90 / 148
88
しおりを挟む
「ギルドまで転移する?」
「ああ、早く行った方がいいだろうな」
城門でちゃんと手続きをし、入場料を払って中に入ってからソランツェにどうするか問う。一応、あの地震がどういう事だったかは判ったが、拡張部分がどんな事になっているかまでは判らない。経験の浅い冒険者が突っ込んでいかない様に早々にギルドや領主に知らせないと危ないかもしれないから早ければ早い方がいい。
動き出したソランツェには『アシュマルナにもまだ伝わってきてないから詳しくは判んないけど、最上の愛し子(神の子)が現れたんだから何かしら変化があるものだという(権威付け的な)理由からやったのかもねえ』という曖昧な感じに話を持って行った。ダンジョン型仕送りシステムの事も言ってないし、他にも言えない事もあるから心苦しいが、まあ、しょうがない。
用意されたダンジョン型仕送りシステムは魅力的だけど、資金稼ぎにはソランツェが今までやってた様に、魔物駆除メインの方が世界の為にはいいだろうと思うのは変わらないので、いつか必要な時に行こうかなと思うからそれまで内緒にした。
……まあ、本当はソランツェにダンジョン型仕送りシステムを教えたくないだけなんだけど。甘やかされ過ぎてて恥ずかしいから。何ていうか、娘婿の稼ぎに心配して送金しちゃうお父さん感がさあ……。アシュマルナとは違う感じに戸惑うわ。
例のアレだって、なんだそれって話だよ。娘はやらん!みたいなそんなノリだったんかよ、と。アレがなければソランツェに言わずに事が運べてソランツェはちゃんと人として死ぬ事が出来たかもしれないのに!と言いたくもなる。でもまあ、どうせアシュマルナがソランツェにバラしてたんだろうから選択肢は変わらないのは確かなんだけど、なんつーか、気持ちの置き所が微妙になるから知りたくなかったよ……。
「リヒト?」
「あ、ゴメン」
ついつい、考え込んで動きが止まってしまいソランツェを心配させてしまった。
「いや、街中だし目立たない様に転移地点に不可視結界張れるかな~とかって考えてた」
「そうか?」
咄嗟に思い付いた言い訳を言ってみるが、我ながらこれは良いんではないだろうか?いきなり人前に立つのは驚かしてしまうしな。不可視結界張るというより、俺達自体が透明になるとか……やってみるか。
「ちょっと今から俺達透明になってみようと思う」
「透明?」
「はい、手繋いでて~」
透明人間になぁ~れ~♪と指を鳴らすと自分の体が消え、目の前のソランツェも手の感覚を残し見えなくなった。
「あは、成功みたい」
「な、なんだこれは……っ」
「つーか、もう失敗する事を探す方が難しいな、うん」
ソランツェが大いに戸惑っているという反応を見る限り、透明人間なんて発想はこの世界にはないものっぽい。成功したのならば今後も使っていくので慣れてくれと思いながらさっさと転移する。
冒険者ギルドの前に到着したので、繋いだ手をそのまま引っ張って物陰に移動し、魔法を解除する。
「よし、早く行こう!」
「……いや、ああ、うん……何だか心臓に悪いな」
耳もぺたーんと寝てしまって尻尾も下がってるし、ソランツェがここまで動揺するってのは……面白いな。すまん。
++++++
「みんな聞け、緊急事態だ!」
ギルドの中へ入ると、通常モードに立ち直ったソランツェがギルド内全体に聞こえる様に声を上げる。その声にギルド内全体がピタッと止まったのは、何て言えばいいのか適切か判らないけど”慣れている”と思う。自分の命に係わる事だったりするからだろう。
「つい先ほど、ダンジョンに異変が起こった。もし、今から行こうとしている者は一時中止した方がいい」
「本当か?」
「担ぐ気じゃねぇだろうな?」
「しばらくすれば、その時ダンジョンにいた者達も戻ってくると思うがみな同じ事を言うだろう」
あの騒動もソランツェの顔も知らないらしいパッと見強そうなベテラン冒険者な人達から次々疑う声が上がるが、ギルドの職員達はソランツェが言う事に嘘などある筈がないのは判っているし、俺の正体も嫌という程判っているので、慌ててギルマスに伝えてきます!と駆け出して行く者と疑う人達を黙らせようとしている者がいる。
何か大変そうと他人事のようにそれを見ていた俺と目が合ったアレンさんは、急いでカウンター業務を他の職員と変わり俺の元へ来てくれた。
「リヒト様、お久し振りです」
近寄って来たアレンさんは一定の距離を取って俺達の前にスッと跪きわざと大きめな声で挨拶をする。顔を下げる前にウインクされたのでその意図が判った俺やソランツェは驚きはしないが、案の定、ギルド内はアレンさんのその行動にまたピタッと止まった。疑ってきていた人達は特にどういう事だとポカンとしている。
「うん、久し振り」
俺達に注目している中でそのままの状態で受け答えし、お久し振りというほど日は空いてないけどね、と思いつつソランツェに目で合図を送る。
「アレンだったな。立っていいぞ」
「はい」
「至急だ、案内してくれるか?」
「ええ、こちらです」
アレンさんがスッと立ち上がり、俺達をギルマスの部屋へ誘導し歩き出す頃には、ソランツェの言う事を疑っていた人達もその気持ちが無くなったみたいだ。
出来る男だなあ。
「ああ、早く行った方がいいだろうな」
城門でちゃんと手続きをし、入場料を払って中に入ってからソランツェにどうするか問う。一応、あの地震がどういう事だったかは判ったが、拡張部分がどんな事になっているかまでは判らない。経験の浅い冒険者が突っ込んでいかない様に早々にギルドや領主に知らせないと危ないかもしれないから早ければ早い方がいい。
動き出したソランツェには『アシュマルナにもまだ伝わってきてないから詳しくは判んないけど、最上の愛し子(神の子)が現れたんだから何かしら変化があるものだという(権威付け的な)理由からやったのかもねえ』という曖昧な感じに話を持って行った。ダンジョン型仕送りシステムの事も言ってないし、他にも言えない事もあるから心苦しいが、まあ、しょうがない。
用意されたダンジョン型仕送りシステムは魅力的だけど、資金稼ぎにはソランツェが今までやってた様に、魔物駆除メインの方が世界の為にはいいだろうと思うのは変わらないので、いつか必要な時に行こうかなと思うからそれまで内緒にした。
……まあ、本当はソランツェにダンジョン型仕送りシステムを教えたくないだけなんだけど。甘やかされ過ぎてて恥ずかしいから。何ていうか、娘婿の稼ぎに心配して送金しちゃうお父さん感がさあ……。アシュマルナとは違う感じに戸惑うわ。
例のアレだって、なんだそれって話だよ。娘はやらん!みたいなそんなノリだったんかよ、と。アレがなければソランツェに言わずに事が運べてソランツェはちゃんと人として死ぬ事が出来たかもしれないのに!と言いたくもなる。でもまあ、どうせアシュマルナがソランツェにバラしてたんだろうから選択肢は変わらないのは確かなんだけど、なんつーか、気持ちの置き所が微妙になるから知りたくなかったよ……。
「リヒト?」
「あ、ゴメン」
ついつい、考え込んで動きが止まってしまいソランツェを心配させてしまった。
「いや、街中だし目立たない様に転移地点に不可視結界張れるかな~とかって考えてた」
「そうか?」
咄嗟に思い付いた言い訳を言ってみるが、我ながらこれは良いんではないだろうか?いきなり人前に立つのは驚かしてしまうしな。不可視結界張るというより、俺達自体が透明になるとか……やってみるか。
「ちょっと今から俺達透明になってみようと思う」
「透明?」
「はい、手繋いでて~」
透明人間になぁ~れ~♪と指を鳴らすと自分の体が消え、目の前のソランツェも手の感覚を残し見えなくなった。
「あは、成功みたい」
「な、なんだこれは……っ」
「つーか、もう失敗する事を探す方が難しいな、うん」
ソランツェが大いに戸惑っているという反応を見る限り、透明人間なんて発想はこの世界にはないものっぽい。成功したのならば今後も使っていくので慣れてくれと思いながらさっさと転移する。
冒険者ギルドの前に到着したので、繋いだ手をそのまま引っ張って物陰に移動し、魔法を解除する。
「よし、早く行こう!」
「……いや、ああ、うん……何だか心臓に悪いな」
耳もぺたーんと寝てしまって尻尾も下がってるし、ソランツェがここまで動揺するってのは……面白いな。すまん。
++++++
「みんな聞け、緊急事態だ!」
ギルドの中へ入ると、通常モードに立ち直ったソランツェがギルド内全体に聞こえる様に声を上げる。その声にギルド内全体がピタッと止まったのは、何て言えばいいのか適切か判らないけど”慣れている”と思う。自分の命に係わる事だったりするからだろう。
「つい先ほど、ダンジョンに異変が起こった。もし、今から行こうとしている者は一時中止した方がいい」
「本当か?」
「担ぐ気じゃねぇだろうな?」
「しばらくすれば、その時ダンジョンにいた者達も戻ってくると思うがみな同じ事を言うだろう」
あの騒動もソランツェの顔も知らないらしいパッと見強そうなベテラン冒険者な人達から次々疑う声が上がるが、ギルドの職員達はソランツェが言う事に嘘などある筈がないのは判っているし、俺の正体も嫌という程判っているので、慌ててギルマスに伝えてきます!と駆け出して行く者と疑う人達を黙らせようとしている者がいる。
何か大変そうと他人事のようにそれを見ていた俺と目が合ったアレンさんは、急いでカウンター業務を他の職員と変わり俺の元へ来てくれた。
「リヒト様、お久し振りです」
近寄って来たアレンさんは一定の距離を取って俺達の前にスッと跪きわざと大きめな声で挨拶をする。顔を下げる前にウインクされたのでその意図が判った俺やソランツェは驚きはしないが、案の定、ギルド内はアレンさんのその行動にまたピタッと止まった。疑ってきていた人達は特にどういう事だとポカンとしている。
「うん、久し振り」
俺達に注目している中でそのままの状態で受け答えし、お久し振りというほど日は空いてないけどね、と思いつつソランツェに目で合図を送る。
「アレンだったな。立っていいぞ」
「はい」
「至急だ、案内してくれるか?」
「ええ、こちらです」
アレンさんがスッと立ち上がり、俺達をギルマスの部屋へ誘導し歩き出す頃には、ソランツェの言う事を疑っていた人達もその気持ちが無くなったみたいだ。
出来る男だなあ。
39
お気に入りに追加
3,358
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる