のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

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「救……ってくれ、って……」
「狡い言い方だろうが、そう言うしか出来ない」

 強く抱き締められて身動きの取れないまま考える。ソランツェは俺が頷くまでこのまま離さないのかもしれないな、なんて。

 俺の魂は元々が上位世界の住人らしいし人と違う、しかも一回死んでる傷物で、消滅を選ぶ以外に終わりはない。その事については一旦受け入れてしまえば、俺はもうそういうものなんだくらいの感想でしかなかったから、山頂から戻ったら死なない事と消滅についての事でソランツェと絡むものを一人で落ち着いて考えて、ちゃんとまとめてから俺の事をソランツェに話そうって思ってたのに。

 なのに、あんな形で可能性を突き付けられて……ソランツェに知られて、

「俺さ……本当は、死なない事をソランツェに隠そうって思ってた。老いの事に関してはどうとでも言えるしって思ってたんだ」
「なぜ」
「詳しくはまた説明するけど……俺って死なないんだけど、アシュマルナに頼めばこの魂を消滅させる事は出来るらしいから、隠したままソランツェが死ぬまで一緒に生きて――」
「俺の死と共に自らを消滅させるつもりだった?」
「……うん。俺、置いていかれるのは、もう……嫌だなって……」

 俺は、俺ってあの時あんな変な死に方をしていなかったら、自らで命を絶ってしまっていたんじゃないかなって思うんだよな。
 俺は多分父さんが好きだった。
 血の繋がらない俺を大事に育ててくれた父さん。あの人しかいないって思ってた。
 ただの憧れだと思って今まで気付きもしなかったし、今はもうその時の本当の気持ちは判らない。でも、俺はあの人を愛してたんだろうなって思う。今はソランツェも居て、色んな事が日々起こって父さんの事を思い出して沈むって少なくなったけど、あのままだとキャンピングカーで旅をしている最中は大丈夫でも終わった後とかは判らなかったと思う。
 やり終えた達成感と目標を失った喪失感から父さんを思い出して自分の思いに気付き一人耐えられなくなって、なんて憶測かも知れないけど……。

 あの何にでも嘘を吐いていたアシュマルナが、俺の死期について嘘を吐いていないなんて考えられないし死因だって知ってるはずで……普通は教えてくれそうなものじゃない?いや、普通って何だって話だけどさ……。
 ブランの行動は本当に予期せぬものだったんだろうと思いたいけど、胎内に宿った時から全てを見ている「別物」として見れていないが自殺するなんてアシュマルナは見たくなかったはず。あの時、俺の本来の死因を口にする事も嫌だったから俺には教えてくれなかったのかもしれない。
 子供なんていない俺にでも判るけど、我が子の自殺願望なんてキツい話だ……って、あぁ、そうか。

 だから、なのか。

 俺の”後追い思考”をまた持ち出させない為にソランツェに俺が死なないって事と実はソランツェもに出来るよってあんな訊き方で先に教えたんだろう。ソランツェは絶対頷くって予想付いてたから。

「それは……本当に消滅させる事が出来るのか」
「……だよな、今気付いた。たぶん、させてくれないと思う」

 そうだよ、あのアシュマルナが素直にを消滅なんてさせてくれる訳ないだろうよ俺のバカ。消滅させるには自らを手にかける真似しないといけないなんて、アイツに出来る訳ない。終わらせ方を聞いただけであの泣きそうな顔だったんだから選択肢に入れたって無駄じゃないか。

 という事は後追いは出来ない前提で考え直さないと、と思うも考え直すも何も『救ってくれ』なんてソランツェに言われて、もう俺の選ぶ選択肢は一つしかない。

 俺がソランツェの人としての生を奪ってしまいたくないと思って拒否する事は、それで構わない、寧ろそれがいいと言っているソランツェにとっては『救ってくれ』なんて言わせてしまうくらいの苦しみを与える事になる。

 そんなのは嫌だ、嫌だよ。苦しめる存在になんて俺はなりたくない。もうアシュマルナに阻まれて終わりに出来ないなんて問題は後回しでいい。





「……判った」
「リヒト?」

 少し緩まったソランツェの腕から自分の体を解放させると、俺の答えを待つソランツェの顔を改めて見つめる。

「アシュマルナの事だから……多分、終わりにも出来ないよ?」
「判ってる」
「俺とずっと一緒だよ?後悔しない?」
「ああ、勿論」
「後悔なんてしたらに泣き付いてやるんだから、覚えておいてよ」
「容赦なさそうで恐ろしいな」
「出身国くらいは簡単に消え去りそう」
「それくらいで済めばいいが」

 怖いね、なんてクスクスと二人で笑い合った。一頻り笑うと、仕切り直してソランツェと向き合う。

「ソランツェお願い。俺と一緒に生きて。隣に居て。離れないで」
「ああ、それが俺の喜びだ」

 言葉と共にソランツェから齎された深い口付けがその言葉に嘘は無いのだと教えてくれた。






「アシュマルナ、信じたからな。ソランツェを頼む」

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