全員意味を知らなかったので、もしかしてギルドとかでは何らかの機密事項扱いになっているんだろうかと一応の確認を取るが、判別がつかないと……。まあ、どう考えても機密事項などの十分な引き継ぎの時間があったとは思えないので、ウーリュオさんが知らなくても不思議じゃない。
「俺達は既に色の意味を知っているので教えておこうと思う」
「あ、そうなんですか?」
「俺達も初めは意味が判らなかったが、ダンジョンから出てここへ来る前に教えて頂いたのだ。貴方も知っているだろう?目の前の彼が誰なのか」
そう言ってソランツェは俺を示すのでニコッと笑うと、ウーリュオさんはハッと改めて気付いた模様。どうもどうも~。
「あのダンジョンは拡張され階層が増えた」
「え?!」
「地震はその時のものだそうだ。そして、転移陣の色が変わったのは拡張され”最終階層未到達”となったからだと」
「未到達……ですか?もしかして、今までは到達済みだから青かったと?」
「そういう事らしい」
拡張された部分が実際どんなものかまでは自分達にも判らないので、安全の為に一旦封鎖した方がいいだろうとアドバイスをする。
「そうですね。その方がいいでしょうが……」
冒険者ギルド・ファンディオ支部として冒険者に今は行かない方が良いとは言えるだろうが、ダンジョンの管理自体は領主という事になっているから封鎖はこちらでは出来ないとの事。
まずは本部の指示を仰ぎますとウーリュオさんは急いで奥の小部屋に入って行った。
「あそこって通信部屋?」
「だろうな」
ちょっと入ってみたいな。駄目だろうけど。
「例のあの時、あの場に居なくても話だけは知っていたのでしょう。ソランツェさんの容姿までは知らなかったからリヒト様達が”話の中心人物”だとすぐに気付けなかった、と」
「知ってたら、俺に繋がるソランツェに突っかかりはしないもんね」
ギルマスの部屋へ行くまでにアレンさんと話しながら歩いているが、彼は何も言わなくても言葉は丁寧だけど”普通な感じ”で会話してくれるんだよね。元々冒険者としてここに来た事やあの時のライアスとの会話から俺が特別視されるのを嫌うって事を判ってくれてるっぽい。出来るイケメンだ。
「あとは、あの後にここに来た人達だから何も知らないけれど、職員が慌てる程の身分の高い人物と判って黙ったという感じでしょうか。彼らにとっても”お客様”になる可能性が高いですから」
「得策じゃない、もんな」
そういえば?とギルマスの部屋に入る前に、あの例のギルドマスターはどうなったかと思い出したので小声で訊けば、どうも即日首を切られたそう。
俺達がライアス達と総教国に出発した日(翌日)の午前中には職員へと本部から知らされたらしい。
「え?いくら何でも早くない?」
「確かにな」
「他に何かやっちゃってたの?」
「私達は何も知らないんですが、何かやってそうと言えば何かやってそうな人物でしたからね。何も不思議とは思えないです」
「ふはっ」
アレンさんがあまりにも普通の顔で言うので笑ってしまった。言うねえ。
ま、あのうさ耳ガールをそばに置くくらいだし、何かしらありそうだなとは思う。それにしても、処分が早過ぎるよね?と気になったが、物事はあまり深く知ろうとしない方が精神衛生上良さそうと色々と学習したので追求せずに行こう。うん。俺はいい感じに無知で生きると決めたんだ。うんうん。
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入った部屋は、応接セットに執務机などごく普通の役員室という感じで、側面の壁には給湯室に続くドアがあって、アレンさんと先にギルマスに伝えに行った職員さんがお茶の用意をしてくれている。執務机の奥にももう一つドアがあるのは何だろう。というか、世界は違えど役職持ちの部屋はこんな感じになるんだなあと思考を飛ばす。
「早速だが、本題に入ろう」
「はい、お願いします」
副ギルマスから繰り上がりでファンディオ支部の新ギルドマスターになったウーリュオさんと挨拶もそこそこに本題に入り(こういう事はソランツェの出番だな)、ダンジョンに入った時に、地震が起こった事とその後転移陣の色が赤に変わった事を教える。
「地震に、色が変わった転移陣……ですか」
「色の意味ついては冒険者ギルドは知っていたりするのか?」
「いえ、私は就任したばかりですから……実際どうなのか判りません。私自身も何も知らないです……」
ソランツェ以外にも、あの場にいた全員意味を知らなかったので、もしかしてギルドとかでは何らかの機密事項扱いになっているんだろうかと一応の確認を取るが、判別がつかないと……。まあ、どう考えても機密事項などの十分な引き継ぎの時間があったとは思えないので、ウーリュオさんが知らなくても不思議じゃない。
「俺達は既に色の意味を知っているので教えておこうと思う」
「あ、そうなんですか?」
「俺達も初めは意味が判らなかったが、ダンジョンから出てここへ来る前に教えて頂いたのだ。貴方も知っているだろう?目の前の彼が誰なのか」
そう言ってソランツェは俺を示すのでニコッと笑うと、ウーリュオさんはハッと改めて気付いた模様。どうもどうも~。
「あのダンジョンは拡張され階層が増えた」
「え?!」
「地震はその時のものだそうだ。そして、転移陣の色が変わったのは拡張され”最終階層未到達”となったからだと」
「未到達……ですか?もしかして、今までは到達済みだから青かったと?」
「そういう事らしい」
拡張された部分が実際どんなものかまでは自分達にも判らないので、安全の為に一旦封鎖した方がいいだろうとアドバイスをする。
「そうですね。その方がいいでしょうが……」
冒険者ギルド・ファンディオ支部として冒険者に今は行かない方が良いとは言えるだろうが、ダンジョンの管理自体は領主という事になっているから封鎖はこちらでは出来ないとの事。
まずは本部の指示を仰ぎますとウーリュオさんは急いで奥の小部屋に入って行った。
「あそこって通信部屋?」
「だろうな」
ちょっと入ってみたいな。駄目だろうけど。
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