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「で、やるんだろ?」
「何をだ」
「いや、神の子降臨イベント?」
自分で神の子って言うのはむず痒いものがあるけど、もういいよ。神の子だよ、俺は。
「あぁ、そうであったな」
「ゆったり俺と菓子食って満足してんなよ」
嘘吐いてたりした事をぶちまけたからか隠す事がなくなったアシュマルナはずっとニコニコしていて、俺がお茶を飲んだり菓子を食べたりするのを眺めている。子供を優しく見守る母親みたいな顔……って言っても俺の母親のそんな顔一回も見た事無いから想像というか、世間で作られたものを思い浮かべるだけなんだけども。
つーか、今はそんな事よりも、俺は戻らなきゃいけないんだよ!ソランツェが待ってるから!
「ソランツェ、絶対大変な事になってると思うんだけど、今、どんくらい時間経ってんの?」
「お前を引き入れた時に時は止めておいたから時間は経っていないぞ」
「あ、そうなんだ? それならいいけど」
「そうだな、下の時間で一時間後くらいに戻してやるか。狼狽える姿を見るのも面白かろう」
「お前本当に好き放題だな……」
「それが出来る様に作った世界だからな」
だなんて事を言って笑っている。うーん、上機嫌。
「なあ、今更だけどあの白い所もそうだしここってどこだよ?」
「ここはシシュヴァルトの頂上だが、先程の場所は――」
あそこを見ろとアシュマルナは俺の背後を指差すので、くるりと振り返って見ると白い箱のような大きな建物がある。学校くらいの大きさのデカい豆腐‥…。
「何だあれ?」
「先程の場所はあの中だ。家にするなり好きに使える様に作っておいた」
「はあ?」
もしかして……と思えば予想通りで、馬車の様に俺の想像通りに外観も中身も変更出来るやつ。う~ん、バカかな?
「この先ゆっくり腰を落ち着ける場所が欲しいと思う事もあるだろうからな」
「そりゃそうかもしれないけどさあ……」
「好きにしていい鉱山も近くに用意しておいたぞ。どこかに無いかと思っていただろう?」
「おい、お前……もうさ、お前……」
有難い、有難いんだけど!!!!
「……いや、うん。ありがとう」
もう深く考えては駄目だと、色々思う事はあるが無視しようとため息を吐きつつ気になる事を訊く。
「山の頂上って言うけどここってどんな事になってんの……広すぎないか?」
「今の所この足元の国の半分くらいの大きさか」
「今の所、ねぇ……」
俺がちょっとでも広げたいとか思ったらそうなるんだろうなあ。危険だ。
全体の形としては蓮の葉とか茸のかさみたいな形になってるらしい。根元部分にあるのが大神殿と……。
「えーっと、日照とかそういうのは?」
「どうとでもなる」
「…………でしょうね」
聞いた俺がバカだった。
++++++
ガゼボから出て草原を少し歩く。デカい岩とか障害物もなくて何でも出来そうな感じ。そういえば、こんだけ広いならブランを放牧してあげられそうだよな、とブランの事を思い出す。指輪の中でどう過ごしてるか知らないけど。
「ブランって俺が喚び出してない時って指輪の中で何してる?」
「…………普通に過ごしておるな」
「中って広いんだ?」
「…………ああ」
「ん?」
何だ何だ?微妙な間が空くのは。まだ何か隠してんのか?怪しい、と目を合わそうと下からじーっと覗き込むがアシュマルナは目を逸らしている。
「なあ、どうしたんだ?まだ何か隠してんだろ?言えよ」
「……そうだな」
「何?」
何だろうなあ?これ以上まだ何かあるっていい加減にして欲しい。
「あの馬の事なんだがな……」
「ブランの事?」
「ああ、あの馬は例のあのペットなのだ」
「は?」
ペットって、あのペガサス?!俺の目の前に出て来たやつ!?
「どういう事?!」
「実は……――」
ペット改めブランは、自分のせいで俺は死ぬし、それによって上位世界の住人として戻って来れなくなってしまったという事で物凄く落ち込んでいたらしい。
そんな中、アシュマルナの用意した俺用の馬車の馬(魔道具)を見て、あれなら自分を行かせてくれと言ってきたそう。俺を手助けしたい、俺の為に働きたいと言葉も無くていいし翼なんかいらないから自分をこの世界に落としてくれと。でも、俺が動物嫌いなので一応、考えておくと一旦却下したらしいが、ララタスに行く前のあの時に、意思の疎通が出来れば動物も大丈夫かもしれない感じなので試しに送ってみたとの事。
「元は神馬だから普通の馬を用意するよりも丈夫であるし意思の疎通も出来るし……このまま黙っておけばいいだろうかと」
「えぇぇ……マジか……」
馬の行動には悪気が無いのは判っているけど、とそこら辺アシュマルナも悩んだらしいけど……。うぅーん……なんか複雑な気分。この世界にも慣れて来たからか、なんだか怒りの感情は湧かないけど、
「聞かなきゃよかった……」
知らない方がいい事もあるね……。
「何をだ」
「いや、神の子降臨イベント?」
自分で神の子って言うのはむず痒いものがあるけど、もういいよ。神の子だよ、俺は。
「あぁ、そうであったな」
「ゆったり俺と菓子食って満足してんなよ」
嘘吐いてたりした事をぶちまけたからか隠す事がなくなったアシュマルナはずっとニコニコしていて、俺がお茶を飲んだり菓子を食べたりするのを眺めている。子供を優しく見守る母親みたいな顔……って言っても俺の母親のそんな顔一回も見た事無いから想像というか、世間で作られたものを思い浮かべるだけなんだけども。
つーか、今はそんな事よりも、俺は戻らなきゃいけないんだよ!ソランツェが待ってるから!
「ソランツェ、絶対大変な事になってると思うんだけど、今、どんくらい時間経ってんの?」
「お前を引き入れた時に時は止めておいたから時間は経っていないぞ」
「あ、そうなんだ? それならいいけど」
「そうだな、下の時間で一時間後くらいに戻してやるか。狼狽える姿を見るのも面白かろう」
「お前本当に好き放題だな……」
「それが出来る様に作った世界だからな」
だなんて事を言って笑っている。うーん、上機嫌。
「なあ、今更だけどあの白い所もそうだしここってどこだよ?」
「ここはシシュヴァルトの頂上だが、先程の場所は――」
あそこを見ろとアシュマルナは俺の背後を指差すので、くるりと振り返って見ると白い箱のような大きな建物がある。学校くらいの大きさのデカい豆腐‥…。
「何だあれ?」
「先程の場所はあの中だ。家にするなり好きに使える様に作っておいた」
「はあ?」
もしかして……と思えば予想通りで、馬車の様に俺の想像通りに外観も中身も変更出来るやつ。う~ん、バカかな?
「この先ゆっくり腰を落ち着ける場所が欲しいと思う事もあるだろうからな」
「そりゃそうかもしれないけどさあ……」
「好きにしていい鉱山も近くに用意しておいたぞ。どこかに無いかと思っていただろう?」
「おい、お前……もうさ、お前……」
有難い、有難いんだけど!!!!
「……いや、うん。ありがとう」
もう深く考えては駄目だと、色々思う事はあるが無視しようとため息を吐きつつ気になる事を訊く。
「山の頂上って言うけどここってどんな事になってんの……広すぎないか?」
「今の所この足元の国の半分くらいの大きさか」
「今の所、ねぇ……」
俺がちょっとでも広げたいとか思ったらそうなるんだろうなあ。危険だ。
全体の形としては蓮の葉とか茸のかさみたいな形になってるらしい。根元部分にあるのが大神殿と……。
「えーっと、日照とかそういうのは?」
「どうとでもなる」
「…………でしょうね」
聞いた俺がバカだった。
++++++
ガゼボから出て草原を少し歩く。デカい岩とか障害物もなくて何でも出来そうな感じ。そういえば、こんだけ広いならブランを放牧してあげられそうだよな、とブランの事を思い出す。指輪の中でどう過ごしてるか知らないけど。
「ブランって俺が喚び出してない時って指輪の中で何してる?」
「…………普通に過ごしておるな」
「中って広いんだ?」
「…………ああ」
「ん?」
何だ何だ?微妙な間が空くのは。まだ何か隠してんのか?怪しい、と目を合わそうと下からじーっと覗き込むがアシュマルナは目を逸らしている。
「なあ、どうしたんだ?まだ何か隠してんだろ?言えよ」
「……そうだな」
「何?」
何だろうなあ?これ以上まだ何かあるっていい加減にして欲しい。
「あの馬の事なんだがな……」
「ブランの事?」
「ああ、あの馬は例のあのペットなのだ」
「は?」
ペットって、あのペガサス?!俺の目の前に出て来たやつ!?
「どういう事?!」
「実は……――」
ペット改めブランは、自分のせいで俺は死ぬし、それによって上位世界の住人として戻って来れなくなってしまったという事で物凄く落ち込んでいたらしい。
そんな中、アシュマルナの用意した俺用の馬車の馬(魔道具)を見て、あれなら自分を行かせてくれと言ってきたそう。俺を手助けしたい、俺の為に働きたいと言葉も無くていいし翼なんかいらないから自分をこの世界に落としてくれと。でも、俺が動物嫌いなので一応、考えておくと一旦却下したらしいが、ララタスに行く前のあの時に、意思の疎通が出来れば動物も大丈夫かもしれない感じなので試しに送ってみたとの事。
「元は神馬だから普通の馬を用意するよりも丈夫であるし意思の疎通も出来るし……このまま黙っておけばいいだろうかと」
「えぇぇ……マジか……」
馬の行動には悪気が無いのは判っているけど、とそこら辺アシュマルナも悩んだらしいけど……。うぅーん……なんか複雑な気分。この世界にも慣れて来たからか、なんだか怒りの感情は湧かないけど、
「聞かなきゃよかった……」
知らない方がいい事もあるね……。
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