のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

文字の大きさ
上 下
81 / 148

79

しおりを挟む
 ソランツェの言葉を聞いて何も言えない状態のまま部屋へと戻り、寝室で降ろしてもらった。

「……ありがとう」
「横になって少し休んだ方が良い」
「いや、大丈夫……」

 横になったってどうせ落ち着く事なんか出来ないだろうし、とベッドの上に腰掛ける。

 言わないといけない事の大きさにどこから話せばいいのか判らない。はっきり判るのは話さないっていう選択肢はない事。
 でも、どうしよう、どうしようと思う気持ちばかりが出て来てまともに話せそうにないし、目線は下を向くしかなくてソランツェの顔もまともに見れない。

 ソランツェの言葉は本当に嬉しいものだけど、だけど……

「リヒト」

 横に座ったソランツェが、いつの間にかシーツをギュッと握りしめていた俺の手を優しく包む。

「俺は負担か?」
「そんな事ある訳ない、でも……」
「それなら、俺だってそうだ」

 言葉を遮り、俺を引き寄せ肩を抱くと言い聞かせる様に話し出す。

「具体的にあの問いの答えがどうされるのかは判らないが、意味を理解出来ずに答えた訳ではない」
「……人を捨て、ってどういう意味か本当に判ってる?」
「真実、神の子であるリヒトと共にずっと在る事を望むならば俺も近い存在にならなければならないのは当然の事だろう」

 さっき俺が恐れたのは、俺の知らない所で既ににされてしまったのでは無いかと言う事。だって、そうするという事は――

「俺と同じ……近くなるっていうのはさ、ソランツェも死んじゃうって事だよ……?そして、死ねない存在に……、あの、言い方はおかしいけど、死ぬっていうが無くなるんだよ?」
「そうか」
「そうか、って……」

 見当はつくと言っていたから、本当に予想通りという事なのかソランツェの表情に変わりはない。

「何かしらの神の御業によりそう変わるという事だろう。でリヒトと共に在れるのなら俺は構わない」

 それに、と続けるソランツェは自分の首に俺の手を持っていき触らせる。

「元々この首は贖いのためリヒトに捧げようと思っていたものだ」
「そうだったな」
「贖いとしては止められたけれども、この命はリヒトを護る為に捧げるという気持ちは変わっていない」
「そんなの……、」
「言うと嫌がるのは判っていたから言わなかったが、俺は常にそういう気持ちも、リヒトを愛しく思う気持ちと共に持っていた」
「ソランツェ……」

 俺の手の甲に何回も口付けを落としそのまままギュッと握り、俺の目をじっと見つめたままソランツェは言葉を続けた。

「永遠を生きるという事は孤独を一人行く事でもあるだろう。このままだとおそらく老いもなく変わらぬリヒトに、俺は生きていても死んでしまってもずっと孤独を突き付けてしまう。……リヒトは老いないのだろう?」

 俺が頷くと、人と共に老いない俺を残し目の前で老いて弱り死んでいく姿を見せたくないのだと、俺の手を握る手に力がこもる。

「俺はリヒトにを与える存在になりたくはない。愛しい者を泣かせたくない、寂しい顔をさせたくない」
「ソランツェ」
「孤独からお前を護る為に、俺は共に在りたいんだ」

 ソランツェは、それにそれだけじゃないんだと俺の体を強く抱き締めてきた。

「……俺がいなくなっても時が経てばリヒトがその孤独に慣れて、また新たに心寄せる者が出来るかもしれない」
「そんな事、」
「無いなんて言えないだろう?俺にはそんな可能性すら耐えられないし……許せない」
「…………」

 想像した場面への怒りなのか悲しみなのか震えるソランツェに、何か言いたいと思うけれど、言葉は出て来ない。

「醜い独占欲で狂ってしまいそうなんだ」

 俺だってソランツェの答えは嬉しかったし絶対に離れたくない。でも、俺といる事でソランツェの人としての生を奪ってしまいたくなくて、奪う存在になりたくなくて……


「頼む、リヒト。俺を救ってくれ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...