のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

文字の大きさ
上 下
80 / 148

78

しおりを挟む
 現在、大神殿内のサロンみたいな所で俺があの石に引き込まれた後の話を皆さんから聞いております。

 まず、時間が動き出したあの後ソランツェはあの石碑に直ぐに斬りかかったらしいが、何かに弾かれてしまい真後ろにいたライアス諸共外まで吹き飛ばされたそう。で、ライアスと聖騎士四名は、吹き飛ばされても直ぐに立ち上がって向かって行こうとするソランツェを五人掛かりで必死に止めていたらしい。五人掛かりってすごいね……。

 ルイスさんはルイスさんで、大変な事が起こったと大急ぎでジェロイスさんに知らせようとしたらしいが、突如として太陽が凄い速さで厚い雲に隠され、一気に辺りが暗くなって気温が下がり、雷鳴が轟きだし幾筋もの稲光が空を走り地響きが聴こえ……っていう終末感漂う感じに慄いて動けなくなってしまったそうです。
 我を失いそうだったソランツェも辺りのその異様な様子に気付き、石碑へと向かって行く動きを止めライアスと共にジェロイスさんの元へ知らせに行ったらしい。で、ジェロイスさん達も普通では考えられないただならぬ事態に、もしや俺に何かあったのではと大神殿前辺りまで急いで来ていて合流したのが俺が目を覚ましたあの場所。

 俺が消えてしまった経緯をジェロイスさんに説明した後、一度石碑を確認してみようと続々と集まってくる人達も含めて移動しようとしたところ、全員の足がその場に縫い止められたように動かなくなってしまい、全員がこれは確実に神の御業によるものだと理解したらしい。
 その内に、空を走る雷が自分たちの頭上を中心に集まり光の玉を形成しだし、しばらくすると巨大な球体が出来上がった、と。

「そして、その時神の声が聞こえたのです。それは荒々しく巨大な雷鳴の様な恐ろしさを感じさせるものでした」
「なんて言ってたの?」
「我が子を侮るものがおるようだ、と」
「えぇー……」

 ようとしてんだろうけどちょっとやり過ぎじゃないだろうかと思うも、どうもアシュマルナではない感じがする……。荒々しいって所が、ねえ。どういう事だ……。

「しかし、それよりも、とーー」

 ジェロイスさんはチラッとソランツェの方に視線を送るとソランツェは頷いてそれを受け取り話し出す。

「神は俺に問いかけられた」

 恐ろしく響くその声は、ソランツェに俺を返して欲しいかと問いかけてきたそう。

「勿論、俺は返して欲しいと答えた」
「しかし、続けて彼にまた質問されたのです」
「死する事のない我が子と人を捨て永遠を生きる覚悟はあるか、と」
「……え?」

 何だそれ……っつーか、って……永遠?……と、戸惑ったがすぐに頭の中でもしかしてと一つの可能性に辿り着く。

「ちょっ……「あると答えた」

 その可能性を思うと続きを聞きたくなくて一旦止めようとする俺を遮るようにソランツェは続ける。

「…………嘘だろ」

 俺が考えついた可能性は唯一つ。ザッと全身の血が引いていく感覚に気が遠のきそうになる。

「何があっても揺るがないと、彼が言い切ると神は楽しげに笑い『真にその覚悟が出来たのならば我に申せ』と仰ったのです」

 そして、それと同時に頭上の光の球体は弾ける様に割れ、太陽を覆い隠す厚い雲を強い風で吹き飛ばして暖かさと平穏をその場に戻し、弾けた光は再び集まり出して俺の体を形作ったそう。

「彼以外の者たち、つまり我々がリヒト様と共に在りたいと思えばリヒト様は目覚め、それは神が我々と共に在る事と繋がると」
「その言葉とともに暖かな光に包まれ眠ったままリヒトは俺の元へ降りて来たんだ」









++++++









 多分、アシュマルナはこんな感じにする予定じゃなかったはずで……ただ単に俺をいっぱい飾り立てて無数の花や光とかと一緒にふわふわキラキラと空を下ろしちゃえ~!くらいのもっと平和な感じだったんだろうと思うんだけど、結果はこの荒々しい降臨イベントだった訳で、本当に頭を抱えたくなる。
 そういえば、乱暴者のバブちゃんは上司(伴侶)似だって言ってたような……?もしかして性格がって事?
 アシュマルナとは違う部類の俺様な気配に考えれば考えるほど、なんて事だよ、と気分が悪くなってしまって横に座るソランツェに凭れ掛かると

「リヒト、顔色が悪い」
「そうですな。お部屋に戻られて少しお休みになられた方がよろしいかと」
「そうだな」

 俺が返事をする前にソランツェは俺をサッと抱え上げて歩き出した。あっ、と思ったがお姫様抱っこ状態に何だかもう抵抗の声を上げる気力もなくてそのまま部屋に戻る道を二人だけで行く。

 これから二人でちゃんと話さなくてはいけないんだろうけど、それよりも先に一番聞きたい大事な事を訊かなくては。

「ソランツェは……本当に何も、されて……ない?」
「ああ」
「よかった」
「何も、の部分が正確には何を意味するのかは判らないが……凡そ見当がつく」
「……そっか」

 それきり俺が黙ってしまうとソランツェはフッと笑って俺の頬へキスしてくる。

「俺はリヒトと離れる気はない。リヒトから言われてもな」

 離さないぞ、と。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...